この記事ではDVD-5とDVD-9の違いについて踏み込んでいきます。どちらも一見同じDVDですが、情報を記録する部分の構造が異なっており、データ容量も倍近く違う。今回はこの2つのDVDの違いのほか、DVDの特徴や種類について、大学で記録媒体の研究をしていたライターthrough-timeと一緒に解説していきます。

ライター/through-time

工学修士で、言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。学生時代に学んだ記録媒体の知識を生かしつつ、DVD‐5とDVDー9の違いについて掘り下げていく。

DVDとは

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直径12cm厚さ1.2mmの樹脂製ディスクで、映像コンテンツやソフトウェアの販売・頒布のほか、コンピュータのデータ記憶用としても用いられるDVD。種類もさまざまあり、読み取り専用や記録可能なもののほか、構造的な分類としてDVD-5DVD-9があります。

これらの違いを説明する前に、DVDやCD、ブルーレイに代表される光ディスク、またDVDの特徴や開発経緯について解説しましょう。

光ディスクとは

円盤状の記録媒体をディスクメディア(またはディスク)といい、中でも、レーザー光を照射することでデジタル信号を読み書きするもの光ディスク光学ディスク)と呼びます。樹脂製ディスクの表面に微細な加工を施した記録層や反射層、保護層などの複数の層を形成したもので、ほかのディスクメディアと比べて汚れや衝撃に強く、持ち運びがしやすいのが利点です。

光ディスクは数多くの規格が存在し、時期や特性により世代が分かれます。代表的な第1世代光ディスクがCD(Compact Disc)、第2世代DVD第3世代ブルーレイ(Blu-ray Disc,BD)です。

DVDの特徴

DVD映像コンテンツの記録媒体として開発された光ディスクです。CDやDVDの記録面には、デジタル信号を表す小さなくぼみピット)が刻まれていますが、DVDのピットはCDより高密度でサイズも小さくなっています。また、レーザー光も波長が短いものを採用しており、CD波長780nmの近赤外線レーザーであるのに対し、DVD波長650nmの赤色レーザーです。

結果、DVDの容量は一番少ないものでもCDの約7倍4.7GBとなり、CDでは不可能だった長時間映像の記録が可能になりました。

DVDの開発経緯

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DVDの開発は、「家庭でも映画並みの映像を手軽に楽しんでほしい」と考えたハリウッド映画業界が、日本のメーカーに技術開発を持ちかけたのが始まりです。しかし開発は困難を極めた上、DVDの規格を巡って、東芝を中心とするメーカー連合とフィリップス社・ソニーの連合が対立してしまいます。

ハリウッド側の要望は「当時のメディアを上回る高画質・高音質の映像を、CDと同じ12cmディスク片面に135分収録」でした。が、規格統一の折衷案としてそれぞれの陣営の技術を採用した結果、要望より2分少ない133分相当の容量を持つDVDが完成したのです。

DVDの種類

DVDは読み取り専用型と記録型があり、記録型も大きく2つに分けられます。

\次のページで「DVDの名称」を解説!/

読み取り専用型(DVD-ROM):販売・頒布用で、データの書き込みも削除も一切できません。ROMRead Only Memoryの略です。
ライトワンス型(DVD-R/+R/-R DL/+R DL):一度だけ書き込みができ、さらに空き容量がある限りは追記も可能なため追記型とも呼ばれます。RRecordableの略です。
リライタブル型(DVD-RW/+RW):何度も書き込みができますが、書き換えるにはすべてのデータをいったん削除する必要があります。RWReWritableの略です。なお、コンピュータ用に特化したDVD-RAMは、全消去しなくても書き換えることができます。

DVDの名称

登場当初、DVDは「Digital Video Disc」の略とされていました。しかし記録型の普及にともない、コンピュータのデータ記憶用メディアとしても用いられるようになったことから、現在は「多目的、多用途」の意味を持つ「versatile(ヴァーサタイル)」を採用した「Digital Versatile Disc」としています。

\次のページで「DVD-5とDVD-9の違い」を解説!/

DVD-5とDVD-9の違い

CD・DVDとも厚さ1.2mmのディスクですが、CDが1枚もののディスクであるのに対し、DVDは厚さ0.6mmのディスク2枚を貼り合わせています。2枚貼りにしたのは、記録面の保護層でもあるディスクを薄くすることで、レーザー光の読み取り精度を上げるためでした。が、結果的に熱や湿気による反りに強くなり、さらには片面1層/2層、表裏も使って両面1層/2層と、データ容量を増やすこともできたのです。

片面1層(4.7GB)のDVDをDVD-5片面2層(8.5GB)のDVDをDVD-9といいます。

DVD-5とDVD-9の種類

DVD-5は読み取り専用型(ROM)、ライトワンス型(±R)、リライタブル型(±RW)があります。

DVD-9は読み取り専用型とライトワンス型(±R DL)があり、後者はDLとも呼ばれますが、-R DLDual Layerデュアルレイヤー)、+R DLDouble Layerダブルレイヤー)とそれぞれ名称が異なるので注意が必要です。また、以前はどちらのDLもそれぞれに対応するドライブでなければ書き込みができませんでしたが、現在製造されているドライブの多くが、前述の「-」「+」を含め、すべてのDVD規格に対応しています。

DVD-5とDVD-9の構造

DVD-5・DVD-9とも記録層を持つディスクとダミーディスクを貼り合わせた構造で、DVD-5は記録層を1つ、DVD-9は2つ持っています

DVD-5は、ディスク表面にピットを作った後に光を全反射する金属膜を形成し、その上にダミーディスクを貼り合わせたものです。一方DVD-9は、ピットを作った上に光が一部透けて通る半透明の金属膜をつけ、その上にスペーサ層を作った後で、DVD-5と同じようにピット→反射しやすい金属膜を形成します。ダミーディスクを貼り合わせる過程は同じです。

2層にするとレーザー光の読み取り精度が落ちるため、各層の記録密度は1層より少なくなります。2層にしてもデータ容量が2倍にならないのはこのためです。

DVD-5とDVD-9の見分け方

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読み取り専用型に限ってですが、DVD-5とDVD-9の見分けが可能です

ディスク中心の穴から約10~15mmのところをよく見ると、文字列やバーコード状のパターンを確認できます。このパターンはNBCA(Narrow Burst Cutting Area)と呼ばれ、著作権保護のためにディスク1枚1枚に異なる固有情報を記録するものです。この文字列やバーコードが、DVD-5は1段、DVD-9は2段になっています

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DVD-5は片面1層、DVD-9は片面2層

DVD-5とDVD-9の違いは構造やデータ容量にあること、またDVDの特徴や種類について解説しました。ブルーレイに取って代わられつつあるDVDですが、値段が安価で手軽に使うことができ、いまだに根強い人気があります。大切な思い出の写真や動画、撮りだめたテレビ番組などを、DVD-5とDVD-9を使い分けて保存すれば、パソコンやレコーダーのHDDをすっきりさせることができますね。

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簡単にわかるDVD-5のDVD-9の違い!片面1層・2層とは?データ容量や見分け方も工学系院卒ライターがわかりやすく解説!


この記事ではDVD-5とDVD-9の違いについて踏み込んでいきます。どちらも一見同じDVDですが、情報を記録する部分の構造が異なっており、データ容量も倍近く違う。今回はこの2つのDVDの違いのほか、DVDの特徴や種類について、大学で記録媒体の研究をしていたライターthrough-timeと一緒に解説していきます。

ライター/through-time

工学修士で、言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。学生時代に学んだ記録媒体の知識を生かしつつ、DVD‐5とDVDー9の違いについて掘り下げていく。

DVDとは

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直径12cm厚さ1.2mmの樹脂製ディスクで、映像コンテンツやソフトウェアの販売・頒布のほか、コンピュータのデータ記憶用としても用いられるDVD。種類もさまざまあり、読み取り専用や記録可能なもののほか、構造的な分類としてDVD-5DVD-9があります。

これらの違いを説明する前に、DVDやCD、ブルーレイに代表される光ディスク、またDVDの特徴や開発経緯について解説しましょう。

光ディスクとは

円盤状の記録媒体をディスクメディア(またはディスク)といい、中でも、レーザー光を照射することでデジタル信号を読み書きするもの光ディスク光学ディスク)と呼びます。樹脂製ディスクの表面に微細な加工を施した記録層や反射層、保護層などの複数の層を形成したもので、ほかのディスクメディアと比べて汚れや衝撃に強く、持ち運びがしやすいのが利点です。

光ディスクは数多くの規格が存在し、時期や特性により世代が分かれます。代表的な第1世代光ディスクがCD(Compact Disc)、第2世代DVD第3世代ブルーレイ(Blu-ray Disc,BD)です。

DVDの特徴

DVD映像コンテンツの記録媒体として開発された光ディスクです。CDやDVDの記録面には、デジタル信号を表す小さなくぼみピット)が刻まれていますが、DVDのピットはCDより高密度でサイズも小さくなっています。また、レーザー光も波長が短いものを採用しており、CD波長780nmの近赤外線レーザーであるのに対し、DVD波長650nmの赤色レーザーです。

結果、DVDの容量は一番少ないものでもCDの約7倍4.7GBとなり、CDでは不可能だった長時間映像の記録が可能になりました。

DVDの開発経緯

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DVDの開発は、「家庭でも映画並みの映像を手軽に楽しんでほしい」と考えたハリウッド映画業界が、日本のメーカーに技術開発を持ちかけたのが始まりです。しかし開発は困難を極めた上、DVDの規格を巡って、東芝を中心とするメーカー連合とフィリップス社・ソニーの連合が対立してしまいます。

ハリウッド側の要望は「当時のメディアを上回る高画質・高音質の映像を、CDと同じ12cmディスク片面に135分収録」でした。が、規格統一の折衷案としてそれぞれの陣営の技術を採用した結果、要望より2分少ない133分相当の容量を持つDVDが完成したのです。

DVDの種類

DVDは読み取り専用型と記録型があり、記録型も大きく2つに分けられます。

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