この記事では人と人間の違いについてみていきます。「人間」は「人」に「間」がついた言葉。どちらも同じものを指している印象があるよな。じつは、この2つの言葉は生物学での定義が違う。今回はそんな似ている2つの言葉の違いを、大学で生物学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

生物学をこよなく愛するライター。大学の研究室で「生態学」を学び、卒論を制作した。「生物の華麗なる生き様」をお届けすることがモットー。

人と人間の大まかな定義

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はじめに「人」と「人間」の大まかな違いについて確認しましょう。この2つの言葉は、指し示すものの範囲が異なります。よってそれぞれに特徴的な用途が存在するのです。

生物学的な意味をもつ「人」

「人」は必ずしも私たちのことを指す言葉ではありません。生物学上ホモ・サピエンスに近い、化石人類を含めて「人」という表現が用いられます。たとえばアウストラロピテクスなどの猿人は、同じくヒト科チンパンジーによく似た頭蓋骨をもつ動物。ですが猿人は私たちより近い生き物であるため、「人に似た猿」ではなく広義の「人」として扱われるのです。

社会性を重んじる「人間」

先ほどの「人」のあとに関係性を示す「間」を加えると「人間」になります。この「人間」は私たちの高度な社会性に重きを置いた言葉です。図鑑の分類上の「人」とは違い宗教や哲学など人文学の観点が含まれています。

そのため「人間」が示す範囲は、しばしば各人の思想によって変化するのです。この記事では人と人間の比較を行うため、生物学と歴史学の観点を採用人間だけがもつとされる社会性について掘り下げていきます。

\次のページで「人にはない人間の具体的な特徴」を解説!/

人にはない人間の具体的な特徴

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人と人間の大きな違いはその社会性の規模です。人間はより高度な社会性をもつとされます。ここでは人間だけがもつ3つの特徴についてみていきましょう。

その1.生物学上の分類

かつては私たち以外にも、猿人や原人、旧人などさまざまな人が存在しました。この「人」生物学上、ヒト科のなかのヒト亜族に分類される動物の総称です。そのなかで唯一生き残ったホモ・サピエンスのみが高度な社会である文明を築き、自らを「人間」と呼んでいます。

その2.言語能力

人間の社会を支えているのは彼らの言語です。脳と声帯が発達したホモ・サピエンスは、話し言葉を使えるようになりました。そのため人間の集団は、会話によって狩猟・農業を円滑に行うのです。

さらに人間は文字を利用することで、より複雑な社会を作り上げています。最古の文字は古代シュメール人が発明した楔形文字文字の発明により、法律や税などおびただしい数の情報を正しく後世に伝えられるようになりました。

その3.集団の規模

人間の社会は、とりわけ大きな集団からなります。これは先ほどの言語能力だけでは説明できません。人類学者のロビン・ダンバーによると、本来人が団結できる数の限界は150人程度。この150人というのは、うわさ話を用いて結束した集団での数字です。しかし私たち人間は国家や法律など、抽象的なもの信じることでより大きな集団を維持しています。

人間の恐るべき能力

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ここでは「人」の中で、唯一「人間」を自称するホモ・サピエンスがもつ能力についてさらに掘り下げます。私たち「人間」の繁栄の成り立ちをみていきましょう。

\次のページで「高度な学習能力」を解説!/

高度な学習能力

じつは人間の幼児はすべて、未熟な状態で誕生しています。なぜなら二足歩行を行うホモ・サピエンスの産道は、四足動物のものに比べて細いからです。結果として私たち親離れは、ほかの動物よりも遅くなります。そのかわりに人間の脳生まれた後も成長し、多くの言葉や知識を学ぶことができるのです。

環境への適応力

私たち人間は地球上のいたる所に生息する生き物です。本来ホモ・サピエンスが生息していた環境はアフリカ大陸のサバンナ。ですが移動手段と衣類を活用することで、北極圏や離島など新しい環境に進出・適応しました。その結果、人間だけでなくその活動にともなう生物も至る所で繁栄ゴキブリ・ドブネズミ・チリダニ世界中でみられる生き物として知られています。

私たちはみんな「変な生き物」

私たちホモ・サピエンスは特殊な動物です。かつて存在したほかの「人」と比べてもその異質さは際立っています。その結果高度な社会をつくり、現在も繁栄しているのです。世界にはさまざまな人間観があります。「変な生き物」どうしお互いを尊重して、より良い社会を目指したいところですね。

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雑学

簡単でわかりやすい!人と人間の違いとは?生物学の観点から理系ライターが詳しく解説

この記事では人と人間の違いについてみていきます。「人間」は「人」に「間」がついた言葉。どちらも同じものを指している印象があるよな。じつは、この2つの言葉は生物学での定義が違う。今回はそんな似ている2つの言葉の違いを、大学で生物学を専攻したライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

生物学をこよなく愛するライター。大学の研究室で「生態学」を学び、卒論を制作した。「生物の華麗なる生き様」をお届けすることがモットー。

人と人間の大まかな定義

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はじめに「人」と「人間」の大まかな違いについて確認しましょう。この2つの言葉は、指し示すものの範囲が異なります。よってそれぞれに特徴的な用途が存在するのです。

生物学的な意味をもつ「人」

「人」は必ずしも私たちのことを指す言葉ではありません。生物学上ホモ・サピエンスに近い、化石人類を含めて「人」という表現が用いられます。たとえばアウストラロピテクスなどの猿人は、同じくヒト科チンパンジーによく似た頭蓋骨をもつ動物。ですが猿人は私たちより近い生き物であるため、「人に似た猿」ではなく広義の「人」として扱われるのです。

社会性を重んじる「人間」

先ほどの「人」のあとに関係性を示す「間」を加えると「人間」になります。この「人間」は私たちの高度な社会性に重きを置いた言葉です。図鑑の分類上の「人」とは違い宗教や哲学など人文学の観点が含まれています。

そのため「人間」が示す範囲は、しばしば各人の思想によって変化するのです。この記事では人と人間の比較を行うため、生物学と歴史学の観点を採用人間だけがもつとされる社会性について掘り下げていきます。

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