今回は英語の関係代名詞としてよく使われる"which"と"that"についてみていきます。"which"と"that"を使うことで、名詞などの先行詞の説明ができることはなんとなく知ってるやつも多いはずです。この2つは役割が似ていて使う機会もそれなりにありますが、主に書き言葉では使い分けることによってニュアンスが変わることもあるらしいのです。
今回はおなじみのこの2語について、言語オタクのライターアオイと一緒に解説していきます。

ライター/Aoi93

言語オタクを自称する駆け出しライター。言語の中でも好きなのは発音で、辞書や文法書を発音記号目当てに購入することも。家には積読の洋書や文法書がいくつかあるが、最近お気に入りの発音はフランス語の鼻母音。

よく聞く便利な"which"と"that"

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"which"と"that"は、関係詞という文法事項では必ず出てくる単語です。特に"which"については、疑問文よりは関係詞のイメージが強いという方もいるかもしれませんね。

"which"は次の例文のように、"that"で代用できる場合もあります。文法事項を深く考えなくてもそれなりの単語数を使った文章が出来上がるので、定期テストの作文でお世話になった方もいるのではないでしょうか。

The hotel which I visited three month ago was really good.
The hotel that I visited three month ago was really good.

―3か月前に滞在したホテルは本当に良かった。

この例文で使った"which"と"that"は同じ意味で代用できますが、実は何でも置き換えれば解決できるわけではありません。では、違いは一体何なのでしょうか。

2つに共通する「関係代名詞」という役割

"which"と"that"は2語とも様々な役割を持つ単語ですが、今回は共通事項である「関係代名詞」を中心にみていきましょう。「関係代名詞」は、先行詞の内容(人か人以外か)関係代名詞が後ろに続く節でどう働くか(主語、所有、目的語)によって単語が決まります。

"which"と"that"は主語と目的語で使われることは共通していますが、"which"は人以外、"that"は人にも人以外にも使えると覚えればわかりやすいです。

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意味に差が出るのは「書き言葉」で使うとき

"which"と"that"は役割が重複していることもあり、特に話し言葉として使うときは意味をそこまで意識しなくても使えてしまいます。しかし、辞書や文法書をつぶさに読んでいくと実は使いどころが決まっている、書き言葉ではどちらを使うかによって読み手に与える印象が違うなど、マスターすれば特に英作文では武器になる文法事項ともいえるでしょう。

具体例として、英語の長文読解などで見かけるコンマによっても意味や使い方が変わるのが、この"which"と"that"の面白いところです。このコンマの使い方も交えながら、2語の違いを分析していきます。

"which"と"that"の違いを辞書と文法書でチェック!

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あまり意識せずに使える分、思わぬ発見がありそうな"which"と"that"について辞書と文法書をチェックしていきましょう。関係代名詞を中心に、ほかの役割についても新たな発見があればと思います。

関係代名詞の限定用法と継続用法について

今回着目する関係代名詞には、限定用法(制限用法)と継続用法(非限定用法)という2つの使い方があります。限定用法と継続用法の見分け方は、"which"や"who"の手前にコンマがあるかどうかです。

限定用法は、先行詞の内容を文字通り限定する際に使います。先行詞の内容が曖昧で聞き手にわかりにくいとき、曖昧な部分を説明することで内容を限定するのですね。対して継続用法は、ある程度はっきりわかっている先行詞(説明して意味や内容を限定する必要のないもの)の内容を、コンマ以下の関係詞節で補足説明するために使います。

このコンマ1つの違いが、実は"which"と"that"にとっては重要なことなのです。

場合によっては省略も可能な"which"

"which"は、主語・目的語で人以外のものに使える関係代名詞です。"which"は限定用法、継続用法どちらでも使うことができます。"which"は先行詞が目的語(格)の場合は省略されることが多いです。また、"that"での代替も可能ですが、"that"を使うと先行詞の意味の限定が強くなります。

しかし、コンマのない限定用法では、前置詞を関係代名詞の前に置いた場合は省略ができません。次の例文の前置詞の位置にご注目ください。

These are clothes in which she dressed.
―これは彼女が着たドレスだ。

×These are clothes in she dressed.
×These are clothes in that she dressed.

何でもできる便利な"that"

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"which"の項目でも説明しましたが、"that"は"which"の代わりに使われることの多い語で、こちらは"which"と違い人でも人以外でも使えます。人と人以外のものがセットで先行詞に存在している場合などは便利です。筆者は英会話で、とっさに"which"が出てこずに"that"と口走る場面が多々ありました。

また、"that"は先行詞の意味を限定する力が強い関係で、特定の1つのものを示す修飾語をともなう人以外の先行詞のあとに使われることも多いようです。

"that"は先に述べた前置詞の後ろにつく限定用法のほか、コンマが付く継続用法では使えません。

\次のページで「さらに深掘り!"that"の使い方」を解説!/

This is the first book that I wrote.
―これはわたしが最初に書いた本です。

He bought new cellphone, which has a high performance camera.
―彼は新しい携帯電話を買ったが、それには高機能のカメラがついている。 

×He bought new cellphone, that has a high performance camera.

さらに深掘り!"that"の使い方

"that"が多くの役割を持つ言葉ですが、関係代名詞と並んで使われることの多い役割に「従位接続詞」があります。主に「~ということ」と訳される使い方です。実際の例文を見れば、どんな使い方か思い出せるでしょう。

She said that she would buy it.
―彼女はそれを買うつもりだと言った。

I told Emily that he moved to London.
―彼はロンドンに引っ越したとエミリーに伝えた。

従位接続詞の"that"は上の例文のようなくだけた使い方では、省略されることも多いです。が、新聞や学術記事といった硬い文章ではあまり省略されないといわれます。ほかにも、ひとつの文章の中に複数のthat節が含まれる場合や副詞表現が"that"の前後に来る場合は省略されることが少なくなるようです。

また、セミコロンが使われる場合は手前までの文章を踏まえて「すなわち」と訳されます。主に硬い長文で出てくることがありますが、覚えておいて損はないでしょう。

\次のページで「"which"と"that"を使いこなして表現を豊かに!」を解説!/

"which"と"that"を使いこなして表現を豊かに!

"which"と"that"は関係代名詞という共通の役割を持っていますが、使える対象だけでなく使える文章の形が違うなど、興味深い発見があったかと思います。比較的手軽に使える文法事項ではありますが、手軽だからこそ知っておけば強力な武器として英作文や長文読解で役に立つはずです。

ぜひ、辞書や文法書を読み返して、知識をモノにしてくださいね。

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雑学

3分で簡単にわかる”which”と”that”の違い!関係代名詞の役割や使い分けのポイントを言語オタクがわかりやすく解説

今回は英語の関係代名詞としてよく使われる”which”と”that”についてみていきます。”which”と”that”を使うことで、名詞などの先行詞の説明ができることはなんとなく知ってるやつも多いはずです。この2つは役割が似ていて使う機会もそれなりにありますが、主に書き言葉では使い分けることによってニュアンスが変わることもあるらしいのです。
今回はおなじみのこの2語について、言語オタクのライターアオイと一緒に解説していきます。

ライター/Aoi93

言語オタクを自称する駆け出しライター。言語の中でも好きなのは発音で、辞書や文法書を発音記号目当てに購入することも。家には積読の洋書や文法書がいくつかあるが、最近お気に入りの発音はフランス語の鼻母音。

よく聞く便利な”which”と”that”

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“which”と”that”は、関係詞という文法事項では必ず出てくる単語です。特に”which”については、疑問文よりは関係詞のイメージが強いという方もいるかもしれませんね。

“which”は次の例文のように、”that”で代用できる場合もあります。文法事項を深く考えなくてもそれなりの単語数を使った文章が出来上がるので、定期テストの作文でお世話になった方もいるのではないでしょうか。

The hotel which I visited three month ago was really good.
The hotel that I visited three month ago was really good.

―3か月前に滞在したホテルは本当に良かった。

この例文で使った”which”と”that”は同じ意味で代用できますが、実は何でも置き換えれば解決できるわけではありません。では、違いは一体何なのでしょうか。

2つに共通する「関係代名詞」という役割

“which”と”that”は2語とも様々な役割を持つ単語ですが、今回は共通事項である「関係代名詞」を中心にみていきましょう。「関係代名詞」は、先行詞の内容(人か人以外か)関係代名詞が後ろに続く節でどう働くか(主語、所有、目的語)によって単語が決まります。

“which”と”that”は主語と目的語で使われることは共通していますが、“which”は人以外、”that”は人にも人以外にも使えると覚えればわかりやすいです。

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