
人類初にして永遠のテーマ「不死への希求」
「ギルガメッシュ叙事詩」は人類最古にして初めてその永遠のテーマを掲げました。エンキドゥを失ったギルガメッシュは永遠の命を求めてウルクを離れます。そして、長い旅の末に不死の王ウトナピシュティムを訪ねました。しかし、彼はこの不死は神々が起こした大洪水の償いだ、と言い、ギルガメッシュに不死を授けることはできないとします。また、ウトナピシュティムは「人は死すべき運命にある」ことを説きました。
一方で、ウトナピシュティムはギルガメッシュに若返りの草の場所を教えてくれます。ギルガメッシュは若返りの草を手に入れることはできたのですが…、ウルクへの帰り路の途中、水浴びをしているときに蛇に草を食べられてしまうのです。
結局、不死も若返りさえも手に入れられなかったギルガメッシュは失意のままウルクへ戻ったのでした。帰還した彼はよく国を治め、人々に惜しまれながら亡くなったとされています。
3.「ギルガメッシュ叙事詩」がヨーロッパを震撼させる!?
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現代のように紙や電子といった記録媒体のない古代のメソポタミアでは、「粘土板」という粘土でできた板に楔形文字を記して記録していました。「ギルガメッシュ叙事詩」も粘土板に楔形文字で記録され、その後に周辺の諸民族の言葉に訳されて他国へと伝わります。
そうして現代にまで残ったのが、メソポタミア北部に誕生するアッシリア帝国の都市ニネヴェに建っていたアッシュールバニパルの図書館から発見された「ギルガメッシュ叙事詩」を書いた粘土板でした。
粘土板が解読され、「ギルガメッシュ叙事詩」の内容が明らかにされるとヨーロッパに衝撃を与えることになったのです。
聖書が最古じゃない!?キリスト世界を震撼させた発見
前章の「ギルガメッシュ叙事詩」のなかでウトナピシュティムが語った大洪水は、神々が洪水によって人類を抹殺しようとし、エア神の警告によって彼が船を造り、家族や動物たちを乗せて難を逃れたという「洪水神話」です。
けれど、この洪水神話をどこかで聞いたことはありませんか?そう、キリスト教の聖書にある「ノアの箱舟」ですね。
大英図書館の修復員であり、アッシリアの研究者ジョージ・スミスが「ギルガメッシュ叙事詩」を解読し、ウトナピシュティムの語る洪水神話は「ノアの箱舟」の原型にあたるという論文を1872年に発表しました。それまで聖書が世界最古だと信じていたヨーロッパでは、聖書よりも先に「ギルガメッシュ叙事詩」があったと大いに驚き、認識が改められたのです。
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ギルガメッシュ王と相棒エンキドゥの世界最古の友情物語
紀元前3000年ごろに誕生したメソポタミア文明の地のひとつシュメール人の都市国家ウルクを舞台にした「ギルガメッシュ叙事詩」。主人公のウルクの王ギルガメッシュは並ぶもののいない半神半人の王でした。しかし、ギルガメッシュ王の悪行を見かねた神々によって遣わされた彼と同等の力を持つエンキドゥと戦うことで改心。エンキドゥを無二の親友としてギルガメッシュ王の冒険が描かれます。
物語はギルガメッシュ王を中心にエンキドゥとの出会いと別れを起点にして転換し、エンキドゥの死をきっかけにギルガメシュ王は人類永遠のテーマとなる不老不死を追い求めました。そのなかで、「人は死すべきもの」という死生観を示したのです。