「南無阿弥陀仏」と「南無妙法蓮華経」どちらも寺で唱えられているものですが、この2つの違いについて考えたことはあるでしょうか?今回はその違いと、それぞれの宗派の特徴について見ていく。学芸員ライターkuroakaと一緒に解説していきます。

ライター/kuroaka

博物館・美術館好きで学芸員の資格を持つWebライター。お寺巡りも好きで、最近だと「南無阿弥陀仏」を口から出している空也上人像を拝みに京都まで足を運んだ。

「南無阿弥陀仏」「南無妙法蓮華経」の違いは宗派

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「南無阿弥陀仏」と「南無妙法蓮華経」、少なくとも一度は耳にしたことがあると思います。聞いたことはあるけれど、その意味や違いはよくわからないという人も多いのでは?実はこのふたつ、宗派によってどちらを唱えるか変わるんです。詳しくみていきましょう。

南無阿弥陀仏:浄土宗・浄土真宗など

まず、南無阿弥陀仏は「なむあみだぶつ」と読みます。南無阿弥陀仏と唱えるのは浄土宗・浄土真宗・真宗・天台宗などです。特に浄土宗・浄土真宗でよく唱えられます。

「南無」と「阿弥陀仏」2つの言葉から成り立っており、意味は「南無」は「心のより所としてあがめる」、「阿弥陀仏」は阿弥陀如来のことです。つまり南無阿弥陀仏は「阿弥陀如来様を心のより所にしてあがめます」という意味。仏様への信仰を口に出すことで、救いの手を差し伸べてもらおうという行いになります。ちなみに「ナンマンダブ」「ナンマイダー」も南無阿弥陀仏と同一のものです。

南無妙法蓮華経:日蓮宗

南無妙法蓮華経は「なむみょうほうれんげきょう」と読みます。こちらは日蓮宗で唱えられているものです。南無妙法蓮華経も「南無(心のより所としてあがめる)」と「妙法蓮華経」に意味が分かれます。「妙法蓮華経」とは日蓮宗の経典「法華経」の別名。「経典である法華経を心のより所としてあがめます」となり、「仏様の教えを大切にします」と唱えているわけです。

法華経の教えでは人や動物・植物を問わずすべてのものに「仏様の心」があると説かれています。南無妙法蓮華経と唱えることはすべての仏様に感謝することです。また同時に自分の中の仏様を見出すことができると考えられています。

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その他の宗派の念仏は?

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最後に他の宗派の念仏をご紹介します。人によっては「南無阿弥陀仏」や「南無妙法蓮華経」より聞きなじみのある念仏があるかもしれません。

・臨済宗:南無釈迦牟尼仏(なむしゃかにぶつ)
・曹洞宗:南無釈迦牟尼仏(なむしゃかにぶつ)
・真言宗:南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)

いずれも「南無」の後はそれぞれの宗派の本尊の名前になっています。臨済宗・曹洞宗の「釈迦牟尼仏」はお釈迦様の別名です。真言宗の「大師遍照金剛」は本尊である大日如来と、開祖である空海を指しています。

「念仏」「お経」「お題目」の違いは?

「馬の耳に念仏」「お経を唱える」、よく聞きますが、「念仏」と「お経」の違いはわかりますか?「お題目」の意味は?紛らわしい言葉を一挙に説明します。

お経」はお釈迦様の説かれた教えを記録としてまとめたもの。お釈迦様の教えは口承で伝えられ、弟子たちがそれをまとめ、その後文字に起こされました。「念仏」は仏様の名前を念じること。つまり、阿弥陀如来の名前が含まれた「南無阿弥陀仏」は念仏です。「お題目」は現代風に言えば「タイトル」のこと。「南無妙法蓮華経」は経典の名前なので念仏とは言わずお題目と言います。

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「南無阿弥陀仏」と「南無妙法蓮華経」の宗派の特徴を詳しく解説

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「南無阿弥陀仏」と「南無妙法蓮華経」は宗派が違うことがわかりました。しかしどちらも仏教で、何の違いがあるかまだ疑問が残る人もいると思います。そこで次は「南無阿弥陀仏」がよく唱えられる浄土宗・浄土真宗と、「南無妙法蓮華経」と唱える日蓮宗の特徴についてみていきましょう。

浄土宗の特徴

「南無阿弥陀仏」を唱える浄土宗は、平安時代の終わり頃に法然によって開かれます。平安時代の終わりは、戦や飢饉で人々が苦しみ不安や不満が充満する世でした。しかし日本に伝来した当初の仏教は、苦しい修行を乗り越えた者でないと救われないとされており、一般大衆向けではありませんでした。

そこで法然が、厳しい修行をしたり難しいお経を覚えたりしなくても「南無阿弥陀仏と唱えるだけで救われる」と説きました。わかりやすいこの教えは仏教が広まるきっかけをつくりましたが、同時に他の僧から反発が生じ法然は迫害されることになります。

浄土真宗の特徴

浄土真宗を開いたのは法然の弟子の親鸞です。親鸞は「南無阿弥陀仏と唱えなくても救いを信じるだけで救われる」という絶対他力を説きました。他力の「他」は阿弥陀のことです。また悪人は善人よりも自分の悪いところを自覚しており阿弥陀にすがる気持ちが強いことから、「悪人こそ救われる」としています。

日蓮宗の特徴

「南無妙法蓮華経」を唱える日蓮宗は、鎌倉時代に日蓮によって開かれました。日蓮は比叡山での修行を通して「法華経」の教えこそが世の中を救うものだと悟ります。法華経にはすべてのお経が含まれお釈迦様の真の心が表されているものです。日蓮宗での法華経は「生きるものすべてが仏になれる」と説いています。

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「南無阿弥陀仏」は浄土宗・浄土真宗、「南無妙法蓮華経」は日蓮宗で唱えられる

「南無阿弥陀仏」と「南無妙法蓮華経」では唱えられる宗派が違いました。「南無阿弥陀仏」は浄土宗・浄土真宗などで、念仏です。対し「南無妙法蓮華経」は日蓮宗で唱えられ、お題目と言われています。それぞれの宗教が生まれた理由は多くの人を救うため。今でも何か嫌なことがあると「南無阿弥陀仏」「南無妙法蓮華経」と唱えてしまうのはこのためなんですね。

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3分で簡単にわかる!「南無阿弥陀仏」と「南無妙法蓮華経」の違いとは?宗派や特徴を学芸員ライターがわかりやすく解説

「南無阿弥陀仏」と「南無妙法蓮華経」どちらも寺で唱えられているものですが、この2つの違いについて考えたことはあるでしょうか?今回はその違いと、それぞれの宗派の特徴について見ていく。学芸員ライターkuroakaと一緒に解説していきます。

ライター/kuroaka

博物館・美術館好きで学芸員の資格を持つWebライター。お寺巡りも好きで、最近だと「南無阿弥陀仏」を口から出している空也上人像を拝みに京都まで足を運んだ。

「南無阿弥陀仏」「南無妙法蓮華経」の違いは宗派

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「南無阿弥陀仏」と「南無妙法蓮華経」、少なくとも一度は耳にしたことがあると思います。聞いたことはあるけれど、その意味や違いはよくわからないという人も多いのでは?実はこのふたつ、宗派によってどちらを唱えるか変わるんです。詳しくみていきましょう。

南無阿弥陀仏:浄土宗・浄土真宗など

まず、南無阿弥陀仏は「なむあみだぶつ」と読みます。南無阿弥陀仏と唱えるのは浄土宗・浄土真宗・真宗・天台宗などです。特に浄土宗・浄土真宗でよく唱えられます。

「南無」と「阿弥陀仏」2つの言葉から成り立っており、意味は「南無」は「心のより所としてあがめる」、「阿弥陀仏」は阿弥陀如来のことです。つまり南無阿弥陀仏は「阿弥陀如来様を心のより所にしてあがめます」という意味。仏様への信仰を口に出すことで、救いの手を差し伸べてもらおうという行いになります。ちなみに「ナンマンダブ」「ナンマイダー」も南無阿弥陀仏と同一のものです。

南無妙法蓮華経:日蓮宗

南無妙法蓮華経は「なむみょうほうれんげきょう」と読みます。こちらは日蓮宗で唱えられているものです。南無妙法蓮華経も「南無(心のより所としてあがめる)」と「妙法蓮華経」に意味が分かれます。「妙法蓮華経」とは日蓮宗の経典「法華経」の別名。「経典である法華経を心のより所としてあがめます」となり、「仏様の教えを大切にします」と唱えているわけです。

法華経の教えでは人や動物・植物を問わずすべてのものに「仏様の心」があると説かれています。南無妙法蓮華経と唱えることはすべての仏様に感謝することです。また同時に自分の中の仏様を見出すことができると考えられています。

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