この記事では緩むと弛むの違いについてみていきます。どちらも「ゆるむ」と読むことができて、糸のように強く張りつめていたものが、弱くなってしまったときに使う言葉ですが、文章を書いていてどっちの漢字を使おうか迷ったりしたことはないか?「ゆるむ」とはまた別の読み方や細かい意味の違いのあるこれらの言葉を、使い分けまでわかりやすく、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

「緩む」と「弛む」それぞれ何と読む?

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「緩む」と「弛む」、どちらもなかなか難しい漢字ですが読み方はご存じですか?まずはそれらを確認していきましょう。

「緩む」はゆるむと読む

「緩」という漢字は、「緩む」と送り仮名をおくった場合には「ゆるむ」としか読みません

「弛む」には複数の読み方がある!

「弛」の字は、同じように「弛む」と送り仮名をふっても、違う読み方をする場合があります。それは「ゆるむ」「たるむ」「たゆむ」の三つです。おおまかな意味としては同じですが、使われる場面など微妙な違いがあるので、後ほどくわしく説明したいと思います。

「緩む」の読み「ゆるむ」だけ!「弛む」の読み「ゆるむ」「たるむ」「たゆむ」の三つ!

「緩」と「弛」の漢字を詳しく説明

つづいて「緩む」や「弛む」といった言葉についてより深く知るために、それぞれの漢字について着目してみたいと思います。

\次のページで「「緩」の漢字をわかりやすく説明!」を解説!/

「緩」の漢字をわかりやすく説明!

「緩」は糸へんの漢字ですが、右側にある「爰」という字は、漢詩などにおいては「爰爰」と二つ続けて書くことで、「のんびり」だったり「ゆるやか」といった意味で使われています。糸がゆるやかになっている様子からこの字があてられるようになったと考えれば「緩」「ゆるむ」と読むのも納得できますよね。

「弛」の漢字をわかりやすく説明!

「弛」の字は弓へんの漢字ですが、右側の「也」には、元々はヘビを表していた字ではないかという説があります。この説が正しかったとするならば、弓にピンと張った糸がヘビのようにゆるゆるになってしまった様子から「ゆるむ」や「たるむ」といった意味や読み方があてられたのかもしれません。

このように「弛」の字も「緩」と同じように、糸のようなものの張り具合が弱くなるイメージが根源にあるので、どちらも「ゆるむ」という読みを持ち、同じような意味の字を二つ重ねた「弛緩」(しかん)という熟語が生まれたりしたのでしょう。

「ゆるむ」と「たるむ」、「たゆむ」の違いとは?

「ゆるむ」「たるむ」「たゆむ」はそれぞれ似たような意味を持つ言葉ですが、使われる場面や使われ方には微妙な違いがあります。それをくわしく見ていきましょう。

糸のような張っているもの以外で「ゆるむ」を使う場面

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「ゆるむ」は例えば、糸のように強く張りつめていたものが、弱くなってしまった時などに「糸がゆるんだ」と言うことがありますが、

かたく締めたはずのネジがゆるんだ。

\次のページで「「たるむ」を使うのは「張っているもの」について!」を解説!/

というように、糸などのような張りつめているもの以外でも、もともと強かったものがその強さを失ったような場面で使われることがあります。

「たるむ」を使うのは「張っているもの」について!

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「たるむ」は糸そのものの張りが弱くなって垂れさがってしまったイメージを強くふくんでいて、「ゆるむ」のようにピンと張っているもの以外に使われることはありません

かたく締めたはずのネジがたるんだ

と言われると不自然な感じがしますよね?日常では、

「最近、お肌のハリが無くなって、ほっぺたがたるんできちゃった

のような会話で使われることもあるかと思いますが、ここでもやはり「ほっぺた」という、以前はハリがあったものが無くなり、垂れさがってきたイメージがふくまれていることが感じられると思います。

\次のページで「「たゆむ」が使われるのは限られた場面」を解説!/

「たゆむ」が使われるのは限られた場面

「たゆむ」という言葉は少し古い表現なので、これまでに聞いたことのなかった方もいらっしゃるでしょう。現在ではあまり、話しことばとして使われることはありませんが、小説や本において書き言葉としてなら出会う機会もあるかもしれません。

「たゆむ」は、「ゆるむ」や「たるむ」と同じく糸などの張りつめていたものがゆるくなった時に使うこともできますが、実際の物質ではなく、気持ちや精神といった目に見えないメンタル的なものが、ゆるくなったり、しまりが無くなった時の方が主に使われることの多い言葉です。

「ゆるむ」を漢字で書くときは緩む?それとも弛む?

漢字の読みや、それぞれの使い分けについて見てきましたが、それでは逆に「ゆるむ」を漢字で書くには「緩む」と「弛む」、どちらを書けばいいのでしょうか?意味としては違いがないため、どちらを使っても間違いとはいいません。

しかし、一般の社会生活で使われる目安となっている漢字を常用漢字と言いますが、「緩」という漢字はその常用漢字の中に含まれていて、中学生の間に習うことになっている字でもあります。

一方の「弛」の字は常用漢字ではありませんし、ここまで見てきたように「弛む」という送り仮名の場合、「ゆるむ」「たるむ」「たゆむ」と複数の読み方ができてしまうため、特別なこだわりでもない限りは「緩む」の方を使うことがおすすめです。

「弛む」は場面や読み方によって意味が微妙に違う!

「緩む」ゆるむとしか読みませんし、糸の張り具合やネジのしまり具合など、もともと強さを持っていたものがその強さを失ったときなどに使います。

「弛む」は、「ゆるむ」と読むなら意味としては「緩む」と違いはありません。「弛む」を「たるむ」という読みで使うのは、主に糸や肌など、もともとハリのあるはずの物のしまりがなくなったときです。「弛む」を「たるむ」で使うのは、気持ちや精神といったメンタル的なもののしまりがなくなったときに多く使われます。このようにさまざまな読み方があり、その読み方によって微妙に意味が異なるのが「弛む」という字です。

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雑学

簡単でわかりやすい!緩むと弛むの違いとは?読み方や漢字の意味・使い分けも現役塾講師が詳しく解説

「緩」の漢字をわかりやすく説明!

「緩」は糸へんの漢字ですが、右側にある「爰」という字は、漢詩などにおいては「爰爰」と二つ続けて書くことで、「のんびり」だったり「ゆるやか」といった意味で使われています。糸がゆるやかになっている様子からこの字があてられるようになったと考えれば「緩」「ゆるむ」と読むのも納得できますよね。

「弛」の漢字をわかりやすく説明!

「弛」の字は弓へんの漢字ですが、右側の「也」には、元々はヘビを表していた字ではないかという説があります。この説が正しかったとするならば、弓にピンと張った糸がヘビのようにゆるゆるになってしまった様子から「ゆるむ」や「たるむ」といった意味や読み方があてられたのかもしれません。

このように「弛」の字も「緩」と同じように、糸のようなものの張り具合が弱くなるイメージが根源にあるので、どちらも「ゆるむ」という読みを持ち、同じような意味の字を二つ重ねた「弛緩」(しかん)という熟語が生まれたりしたのでしょう。

「ゆるむ」と「たるむ」、「たゆむ」の違いとは?

「ゆるむ」「たるむ」「たゆむ」はそれぞれ似たような意味を持つ言葉ですが、使われる場面や使われ方には微妙な違いがあります。それをくわしく見ていきましょう。

糸のような張っているもの以外で「ゆるむ」を使う場面

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「ゆるむ」は例えば、糸のように強く張りつめていたものが、弱くなってしまった時などに「糸がゆるんだ」と言うことがありますが、

かたく締めたはずのネジがゆるんだ。

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