この記事では孵化と羽化の違いについてみていきます。この2つはどちらも、生き物の見た目が変わる現象。ですが孵化する生き物は数あれど、羽化するのは昆虫だけなんです。そして孵化と羽化はそれぞれ、昆虫の一生の始まりと終わりに位置します。今回はそんな昆虫の成長過程の違いを、彼らの体の変化に着目して、大学時代に昆虫を研究していたライター2scと一緒に解説していく。

ライター/2sc

生物学をこよなく愛するライター。京都の大学で、養蚕技術・昆虫の生態について学んでいた。この記事では昆虫の一生から、その変化まで「濃い」知識をわかりやすく解説していく。

孵化と羽化を大まかに比較

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孵化と羽化はどちらも、生物がその成長過程でみせる現象です。まずはそれぞれを行う生き物についてみていきましょう!

多くの生物が「孵化」する

孵化(ふか)とは、生物の卵が孵(かえ)ること。一生のスタートといえる孵化は、卵を産む生物で必ずみられる、ありふれた現象です。掘り下げて説明すると孵化とは、新しい個体が卵をおおう殻・膜を破って出てくることを指します。そのためにおおわれた爬虫類・鳥類の卵だけでなく、におおわれた魚類・両生類の卵でも孵化がみられるのです。そして後述の昆虫も、孵化を行います。

「羽化」するのは昆虫だけ

一方羽化(うか)は、一部の昆虫のみにみられます。羽化とは昆虫の蛹や若虫が、翅(はね)をもつ成虫となる現象のこと。姿形が大きく変化する「変態」の一種です。昆虫は羽化した後、卵を産んで死んでしまいます。そのため羽化は、孵化とは対照的に昆虫の一生におけるゴールといえるでしょう。

昆虫における孵化と羽化の違い

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チョウやセミなど、一部の昆虫は孵化と羽化の両方を行います。昆虫における孵化と羽化の間には、3つの具体的な違いが存在。以下詳しく解説していきます。

違い1.形の変化

孵化は卵の中で発生した一齢幼虫が、その外に出るだけの現象。孵化の前後で体の形変わりません。一方羽化では「変態」といい、体の形が大きく変化。羽化の前に幼虫時代の内臓や筋肉は、細胞レベルで組み替わります。その結果、成虫の翅ができあがるのです。

違い2.脱皮の有無

昆虫の変態の一種である羽化では、脱皮がみられます。昆虫の脱皮とは、体の一部だった古い外骨格を脱ぎ捨てること。体の表面が硬い骨格に包まれている昆虫は、脱皮を繰り返すことで体のサイズを大きくしてゆくのです。一方孵化では卵の中の一齢幼虫が、卵殻を破って出てきます。

\次のページで「違い3.生殖能力」を解説!/

違い3.生殖能力

孵化したての一齢幼虫は、子孫を残せません。その後成長の過程で、脱皮を繰り返し卵巣・精巣を発達させてゆきます。そして最後の脱皮である羽化を終えて、生殖能力をもつ成虫となるのです。

さまざまな羽化と変態

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昆虫の羽化・変態は、2つのスタイルに分かれます。それは完全変態不完全変態。この2つは、蛹の段階の有無によって区別できます。以下昆虫の羽化と変態について、詳しくみていきましょう!

1.完全変態

成虫が蛹から羽化する変態を、完全変態といいます。これはチョウや甲虫でみられる変態のスタイルです。「いも虫」や「うじ虫」はこの完全変態を行う昆虫の幼虫。完全変態にて幼虫は、羽化の前に一度になり、全く異なる姿の成虫となるのです。動くことができないは、雨風や紫外線に対して無防備なため、それを守るに包まれていることもあります。

完全変態の一生
1.卵
2.幼虫
3.
4.成虫

2.不完全変態

一方不完全変態には、の段階がありませんバッタやセミがおこなうこの変態では、成虫に似た姿の「若虫」とよばれる幼虫がみられます。若虫は最後の脱皮によって、そのまま成虫へと羽化するのです。

\次のページで「昆虫だけが「翅」をもつ」を解説!/

不完全変態の一生
1.卵
2.若虫(幼虫)
3.成虫

昆虫だけが「翅」をもつ

孵化する生き物は数あれど、羽化するのは昆虫だけ。昆虫の祖先は、脚を退化させることなく「翅」を獲得しました。これは鳥類・コウモリの、前足が変形した「翼」とは別物。脚と翅を使い分ける昆虫は、さまざまな環境に適応できるのです。そんな彼らの翅は生まれたときからあるわけではありません。昆虫は羽化によって翅をもつ成虫となるのです。

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簡単でわかりやすい!孵化と羽化の違いとは?定義と昆虫の変態についても農学専攻ライターが詳しく解説

この記事では孵化と羽化の違いについてみていきます。この2つはどちらも、生き物の見た目が変わる現象。ですが孵化する生き物は数あれど、羽化するのは昆虫だけなんです。そして孵化と羽化はそれぞれ、昆虫の一生の始まりと終わりに位置します。今回はそんな昆虫の成長過程の違いを、彼らの体の変化に着目して、大学時代に昆虫を研究していたライター2scと一緒に解説していく。

ライター/2sc

生物学をこよなく愛するライター。京都の大学で、養蚕技術・昆虫の生態について学んでいた。この記事では昆虫の一生から、その変化まで「濃い」知識をわかりやすく解説していく。

孵化と羽化を大まかに比較

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孵化と羽化はどちらも、生物がその成長過程でみせる現象です。まずはそれぞれを行う生き物についてみていきましょう!

多くの生物が「孵化」する

孵化(ふか)とは、生物の卵が孵(かえ)ること。一生のスタートといえる孵化は、卵を産む生物で必ずみられる、ありふれた現象です。掘り下げて説明すると孵化とは、新しい個体が卵をおおう殻・膜を破って出てくることを指します。そのためにおおわれた爬虫類・鳥類の卵だけでなく、におおわれた魚類・両生類の卵でも孵化がみられるのです。そして後述の昆虫も、孵化を行います。

「羽化」するのは昆虫だけ

一方羽化(うか)は、一部の昆虫のみにみられます。羽化とは昆虫の蛹や若虫が、翅(はね)をもつ成虫となる現象のこと。姿形が大きく変化する「変態」の一種です。昆虫は羽化した後、卵を産んで死んでしまいます。そのため羽化は、孵化とは対照的に昆虫の一生におけるゴールといえるでしょう。

昆虫における孵化と羽化の違い

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チョウやセミなど、一部の昆虫は孵化と羽化の両方を行います。昆虫における孵化と羽化の間には、3つの具体的な違いが存在。以下詳しく解説していきます。

違い1.形の変化

孵化は卵の中で発生した一齢幼虫が、その外に出るだけの現象。孵化の前後で体の形変わりません。一方羽化では「変態」といい、体の形が大きく変化。羽化の前に幼虫時代の内臓や筋肉は、細胞レベルで組み替わります。その結果、成虫の翅ができあがるのです。

違い2.脱皮の有無

昆虫の変態の一種である羽化では、脱皮がみられます。昆虫の脱皮とは、体の一部だった古い外骨格を脱ぎ捨てること。体の表面が硬い骨格に包まれている昆虫は、脱皮を繰り返すことで体のサイズを大きくしてゆくのです。一方孵化では卵の中の一齢幼虫が、卵殻を破って出てきます。

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