
そこで今回は、アメリカを体現すると言われるアンクル・サムの起源やその展開について、世界史に詳しいライターひこすけと一緒に解説していきます。
- アンクル・サムはどうやって生まれた?
- アンクル・サムが意味するのはアメリカ合衆国
- アメリカ合衆国政府のお墨付き
- アンクル・サムのモデル、サミュエル・ウィルソンとは?
- ニューヨーク州の入植者であるサミュエル・ウィルソン
- サミュエル・ウィルソンの伝説化
- フラッグによる風刺画のアンクル・サム
- 第一次世界大戦のシンボルアンクル・サム
- ポスターの達人 ジェームズ・モンゴメリー・フラッグ
- アンクル・サムが登場する歴史的な出来事
- ハワイ併合のアンクル・サム
- 中国を分割するアンクル・サム
- アンクル・サムと並ぶ擬人化、コロンビアと自由の女神
- 第一次世界大戦のポスターに登場するコロンビア
- 自由の女神も国の擬人化
- アンクル・サムはアメリカそのものを体現
この記事の目次

ライター/ひこすけ
アメリカの歴史と文化を専門とする元大学教員。アメリカが帝国主義の名のもとに勢力拡大していく様を体現するアンクル・サムに興味を持ち、気になることを調べてみた。
アンクル・サムはどうやって生まれた?

アンクル・サムは、新聞の政治風刺漫画などに、アメリカの擬人化として登場します。アンクル・サムがかぶっているのは、星条旗を思わせる星柄のシルクハット。ジャケットは紺色で、赤い蝶ネクタイをしています。紅白縦縞のズボンをはいて星条旗そのもの。しかし、その起源ははっきりとは分かりません。
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アンクル・サムが意味するのはアメリカ合衆国
アンクル・サムを英語にするとUncle Sam。それを短縮するとU.S.となります。ここからUnited Statesのシンボルと考えられました。とはいえその起源は不透明。諸説ありますが、濃厚なのは米英戦争に起源があるという説です。
米英戦争中、アメリカ陸軍にサミュエル・ウィルソンという人物が肉を卸していました。その男性のニックネームが「アンクル・サム」。彼は肉にアメリカ合衆国を意味するU.S.という焼印を押していました。それが起源とされています。
アメリカ合衆国政府のお墨付き
アメリカを象徴する人物であるためアンクル・サムは何者なのかは大事な問題です。そこでアメリカ合衆国議会は、1961年9月15日にサミュエル・ウィルソンが起源であるという決議を採択。この説はお墨付きを得ました。
ウィルソンが生まれた地であるマサチューセッツ州アーリントンには、彼のモニュメントが建造されています。ただ、あくまでサミュエル・ウィルソンをモデルとする説は言い伝え。本当はどういう経緯で生まれたのかは、歴史資料などで裏付けられているわけではありません。
アンクル・サムの図像はさまざまに存在していました。その姿はどことなく似ているものの、ぜんぶ別人。アメリカの理想の姿というハードルの高さもあって、どれがいちばん適切なのか論争が続けられてきました。
最終的に最高の理想とされたのがジェームズ・モンゴメリー・フラッグのアンクル・サム。どうしてそこまで国家の擬人化が重視されたのかと言うと、アメリカが移民の国だったからでしょう。さまざまなルーツを持つ国民をひとつにまとめるためひとつの人物像が必要とされたのです。
アンクル・サムのモデル、サミュエル・ウィルソンとは?
By Boris Karpachev, en:User:BCarpaccio (uploaded to the English Wikipedia at 23:48 on January 31, 2006, description page here) – Self-made by Boris Karpachev at Oakwood Cemetery of Troy, NY. Uploaded from enwiki: en:Image:Uncle Sam Wilson’s grave.JPG, Public Domain, Link
サミュエル・ウィルソンはマサチューセッツ州アーリントン生まれ。ウィルソン家はボストン最古の家系のひとつとされています。つまりサミュエル・ウィルソンは、アメリカ入植の最初期の家系がルーツの人物と言えるでしょう。
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