この記事では「生長」と「成長」の違いについてみていきます。どちらも「せいちょう」と読み、意味も非常に似通っているがゆえに、これらの言葉の使い分けに迷う人もいて当然でしょう。今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

生長と成長の違い

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まずは両者のざっくりした違いを説明しましょう。成長生長どちらも「何かが育って大きくなること」を意味する言葉です。しかし、二つの言葉には微妙な違いがあります。

それは「生長」主に動物や植物といった生物が育ち、大きくなることを意味するのに対し、例えば経済が大きくなっていくことを「経済成長」と言うように、「成長」は生物だけではなく実際の物として存在すらしないものにも使われていることです。これら二つの言葉について、これからより詳しく説明していきます。

「生長」は生き物に対してだけしか使わない?

まず「生長」ですが、この言葉はさきほど言ったように主に生き物に対して使うとされている言葉です。しかし、絶対に生き物以外に使わないかといえば、そんなことはありません。

日本の古典文学を読んでいると、争いが大きくなったり、ものごとの性質が強くなっていくことを「生長」と表現している例もあるので、そういう点では昔は「成長」との明確な区別はなかったのかもしれませんね。ただ、現在では「生長」は「生き物に対してだけ使う」と説明されることもあるので、あくまでそういう前例があるとだけ思っていただいて結構です。

また、「生長」という単語を構成している漢字に着目すると「生」まれて「長」くなる、つまり伸びて大きくなるということなので、もともとあった物事が単に育って大きくなるのではなく、何かが生まれたり発生し、そこから大きくなっていくといったニュアンスをこめて使われることもあります。

「成長」は大きくなって変化していくこと

つづいて「成長」について説明しましょう。「成」の字には「物事が、ある状態に変化する」意味や「今までと違った形になる」といった意味があります。そのため「生長」のような「何かが生まれる」ようなニュアンスはなく、「物事が大きくなって変化していく」という意味合いがより強い言葉と言えるかもしれません。

植物には「生長」、動物には「成長」だった!

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辞書や国語辞典には、動物の体が育って大きくなることが「成長」で植物がのびて大きくなるのが「生長」と区別をしているものもあります。

「成」の字に「変化」や「違った形になる」という意味があることは説明しましたよね?ですが、植物が大きく育つというのは「形が変わる」というより単に伸びて長くなるといったイメージが強いからか、以前は文部省が定めた学術用語集において、植物編は「生長」動物編は「成長」という区別がされており、学校で使う教科書もそれを参考にして同じ区別をしていました。こうして両者の定義が一般に広まったのです。

\次のページで「今は植物・動物ともに「成長」」を解説!/

今は植物・動物ともに「成長」

しかし時が経ち、昭和31年(1956年)に学術用語集を改定するタイミングでどちらも意味が近いことから、動物・植物のどちらに対しても「成長」を使うことに統一されました。それ以降、学術用語集はもちろん、学校で使う教科書では植物・動物ともに「成長」の方で表記されています。ですので特別な理由でもない限り、今は植物に対しても「成長」を使うのが無難でしょう。

「成長」を英語ではなんと言う?

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次は英語での表現に関して見ていきましょう。英語でも動物や植物といった区別はなく、単純に生き物のサイズが大きくなる意味の成長を言うときは主に「grow」を使います。また、

Children grow up fast.
(子供の成長は早い。)

のように単なる「grow」でなく、「grow up」の場合では体格や大きさだけではなく精神面の発達をふくめた成長を意味していたり、人の能力や経済や産業、技術などの成長に対しては「develop」が使われるなど、英語においても、同じ「成長」でも微妙なニュアンスの違いを表現する言葉や言い方があります。

\次のページで「「成長」を使った方が伝わりやすい!」を解説!/

「成長」を使った方が伝わりやすい!

「生長」が今では主に動物や植物といった生物が育って大きくなることだけを意味するのに対し、「成長」は生物だけではなく、能力や経済などの目に見えないものにも使われている言葉です。しかし、学校の教科書などではこういった「せいちょう」の漢字表記は「成長」で統一されています。ですので自身で使う場合には「成長」を使った方がより多くの方に伝わりやすいでしょう。

英語の勉強には洋楽の和訳サイトもおすすめです。
" /> 簡単でわかりやすい!生長と成長の違いとは?植物に使うのはどっち?意味や使い方、英語表現も現役塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
雑学

簡単でわかりやすい!生長と成長の違いとは?植物に使うのはどっち?意味や使い方、英語表現も現役塾講師がわかりやすく解説

この記事では「生長」と「成長」の違いについてみていきます。どちらも「せいちょう」と読み、意味も非常に似通っているがゆえに、これらの言葉の使い分けに迷う人もいて当然でしょう。今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

生長と成長の違い

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まずは両者のざっくりした違いを説明しましょう。成長生長どちらも「何かが育って大きくなること」を意味する言葉です。しかし、二つの言葉には微妙な違いがあります。

それは「生長」主に動物や植物といった生物が育ち、大きくなることを意味するのに対し、例えば経済が大きくなっていくことを「経済成長」と言うように、「成長」は生物だけではなく実際の物として存在すらしないものにも使われていることです。これら二つの言葉について、これからより詳しく説明していきます。

「生長」は生き物に対してだけしか使わない?

まず「生長」ですが、この言葉はさきほど言ったように主に生き物に対して使うとされている言葉です。しかし、絶対に生き物以外に使わないかといえば、そんなことはありません。

日本の古典文学を読んでいると、争いが大きくなったり、ものごとの性質が強くなっていくことを「生長」と表現している例もあるので、そういう点では昔は「成長」との明確な区別はなかったのかもしれませんね。ただ、現在では「生長」は「生き物に対してだけ使う」と説明されることもあるので、あくまでそういう前例があるとだけ思っていただいて結構です。

また、「生長」という単語を構成している漢字に着目すると「生」まれて「長」くなる、つまり伸びて大きくなるということなので、もともとあった物事が単に育って大きくなるのではなく、何かが生まれたり発生し、そこから大きくなっていくといったニュアンスをこめて使われることもあります。

「成長」は大きくなって変化していくこと

つづいて「成長」について説明しましょう。「成」の字には「物事が、ある状態に変化する」意味や「今までと違った形になる」といった意味があります。そのため「生長」のような「何かが生まれる」ようなニュアンスはなく、「物事が大きくなって変化していく」という意味合いがより強い言葉と言えるかもしれません。

植物には「生長」、動物には「成長」だった!

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辞書や国語辞典には、動物の体が育って大きくなることが「成長」で植物がのびて大きくなるのが「生長」と区別をしているものもあります。

「成」の字に「変化」や「違った形になる」という意味があることは説明しましたよね?ですが、植物が大きく育つというのは「形が変わる」というより単に伸びて長くなるといったイメージが強いからか、以前は文部省が定めた学術用語集において、植物編は「生長」動物編は「成長」という区別がされており、学校で使う教科書もそれを参考にして同じ区別をしていました。こうして両者の定義が一般に広まったのです。

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