この記事では「本醸造酒」と「純米酒」の違いについてみていきます。日本酒は種類が多く、何を選べばいいのかわからないという人も多いんじゃないか?違いはずばり醸造アルコールが添加されているかどうかのようですが、そもそも醸造アルコールとは何か、吟醸酒とはどう違うのかなど、調べてみるといろいろ興味深い点があるみたいです。今回はそんな2つの違いを、定義から確認しつつ、雑学マニアの田坂と一緒に解説していきます。

ライター/田坂バーシル

子供の頃から本の虫で、些細な事柄も調べずにはいられない性質。小説、漫画はもちろん、歴史、芸術、宗教、宇宙、アンダーグラウンドまで興味は尽きないようだ。今日も文字の大海原に驚きとときめきを求める雑学マニア。

「本醸造酒」と「純米酒」はどう違うの?

image by iStockphoto

お酒はお好きですか?ビールやワインなどお酒には色々な種類がありますが、せっかく美味しいお米と水の国にいるからには絶対に外せないのが日本酒です。

一時期は「日本酒離れ」という言葉も聞かれましたが、最近はまた日本酒の人気が静かに盛り上がってきているそうですよ。ただ日本酒には数多くの銘柄があり、なかなか自分好みのお酒を見つけられない、という人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、日本酒への理解を深めるべく日本酒の種類ごとにわかりやすく解説していきます。

「純米酒」は米・米麹・水だけで造られているもの「本醸造酒」はさらに醸造アルコールを加えて造られているものです。どちらにも良さがありますので、それぞれの特徴を知って美味しくお酒を楽しみましょう。

清酒とは?日本酒とは?

「清酒(せいしゅ)」とは海外産のものも含め、「米・米麹および水を主な原料として発酵させてこしたもの」を広く言います。その清酒のうち「日本酒」とは「原料の米に日本産米を用い、日本国内で醸造したもののみ」を指すのです。そして日本酒は原料や精米歩合などによって3種類8名称の「特定名称酒」と、それ以外の「普通酒」とに分けられます。

「特定名称酒」とは「本醸造酒」「純米酒」「吟醸酒」の3種類に分類された日本酒のこと。特定名称酒に含まれない「普通酒」は、比較的リーズナブルで日常のお酒として楽しまれることが多いお酒です。このように日本酒の種類は原料と製法で分類されているのですね。

\次のページで「「本醸造酒」:米・米麹・水、および醸造アルコールが原料の清酒」を解説!/

「本醸造酒」:米・米麹・水、および醸造アルコールが原料の清酒

本醸造酒は「米・米麹・水、および醸造アルコール」から造られる清酒。「醸造アルコール」とは純度の高い焼酎のことで、米の重量の10%まで添加されています。純米酒に近い香りや風味を持ちますが、後味がすっきりとした辛口のものが多い種類です。

本醸造酒の名称

本醸造酒は精米歩合と醸造方法によって「本醸造酒」「特別本醸造酒」に分けられています。

本醸造酒:精米歩合が70%以下で、香味や色沢が良好なもの。醸造アルコールを添加している。
特別本醸造酒:精米歩合が60%以下、または特別な醸造方法で造られたもので、香味と色沢が特に良好なもの。醸造アルコールを添加している。

「純米酒」:米・米麹・水のみが原料の清酒

純米酒は「米・米麹・水」のみから造られる清酒。醸造アルコールを添加しないため、米本来の旨みやコク、ふくよかな香りが楽しめます。口当たりや味がどっしりとした濃醇タイプのものが多く見られる種類です。

純米酒の名称

純米酒は精米歩合と醸造方法の違いによって「純米酒」「純米吟醸酒」「純米大吟醸酒」「特別純米酒」に分けられています。

純米酒:精米歩合には定めがない、香味と色沢が良好なもの。
純米吟醸酒:精米歩合が60%以下で、吟醸造りで造られたもので、固有の香味と色沢が良好なもの。
純米大吟醸酒:精米歩合が50%以下で、吟醸造りで造られたもので、固有の香味と色沢が特に良好なもの。
特別純米酒:精米歩合が60%以下、または特別な醸造方法で造られたもので、香味と色沢が特に良好なもの。

\次のページで「「吟醸酒」:米・米麹・水、および醸造アルコールを原料に、吟醸造りで造られた清酒」を解説!/

「吟醸酒」:米・米麹・水、および醸造アルコールを原料に、吟醸造りで造られた清酒

吟醸酒の原料は「米・米麹・水、および醸造アルコール(米の重量の10%未満)」となっていて本醸造酒と同じです。2つの違いは醸造方法。醪(もろみ)を造る段階で低温長時間発酵を行う「吟醸造り」という手法をとっているものが吟醸酒と呼ばれています。吟醸造りによって吟醸香と呼ばれるフルーティーな香りが生まれるのが特徴です。

吟醸酒の名称

吟醸酒は精米歩合によって「吟醸酒」「大吟醸酒」に分けられています。

吟醸酒:精米歩合が60%以下で、吟醸造りで造られたもので、固有の香味と色沢が良好なもの。醸造アルコールを添加している。
大吟醸酒:精米歩合が50%以下で、吟醸造りで造られたもので、固有の香味と色沢が特に良好なもの。醸造アルコールを添加している。

日本酒の豆知識

image by iStockphoto

知って納得の豆知識をご紹介します。

精米歩合とは?

お米をどれだけ磨いているかを示す数値です。食用として食べられているお米の場合、精米歩合は約90%。つまり、お米の表面を10%ほど磨いていることになります。精米歩合の数値が低いほど、たんぱく質や脂質など雑味の成分が多い米の外側がよく削られていることを意味していますよ。

醸造アルコールを添加した日本酒は悪酔いする?

醸造アルコールに対する悪いイメージは、戦後、お米が不足していた時代の「三倍増醸酒(三増酒)」が原因のようです。現在は不純物のほとんどない醸造アルコールを使用し、「醗酵をとめる」「酒質を淡麗にする」「香りを引き出す」「火落ちしにくくする」などの効用を期待して添加されています。

ですので醸造アルコールが添加された日本酒は「悪酔いする」「かさ増しされていて品質が悪い」などといった噂はまったく根拠のない話だそうです。醸造アルコール添加の歴史は古く、江戸時代初期には確立されていたといわれていますから、純米酒のみにこだわるのは日本酒の魅力を知る上でとてももったいないことなんですね。

\次のページで「日本酒のラベルの表示」を解説!/

日本酒のラベルの表示

日本酒のラベルをよく見ると、「山田錦100%使用」「原酒」などと表示されていることがありますよね。国税庁の清酒の製法品質表示基準による任意記載事項からこれらの意味がわかります。

(1)原料米の品種名
原料米の品種名は、当該原料米の使用割合(当該清酒の製造に使用した原料米の総使用量に占める割合をいう。以下同じ。)が50%を超える場合(複数の原料米の品種名を表示するときは、当該複数の原料米の合計の使用割合が50%を超える場合)に表示できるものとし、表示にあたっては、当該原料米の使用割合を併せて表示するものとする。
(2)清酒の産地名
清酒の産地名は、当該清酒の全部が当該産地で醸造(加水調整をする行為を含む。)されたものである場合に表示できるものとする。
(3)貯蔵年数
貯蔵年数(清酒を貯蔵容器に貯蔵した日の翌日からその貯蔵を終了した日までの年数をいう。)は、1年未満の端数を切り捨てた年数により表示するものとし、貯蔵年数の異なるものを混和した清酒である場合は、当該年数の最も短い清酒の年数をもって表示するものとする。
(4)原酒
原酒の用語は、製成後、加水調整(アルコール分1%未満の範囲内の加水調整を除く。)をしない清酒である場合に表示できるものとする。
(5)生酒
生酒の用語は、製成後、一切加熱処理をしない清酒である場合に表示できるものとする。
(6)生貯蔵酒
生貯蔵酒の用語は、製成後、加熱処理をしないで貯蔵し、製造場から移出する際に加熱処理した清酒である場合に表示できるものとする。
(7)生一本
生一本の用語は、単一の製造場のみで醸造した純米酒である場合に表示できるものとする。
(8)樽酒
樽酒の用語は、木製の樽で貯蔵し、木香のついた清酒(びんその他の容器に詰め替えたものを含む。)である場合に表示できるものとする。
(9)「極上」、「優良」、「高級」等品質が優れている印象を与える用語
「極上」、「優良」、「高級」等品質が優れている印象を与える用語は、同一の種別又は銘柄の清酒が複数ある場合において、香味及び色沢が特に良好であり、かつ、その旨を使用原材料、製造方法その他の客観的事項をもって説明できる清酒である場合に表示できるものとする。
なお、「特別」の用語は、「特別純米酒」及び「特別本醸造酒」に限定して使用することができるものとする。
(10)受賞の記述
受賞の記述は、公的機関(品質審査の実施方法が公開され、当該品質審査を毎年又は一定期間毎に継続して実施することとしている機関に限る。)から付与された賞である場合に、当該受賞した清酒と同一の貯蔵容器に収容されていた清酒について表示できるものとし、表示に当たっては、授賞機関及び受賞年を併せて表示するものとする。


(出典:国税庁 「清酒の製法品質表示基準」の概要)

ラベルに表示されている言葉の意味がわかると、パッケージからその日本酒の味がある程度想像できて選びやすくなりますね。その他にもこのような表示がされているものもあります。

生詰酒(なまづめしゅ):醸造後、貯蔵前に火入れをして、出荷前には火入れを行わない清酒。生酒同様にフレッシュな味わいがありますが、生酒よりも酸味は落ち着いていてまろやかです。
ひやおろし:生詰酒の中で、冬季に醸造したあと火入れをし、春から夏の間は劣化しないように涼しい酒蔵で貯蔵・熟成させ、気温の下がる秋に瓶詰めして出荷された清酒。秋を告げるお酒です。

日本酒を美味しく飲むためのポイント

image by iStockphoto

日本酒は飲用温度帯の広いお酒です。同じお酒でも温度を変えて飲むだけで、まるで違うお酒かと思うほど味わいを変化させることがあるんですよ。そこで特定名称酒を飲む時のおすすめの温度も少しだけご紹介します。あまり日本酒を飲んだことがないという人は、以下を参考にご自分の好みを見つけてみてくださいね。

本醸造酒:深い旨みと豊かな香りを持ち、淡麗さとまろやかさも持ち合わせたお酒。「冷や(常温)」はもちろん、銘柄にもよりますが少し冷やして「花冷え(10度前後)」や、ほんのり温かい「ぬる燗(40度前後)」にして飲むとすっきりとバランスの良い本醸造酒らしさが楽しめると思います。
純米酒:しっかりとしたコクと旨みを持つので、いろいろな料理と相性がよく食中酒に向いているお酒です。冷酒、冷や、燗酒と、さまざまな温度で楽しめるのも純米酒の特徴です。
吟醸酒:繊細な味とフレッシュで華やかな香りが特徴のお酒。すっきりと淡麗な味わいのものが多く、しっかり冷やして「雪冷え(5度前後)」で飲んでみてください。お燗にはあまり向いていませんが、冷やで飲むと香りよりも味わいが強く感じられるでしょう。

本醸造酒・吟醸酒と純米酒の違いは精米歩合と醸造アルコールの添加の有無!

ざっくりとまとめると、「本醸造酒と吟醸酒には醸造アルコールが添加される」「純米酒には醸造アルコールが添加されない」ということになります。また精米歩合によっても明確に分けられているのが「特定名称酒」だということがわかりました。美味しい日本酒を見つけたら、そのお酒の産地や銘柄だけではなく「本醸造酒か純米酒か」「純米吟醸酒か吟醸酒か」といったポイントも押さえておくと、好みのお酒を見つける手がかりになると思いますよ。最後になりますが、この記事で身近な疑問を解決するお手伝いができたら幸いです。

" /> 簡単でわかりやすい!「本醸造酒」と「純米酒」の違いとは?「吟醸酒」との関係や違いも雑学マニアが詳しく解説 – Study-Z
雑学

簡単でわかりやすい!「本醸造酒」と「純米酒」の違いとは?「吟醸酒」との関係や違いも雑学マニアが詳しく解説

この記事では「本醸造酒」と「純米酒」の違いについてみていきます。日本酒は種類が多く、何を選べばいいのかわからないという人も多いんじゃないか?違いはずばり醸造アルコールが添加されているかどうかのようですが、そもそも醸造アルコールとは何か、吟醸酒とはどう違うのかなど、調べてみるといろいろ興味深い点があるみたいです。今回はそんな2つの違いを、定義から確認しつつ、雑学マニアの田坂と一緒に解説していきます。

ライター/田坂バーシル

子供の頃から本の虫で、些細な事柄も調べずにはいられない性質。小説、漫画はもちろん、歴史、芸術、宗教、宇宙、アンダーグラウンドまで興味は尽きないようだ。今日も文字の大海原に驚きとときめきを求める雑学マニア。

「本醸造酒」と「純米酒」はどう違うの?

image by iStockphoto

お酒はお好きですか?ビールやワインなどお酒には色々な種類がありますが、せっかく美味しいお米と水の国にいるからには絶対に外せないのが日本酒です。

一時期は「日本酒離れ」という言葉も聞かれましたが、最近はまた日本酒の人気が静かに盛り上がってきているそうですよ。ただ日本酒には数多くの銘柄があり、なかなか自分好みのお酒を見つけられない、という人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、日本酒への理解を深めるべく日本酒の種類ごとにわかりやすく解説していきます。

「純米酒」は米・米麹・水だけで造られているもの「本醸造酒」はさらに醸造アルコールを加えて造られているものです。どちらにも良さがありますので、それぞれの特徴を知って美味しくお酒を楽しみましょう。

清酒とは?日本酒とは?

「清酒(せいしゅ)」とは海外産のものも含め、「米・米麹および水を主な原料として発酵させてこしたもの」を広く言います。その清酒のうち「日本酒」とは「原料の米に日本産米を用い、日本国内で醸造したもののみ」を指すのです。そして日本酒は原料や精米歩合などによって3種類8名称の「特定名称酒」と、それ以外の「普通酒」とに分けられます。

「特定名称酒」とは「本醸造酒」「純米酒」「吟醸酒」の3種類に分類された日本酒のこと。特定名称酒に含まれない「普通酒」は、比較的リーズナブルで日常のお酒として楽しまれることが多いお酒です。このように日本酒の種類は原料と製法で分類されているのですね。

\次のページで「「本醸造酒」:米・米麹・水、および醸造アルコールが原料の清酒」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: