この記事では嘱託社員とパート社員の違いについてみていきます。2つとも非正規労働者の雇用形態の1つです。違いはずばり雇用契約の内容や雇用までの経緯にあるようです。今回はそんな有期契約労働者の違いを契約社員とも比較しながら、高齢者雇用安定法との関係まで、現役OLライターyuko一緒に解説していきます。

ライター/yuko

工事会社9年勤務の現役OLライター。現職場でもさまざまな雇用形態の社員が在籍しており、日々ともに業務にあたっている。今回は社会人経験と法学部で学んだ知識を活かして丁寧に解説していく。

嘱託社員とパート社員の違いは雇用契約

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嘱託社員とパートタイム社員の違いは雇用契約にあります。簡単に説明すると、嘱託社員は明確に定められた法律がなく一般的には定年後の再雇用契約として用いられる雇用形態のことで、パート社員にはパートタイム労働法という法律によって定められた定義がある雇用形態のことです。ここからは契約社員とも比較しながら詳しく解説していきましょう。

嘱託社員:定年後の再雇用契約

嘱託社員の一般的な例として定年後の社員の再雇用が挙げられます。日本政府は現在段階的に定年年齢の引き上げを行っており、2013年に改定された高年齢者雇用安定法によって、定年の年齢を65歳未満に設定している企業は、65歳まで定年年齢を引き上げるか希望者を65歳まで継続雇用する制度を導入するか定年制の廃止を実施するか、いずれかを選択する必要が出てきました。2025年までは経過措置期間となっていますが、多くの企業が定年年齢の引き上げや再雇用制度の整備に着手していますね。

嘱託雇用の制度はこのような背景があり、定年後のセカンドキャリアの1つの選択肢として主流になってきました。法律で定められた定義がないため企業ごとにその扱いや待遇が異なる点が特徴です。

パート社員:パートタイム労働法

パート社員はパートタイム労働法で定められた労働者のこと。正社員に比べると1週間の所定労働時間が短い雇用形態で、アルバイト社員もこの中に含まれていますね。

嘱託社員が経験や知識を活かした仕事を任されるのに対して、パート社員は専門性はあまり高くない限定的な仕事を担う傾向があります。多くの場合、子育てや介護などを理由に所定労働時間を短く働きたい人が選択する雇用形態といえそうです。

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契約社員:非正規有期労働契約

契約社員とは有期契約労働者のことをさし非正規社員になるため、この点では嘱託社員も契約社員であるといえるでしょう。また契約社員とパート社員についても法的に違いの定めがないため、大きく括ってしまえばパート社員も嘱託社員も契約社員も有期契約労働者ということができます

パート社員や嘱託社員は出勤日を少なくしたり、1日の就労時間を短くするなど、フルタイムで働くことが一般的な契約社員に比べて労働時間が短く設定される傾向がありますね。

高年齢者雇用安定法と年金受給年齢

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定年後に嘱託社員として企業に再雇用される方が多くいる背景には、高年齢者雇用安定法の改定と年金受給年齢引き上げの兼ね合いがあるでしょう。ここからは嘱託社員に注目をしてくわしく解説していきます。

年金受給年齢と定年年齢の引き上げ

年金受給年齢は基本的には65歳。希望すれば60歳から繰り上げ受給も可能ですが、65歳を標準とすると1度に受給できる金額が少なくなり、その減額は生涯続くことになるんだそう。反対に65歳を超えても受給を希望せず、その後好きなタイミングで受給を開始できる繰り下げ受給を選択することも可能。この場合は生涯増額した金額で年金を受給することになりますね。

以前は年金受給年齢は60歳が標準でした。しかし受給年齢が65歳へ上がったことで60歳で定年退職をした場合、何もしなければ5年間無収入期間が生じることになってしまいます。このような背景から、60歳で定年退職しても仕事を続ける人が珍しくなくなってきたのです。

人生100年時代!継続雇用制度

高年齢者雇用安定法とは、少子高齢化においても活力ある経済社会を維持するために、働く意欲のある高齢者に活躍の場を整備することを目的とした法律です。2021年4月に一部改正され施行されています。以下に主な改正内容について引用しましょう。

\次のページで「正社員との待遇の違いは?」を解説!/

事業主は、
(1)70歳までの 定年の引上げ
(2)定年制 の廃止
(3)70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)
(4)70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
(5)70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
    a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
    b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業


のいずれかの措置を講ずるよう努めることとされています。

出典:(厚生労働省「高年齢者雇用安定法改正~70歳までの就業機会確保~」)

現在は事業者の努力義務になりますが、70歳までは働くことを希望すれば長年勤めてきた企業で働き続けることができる環境づくりを日本社会は目指しているということですね。そして、高年齢者雇用安定法からもわかるように60歳定年後も働く場を提供することが企業の努力義務となっています。

このような法改正や社会情勢を背景に、定年退職の年齢を上げるという企業もあれば、希望者に対し嘱託社員として再雇用し働く場を提供し続けるという企業の対策も活発になってきたのです。

正社員との待遇の違いは?

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パート社員や嘱託社員は正社員に比べると、仕事内容が限定的であり労働時間も短いことが想定されるため賃金は少ない傾向にあります。そのなかでは必ずしも労働者自身が、自らの仕事内容に合った待遇がなされているとは思えない状況があるのも事実です。ここからは「パートタイム・有期雇用労働法」にも触れながら、正社員との違いについて詳しくみていきましょう。

パートタイム・有期雇用労働法(「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)は(中略)パートタイム労働者や有期雇用労働者がその能力を一層有効に発揮することができる雇用環境を整備するとともに、多様な雇用形態・就業形態で働く人々がそれぞれの意欲や能力を十分に発揮し、その働きや貢献に応じた待遇を得ることのできる「公正な待遇の実現」を目指しています。

出典:(厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法のあらまし(令和4年5月版)」)

福利厚生や社会保険制度について

「パートタイム・有期雇用労働法」では同一労働同一賃金を掲げ、同じ会社内で同様の職についている労働者については、雇用形態の違いにかかわらず待遇に差を作ることを禁止しています。具体的には、基本給、賞与、各種手当、福利厚生、教育訓練などが該当項目になるんだそう。

仕事に対する責任の程度や転勤の有無などに違いがあるときは、同一労働ではないという見解がなされるという。したがって福利厚生については、企業によって正社員とパート社員、嘱託社員に差異が生じることもありますね。また、社会保険制度については一定の条件を満たしていればパート社員でも嘱託社員でも加入することが可能です。

\次のページで「賃金と有給休暇の支給について」を解説!/

賃金と有給休暇の支給について

賃金については正社員と比べて勤務時間が短かかったり業務が限定的になることから、パート社員も嘱託社員も少なくなる傾向です。しかし契約によって個人差はあるため一概に少なくなると断定することは難しいんだとか。

有給休暇の支給に関しては、一定の期間決まった労働時間勤務すれば支給されることになります。入社後6ヵ月後で支給されるようのが一般的ですが、嘱託社員で定年後継続雇用された場合はそのまま有給を保持することができるんだそう。有給休暇の支給には、勤務日数や労働時間によって次年度の付与日数が異なってくるため、短時間勤務形態の場合はフルタイムで勤務する社員に比べると年間の付与日数が少なくなりますね。

働く意欲のある人に働く場を提供する雇用形態

嘱託社員もパート社員も非正規有期雇用形態になりますが、労働意欲のある人に働く場を提供している点ではキャリアについて考える上での1つの選択肢として今後さらに重宝されていくでしょう。そして、法律での定めがない分企業による待遇の差が大きくなるため、雇用契約を結ぶ際にはしっかりと契約条件を確認をするようにしましょう。

ライフステージやキャリア、年齢やライフスタイルにあわせた雇用形態を選択していきたいですね。

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雑学

簡単でわかりやすい!嘱託社員とパート社員の違いとは?契約社員との違いや高齢者雇用安定法も現役OLライターが詳しく解説

契約社員:非正規有期労働契約

契約社員とは有期契約労働者のことをさし非正規社員になるため、この点では嘱託社員も契約社員であるといえるでしょう。また契約社員とパート社員についても法的に違いの定めがないため、大きく括ってしまえばパート社員も嘱託社員も契約社員も有期契約労働者ということができます

パート社員や嘱託社員は出勤日を少なくしたり、1日の就労時間を短くするなど、フルタイムで働くことが一般的な契約社員に比べて労働時間が短く設定される傾向がありますね。

高年齢者雇用安定法と年金受給年齢

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定年後に嘱託社員として企業に再雇用される方が多くいる背景には、高年齢者雇用安定法の改定と年金受給年齢引き上げの兼ね合いがあるでしょう。ここからは嘱託社員に注目をしてくわしく解説していきます。

年金受給年齢と定年年齢の引き上げ

年金受給年齢は基本的には65歳。希望すれば60歳から繰り上げ受給も可能ですが、65歳を標準とすると1度に受給できる金額が少なくなり、その減額は生涯続くことになるんだそう。反対に65歳を超えても受給を希望せず、その後好きなタイミングで受給を開始できる繰り下げ受給を選択することも可能。この場合は生涯増額した金額で年金を受給することになりますね。

以前は年金受給年齢は60歳が標準でした。しかし受給年齢が65歳へ上がったことで60歳で定年退職をした場合、何もしなければ5年間無収入期間が生じることになってしまいます。このような背景から、60歳で定年退職しても仕事を続ける人が珍しくなくなってきたのです。

人生100年時代!継続雇用制度

高年齢者雇用安定法とは、少子高齢化においても活力ある経済社会を維持するために、働く意欲のある高齢者に活躍の場を整備することを目的とした法律です。2021年4月に一部改正され施行されています。以下に主な改正内容について引用しましょう。

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