この記事では和弓と洋弓の違いについてみていきます。日本古来の弓を和弓と呼び、それに対して西洋にルーツを持つ弓を洋弓と呼ぶが、弓の長さと射ち方にもそれぞれ違いがあるみたいです。今回は和弓と洋弓の違いを確認しつつ、和弓を使う弓道と洋弓を使うアーチェリーの違いについて、元アーチェリー選手ライターの斉藤佳人と一緒に解説していきます。

ライター/斉藤佳人

お米農家、メカエンジニア、ロボット教室講師、スポーツトレーナーと複数の仕事をこなすマルチワーカー。全日本選手権に出場経験もある元アーチェリー選手。

和弓と洋弓の違い

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日本古来の弓を和弓と呼び、これに対して西洋にルーツを持つ弓を洋弓と呼びます。その一番の違いは弓の長さ。弓に使われる材質にもふれながらご紹介します。

和弓は日本古来の弓

和弓は日本古来の弓術に使われる弓で全長が2メートル以上もある、世界でも有数の長い弓です。江戸時代には七尺三寸(約221cm)が標準と定められました。そのほかにも半弓(長さ六尺三寸:約191cm)などの少し短い弓も。

和弓に使われる材質は一般的に真竹やハゼノキといった良くしなり反発力の強い素材が使われていました。ただし植物素材のため繰り返し矢を放つと折れやすいという性質があり、これを補うために弓の全長を長くして弓全体でのひずみを小さくする工夫がほどこされました。竹などの植物由来の材質で矢を強く遠くへ飛ばすことを目指したのが和弓。

和弓は弓の下からおよそ1/3の部分を持ち矢をつがえてるので一見すると上下でアンバランス。しかし片膝をついた姿勢でも弓が地面につくことなく矢を射つことができるというメリットがあります。和弓がとても長いのには理由があったのですね。

洋弓は西洋にルーツを持つ弓

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和弓に対して西洋にルーツを持つ弓が洋弓です。洋弓の長さはおよそ120cmから160cmであり人間の身長と同程度の長さとなっています。材質はイチイの木やニレの木が使われていて1本の木材から削り出して作られていたそう。また、動物の骨や金属と組み合わせて作られる場合もあり、高い弾性率と強度を持たせる工夫がされていました。

西洋は騎馬文化があり馬上からできるだけ早く矢を射つことが求められたため、弓は扱いやすさが重視されたそうです。弓のほぼ中心部を持ち矢を射つことも和弓とことなりますね。

\次のページで「和弓と洋弓の射ち方の違い」を解説!/

和弓と洋弓の射ち方の違い

和弓と洋弓の射ち方の違いは大きく2つあり、矢のつがえ方と弦への指のかけ方。それぞれについて詳しくご紹介します。

和弓の射ち方

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和弓は弓の右側に矢をつがえ弓を持っている左手の親指の上に矢を乗せ、右手の親指を弦に引っ掛けて頭の後方まで大きく引きます。この親指を弦にかけるスタイルを蒙古式と呼び、トルコやモンゴル、中国などでもこのかけ方が使われているそう。矢を放つときは指を守るためにゆがけという道具を付けるそうですが、これは鹿革製だそうです。

洋弓の射ち方

洋弓は弓の左側に矢をつがえて弓を持つ左手の甲に矢をのせます。右手の人差し指と中指、薬指の3本指を弦にかけて引き、手を顔につけることで弓を引く長さを一定にする効果も。3本指を弦にかけて引くスタイルを地中海式と呼び、右手には指を守るためにタブやグローブという道具を着けています。

弓の種類によっては弓の中央部分が細くなっていて矢をのせるためのレストという道具があり、手に矢が当たる心配がありません。

弓道とアーチェリーの違いは?

武器として発達してきた和弓と洋弓。ここでは和弓を使う弓道と洋弓を使うアーチェリーについてさらに詳しく見ていきます。

弓道は武道

弓道の起源は平安時代の貴族が行っていた催事。その後は武士が心身の鍛錬として行うようになりました。これらのことから服装と作法が大切にされ、現在の弓道でも礼儀作法が重んじられていて、基本的には袴(はかま)を身に着けます。

弓道には段位制度がありますが、必ずしも的に当てる精度ではなく所作や弓道を通して身に着けた人間性などが評価されるそう。一方で高校生や大学生の場合は、的への的中数で勝敗を決める勝負も行われていてインターハイやインカレなどの大会も盛んにおこなわれています。

\次のページで「アーチェリーはスポーツ」を解説!/

アーチェリーはスポーツ

アーチェリーは16世紀にイギリスのヘンリー8世が的中精度を競うコンテストとして開催したことが起源となり、スポーツとして確立されてきました。アーチェリーも貴族文化から生まれたのは弓道と同じですね。このため以前は襟付きのシャツを着ることなどのドレスコートもありましたが近年はルール改正が行われていて、スポーツウエアを着用することが一般的です。

現在の弓の材質はアルミ合金やカーボン素材などの最先端の材質。リカーブボウと呼ばれる弓の先端が反り返っている伝統的な弓のほかに、コンパウンドボウという滑車がついていてより効率的に矢を射つことができる弓もあります。

アーチェリーの場合はサイトと呼ばれる照準器を使用して的中精度を高めたり、スタビライザーという長いロッドを取り付けて発射時の弓のブレと振動を吸収したりする工夫ができることも魅力の一つ。

これから始めるならどっち?

日本の伝統や礼儀作法を学び、美しい所作を身につけたい方には弓道がおすすめ。袴姿は凛々しいですね。もっとカジュアルに点数を競いたい方はアーチェリーを始めるとよいでしょう。アーチェリーは道具をカスタマイズしていく楽しさもあります。どちらも年齢を問わず始めることができて長く続けることができるでしょう。

異なる発展を遂げてきた和弓と洋弓

和弓も洋弓もルーツは狩猟や戦いのための武器でしたが、時代の中でそれぞれ違う進化を見せました。弓を作るために手に入った材質と使う目的によって弓の長さがことなるというのも面白いですね。和弓は心身の鍛錬や礼儀作法を身に着けるための弓道に、洋弓は的への的中精度を競うスポーツへと確立されてオリンピック種目としても楽しまれています。古来から存在する弓は今でも私たちの生活に息づいているといえるでしょう。

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雑学

3分で簡単にわかる和弓と洋弓の違い!弓道とアーチェリーの違いも元アーチェリー選手ライターがわかりやすく解説

この記事では和弓と洋弓の違いについてみていきます。日本古来の弓を和弓と呼び、それに対して西洋にルーツを持つ弓を洋弓と呼ぶが、弓の長さと射ち方にもそれぞれ違いがあるみたいです。今回は和弓と洋弓の違いを確認しつつ、和弓を使う弓道と洋弓を使うアーチェリーの違いについて、元アーチェリー選手ライターの斉藤佳人と一緒に解説していきます。

ライター/斉藤佳人

お米農家、メカエンジニア、ロボット教室講師、スポーツトレーナーと複数の仕事をこなすマルチワーカー。全日本選手権に出場経験もある元アーチェリー選手。

和弓と洋弓の違い

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日本古来の弓を和弓と呼び、これに対して西洋にルーツを持つ弓を洋弓と呼びます。その一番の違いは弓の長さ。弓に使われる材質にもふれながらご紹介します。

和弓は日本古来の弓

和弓は日本古来の弓術に使われる弓で全長が2メートル以上もある、世界でも有数の長い弓です。江戸時代には七尺三寸(約221cm)が標準と定められました。そのほかにも半弓(長さ六尺三寸:約191cm)などの少し短い弓も。

和弓に使われる材質は一般的に真竹やハゼノキといった良くしなり反発力の強い素材が使われていました。ただし植物素材のため繰り返し矢を放つと折れやすいという性質があり、これを補うために弓の全長を長くして弓全体でのひずみを小さくする工夫がほどこされました。竹などの植物由来の材質で矢を強く遠くへ飛ばすことを目指したのが和弓。

和弓は弓の下からおよそ1/3の部分を持ち矢をつがえてるので一見すると上下でアンバランス。しかし片膝をついた姿勢でも弓が地面につくことなく矢を射つことができるというメリットがあります。和弓がとても長いのには理由があったのですね。

洋弓は西洋にルーツを持つ弓

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和弓に対して西洋にルーツを持つ弓が洋弓です。洋弓の長さはおよそ120cmから160cmであり人間の身長と同程度の長さとなっています。材質はイチイの木やニレの木が使われていて1本の木材から削り出して作られていたそう。また、動物の骨や金属と組み合わせて作られる場合もあり、高い弾性率と強度を持たせる工夫がされていました。

西洋は騎馬文化があり馬上からできるだけ早く矢を射つことが求められたため、弓は扱いやすさが重視されたそうです。弓のほぼ中心部を持ち矢を射つことも和弓とことなりますね。

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