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アメリカの象徴「アンクル・サム」とはどんな人物?生まれた背景や意味を元大学教員が簡単にわかりやすく解説

よぉ、桜木建二だ。アンクル・サムって知っているか?白髪で白髭の生えた初老の男性だ。アメリカ合衆国政府のシンボル的なキャラクターとして、絵画やポスターにたびたび登場する。ただ、どんな経緯で生まれたのかは謎に包まれているんだ。

そこで今回は、アメリカを体現すると言われるアンクル・サムの起源やその展開について、世界史に詳しいライターひこすけと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/ひこすけ

アメリカの歴史と文化を専門とする元大学教員。アメリカが帝国主義の名のもとに勢力拡大していく様を体現するアンクル・サムに興味を持ち、気になることを調べてみた。

アンクル・サムはどうやって生まれた?

image by PIXTA / 38626942

アンクル・サムは、新聞の政治風刺漫画などに、アメリカの擬人化として登場します。アンクル・サムがかぶっているのは、星条旗を思わせる星柄のシルクハット。ジャケットは紺色で、赤い蝶ネクタイをしています。紅白縦縞のズボンをはいて星条旗そのもの。しかし、その起源ははっきりとは分かりません。

アンクル・サムが意味するのはアメリカ合衆国

アンクル・サムを英語にするとUncle Sam。それを短縮するとU.S.となります。ここからUnited Statesのシンボルと考えられました。とはいえその起源は不透明。諸説ありますが、濃厚なのは米英戦争に起源があるという説です。

米英戦争中、アメリカ陸軍にサミュエル・ウィルソンという人物が肉を卸していました。その男性のニックネームが「アンクル・サム」。彼は肉にアメリカ合衆国を意味するU.S.という焼印を押していました。それが起源とされています。

アメリカ合衆国政府のお墨付き

アメリカを象徴する人物であるためアンクル・サムは何者なのかは大事な問題です。そこでアメリカ合衆国議会は、1961年9月15日にサミュエル・ウィルソンが起源であるという決議を採択。この説はお墨付きを得ました。

ウィルソンが生まれた地であるマサチューセッツ州アーリントンには、彼のモニュメントが建造されています。ただ、あくまでサミュエル・ウィルソンをモデルとする説は言い伝え。本当はどういう経緯で生まれたのかは、歴史資料などで裏付けられているわけではありません。

アンクル・サムの図像はさまざまに存在していました。その姿はどことなく似ているものの、ぜんぶ別人。アメリカの理想の姿というハードルの高さもあって、どれがいちばん適切なのか論争が続けられてきました。

最終的に最高の理想とされたのがジェームズ・モンゴメリー・フラッグのアンクル・サム。どうしてそこまで国家の擬人化が重視されたのかと言うと、アメリカが移民の国だったからでしょう。さまざまなルーツを持つ国民をひとつにまとめるためひとつの人物像が必要とされたのです。

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米英戦争の前までは、アメリカ合衆国のシンボルは別のキャラだった。その名もブラザー・ジョナサン。しばらくふたりは共存していたが、南北戦争のあとにはウィルソン一択。さらに南北戦争の英雄エイブラハム・リンカーンにも似せて、外見が形作られたようだ。

アンクル・サムのモデル、サミュエル・ウィルソンとは?

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By Boris Karpachev, en:User:BCarpaccio (uploaded to the English Wikipedia at 23:48 on January 31, 2006, description page here) – Self-made by Boris Karpachev at Oakwood Cemetery of Troy, NY. Uploaded from enwiki: en:Image:Uncle Sam Wilson’s grave.JPG, Public Domain, Link

サミュエル・ウィルソンはマサチューセッツ州アーリントン生まれ。ウィルソン家はボストン最古の家系のひとつとされています。つまりサミュエル・ウィルソンは、アメリカ入植の最初期の家系がルーツの人物と言えるでしょう。

\次のページで「ニューヨーク州の入植者であるサミュエル・ウィルソン」を解説!/

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