この記事では「腑に落ちない」について解説する。

端的に言えば「腑に落ちない」の意味は「納得できないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「腑に落ちない」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「腑に落ちない」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「腑(ふ)に落ちない」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「腑に落ちない」の意味は?

「腑に落ちない」には、次のような意味があります。

納得がいかない。合点がいかない。「彼が落選したのは―◦ない」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「腑に落ちない」

この言葉は「納得がいかない」という意味の慣用表現です。誰しも、「わからない」「どうにも理解できない」というモヤモヤした感じを覚えたことがあるでしょう。そんな気持ちの時、使って欲しいのがこの言葉です。

漢字「腑」とは、「はらわた」のこと。「はらわた」自体は「大腸」のことですが「内臓全体」を指すこともあり、「臓腑(ぞうふ)」という熟語で使われることもありますね。身体の内側にある臓器全体を指す言葉と考えていいでしょう。

そしてそれとは別に「心、心の働き」を意味することもあります。「不甲斐ない=情けない」という言葉がありますが、これは漢字で「甲斐ない」と書くことも。「腑(心意気)が甲斐なし(情けない)」というわけなのです。

「腑に落ちない」の語源は?

次に「腑に落ちない」の語源を確認しておきましょう。先の項で「納得できない時のモヤモヤした感じ」と述べましたが、その時にモヤモヤしているのはどの部分でしょうか。おそらく、胸やみぞおち、お腹のあたりではないかと思います。

「腑に落ちない」と同じ意味で「腹に落ちない」「胸がムカムカする」といった言い方があり、「腑」とは、その「胸」や「お腹」など「体の中心(にある臓器)をまとめて言ったもの」というニュアンスがあるため、そうした表現の言い換えとしてできたと考えられているのがこの言葉なのです。

特定の部位ではない「腑」だからこそ、「なんだか胸・腹のあたり全体がモヤモヤする」と曖昧な感じも上手く表現できるかもしれません。はっきり言えないけれど納得できない、そんな時こそこの表現を使ってみましょう。

\次のページで「「腑に落ちない」の使い方・例文」を解説!/

「腑に落ちない」の使い方・例文

「腑に落ちない」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・目上相手に様子をうかがっているだけで自分の意見を言わないあいつが、一番上司に気に入られているのは腑に落ちない。
・ランキングサイトを信頼しすぎて新着おすすめ商品ばかり買っては、今一つ合わなくて腑に落ちない表情をしている妻だが、それは当然のことだろうと思ってしまう。
・年代ごとにそれぞれ立場もあるのだから、お互いに腑に落ちないような顔をしてばかりいるのではなく、時には譲り合うのもオトナというものだ。

「何となく納得できない」「はっきりとしないが気に入らない」というニュアンスが伝わりますでしょうか。「なんだかモヤモヤする」感じと言ってもいいですね。嫌な思いをしたときのムカムカする感じを想像してみましょう。

そんな「嫌な感じ」というのは長引くこともあるもので、文章問題などでは話者の恨み・つらみのようなネガティブな心情が現れてくることも。そこからどのように話が展開していくのか、読み解くポイントとなる言葉でもありますよ。

「腑」は内臓と述べましたが、そこに落ちていかないわけですから「飲み込めない」と言い換えることも出来ますね。比喩的にも「飲み込む」は「納得する」という意味で使えます。感情を抑えてぐっと飲み込もうとしてみたけれど出来ず、喉で使えてしまった嫌な感じ。それが「腑に落ちない」なのです。

「腑に落ちない」の類義語は?違いは?

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「腑に落ちない」の類義語は「合点(がてん)がいかない」を紹介します。

合点がいかない:どうにも承知できない、納得がいかない

「合点がいかない」は、「どうにも承知できない、納得がいかない」を意味する慣用表現です。「合点(がてん)」はもともと、和歌などの批評で優れた歌につけていた記号のこと。それが書類などにも使われるようになったことから、「承認、認めたことを示す印」の意味を持つようになりました。

時代劇などでも「がってん承知」と言ったりもしますね。この「がってん」は「合点」が音変化したもので同じ意味。「わかった!」「理解した!」ということですが、その否定形「合点がいかない」で、どうにも理解できない感情を表しているのです。

\次のページで「「腑に落ちない」の対義語は?」を解説!/

最適な方法かもしれないけれど、相手と会話をしないで淡々と仕事を進めてしまう彼の姿勢には合点がいかない。

「腑に落ちない」の対義語は?

「腑に落ちない」の対義語は「得心(とくしん)がいく」を紹介します。

得心がいく:十分に承知すること

これは「十分に承知すること」を意味する慣用表現です。漢字を読んでそのまま「心を得る」ですから、気持ちの上でしっかりと納得した意味合いが伝わる言葉ではないでしょうか。

漢字自体は簡単ですが、音読みで「えしん」とはせず「とくしん」となるところがやや問題となるポイントでしょうか。現代ではあまり使われない表現かもしれませんので、ここでしっかり押さえておくと安心です。

非常に難しいサスペンスドラマだったのだが、犯人の動機がわかったことで一気に得心がいって気持ちのいい内容だった。

「腑に落ちない」の英訳は?

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「腑に落ちない」の英訳は「cannot make sense of」で表すことができます。

\次のページで「cannot make sense of:理解できない、納得できない」を解説!/

cannot make sense of:理解できない、納得できない

これは「make sense of」に否定形「cannot」が付いたもので「理解できない、納得できない」を意味するフレーズです。「make sense」は直訳すれば「感覚を作る」ということで、自分の中に「理解する感覚」を持てるということになるのですね。

ネイティブの人なども、省略して「make sense(わかる?)?」などと言うそう。平易ながら使いやすい表現のため、ここで一緒に押さえてしまいましょう。

なお、もっと簡単に言うなら「cannot  understand(納得できない)」「cannot comprehend(理解できない)」でも可能。他にも「理解」「承知」の英単語を入れれば色々と作り替えることが出来ますよ。

I cannot make sense of his way.
私には彼のやり方が腑に落ちない(納得できない)。

「腑に落ちない」を使いこなそう

この記事では「腑に落ちない」の意味・使い方・類語などを説明しました。解説の中でいくつか類義語・対義語を紹介しましたが、「心」「腹」「胸」といった、身体部分を使った慣用句は本当にたくさんあります。

「腹」だけでも「腹に落ちる」「腹を痛める」「腹を固める」などなど。日本人が身体の感覚を大切にしていたことがうかがえるようです。たとえば知らない表現が出てきたときも、「腑に落ちない」ままにせずしっかり理解してから進めると学びが深まりますよ。

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【慣用句】「腑に落ちない」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「腑に落ちない」について解説する。

端的に言えば「腑に落ちない」の意味は「納得できないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「腑に落ちない」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「腑に落ちない」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「腑(ふ)に落ちない」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「腑に落ちない」の意味は?

「腑に落ちない」には、次のような意味があります。

納得がいかない。合点がいかない。「彼が落選したのは―◦ない」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「腑に落ちない」

この言葉は「納得がいかない」という意味の慣用表現です。誰しも、「わからない」「どうにも理解できない」というモヤモヤした感じを覚えたことがあるでしょう。そんな気持ちの時、使って欲しいのがこの言葉です。

漢字「腑」とは、「はらわた」のこと。「はらわた」自体は「大腸」のことですが「内臓全体」を指すこともあり、「臓腑(ぞうふ)」という熟語で使われることもありますね。身体の内側にある臓器全体を指す言葉と考えていいでしょう。

そしてそれとは別に「心、心の働き」を意味することもあります。「不甲斐ない=情けない」という言葉がありますが、これは漢字で「甲斐ない」と書くことも。「腑(心意気)が甲斐なし(情けない)」というわけなのです。

「腑に落ちない」の語源は?

次に「腑に落ちない」の語源を確認しておきましょう。先の項で「納得できない時のモヤモヤした感じ」と述べましたが、その時にモヤモヤしているのはどの部分でしょうか。おそらく、胸やみぞおち、お腹のあたりではないかと思います。

「腑に落ちない」と同じ意味で「腹に落ちない」「胸がムカムカする」といった言い方があり、「腑」とは、その「胸」や「お腹」など「体の中心(にある臓器)をまとめて言ったもの」というニュアンスがあるため、そうした表現の言い換えとしてできたと考えられているのがこの言葉なのです。

特定の部位ではない「腑」だからこそ、「なんだか胸・腹のあたり全体がモヤモヤする」と曖昧な感じも上手く表現できるかもしれません。はっきり言えないけれど納得できない、そんな時こそこの表現を使ってみましょう。

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