みんなは「総武線」を知っているか?首都圏に住んでいる人ならほとんどの人は知っているでしょう。東京都と千葉県を結ぶ関東の主要なJRの路線です。

ただ、ややこしいのはこの「総武線」、時と場合によっては「総武本線」とも言われたりするんですね。実はこの「総武線」と「総武本線」、違うと言えば違うし、同じと言えば同じ…というなかなかややこしいものなのです。

今回は、その「総武線」「総武本線」の違いについて、元千葉県民の日本語教師、"むかいひろき"と一緒に解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で働く日本語教師。かつては総武線沿線に暮らしていた。そして関東・関西の鉄道ファンの一面もあり。それらの経験と趣味を活かし、「総武線」「総武本線」について分かりやすく解説していく。

そもそも「総武」って何?

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「総武線」「総武本線」という名称は関東の人にとってはなじみ深いものですが、それ以外の地域の人にとってはピンと来ないかもしれません。まずは「総武」という言葉から、「総武線」や「総武本線」がどの辺りを走っている電車なのかを確認していきましょう。

下総国・上総国の「総」と、武蔵国の「武」

「総武(そうぶ)」という言葉は、かつての日本の律令制度によって決められた地方行政区分に由来する言葉です。

明治時代以前は、現在の千葉県北部と東京都の東端部、埼玉県南部の一部と茨城県南西部は「下総国(しもうさのくに)」と呼ばれており、千葉県中南部は「上総国(かずさのくに)」と呼ばれていました。また、現在の東京都と埼玉県、そして神奈川県川崎市・横浜市の一帯は「武蔵国(むさしのくに)」でした。

この「下総国」「上総国」「武蔵国」の一帯を指す言葉として生まれたのが「総武」です。現在、一般的には「千葉県(総)と東京都(武)」一帯を表す言葉として使用されています。つまり「総武」という言葉を用いた「総武線」は、「千葉県()と東京都()を結ぶ路線()」というわけです。

正式には「総武本線」だけしかない!?

「総武線」「総武本線」の違いについてはこの後の章で詳しく説明しますが、実は正式には両者の違いはありません。国土交通省鉄道局の監修を受け毎年発行される、日本の鉄道会社の営業状況をまとめた正式な書物に『鉄道要覧』があります。

この『鉄道要覧』には、本線として東京駅~銚子駅を、支線として錦糸町駅~御茶ノ水駅を結ぶ路線として、「総武本線」の名前のみが掲載されており、「総武線」の名称は存在しません

「総武線」と「総武本線」の違いは乗客への案内

ただ、一方で実際に駅やインターネットで路線図や案内表示を見たり時刻表を見たりすると、「総武線」も「総武本線」も存在しています。そして「総武線」と「総武本線」で走っている車両にも違いがありますね。

つまり、正式には「総武本線」しか存在しませんが、乗客への案内上や実際の路線には「総武線」と「総武本線」の区別があるというわけです。この章では「総武線」と「総武本線」の区別について、詳しく見ていきましょう。

いわゆる「総武線」その1.中央・総武線各駅停車

当線の主力車両のE231系500番台 (2022年9月 御茶ノ水駅 - 水道橋駅間)
MaedaAkihiko - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

一般的に「総武線」と呼ばれる路線は2つあり、その1つが「中央・総武線各駅停車」です。黄色いラインの列車で、千葉駅~三鷹駅(東京都三鷹市)を各駅停車で走ります。(一部列車は三鷹駅よりさらに西の「中央線」内に乗り入れ。)路線図上では千葉駅~御茶ノ水駅までが「総武線各駅停車」、御茶ノ水駅~三鷹駅までが「中央線各駅停車」となります。

その名前の通り、「中央線」と「総武線」にまたがって運行されている路線です。千葉県や東京都の通勤・通学の利用客を多く乗せているため、ラッシュ時はとても混雑します。

\次のページで「いわゆる「総武線」その2. 総武快速線」を解説!/

いわゆる「総武線」その2. 総武快速線

Series-E235-1000 J10.jpg
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一般に「総武線」と呼ばれている路線のもう一つが、「総武快速線」です。青とクリーム色のラインの列車で、千葉駅~東京駅を一部の駅を通過しながら走行します。なお、実際に千葉駅や東京駅を終点とせずさらに先まで行く列車が多く、特に東京より先の「横須賀線」に入り横須賀駅や久里浜駅まで向かったり、そこから発車したりする列車が多いです。車両も「総武快速線」と「横須賀線」で同じ車両を使用しています。よって、「横須賀・総武線快速」と呼ばれることも多いですね。

先ほどご紹介した「中央・総武各駅停車」とは、千葉駅~錦糸町駅までは一部の駅を通過しながら同じ路線を走行します。錦糸町駅で「中央・総武線各駅停車」と分離し、「中央・総武線各駅停車」は御茶ノ水駅方面へ、「総武快速線」は東京駅方面へ、別の線路を進んでいくのです。

いわゆる「総武本線」

209系2100番台
MaedaAkihiko - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

では、乗客案内上の「総武本線」はどこを走る路線でしょうか?「総武本線」は千葉駅~銚子駅(千葉県銚子市)を結ぶ路線を指します。一部「総武快速線」など他線から乗り入れてくる列車もありますが、青と黄色のラインの車両がこの路線の主力です。

「総武快速線」に乗り入れる列車以外は全て各駅停車で運行されています。「総武快速線」の乗り入れ列車は通勤快速が途中の佐倉駅まで、快速は途中の成東駅までしか「総武本線」内では運行されません。

簡潔にまとめると、千葉駅を基準として千葉駅より西を走るのが「総武線」千葉駅より東を走るのが「総武本線」となります。そして、「総武線」には「中央・総武線各駅停車」と「総武快速線」の2つがあるのも大事なポイントですね。

「総武線」と「総武本線」の重要な駅を見てみよう!

続いて、「総武線」と「総武本線」の違い、「総武線」内の路線の違いを考える上で重要となる3つの駅をご紹介します。「千葉駅」「東京駅」「錦糸町駅」です。それぞれの駅と「総武線」「総武本線」との関わりを、ここでは紹介していきます。

千葉駅:「総武線」と「総武本線」が共存する駅

千葉駅は「総武線」と「総武本線」が共存する駅です。「総武線」(「中央・総武線各駅停車」と「総武快速線」)の終点・起点の駅であり、「総武本線」の終点・起点の駅でもあります。よって「総武線」と「総武本線」の車両を、他路線への乗り入れに関係なく常時見ることができる唯一の駅ですね。

東京駅:「総武快速線」と「横須賀線」の境目

「総武線」にとって東京駅は、「総武快速線」の終点・起点となる駅です。ただ実際にはここで終点となる列車は少なく、さらに先の横須賀線内に入っていったり、逆に横須賀線内から乗り入れてくる列車が多いですね。「総武快速線」と「横須賀線」は同じ車両ですが、「総武線」内を走る場合は「快速」扱いとなり、錦糸町駅~千葉駅間の一部の駅を通過します。一方で「横須賀線」内は各駅停車です。

そのため、車両に種別表示がある車両では東京駅から「横須賀線」内に入る場合は「普通」と表示され、逆に東京駅から「総武線」内に入る場合は「快速」と表示されます。この「普通」と「快速」の種別表示が切り替わる駅が、東京駅なのです。

\次のページで「錦糸町駅:「総武線」が2つに分離する駅」を解説!/

錦糸町駅:「総武線」が2つに分離する駅

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「錦糸町駅」は千葉駅から同じ路線を走ってきた「中央・総武線各駅停車」と「総武快速線」が2つに分離する駅です。千葉方面から走ってきた列車が錦糸町駅を過ぎると、「中央・総武線各駅停車」はそのまま高架を走り次の両国駅へ、一方の「総武快速線」は地下に入り馬喰町駅へと向かっていきます。

ここから先、この2つの線が交わることはありません。逆に御茶ノ水駅や東京駅方面から走行する場合は、錦糸町駅で2つの線が一緒になるとも言えますね。

東京~千葉は「総武線」、 千葉~銚子は「総武本線」

今回は「総武線」と「総武本線」の違いについて解説しました。簡潔にまとめると、東京駅~千葉駅、御茶ノ水駅~千葉駅を結ぶ路線は「総武線」千葉駅~銚子駅を結ぶ路線は「総武本線」となります。千葉駅より西が「総武線」千葉駅より東が「総武本線」ですね。千葉駅が「総武線」と「総武本線」の分岐点だと覚えればよいでしょう。

首都圏の人にとってはなじみ深い路線でも、関西などそのほかの地域の人にとってはとてもややこしいものです。もう少し異なった路線名をつけられなかったのでしょうか…。

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雑学

簡単でわかりやすい!「総武線」と「総武本線」の違いとは?正式には「総武本線」だけしかない!?元千葉県民の日本語教師が詳しく解説

みんなは「総武線」を知っているか?首都圏に住んでいる人ならほとんどの人は知っているでしょう。東京都と千葉県を結ぶ関東の主要なJRの路線です。

ただ、ややこしいのはこの「総武線」、時と場合によっては「総武本線」とも言われたりするんですね。実はこの「総武線」と「総武本線」、違うと言えば違うし、同じと言えば同じ…というなかなかややこしいものなのです。

今回は、その「総武線」「総武本線」の違いについて、元千葉県民の日本語教師、”むかいひろき”と一緒に解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で働く日本語教師。かつては総武線沿線に暮らしていた。そして関東・関西の鉄道ファンの一面もあり。それらの経験と趣味を活かし、「総武線」「総武本線」について分かりやすく解説していく。

そもそも「総武」って何?

image by iStockphoto

「総武線」「総武本線」という名称は関東の人にとってはなじみ深いものですが、それ以外の地域の人にとってはピンと来ないかもしれません。まずは「総武」という言葉から、「総武線」や「総武本線」がどの辺りを走っている電車なのかを確認していきましょう。

下総国・上総国の「総」と、武蔵国の「武」

「総武(そうぶ)」という言葉は、かつての日本の律令制度によって決められた地方行政区分に由来する言葉です。

明治時代以前は、現在の千葉県北部と東京都の東端部、埼玉県南部の一部と茨城県南西部は「下総国(しもうさのくに)」と呼ばれており、千葉県中南部は「上総国(かずさのくに)」と呼ばれていました。また、現在の東京都と埼玉県、そして神奈川県川崎市・横浜市の一帯は「武蔵国(むさしのくに)」でした。

この「下総国」「上総国」「武蔵国」の一帯を指す言葉として生まれたのが「総武」です。現在、一般的には「千葉県(総)と東京都(武)」一帯を表す言葉として使用されています。つまり「総武」という言葉を用いた「総武線」は、「千葉県()と東京都()を結ぶ路線()」というわけです。

正式には「総武本線」だけしかない!?

「総武線」「総武本線」の違いについてはこの後の章で詳しく説明しますが、実は正式には両者の違いはありません。国土交通省鉄道局の監修を受け毎年発行される、日本の鉄道会社の営業状況をまとめた正式な書物に『鉄道要覧』があります。

この『鉄道要覧』には、本線として東京駅~銚子駅を、支線として錦糸町駅~御茶ノ水駅を結ぶ路線として、「総武本線」の名前のみが掲載されており、「総武線」の名称は存在しません

「総武線」と「総武本線」の違いは乗客への案内

ただ、一方で実際に駅やインターネットで路線図や案内表示を見たり時刻表を見たりすると、「総武線」も「総武本線」も存在しています。そして「総武線」と「総武本線」で走っている車両にも違いがありますね。

つまり、正式には「総武本線」しか存在しませんが、乗客への案内上や実際の路線には「総武線」と「総武本線」の区別があるというわけです。この章では「総武線」と「総武本線」の区別について、詳しく見ていきましょう。

いわゆる「総武線」その1.中央・総武線各駅停車

当線の主力車両のE231系500番台 (2022年9月 御茶ノ水駅 - 水道橋駅間)
MaedaAkihiko投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

一般的に「総武線」と呼ばれる路線は2つあり、その1つが「中央・総武線各駅停車」です。黄色いラインの列車で、千葉駅~三鷹駅(東京都三鷹市)を各駅停車で走ります。(一部列車は三鷹駅よりさらに西の「中央線」内に乗り入れ。)路線図上では千葉駅~御茶ノ水駅までが「総武線各駅停車」、御茶ノ水駅~三鷹駅までが「中央線各駅停車」となります。

その名前の通り、「中央線」と「総武線」にまたがって運行されている路線です。千葉県や東京都の通勤・通学の利用客を多く乗せているため、ラッシュ時はとても混雑します。

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