この記事では「文学」と「小説」の違いについてみていきます。どちらも本に関係するイメージがあるよな。小説はずばり文学のいちカテゴリーということですが、文学は狭義では「純文学」のことも指すなど、調べてみるといろいろ面白い点があるみたいです。今回はそんな2つの違いと定義を確認しつつ、「純文学」の特徴もあわせて雑学マニアの田坂と一緒に解説していきます。

ライター/田坂バーシル

子供の頃から本の虫で、些細な事柄も調べずにはいられない性質。小説、漫画はもちろん、歴史、芸術、宗教、宇宙、アンダーグラウンドまで興味は尽きないようだ。今日も文字の大海原に驚きとときめきを求める雑学マニア。

「文学」と「小説」に違いはあるの?

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あなたは「文学」と聞くと何を思い浮かべますか?好きな「小説」を聞かれたら何と答えますか?実は小説は文学の一部であり、短歌や俳句なども文学の一部、そして「純文学」は小説の一部なんですよ。ここでは「文学とは文芸作品全般のことで、小説とは文学のカテゴリーの1つ」ということを詳しく解説していきます。

「文学」とは?

「文学」とは、言語によって表現された芸術作品のことです。文芸ともいいます。詩歌・小説・物語・戯曲・評論・随筆などが典型的な例です。またそれらを研究する学問のことも文学といいますが、ここでは割愛しています。

「小説」とは?

「小説」とは、文学の中にあるカテゴリーの1つで、作者の想像力によって構想し、または事実を脚色して書かれた物語形式の作品のことです。ただ文学の定義が「言語によって表現された芸術作品」なので、すべての小説が文学と呼べるかどうかは議論が分かれるところでしょう。

小説の中にミステリー・SF・時代・恋愛など、様々なジャンルがありますが、特に「純文学」以外の娯楽性の高いジャンルを総じて「大衆文学(娯楽・エンターテイメント小説)」といいます。

「純文学」とは?

文脈によっては、単に「文学」と言って「純文学」を指す場合もあります。純文学というのは小説のカテゴリーの1つ。明治時代の「言文一致運動(文章の言葉遣いを話し言葉に一致させようという運動)」後の作品で、作者が自己の内面を読者におもねることなく表現した芸術性の高い小説を指します。「学問のための文章でなく美的形成に重点を置いた文学作品」ともいわれますね。

「文学とは何か、文学とはどうあるべきか」ということを作家それぞれが追求した作品が純文学と言えるでしょう。

\次のページで「「小説」と「純文学」の特徴」を解説!/

「小説」と「純文学」の特徴

文学とは本来は詩歌や物語全般など広い意味での言語による芸術を差しますが、ここでは「純文学以外の小説=大衆文学」と「純文学」に絞ってその特徴を解説します。

小説が大衆文学と純文学の2つに分かれたのは大正から昭和にかけての時代。作品の芸術性を重要視する芥川龍之介と、ストーリーの面白さを重視する谷崎潤一郎の意見の対立を経て、対象末期から自分の作品の芸術性に重きを置きたい作家が自分達の作品を純文学と呼ぶようになったのです。

「純文学以外の小説=大衆文学」の特徴

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通俗的でエンターテイメント性の高いもの、言い換えれば書き手が大衆に寄り添いサービスを提供する小説のことです。楽しさや面白さを提供することを目的としているため、起承転結の中で波乱にとんだストーリーと魅力的なキャラクターが登場するのが特徴。大衆文学の面白さを広めた作家を以下に紹介します。

・谷崎潤一郎
・中里介山
・白井喬二
・直木三十五
・大仏次郎
・吉川英治
・長谷川伸 …など

「純文学」の特徴

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風景や心理描写、比喩など文章表現に凝った作品が多く、ストーリーや結末よりも芸術性に重きを置いています。こう聞くと聞くと何となく堅いイメージを持たれるかもしれませんが、実は言葉の美しさや味わいなど「芸術性」が認められさえすれば他のことにはあまりこだわらない、というのが純文学です。

しかし「ルール無用、作者と読者が芸術的と思えば純文学」という定義では、読みたい時にどれを選べばよいのかわかりませんよね。純文学作品を選ぶ際にもっともわかりやすい基準は、純文学作品を選考対象とした「芥川賞を受賞した作品」でしょう。以下に純文学の初期を代表する作家を紹介します。

・芥川龍之介
・川端康成
・坂口安吾
・太宰治
・野間宏
・大岡昇平 …など

小説の境界線は薄くなりつつある!?

ざっくりとまとめると、「文学は言語による芸術作品。一般的な小説は読者本位で、純文学は作家本位」ということになりますね。しかし近年では純文学にSFや伝記小説などの他要素を取り入れる作家が増えたり、大衆文学でも芸術性を高めた作品が見られたりします。またひと口に大衆文学と言ってもその中には多様なジャンルが生まれており、ひとまとめにすることに意義を見いだせなくなりつつあるようです。これらの区分はこの先どんどん曖昧になっていくことでしょう。あまりジャンルにとらわれすぎずに、色々な本を楽しめるといいですね。最後になりますが、この記事で曖昧だった日本語を理解するお手伝いができたら幸いです。

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簡単でわかりやすい!「文学」と「小説」の違いとは?「純文学」との関係や特徴も雑学マニアが詳しく解説

この記事では「文学」と「小説」の違いについてみていきます。どちらも本に関係するイメージがあるよな。小説はずばり文学のいちカテゴリーということですが、文学は狭義では「純文学」のことも指すなど、調べてみるといろいろ面白い点があるみたいです。今回はそんな2つの違いと定義を確認しつつ、「純文学」の特徴もあわせて雑学マニアの田坂と一緒に解説していきます。

ライター/田坂バーシル

子供の頃から本の虫で、些細な事柄も調べずにはいられない性質。小説、漫画はもちろん、歴史、芸術、宗教、宇宙、アンダーグラウンドまで興味は尽きないようだ。今日も文字の大海原に驚きとときめきを求める雑学マニア。

「文学」と「小説」に違いはあるの?

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あなたは「文学」と聞くと何を思い浮かべますか?好きな「小説」を聞かれたら何と答えますか?実は小説は文学の一部であり、短歌や俳句なども文学の一部、そして「純文学」は小説の一部なんですよ。ここでは「文学とは文芸作品全般のことで、小説とは文学のカテゴリーの1つ」ということを詳しく解説していきます。

「文学」とは?

「文学」とは、言語によって表現された芸術作品のことです。文芸ともいいます。詩歌・小説・物語・戯曲・評論・随筆などが典型的な例です。またそれらを研究する学問のことも文学といいますが、ここでは割愛しています。

「小説」とは?

「小説」とは、文学の中にあるカテゴリーの1つで、作者の想像力によって構想し、または事実を脚色して書かれた物語形式の作品のことです。ただ文学の定義が「言語によって表現された芸術作品」なので、すべての小説が文学と呼べるかどうかは議論が分かれるところでしょう。

小説の中にミステリー・SF・時代・恋愛など、様々なジャンルがありますが、特に「純文学」以外の娯楽性の高いジャンルを総じて「大衆文学(娯楽・エンターテイメント小説)」といいます。

「純文学」とは?

文脈によっては、単に「文学」と言って「純文学」を指す場合もあります。純文学というのは小説のカテゴリーの1つ。明治時代の「言文一致運動(文章の言葉遣いを話し言葉に一致させようという運動)」後の作品で、作者が自己の内面を読者におもねることなく表現した芸術性の高い小説を指します。「学問のための文章でなく美的形成に重点を置いた文学作品」ともいわれますね。

「文学とは何か、文学とはどうあるべきか」ということを作家それぞれが追求した作品が純文学と言えるでしょう。

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