この記事では「腐っても鯛」について解説する。

端的に言えば「腐っても鯛」の意味は「駄目になっても価値があること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「腐っても鯛」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「腐っても鯛」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「腐っても鯛」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。 

「腐っても鯛」の意味は?

「腐っても鯛」には、次のような意味があります。

すぐれた価値のあるものは、いたんで駄目になったようでも、なお、その値打ちを保つということのたとえ。〔俳諧・毛吹草(1638)〕

出典:精選版 日本国語大辞典(小学館)「腐っても鯛」

この言葉は「優れたものは、駄目になってもまだ価値が保たれている」という意味のことわざです。

壊れたり時間が経ったりして価値がなくなるものはたくさんありますが、大切なのが「駄目になっても価値がある」ニュアンス。逆に言えば、流行の品が廃れてしまった、などという際には使いません。ブームが過ぎたら誰も見向きもしないようなものに対しては使うことができないのです。

なお、魚の「鯛」が使われていますが、食べ物以外の物品や形のないもの、たとえば人の才能などに対しても使うことが出来ます。そんな表現が似合うものにはどんなものがあるのか、想像しながら読み進めてみてくださいね。

「腐っても鯛」の語源は?

次に「腐っても鯛」の語源を確認しましょう。この言葉は特別な由来があると言うよりは「鯛」の持つイメージから成立したもののようです。「鯛」と言えば高級魚。「少しくらい痛んでしまっても、その価値は高い」というニュアンスでしょう。

実際に、現代よりも保存法が発達していなかった時代でも、鯛は他の魚と比べて腐りにくいと言われていたとも。「価値のある」魚であり、それだけに高価でもあったことは納得です。「鯛」という魚に対するこうした感覚が言葉を作ったと考えると面白いですね。

なお他には、「腐ったとしても骨が立派である(だから、飲み込んで喉に刺さると危険だ)」という意味で、「腐っても鯛の骨」という表現が変化したものという説もあるようです。身が腐ったとしても骨は残りますから、こちらもなるほどと思えないでしょうか。

由来を知ると意味も想像しやすく覚えやすくなるもの。どちらの説も一緒に覚えてしまいましょう。

\次のページで「「腐っても鯛」の使い方・例文」を解説!/

「腐っても鯛」の使い方・例文

「腐っても鯛」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・僕の通っている空手道場の師匠は七十歳を超えているけれど、腐っても鯛で、今でもしっかりした体と動作で指導を続けている。
・破産した没落貴族の末裔だと言われている彼の一家は、裕福ではなさそうなもののいつも礼儀正しく丁寧で、腐っても鯛ということがよくわかる。
・プロへの道は諦めてしまったけれど、腐っても鯛ということで、鍛えて身につけた技術や体格はなるべく維持できるように日々トレーニングを続けている。

「駄目になった・時間が経ってしまったけれど、良い物である」というニュアンスが伝わりますでしょうか。先に書いたように、一時的な流行が廃れたというのではなく「もともと価値がある」点はしっかり押さえましょう。

意味合いとしても、「落ちぶれてしまった」部分ではなく「今でも価値がある」部分に焦点が当たっている、どちらかと言えば褒め言葉です。ただしそれでも「全盛期よりは劣っている」ニュアンスも含まれることがあるため、なかなか複雑な意味合いにもなりえます。

「腐る」自体にあまり良い印象がないため、けなしているわけではなかったとしても、人に対して使う際には注意したいところ。事物に対してなら「古い建物などが一部破損したが、まだまだ趣がある」のように、それも含めていい物だという意味で使うと前向きになるでしょう。

「腐っても鯛」の類義語は?違いは?

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「腐っても鯛」の類義語は「破れても小袖(こそで)」を紹介します。

「破れても小袖」

これは「本当に質のいいものは、たとえ状態が悪くなっても本来の価値を失わない」という意味のことわざです。ここで言われている「小袖(こそで)」とは和服のもととなった日本の伝統的な衣装のこと。

高価な「絹」で作られていたために、破れても絹の良さを失っていない、という意図で言われています。当時の人たちの価値観がわかって面白い表現と言えますね。ただ、「鯛」ほどは現代の我々には馴染みがないかもしれません。「小袖」について調べてみるのもおすすめです。

\次のページで「「腐っても鯛」の対義語は?」を解説!/

母の実家にたくさんあった古い着物は誰も着ずにいたんでしまっていたが、今では重要な文化財として博物館に飾られて、まさに破れても小袖というものだ。

「腐っても鯛」の対義語は?

「腐っても鯛」の対義語は「麒麟も老いては騾「騏驎も老いては駑馬に劣る(きりんもおいてはどばに劣る)」を紹介します。

「騏驎も老いては駑馬に劣る」

これは「どんなに優れた人であっても、年を取ってしまえば普通の人にも劣ってしまう」という意味のことわざです。中国の歴史書『戦国策』で、弁論家が王を戒める際に語ったという逸話に登場しています。

「騏驎(きりん)」は「一日に千里も走るという素晴らしい馬」を指す言葉で、中国の幻獣「麒麟」とは漢字も少し異なっています(辞書によっては同一とも書かれています)。難しい漢字のため試験で問われることはまずないでしょうが、余裕があれば覚えてしまいましょう。

騏驎も老いては駑馬に劣るで、若い頃はあんなに活躍したあの政治家も年を取ってからは失言や暴言でみんなの期待を裏切ってばかりだ。

\次のページで「「腐っても鯛」の英訳は?」を解説!/

「腐っても鯛」の英訳は?

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「腐っても鯛」の英訳は「A good horse become never a jade」で表すことが出来ます。

「A good horse become never a jade」

これは直訳すれば「名馬は決して駄馬にならない」という意味になるフレーズです。対義語で紹介した「騏驎も老いては駑馬に劣る」とこちらは真逆の意味になる表現で、日本語、中国語、英語とで似た表現があることがわかりますね。

さらに「jade」は「やせ馬」を指す名詞であるとともに「疲れる」を意味する動詞にもなる面白い単語です。英語圏でも馬は移動のために非常に重宝されていた歴史があるため、馬に関する表現がたくさんあるのでしょう。自分なりに調べてみるのも勉強になりますよ。

The teacher next door is old but knowledgeable, It is just a good horse become never a jade.
隣家の先生は年老いてなお博識で、まさに腐っても鯛だ。

「腐っても鯛」を使いこなそう

この記事では「腐っても鯛」の意味・使い方・類語などを説明しました。「本来的な価値は残っている、変わらない」というニュアンスで、褒め言葉として使える表現でした。

記事の中で「腐っても鯛の骨」という言い方があることも紹介しましたが、こちらの言い方だとより「芯が残っている」意味合いが出せそうです。自身にとって「腐っても鯛」と思えるような「良い物」には、どんなものがあるでしょうか。ぜひ考えてみてくださいね。

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【ことわざ】「腐っても鯛」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「腐っても鯛」について解説する。

端的に言えば「腐っても鯛」の意味は「駄目になっても価値があること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「腐っても鯛」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「腐っても鯛」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「腐っても鯛」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。 

「腐っても鯛」の意味は?

「腐っても鯛」には、次のような意味があります。

すぐれた価値のあるものは、いたんで駄目になったようでも、なお、その値打ちを保つということのたとえ。〔俳諧・毛吹草(1638)〕

出典:精選版 日本国語大辞典(小学館)「腐っても鯛」

この言葉は「優れたものは、駄目になってもまだ価値が保たれている」という意味のことわざです。

壊れたり時間が経ったりして価値がなくなるものはたくさんありますが、大切なのが「駄目になっても価値がある」ニュアンス。逆に言えば、流行の品が廃れてしまった、などという際には使いません。ブームが過ぎたら誰も見向きもしないようなものに対しては使うことができないのです。

なお、魚の「鯛」が使われていますが、食べ物以外の物品や形のないもの、たとえば人の才能などに対しても使うことが出来ます。そんな表現が似合うものにはどんなものがあるのか、想像しながら読み進めてみてくださいね。

「腐っても鯛」の語源は?

次に「腐っても鯛」の語源を確認しましょう。この言葉は特別な由来があると言うよりは「鯛」の持つイメージから成立したもののようです。「鯛」と言えば高級魚。「少しくらい痛んでしまっても、その価値は高い」というニュアンスでしょう。

実際に、現代よりも保存法が発達していなかった時代でも、鯛は他の魚と比べて腐りにくいと言われていたとも。「価値のある」魚であり、それだけに高価でもあったことは納得です。「鯛」という魚に対するこうした感覚が言葉を作ったと考えると面白いですね。

なお他には、「腐ったとしても骨が立派である(だから、飲み込んで喉に刺さると危険だ)」という意味で、「腐っても鯛の骨」という表現が変化したものという説もあるようです。身が腐ったとしても骨は残りますから、こちらもなるほどと思えないでしょうか。

由来を知ると意味も想像しやすく覚えやすくなるもの。どちらの説も一緒に覚えてしまいましょう。

\次のページで「「腐っても鯛」の使い方・例文」を解説!/

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