俺は高校に来ている教え子たちのことを「学生」とは呼ばずに「生徒」と呼んでいる。実は「生徒」と「学生」には本来は色々と違いがあるんです。

「でも、スマホのプランで"学生"割引とか言うし、違いはないんじゃないの?」と思ったそこの君、違いはあるぞ。

今回は「生徒」と「学生」の違いを、さらに似た用語の「児童」まで含めて院卒日本語教師の"むかいひろき"と一緒に解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学に再就職した、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」の違いについて分かりやすく解説していく。

まずは「生徒」と「学生」の意味を辞書で見てみよう!

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「生徒」と「学生」、どちらもよく耳にする言葉ですよね。特に子供のころ~大学生時代にかけては毎日のように耳にしていたのではないでしょうか。ただ、その区別についてしっかりと説明するのはちょっと難しいですよね。まずは辞書にはそれぞれの意味がどのように記載されているか、確認してみましょう。

「生徒」:学校・塾などで教えを受ける人

最初に「生徒」の辞書での記述を確認していきます。基本的にどの国語系の辞書・辞典も同じような記載がされていて、大きな違いはありません。『明鏡国語辞典』には次のような記載があります。

学校・塾などで教えを受ける人。特に、中学校・中等教育学校・高等学校で教育を受ける人。
「ー会」

小学校の「児童」、大学の「学生」に対して使う。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「せい-と【生徒】」

辞書によると「生徒」は「中学校・中等教育学校・高等学校で教育を受ける人」とあります。ここでいう「中等教育学校」とは、一般的に「中高一貫校」と呼ばれる中学校と高校が1つに合体した学校のことですね。つまり、辞書によれば中学生、高校生、中高一貫校生は「生徒」ということになります。また、塾で学ぶ人も「生徒」だと言及がある点は注目点です。

そして、「学生」や「児童」との区別も記されていますね。

\次のページで「「学生」:学校で教育を受けている人」を解説!/

「学生」:学校で教育を受けている人

一方の学生の辞書での記述はどうでしょうか。こちらもどの国語系の辞書・辞典も同じような記載がされており、大きな違いはありません。「学生」についての『明鏡国語辞典』での記述を見ていきましょう。

学校で教育を受けている人。特に、大学生。
「ー生活・ー証」

ふつう、中学・高校生は「生徒」、小学生は「児童」として区別する。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「がく-せい【学生】」

辞書によると「学生」は「特に大学生」のことを指すとの記述があります。確かに、高校や中学校で先生から「学生の皆さん」と呼びかけられた記憶はないという人が多いのではないでしょうか。

ただ、実際には「大学生」以外に対しても「学生」は使用されているような…と感じる人もいるかもしれません。「学生生活」「学生時代」と聞いて大学時代以外を含めて考える人もきっと多いですよね。この点については、この後詳しく解説していきます。

「児童」「生徒」「学生」の学校教育法に基づく正式な使い分け

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実は、学校で学ぶ人たちを表す単語である「児童」「生徒」「学生」は、教育のシステムや学校の制度について定めた「学校教育法」及び「学校教育法施行規則」ではしっかりと使い分けられています。その使い分けをここでは見ていきましょう。この「学校教育法」「学校教育法施行規則」での区分けが、学校などで用いられる原則的な使い分けとなります。

\次のページで「「児童」:小学生」を解説!/

「児童」:小学生

小学校のあり方や規則については「学校教育法」の第4章(第29条~第44条)で定められています。そして、その中で小学校で学ぶ子供たちを指して使われている言葉は「児童」です。他のカテゴリーの学校についてはこの「児童」という言葉は使用されていません。

なお、「児童」という言葉が意味する範囲は法律によっても異なり、道路交通法では6歳以上13歳未満、児童福祉法では18歳未満の人が「児童」とみなされています。

「生徒」:中学生、高校生

「学校教育法施行規則」の第5章(第69条~第79条)では中学校について、第6章(第80条~第104条)では高等学校(高校)について、第7章(第105条~第113条)では中等教育学校について規則やあり方が定められていますが、その中で中学校、高等学校で学ぶ子供たちを指して使用されている言葉は「生徒」です。「児童」や「学生」という言葉は使用されていません。

「学生」:大学生、大学院生、高専生

「学校教育法」では第9章(第83条~第114条)で大学(大学院を含む)について、第10章(第115条~第123条)で高等専門学校について規則やあり方が定められています。ここで大学(大学院)や高等専門学校で学ぶ人たちを指して使われているのは「学生」ですね。

高等専門学校とは、中学校卒業後に入学できる5年制の学校です。実践的・創造的な技術者を養成することを目的とした学校であり、入試は難しいことが多いですね。なお、高校卒業後の進路に専門学校を選択する人もいますが、高等専門学校と専門学校は異なります。ただ、専門学校に通う人も通常は「学生」と呼ばれます

学校以外の場面で使われる「生徒」「学生」

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ここまで、「学校教育法」における原則的な「生徒」「学生」の区別を見てきました。ただ、実際にはこの規則に当てはまらない使い方がされている場合もあります。どのような場合に「生徒」や「学生」が使用されているのか確認していきましょう。

塾や習い事で使用される「生徒」

「生徒」は塾に通う人や、習い事、稽古事に通う人に対しても使用されます。「○○塾の生徒」「うちの塾の生徒が~」といった使われ方をしますね。

塾や習い事は未成年が通う場合が大半ですが、空手や柔道などの武道の道場、茶道や生け花などの伝統文化教室の場合は大人が通う場合も多いですよね。塾に通う人や、習い事、稽古事に通う人について「生徒」という場合、その中には子供だけではなく大人も含まれています

\次のページで「割引や制服、アルバイトで使用される「学生」」を解説!/

割引や制服、アルバイトで使用される「学生」

一方の「学生」も実際には大学生や高専生以外を示す場合でも使用されています。たとえば「学生割引」といった場合は、大学生や高専生だけでなく小学生~高校生も含まれる場合が多いですよね。また、中学校や高校の制服のことを「学生服」ともいいます。そして「学生アルバイト」といった場合、高校生、大学生、大学院生、高専生、専門学校生を指す場合がほとんどでしょう。

これらの場合、「学生」の指す意味は「学校教育法」が指す「学生」とは範囲が異なってきますよね。

「生徒」は中高生、「学生」は大学生、院生、専門学校生

今回は「生徒」「学生」の違いについて解説しました。「学校教育法」では「生徒」は中高生を、「学生」は大学生(大学院生含む)や高専生を指し、一般的には専門学校生も「学生」と呼ばれています。ただ、習い事に通う人やアルバイトなどについていう場合は、「生徒」や「学生」が示す範囲が異なることがあるのです。

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雑学

3分で簡単に分かる!「生徒」と「学生」の違いとは?「児童」との使い分けも院卒日本語教師が分かりやすく解説

俺は高校に来ている教え子たちのことを「学生」とは呼ばずに「生徒」と呼んでいる。実は「生徒」と「学生」には本来は色々と違いがあるんです。

「でも、スマホのプランで”学生”割引とか言うし、違いはないんじゃないの?」と思ったそこの君、違いはあるぞ。

今回は「生徒」と「学生」の違いを、さらに似た用語の「児童」まで含めて院卒日本語教師の”むかいひろき”と一緒に解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学に再就職した、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」の違いについて分かりやすく解説していく。

まずは「生徒」と「学生」の意味を辞書で見てみよう!

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「生徒」と「学生」、どちらもよく耳にする言葉ですよね。特に子供のころ~大学生時代にかけては毎日のように耳にしていたのではないでしょうか。ただ、その区別についてしっかりと説明するのはちょっと難しいですよね。まずは辞書にはそれぞれの意味がどのように記載されているか、確認してみましょう。

「生徒」:学校・塾などで教えを受ける人

最初に「生徒」の辞書での記述を確認していきます。基本的にどの国語系の辞書・辞典も同じような記載がされていて、大きな違いはありません。『明鏡国語辞典』には次のような記載があります。

学校・塾などで教えを受ける人。特に、中学校・中等教育学校・高等学校で教育を受ける人。
「ー会」

小学校の「児童」、大学の「学生」に対して使う。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「せい-と【生徒】」

辞書によると「生徒」は「中学校・中等教育学校・高等学校で教育を受ける人」とあります。ここでいう「中等教育学校」とは、一般的に「中高一貫校」と呼ばれる中学校と高校が1つに合体した学校のことですね。つまり、辞書によれば中学生、高校生、中高一貫校生は「生徒」ということになります。また、塾で学ぶ人も「生徒」だと言及がある点は注目点です。

そして、「学生」や「児童」との区別も記されていますね。

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