この記事では佩刀と帯刀ということばの違いについてみていきます。どちらも刀を身につける際に使うことばですが、いまいち違いがわからないという人も多いんじゃないか?ですが、2つのことばには明確な使い分けの基準がある。今回はそんな佩刀と帯刀の違いを、太刀と打刀の違いもあわせて、刀剣大好きライターのかみかわかなえと一緒に解説していきます。

ライター/かみかわかなえ

刀剣大好きライター。刀剣や武将にハマり地元の博物館や歴史的名所にせっせと足を運んでいる。推し刀剣は日光一文字。

佩刀と帯刀の違いは?

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佩刀(はいとう)と帯刀(たいとう)は、刀を持ち歩くこと、または身につけている刀そのものを指すことばです。使われるシチュエーションや語感もよく似ているため、違いがわかりにくいですよね。しかし、この2つのことばには明確な使い分けの基準があります。それぞれにどんな意味があるのかを確認して、しっかりと使い分けられるようになりましょう!

佩刀ってなに?

「佩刀する」とは、ひもを使って刀を腰の左側で水平につるし、持ち歩くことをいいます。佩く(はく)という言い方もされますね。こちらは、主に太刀を持ち歩く際の方法です。体と反対側の外になる面を佩表(はきおもて)と呼びます。刀には銘(めい・作者である刀工の名前)を刻むことがあり、基本的には佩表へと銘が刻まれました。

帯刀ってなに?

「帯刀する」とは、刀を腰の左側の帯に差し、持ち歩くことをいいます。こちらは、主に打刀や脇差を持ち歩く際の方法です。太刀と打刀の違いについては、後ほど詳しくご紹介しますね。帯刀する場合も同様に、体と反対側の外になる面が刀の表側。帯刀される刀の場合は差表(さしおもて)と呼びます。銘が刻まれるのは差表です。

それぞれの身につけ方は?

太刀の拵(こしらえ・鞘や柄といった外装のこと)には、ひもと刀をつなぐための「帯執・帯取(おびとり)」というでっぱった部分があります。この帯執と「太刀緒(たちお)」や「太刀紐(たちひも)」と呼ばれるひもをつなぎ、腰にひもを巻きつけて刀が腰の左側にくるようにつるすと太刀を佩刀することができますよ。

一方、打刀を帯刀する場合は、体に巻いた「角帯」(かくおび・男性用の帯の一種)の間に刀を差し込みます。そして下緒(さげお)とよばれるひもを鞘と帯に絡めるのですが、これは鞘が帯から抜けないようにするため。こちらも必ず腰の左側に固定します。

\次のページで「太刀と打刀の違いは?」を解説!/

太刀と打刀の違いは?

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佩刀と帯刀はそれぞれ違った刀の持ち運び方であるということがわかりました。持ち運び方に差が出る理由は、持ち運ばれる刀自体の特徴や使い方に差があるためです。続いて、太刀と打刀の違いについて見ていきましょう。

違いその1.長さ

打刀は、江戸時代にその長さが決められています。規定された長さよりも長いものは、決まりに合わせるために「磨上げ(すりあげ)」が行われました。磨上げとは、刀身のうち柄におさまっている「茎(なかご)」という部分を切り詰め、刀を短くする作業です。

一方、太刀の長さについては決まりが設けられていません。一般的には打刀よりも長いものが多い半面、例外も多くあり、長さだけで打刀と太刀とを見分けることは困難です。

太刀には短めの小太刀(こだちから)長めの大太刀(おおだち)まで、様々な長さのものが存在しています。大太刀は大きすぎて佩刀できず、背に担いだり、従者に持たせて鞘から抜いたりしなければならないものもあったとか。武器としての役割に留まらず、神社に奉納される大太刀も多かったようです。

違いその2.反り

続いて、太刀と打刀の反りの違いについて見ていきましょう。反りの違いには、それぞれが活躍した時期の戦い方が強く影響を及ぼしています。

太刀は打刀に比べると反りが深い刀です。太刀が活躍した時期は、馬に乗った戦闘が盛んにおこなわれていました。当時の太刀は手元付近での反りが強く、切っ先に向かうにしたがって直線的になっていく「腰反り(こしぞり)」という形状。馬上での抜刀のしやすさや、敵に突き刺して戦う際の扱いやすさに優れていたと言われています。また、反りを深くすることで馬のお尻に鞘の先端が当たることを防いでいました。

それに対し、打刀は太刀に比べると反りが浅く、軽い刀です。打刀が活躍した時期は、馬よりも徒歩で戦う地上戦が主流。反りが強くて長い太刀は鞘から抜きにくく、素早さの求められる集団での接近戦には適していなかったんですね。

違いその3.時代

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太刀が用いられた時期は、平安時代後期から室町時代中頃まで。打刀が主流となったのは室町時代後期以降です。江戸時代に入ると、打刀と脇差の「大小(だいしょう)」を差すことが武士の正装とされました。

違いその4.向き

博物館や美術館に展示されている刀剣をよく見てみると、刃が上になっているものと下になっているものがあります。これは刀によって表側が異なるため。太刀を佩刀する際は、刃を下にします。これにならい、博物館などで展示される太刀は刃が下になるように置かれることが多いですね。

一方、打刀を帯刀する際は、刃を上にします。同じように、博物館などで展示される打刀は刃が上になるように置かれることがほとんど。

ただし、一部例外もあります。刀の流派によって銘が表側に切られていない場合や、刀の裏に見どころがある場合は逆向きに置かれることも。また、大太刀を展示する場合は、刀自体の重さで刃が割れてしまうことを防ぐために刃を上にすることもあるようです。

\次のページで「それぞれの見分け方は?」を解説!/

それぞれの見分け方は?

ここまで、太刀と打刀の違いについて見てきました。それぞれのポイントを復習し、2つの刀をしっかり見分けられるようになりましょう!

<太刀>
・長い
・反りが深い
・古い時代に使われた
・刃を下にして置かれている
・腰の左側で体の外側に銘がくるようにしたとき、刃が下になる(=佩表)

<打刀>
・短い
・反りが浅い
・新しい時代に使われた
・刃を上にして置かれている
・腰の左側で体の外側に銘がくるようにしたとき、刃が上になる(=差表)

ただし、しつこいようですがこれらすべてのポイントに例外が存在しています。1つの要素から決めつけず、総合的に判断すると正しく見分けられる可能性が高くなりますよ。

刀剣の種類によって身につけ方が変わる

今回は、佩刀と帯刀ということば・身につけ方の違いに加え、太刀と打刀の差についてもご紹介しました。戦い方の変化によって刀の使われ方も変化し、それぞれに適した身につけ方をされているのだということがおわかりいただけたかと思います。

刀剣に関することばはたくさんありますが、1つ知るとまたどんどんと疑問が湧いてきませんか?そうして調べていくうちに、新たな刀剣の魅力を発見できるはず。せっかく出会った刀剣の世界、ぜひこれからも満喫してください!

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3分でわかる佩刀と帯刀の違い!刀を佩くってなに?向きの違いは?刀剣大好きライターが簡単にわかりやすく解説

この記事では佩刀と帯刀ということばの違いについてみていきます。どちらも刀を身につける際に使うことばですが、いまいち違いがわからないという人も多いんじゃないか?ですが、2つのことばには明確な使い分けの基準がある。今回はそんな佩刀と帯刀の違いを、太刀と打刀の違いもあわせて、刀剣大好きライターのかみかわかなえと一緒に解説していきます。

ライター/かみかわかなえ

刀剣大好きライター。刀剣や武将にハマり地元の博物館や歴史的名所にせっせと足を運んでいる。推し刀剣は日光一文字。

佩刀と帯刀の違いは?

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佩刀(はいとう)と帯刀(たいとう)は、刀を持ち歩くこと、または身につけている刀そのものを指すことばです。使われるシチュエーションや語感もよく似ているため、違いがわかりにくいですよね。しかし、この2つのことばには明確な使い分けの基準があります。それぞれにどんな意味があるのかを確認して、しっかりと使い分けられるようになりましょう!

佩刀ってなに?

「佩刀する」とは、ひもを使って刀を腰の左側で水平につるし、持ち歩くことをいいます。佩く(はく)という言い方もされますね。こちらは、主に太刀を持ち歩く際の方法です。体と反対側の外になる面を佩表(はきおもて)と呼びます。刀には銘(めい・作者である刀工の名前)を刻むことがあり、基本的には佩表へと銘が刻まれました。

帯刀ってなに?

「帯刀する」とは、刀を腰の左側の帯に差し、持ち歩くことをいいます。こちらは、主に打刀や脇差を持ち歩く際の方法です。太刀と打刀の違いについては、後ほど詳しくご紹介しますね。帯刀する場合も同様に、体と反対側の外になる面が刀の表側。帯刀される刀の場合は差表(さしおもて)と呼びます。銘が刻まれるのは差表です。

それぞれの身につけ方は?

太刀の拵(こしらえ・鞘や柄といった外装のこと)には、ひもと刀をつなぐための「帯執・帯取(おびとり)」というでっぱった部分があります。この帯執と「太刀緒(たちお)」や「太刀紐(たちひも)」と呼ばれるひもをつなぎ、腰にひもを巻きつけて刀が腰の左側にくるようにつるすと太刀を佩刀することができますよ。

一方、打刀を帯刀する場合は、体に巻いた「角帯」(かくおび・男性用の帯の一種)の間に刀を差し込みます。そして下緒(さげお)とよばれるひもを鞘と帯に絡めるのですが、これは鞘が帯から抜けないようにするため。こちらも必ず腰の左側に固定します。

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