せん妄、不穏という言葉を聞いたことはあるか?普段の生活で聞くことはないでしょうが、医療の現場ではよく知られた言葉です。もし、聞くとしたら、病院に入院したときや手術後でしょう。そんなせん妄、不穏は一見すると似ているが、実は別物です。どう違うのか、どのような原因で起き、どんな治療を行うのかをライターの近野チカと一緒に解説していきます。

ライター/近野チカ

検索マニアの元看護師のWebライター。健康番組や医療ドラマやアニメをよく観ている。

不穏とせん妄の違いとは

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病院に入院後、落ち着きがなくなったり、叫んで暴れたり、点滴を引き抜いたりと普段ではしないような行動が見られることがあります。このような患者の行動は不穏と呼ばれ、医療現場では珍しくありません。また、手術後や薬剤、身体の病気によってせん妄という意識の混乱が起こることもよく知られています。

不穏とせん妄は似ている部分もあり混同されがちですが、別のものです。どう違うのか、それぞれ詳しく見ていきましょう。

不穏:行動が活発になり、落ち着かない状態

不穏とは穏やかな状態ではないことです。前述したように落ち着きがなくなったり、叫んで暴れたりするほか、治療を拒否したり点滴を抜いてしまうこともあります。

せん妄:身体の病気などが原因で生じる意識障害の一種

何らかの身体の病気や全身状態の変化にともない、比較的急性で多くは一時的、中等度または軽度の意識障害幻覚や幻想などの精神症状が出現している状態です。身体の病気が治れば精神症状も改善します。精神症状には過活動型(活動過剰型)・低活動型・混合型があり、主な症状は下記の通りです。

・過活動型(活動過剰型)…興奮、不眠、落ち着きがない、点滴の管や点滴の針が刺さっている部分をいじる、すぐ怒る、会話のトーンが高いなど

・低活動型…傾眠(意識障害のひとつで、うとうとしているが声かけや肩をポンッと叩くような軽い刺激で覚醒するような状態)、無気力、動作がゆっくりである、無関心、無表情、食欲低下、会話の減少、会話速度や反応が遅いなど

・混合型…過活動と低活動の間を行き来しており、症状が混在する状態

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せん妄と認知症の違いとは

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両者の違いは「意識障害があるか、ないか」です。せん妄は意識障害がみられますが、一度正常に発達した知的機能が後天的(生まれてから備わること)な脳障害によって持続的に低下し、日常生活に支障をきたす認知症では意識障害はみられません。

そのほか、「急性の発症」「症状の日内変動がある」のがせん妄です。ある程度、発症時期を特定できます。日内変動とは、1日のうち夜に不穏になり、朝になると落ち着くのといった症状の変動のことです。認知症は徐々に症状が進行する特徴があります。

不穏やせん妄になる原因は?治療法はある?

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不穏やせん妄の原因は様々で、それに不穏やせん妄を起こしやすい要因が絡み、リスクが高まることがあります。治療法は必ずしも薬による治療だけではなく、精神的なフォローや生活リズムを整えるような支援も大切です。

不穏の原因と治療

原因は多岐にわたり、強い痛みなどの身体的苦痛、強い不安などの精神的な要因、薬剤によるもの、せん妄などの意識障害でも引き起こされることもあります。治療は不穏を起こしている原因を、患者本人からの訴えによる主観的情報や問診、観察などから得る客観的情報から分析・評価し、原因をなるべく除去することです。

せん妄の原因と治療

睡眠薬や電解質異常、肝機能や腎機能障害など意識障害をきたす病気や症状があるとせん妄になりやすい状態です。便秘や安静などはせん妄を悪化させたり、長引く要因になります。しかし、せん妄は多くの要因によって発症するため、原因の特定が難しく、高齢者は特に多くの要因が絡む上に個人差が激しい面があるのです。

せん妄は、治療可能な可逆性せん妄、進行性の病気にともなって引き起こされる不可逆的(元に戻ることができない)せん妄があります。

可逆的せん妄…血液検査、頭部CT、胸部CT、胸部X線などの検査で原因を突き止め、原因に応じた治療(感染症であれば感染症の治療、脱水であれば電解質の補正など)を行い、興奮を抑える薬など必要時、症状に応じて内服薬や注射で投与します

不可逆的せん妄原因の除去は困難です。睡眠が確保できる薬や不穏を軽減する薬の投与を行います。

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せん妄は意識障害の一種、不穏は行動の異常でせん妄がきっかけになることも

せん妄は身体の病気などがきっかけで起こる意識障害の一種で、比較的急性に出現し、身体の病気が治れば改善します。不穏は穏やかな状態ではなく、落ち着きがなくなったりする行動の異常をいい、原因はせん妄を含めて多岐にわたるため、特定は困難です。患者本人の訴えや問診・観察などから得る客観的情報から分析・評価し、原因をなるべく除去します。

両者とも薬物治療だけでなく、精神的なフォローや生活リズムを整えるといった支援を行うことも大切です。

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雑学

簡単でわかりやすい!不穏とせん妄の違いとは?原因や治療法も元看護師が詳しく解説

せん妄、不穏という言葉を聞いたことはあるか?普段の生活で聞くことはないでしょうが、医療の現場ではよく知られた言葉です。もし、聞くとしたら、病院に入院したときや手術後でしょう。そんなせん妄、不穏は一見すると似ているが、実は別物です。どう違うのか、どのような原因で起き、どんな治療を行うのかをライターの近野チカと一緒に解説していきます。

ライター/近野チカ

検索マニアの元看護師のWebライター。健康番組や医療ドラマやアニメをよく観ている。

不穏とせん妄の違いとは

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病院に入院後、落ち着きがなくなったり、叫んで暴れたり、点滴を引き抜いたりと普段ではしないような行動が見られることがあります。このような患者の行動は不穏と呼ばれ、医療現場では珍しくありません。また、手術後や薬剤、身体の病気によってせん妄という意識の混乱が起こることもよく知られています。

不穏とせん妄は似ている部分もあり混同されがちですが、別のものです。どう違うのか、それぞれ詳しく見ていきましょう。

不穏:行動が活発になり、落ち着かない状態

不穏とは穏やかな状態ではないことです。前述したように落ち着きがなくなったり、叫んで暴れたりするほか、治療を拒否したり点滴を抜いてしまうこともあります。

せん妄:身体の病気などが原因で生じる意識障害の一種

何らかの身体の病気や全身状態の変化にともない、比較的急性で多くは一時的、中等度または軽度の意識障害幻覚や幻想などの精神症状が出現している状態です。身体の病気が治れば精神症状も改善します。精神症状には過活動型(活動過剰型)・低活動型・混合型があり、主な症状は下記の通りです。

・過活動型(活動過剰型)…興奮、不眠、落ち着きがない、点滴の管や点滴の針が刺さっている部分をいじる、すぐ怒る、会話のトーンが高いなど

・低活動型…傾眠(意識障害のひとつで、うとうとしているが声かけや肩をポンッと叩くような軽い刺激で覚醒するような状態)、無気力、動作がゆっくりである、無関心、無表情、食欲低下、会話の減少、会話速度や反応が遅いなど

・混合型…過活動と低活動の間を行き来しており、症状が混在する状態

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