端的に言えば「月と鼈」の意味は「全く異なっていること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「月と鼈」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/やぎしち
雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。
「月と鼈」の意味は?
「月と鼈」には、次のような意味があります。
月もスッポンも同じように丸いが、比較にならないほどその違いは大きいこと。二つのものがひどく違っていることのたとえ。提灯に釣鐘。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「月と鼈」
これは「二つのものを比べて、両者があまりに違っていること」をたとえたことわざです。「鼈(すっぽん)」は、動物のカメの一種。それと空に浮かぶ月を比べているわけですから、「そもそも全然違うものである」「比べものにならない」状態ですね。
注意としては、どちらかがより優れているというような優劣つけるニュアンスはない点。比較する文脈によりそのような意味合いを帯びやすいのですが、正確には両者がかけ離れている場合に用いられる、ということを押さえてください。
「鼈」は非常に難しい単語で、一般的な試験では出題されることはほぼありません。使用される単語としては「鼈甲(べっこう)」などがあります。眼鏡のフレームなどに使われるものですが、実際にカメの甲羅を加工した非常に高価なものです。知らない人は画像検索などもしてみてくださいね。
「月と鼈」の語源は?
次に「月と鼈」の語源を確認しておきましょう。実はこの言葉の由来ははっきりしておらず、強いて言えば「月」も「鼈」も丸いという共通点があるため、美しいものと汚いもので比較されるようになったのでは、と言われています。
比較対象としてはあまりにかけ離れているため、「鼈」は「朱盆」(しゅぼん=赤く塗られたお盆。円形が多い)が、なまったのではという説も。確かに、艶のある紅いお盆だったら、何となく月と比べてしまうのもわかるかもしれません。
いずれにしても、空に美しく浮かぶ月を見上げながら鼈や朱盆を思い浮かべているとしたら、それはそれで風流さのある風景とも言えますね。そんな風景を、違いがありすぎて空しいと感じるかどうかは人それぞれですが、このことわざが生まれた背景も想像してみながら使ってみたいものです。
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