この記事では「償う」と「贖う」の違いについてみていきます。意味が非常に近い言葉ですが、特に「贖う」に関しては字も難しいし、読み方すらわからない人も少なくないでしょう。今回はこれらの言葉の読み方からその違いまで、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

「償う」と「贖う」の読み方とざっくりした違い

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まずはそれぞれの漢字の読みを確認しておきましょう。「償う」については普段でも耳にしたり使う機会のある言葉かと思いますが、「つぐなう」と読みます。

贖うは「あがなう」と読む

では「贖う」という漢字の読み方はご存じですか?難しい字ですし、日常的に使う言葉でもないので、これまで目にしたことすらない方もいるかと思いますが、贖う「あがなう」と読みます。

償うと贖うのざっくりした違い

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償うと贖うに関して、それぞれの意味をおおまかに確認するためコトバンクを参照したいと思います。まず、償うは

1 金品を出して、負債や相手に与えた損失の補いをする。弁償する。
2 犯した罪などに対して、金品や行為でうめ合わせをする。

(出典:コトバンク)

としており、贖うの方は

\次のページで「償うと贖うの漢字について」を解説!/

1 (贖う)罪のつぐないをする。

(出典:コトバンク)

としています。「贖う」でその説明のために「つぐない」が使われているくらい、両者は意味の近い言葉ですので、「償う」も「贖う」も大まかな意味はどちらも同じ「相手に与えてしまった損害や損失に対する埋め合わせをすること」だと考えて大丈夫でしょう。

しかし、両者が与える細かいニュアンスには違いがあります。それは贖うの方が、宗教的イメージや重々しく厳かな印象を与えることです。そのような違いはどこから生まれるのか。今回はそれを解説していきたいと思います。

償うと贖うの漢字について

ここからは償うと贖うについて、それぞれの漢字などから細かい違いについて説明していきたいと思います。

「償」の漢字をわかりやすく説明!

「償」はにんべんと右側の「賞」という字で構成されていますよね。「賞」という漢字は「賞金」「賞品」といった、「仕事や功労」などの見かえりに対して使われますが、逆に、「人に与えた損害や損失」の見かえりを指し示すための言葉として生まれたのが「償」という字です。

私たちがふだん「償う」という言葉を想像するとき、金品で埋め合わせをすることよりも、罪と向き合って行動を悔い改めたり、罪の意識を抱えたまま生きていくことといったイメージを抱きがちではないかと思います。しかしこのように「償う」という言葉はもともと、相手に与えてしまった損害や損失の代わりに何かで埋め合わせをするといった意味が根底にあるのです。

「贖」の漢字をわかりやすく説明!

次は「贖」の漢字に着目したいと思います。この字は貝へんですが、漢字の生まれた中国では昔、お金の代わりに貝が使われていました。ですから、このように貝の使われている漢字は「財宝」の「財」や「貯金」の「貯」など、お金に関わるものが多いのが特徴です。

また、右側の「賣」は私たちが普段つかっている「売」という漢字の旧字体なので、「贖」という字は「貝」と「売」から構成されていることになります。「贖」とはこのような字ですから、「あがなう」という言葉の意味には、物を買い求める。つまり、物と物とをとりかえたり、何かを代償にしてものを手に入れるといった意味があります。

「償う」の意味が相手に与えてしまった損害や損失の代わりに何かで埋め合わせをすることだと説明しましたが、このように「贖」にも何かを代償にするという意味があるので、「あがなう」を「つぐなう」意味で使うようになったのかもしれません。

購入などの「購」も「あがなう」と読む

また、「あがなう」と読む漢字は「贖」だけではありません。私たちがふだん「購入」や「購買部」といった形で使う機会のある「購」の字も「購う」「あがなう」と読むことができます。

ただし、「贖う」が罪をつぐなう意味で使われることに特化していったためでしょうか。「購う」という字にはそのような意味はなく、単に物を買う意味として「あがなう」と使います。

\次のページで「「贖う」という言葉が持つ特別な響き」を解説!/

「贖う」という言葉が持つ特別な響き

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「贖う」という言葉には宗教的イメージがあり、「償う」よりも重々しく厳かな印象があることは始めの方でふれましたが、一体なぜでしょうか。それは特にキリスト教の信者の方たちにとって「贖う」という行為が重要な意味を持っているからです。

「贖う」が何かを代償にしてものを手に入れる意味だったことは説明しましたが、多くの方が知っているであろう、キリストが人々の罪を償って救いをもたらす代わりに十字架にかかったあの場面。あのようにキリストが自分を犠牲にしたことを「罪を贖う」つまり、「贖罪(しょくざい)」と言います。

そのため、「贖う」は単に罪を償うというだけでなく、どことなく宗教的な神聖さや、重々しくおごそかな響きや印象も持つような言葉になったのでしょう。

「償う」も「贖う」もどちらも損失の埋め合わせをすること

「償う」と「贖う」は、どちらも相手に与えてしまった損害や損失に対する埋め合わせをすることを意味する似たような言葉です。しかし今回の説明で「贖う」の方が「償う」よりも宗教的で、おごそかなイメージを持つ言葉であることが理解していただけたかと思います。

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簡単でわかりやすい!償うと贖うの違いとは?読み方や漢字の意味も現役塾講師が詳しく解説

この記事では「償う」と「贖う」の違いについてみていきます。意味が非常に近い言葉ですが、特に「贖う」に関しては字も難しいし、読み方すらわからない人も少なくないでしょう。今回はこれらの言葉の読み方からその違いまで、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

「償う」と「贖う」の読み方とざっくりした違い

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まずはそれぞれの漢字の読みを確認しておきましょう。「償う」については普段でも耳にしたり使う機会のある言葉かと思いますが、「つぐなう」と読みます。

贖うは「あがなう」と読む

では「贖う」という漢字の読み方はご存じですか?難しい字ですし、日常的に使う言葉でもないので、これまで目にしたことすらない方もいるかと思いますが、贖う「あがなう」と読みます。

償うと贖うのざっくりした違い

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償うと贖うに関して、それぞれの意味をおおまかに確認するためコトバンクを参照したいと思います。まず、償うは

1 金品を出して、負債や相手に与えた損失の補いをする。弁償する。
2 犯した罪などに対して、金品や行為でうめ合わせをする。

(出典:コトバンク)

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