この記事では「浴衣」と「甚平」の違いについてみていきます。どちらも夏の和服というイメージがあるよな。一番の違いは1枚で着るか上下2枚に分かれているかのようですが、歴史や印象など、調べてみるといろいろ面白い点があるみたいです。今回はそんな2つの違いを、定義から確認しつつ、雑学マニアの田坂と一緒に解説していきます。

ライター/田坂バーシル

子供の頃から本の虫で、些細な事柄も調べずにはいられない性質。小説、漫画はもちろん、歴史、芸術、宗教、宇宙、アンダーグラウンドまで興味は尽きないようだ。今日も文字の大海原に驚きとときめきを求める雑学マニア。

「浴衣」と「甚平」はどう違うの?

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「浴衣」は着物の一種で裏地がなく丈の長い和服で、「甚平」は上衣と下衣に分かれていて動きやすくラフな和装。どちらも通気性がよく涼しい布地で作られているので、夏に着用されることが多い衣服です。それぞれの特徴を見ていきましょう。

「浴衣」:夏用の着物

浴衣は平安時代の貴族が蒸し風呂に入る際に着た麻の「湯帷子(ゆかたびら)」が原型。安土桃山時代には裸で湯船に入る習慣が生まれ、湯帷子をバスローブのように着て湯上がりに肌に残った水分を取るようになりました。その後江戸時代に木綿が普及すると庶民にも広がっていき、現在は夏に身につける外出着となっていますね。浴衣には以下のような特徴があります。

・丈が長く1枚で着る。
・袖に袂(たもと)がある。
・帯が必要。
・裸足に下駄を履く。
・老若男女関係なく着用できるが、男女で形が違う。

「甚平」:夏用のくつろぎ着

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「甚平」は主に男性や子供が着用する薄い布で作られた夏向けの和装で、比較的新しい着物です。元々は浴衣の袖と丈を詰めた湯上がり着・寝巻で、昭和40年頃までは膝が隠れる長さの上衣のみでしたが、現在は上下に分かれた形になっています。

上衣は帯を締めず、左右の付け紐で留める仕立てになっているので着付けが簡単。袖と身頃はタコ糸で編まれていて通気性がよく、袖や裾の絞りがないので楽な着心地です。男性と子どもの着る服という扱いでしたが、最近は女性用にデザインされた甚平も増えてきました。

元来室内着だったのですが、最近はお祭りのときなど屋外でも着ている人を見かけますね。 甚兵衛自体も様々な色や柄で作られるようになり、徐々に外出着として認知されてきています。ただ甚平にはまだラフなイメージがあり、半袖半ズボンなので子どもっぽい印象を受ける人も多いようです。

\次のページで「和服の豆知識」を解説!/

・半袖の上衣と、膝上丈の下衣(ズボン)に分かれている。
・筒袖で袂がない。
・帯は必要ない。
・大人も着られるが、子どもっぽい印象がある。

和服の豆知識

ちょっと役立つ豆知識をご紹介します。

「作務衣(さむえ)」とは何が違うの?

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作務衣は元々、禅宗の僧侶が作務(労働一般)を行うときの作業着だったそうです。作業着なので決まった形があったわけではなく、羽織ともんぺなどの作業を行う格好全般を指していました。作務衣は甚平と違い通年使用されるため長袖長ズボンです。また作業の邪魔にならないよう、袖と裾を絞れるようになっているものもあります。ゆったりとしたシルエットでありながら衿が付いているので清潔感がありますね。作務衣には男性用だけでなく女性用もありますよ。

作務衣は締め付けのない楽な着心地から一般の人の部屋着・普段着としても着用されていますが、元来和の作業着なので、そば打ちや陶芸、農作業など様々な職業の方が仕事着としても愛用しています。

現在も僧侶用の多くは木綿で作られていますが、一般用のものには化繊を用いたり、夏用に麻、冬用にキルティングや裏地がついているものなどもあって、デザインも多様になってきているようです。

和服の共通点:「右前」

ボタンのある洋服で身頃を見ると、男性は左が外側、女性は右が外側になっていますね。けれど和装では男女に違いはなく、どちらも左が外側になります。和装ではこれを「右前」と表現しますよ。これは自分から見て右側の衿が先に肌に触れるということです。浴衣も甚平も作務衣も、和装の服は全て右前。もし着付けの時に前がどちらかわからなくなってしまったら、「右手がさっと懐に入る」ほうだと覚えると間違えませんね。

なお、「左前」は生きている人の逆ということから、「死装束(亡くなった方に最後に着せる服)」の意味があるので注意しましょう。

\次のページで「浴衣の着こなし方」を解説!/

浴衣の着こなし方

何よりも大切なのは着付け。帯を締めて整える浴衣は、慣れないとすぐに着崩れてしまうので注意が必要です。夏の時期は美容院などで着付けてくれる所もありますし、動画投稿サイトなどには着付け解説動画がたくさんアップされていますので、それを見ながら自分で着付けてみるのも楽しいですね。

ポイントとしては女性は浴衣と帯の色合わせをすること、帯の位置を高くすること、そして「衣紋を抜く(衿の後ろを首から放して間をあけて着る)」ことです。男性は臍の下の位置で帯を締め、少し前下がりにすると素敵ですよ。

足元は素足に下駄を履くと涼しげでいいですね。さらにバッグは巾着や信玄袋にすると全体のまとまりが出てよいでしょう。

甚平の語源

甚平という名前は、「陣羽織(戦国時代に武将が具足の上にまとった羅紗の羽織)」が「甚兵衛羽織(下級武士などが着た木綿わた入れの袖なし羽織)」となり、それが民間にも広まって防寒用の胴着となって「甚平羽織」に、さらに夏用のくつろぎ着になり名前を省略して「甚平」となったようです。

ちなみに現世最大の魚類である「ジンベエザメ(ジンベイザメ)」の名前は、体にある白い斑点模様が甚兵衛羽織に似ていることから名付けられたそうですよ。

「浴衣」と「甚平」はTPOによって使い分けよう!

ざっくりとまとめると「浴衣は夏用の着物で老若男女着られる」「甚平は夏用の部屋着だが最近は外出着としても着られる」「作務衣は僧侶の作業着だが部屋着や仕事着としても一年中着られる」ということになります。パジャマやスウェットで遠出したりしないのと同じように、和服も時と場合を選んで選択する必要がありますね。でもあまり構えすぎずに気軽に和装を楽しめるといいですね。最後になりますが、この記事で些細な疑問を解決するお手伝いができたら幸いです。

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簡単でわかりやすい!「浴衣」と「甚平」の違いとは?「作務衣」との違いや着付けのポイントも雑学マニアが詳しく解説

この記事では「浴衣」と「甚平」の違いについてみていきます。どちらも夏の和服というイメージがあるよな。一番の違いは1枚で着るか上下2枚に分かれているかのようですが、歴史や印象など、調べてみるといろいろ面白い点があるみたいです。今回はそんな2つの違いを、定義から確認しつつ、雑学マニアの田坂と一緒に解説していきます。

ライター/田坂バーシル

子供の頃から本の虫で、些細な事柄も調べずにはいられない性質。小説、漫画はもちろん、歴史、芸術、宗教、宇宙、アンダーグラウンドまで興味は尽きないようだ。今日も文字の大海原に驚きとときめきを求める雑学マニア。

「浴衣」と「甚平」はどう違うの?

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「浴衣」は着物の一種で裏地がなく丈の長い和服で、「甚平」は上衣と下衣に分かれていて動きやすくラフな和装。どちらも通気性がよく涼しい布地で作られているので、夏に着用されることが多い衣服です。それぞれの特徴を見ていきましょう。

「浴衣」:夏用の着物

浴衣は平安時代の貴族が蒸し風呂に入る際に着た麻の「湯帷子(ゆかたびら)」が原型。安土桃山時代には裸で湯船に入る習慣が生まれ、湯帷子をバスローブのように着て湯上がりに肌に残った水分を取るようになりました。その後江戸時代に木綿が普及すると庶民にも広がっていき、現在は夏に身につける外出着となっていますね。浴衣には以下のような特徴があります。

・丈が長く1枚で着る。
・袖に袂(たもと)がある。
・帯が必要。
・裸足に下駄を履く。
・老若男女関係なく着用できるが、男女で形が違う。

「甚平」:夏用のくつろぎ着

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「甚平」は主に男性や子供が着用する薄い布で作られた夏向けの和装で、比較的新しい着物です。元々は浴衣の袖と丈を詰めた湯上がり着・寝巻で、昭和40年頃までは膝が隠れる長さの上衣のみでしたが、現在は上下に分かれた形になっています。

上衣は帯を締めず、左右の付け紐で留める仕立てになっているので着付けが簡単。袖と身頃はタコ糸で編まれていて通気性がよく、袖や裾の絞りがないので楽な着心地です。男性と子どもの着る服という扱いでしたが、最近は女性用にデザインされた甚平も増えてきました。

元来室内着だったのですが、最近はお祭りのときなど屋外でも着ている人を見かけますね。 甚兵衛自体も様々な色や柄で作られるようになり、徐々に外出着として認知されてきています。ただ甚平にはまだラフなイメージがあり、半袖半ズボンなので子どもっぽい印象を受ける人も多いようです。

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