この記事では真剣と居合刀の違いについて見ていきます。武士の魂である真剣と、現代武道の居合道で使用される居合刀。どちらも金属でできた刀で、形や雰囲気はよく似ているな。ですがそもそも使う目的に違いがあるから、強度や取り扱い方、価格なども大きく異なってくるんです。
今回はそんな2つの違いを、模造刀や模擬刀との違いも含めて、雑学好きライターのかみかわかなえと一緒に解説していきます。

ライター/かみかわかなえ

雑学好きライター。刀剣や武将が好きで地元の博物館や歴史的名所にせっせと足を運んでいる。推し刀剣は日光一文字。

真剣と居合刀について知りたい!

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真剣と居合刀にはどのような違いがあるのでしょうか。一般的な居合刀と真剣はどちらも金属で作られていますし、形もそっくりです。しかし、異なる目的で作られた2つの刀には明確な違いがいくつもありますよ。

真剣と居合刀の目的の違いとは?そもそも、居合刀とはなんなのか?まずは真剣と居合刀がどのようなものなのかについて、一緒に確認していきましょう。

真剣と居合刀ってどんなもの?

真剣(しんけん)とは日本刀のこと、刃の付いたいわゆる本物の刀のことを指します。一般的な定義では、「玉鋼(たまはがね)」という材料を使い「折り返し鍛錬(おりかえしたんれん)」などといった日本特有の方法でつくられた刀剣類のことです。玉鋼や折り返し鍛錬については後ほどご紹介しますね。

一方で居合刀(いあいがたな・いあいとう)とは、現代武道の1つである「居合道(いあいどう)」で使用される武具です。現代武道とは、昔から継承されてきた実戦での戦闘術をアレンジし、現代の競技にしたもの。居合道では段位によって真剣を使用することもありますが、通常は刃の付いていない=切れない居合刀を使います。

一瞬を制す!知る人ぞ知る「居合道」の世界

ふつう昔からの戦闘術というと、大勢の兵士が入り乱れる戦場での戦い方や技をイメージしますよね。ですが、居合の想定している場面や使われるシチュエーションはそこからかなりかけ離れています。

居合が最も有効なのは、家にいるときや街中を歩いているとき。つまり、臨戦態勢にないふつうの状態から不意打ちで攻撃を受けたときです。まだ刀も抜いていない絶体絶命の状態から、一瞬で相手を迎撃するために生まれた戦い方。それが居合です。

一般的な居合道の試合では、物を切ったり対戦相手と刀を打ち合わせたりすることはありません。選手は2名同時に抜刀から始まる「形(かた)」の演武を行い、審判が作法や技の正確性を判定する形式です。

\次のページで「真剣と居合刀のざっくりとした違い」を解説!/

真剣と居合刀のざっくりとした違い

ここまで見てきたことをざっくりまとめると、真剣は武器、居合刀は居合道で使用される武具です。ただし意外なことに、これまでの歴史上で真剣が主要な武器として使われていた時代はほとんどありません。戦場で活躍するのは弓や鉄砲、槍などで、真剣は美術品や信仰の対象・権力を見せつけるものとしての役割も大きかったようです。それでも本来は武器として生まれたものですから、切るという能力が求められます。

一方、居合刀を使用する目的はなにかを切ることではありません。したがって物を切る能力は必要ありませんが、刀を振りかぶったり振りおろしたりする居合道の動きに耐えられるだけの強度が求められます。

真剣と居合刀の違いを詳しく!

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真剣と居合刀のざっくりとした違いについて確認しました。2つの刀は使う目的や求められることに違いがあるわけですが、そうすると刀身の素材や作り方、入手後の取り扱い方法などにも当然ながら差が出てきます

玉鋼とは一体何なのか?居合刀のお手入れは真剣と同じでいいのか?真剣と居合刀の詳しい違いについて、一緒に確認していきましょう!

その1.素材

真剣の素材は玉鋼(たまはがね)と呼ばれる鉄の一種です。アニメやゲームで耳にしたことがある方も多いかもしれませんね。鉄は含まれている炭素の量で呼び名が変わります。玉鋼は炭素の量が1~1.5%のもののことです。

居合刀は真鍮(しんちゅう)、亜鉛、アルミニウムなどの合金にメッキをほどこしてつくられています。次でご紹介する「砂型鋳造法(すながたちゅうぞうほう)」という手法を用いるとアルミニウムの比率を高めることができ、軽くて丈夫な刀作りが可能になりますよ。

\次のページで「その2.作り方」を解説!/

その2.作り方

真剣は、熱した玉鋼を叩いてのばし、折って重ねて、また叩いてのばす…という「折り返し鍛錬」の手法で作られます。真剣作りには「造込み(つくりこみ)」や「焼き入れ(やきいれ)」など数多くの工程がありますが、ざっくりまとめると玉鋼を熱し、熱いうちに叩いて形を作り、冷却する作業です。

居合刀の作り方は「砂型鋳造法(すながたちゅうぞうほう)」。砂をかためて作った型に、溶かした金属を流し込み、冷却する方法です。重力を利用してゆっくりと製造されるため気泡を含みにくく、密度が高い丈夫な刀身を作ることが可能。また、前述の通りアルミニウムの比率を高めることができるため、軽くて安全性の高い刀に仕上がります。

その3.手入れ方法

真剣と居合刀の手入れ方法で大きく異なる点は打ち粉を使うか使わないかです。打ち粉とは、棒の先端にてるてる坊主の頭のような丸い布がついている道具。布の中には砥石(といし)の粉末が入っており、刀にポンポンとあてて紙や布でぬぐうと、古い油を除去することができます。真剣の手入れでは打ち粉を使用することが多いです。

一方、居合刀に打ち粉を使用した手入れは厳禁。居合刀に打ち粉を使用すると表面のメッキが傷つき、中の金属が露出してサビの原因となります。居合刀の基本的なお手入れは、柔らかい布や紙でふくだけで十分。汚れがひどいときや長期保管の際は、刀用の油や無水アルコールを染み込ませた布または紙でぬぐいましょう。

その4.分解できるかできないか

真剣の構造を簡単に説明すると、刀身を柄(つか・手で握る部分)にはめ込み、刀身と柄にある穴に目釘(めくぎ)という部品を貫通させることで固定しています。つまり、目釘を抜くことで真剣は分解できるということですね。

一方、居合刀は分解できません。真剣は手入れ時などに分解する必要がありますが、居合刀はその必要がないため目釘が非常に抜けにくくなっています。無理に抜いて分解すると破損につながったり、分解・組み立てが出来たとしても柄がゆるんで使用中の事故につながる恐れがありますよ。どうしても分解の必要があるときは専門店に相談することをおすすめします。

模造刀・模擬刀・木刀との違いは?

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模造刀とは、日本刀を模して造られたものです。居合刀も模造刀に含まれるのですが、両者を区別する場合、模造刀は武道などに使用しない鑑賞用のものを意味することが多いですね。鑑賞用の刀は強度が十分でないため、振りまわすなどといった激しい動きには耐えられません。

対して、武道などの演武に使用されるものは模擬刀と呼ばれます。模擬刀は居合刀と同じ意味で使われることが多いですね。木刀は木でできた刀で、武道の稽古や素振りに使用されます。

いずれの刀も真剣ではないため所持する際の届け出などは必要ありませんが、外に持ち出すことは稽古帰りなどの正当な理由がなければ認められていませんので注意しましょう。

価格と購入場所

居合刀の価格は目的やカスタマイズにより様々ですが、初心者用の刀は2万円~5万円のものが相場のようです。一方、真剣の場合は安いもので10万円前後。ときに1000万円を超えることも珍しくありません。こちらも刀の状態や刀匠(とうしょう・刀を作る職人のこと)の知名度、歴史的価値や鑑定ランクにより価格が大きく変わりますが、一般的に真剣は居合刀より高価であるといえます。

ではこれらの刀はどこで売っているのか?ということについてですが、真剣・居合刀のいずれも刀剣専門店やインターネットから購入が可能です。ただし、お店によっては贋作(がんさく・偽物のこと)や傷ついた商品が売られていることも。購入する際は信頼できるお店を利用するようにしましょう。

\次のページで「武器である刀と武道の刀」を解説!/

武器である刀と武道の刀

今回は、真剣と居合刀の違いを様々な角度から見てきました。ともに金属でできた刀ですが、「武器」と「武具」というそれぞれの役割を果たすために刀身の強度や作り方、分解の可否など多くの違いがありましたね。

古い時代から受け継がれてきた「刀」。時代の流れとともに役割は変化していますが、いつの時代も私たち日本人を惹きつけてやまない不思議な魅力があります。様々な刀の違いとそれぞれの魅力を知って、これからも刀の世界にどっぷり浸かっていきましょう!

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文化・歴史雑学

簡単でわかりやすい!真剣と居合刀の違いって?模造刀は同じもの?雑学好きライターが詳しく解説

この記事では真剣と居合刀の違いについて見ていきます。武士の魂である真剣と、現代武道の居合道で使用される居合刀。どちらも金属でできた刀で、形や雰囲気はよく似ているな。ですがそもそも使う目的に違いがあるから、強度や取り扱い方、価格なども大きく異なってくるんです。
今回はそんな2つの違いを、模造刀や模擬刀との違いも含めて、雑学好きライターのかみかわかなえと一緒に解説していきます。

ライター/かみかわかなえ

雑学好きライター。刀剣や武将が好きで地元の博物館や歴史的名所にせっせと足を運んでいる。推し刀剣は日光一文字。

真剣と居合刀について知りたい!

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真剣と居合刀にはどのような違いがあるのでしょうか。一般的な居合刀と真剣はどちらも金属で作られていますし、形もそっくりです。しかし、異なる目的で作られた2つの刀には明確な違いがいくつもありますよ。

真剣と居合刀の目的の違いとは?そもそも、居合刀とはなんなのか?まずは真剣と居合刀がどのようなものなのかについて、一緒に確認していきましょう。

真剣と居合刀ってどんなもの?

真剣(しんけん)とは日本刀のこと、刃の付いたいわゆる本物の刀のことを指します。一般的な定義では、「玉鋼(たまはがね)」という材料を使い「折り返し鍛錬(おりかえしたんれん)」などといった日本特有の方法でつくられた刀剣類のことです。玉鋼や折り返し鍛錬については後ほどご紹介しますね。

一方で居合刀(いあいがたな・いあいとう)とは、現代武道の1つである「居合道(いあいどう)」で使用される武具です。現代武道とは、昔から継承されてきた実戦での戦闘術をアレンジし、現代の競技にしたもの。居合道では段位によって真剣を使用することもありますが、通常は刃の付いていない=切れない居合刀を使います。

一瞬を制す!知る人ぞ知る「居合道」の世界

ふつう昔からの戦闘術というと、大勢の兵士が入り乱れる戦場での戦い方や技をイメージしますよね。ですが、居合の想定している場面や使われるシチュエーションはそこからかなりかけ離れています。

居合が最も有効なのは、家にいるときや街中を歩いているとき。つまり、臨戦態勢にないふつうの状態から不意打ちで攻撃を受けたときです。まだ刀も抜いていない絶体絶命の状態から、一瞬で相手を迎撃するために生まれた戦い方。それが居合です。

一般的な居合道の試合では、物を切ったり対戦相手と刀を打ち合わせたりすることはありません。選手は2名同時に抜刀から始まる「形(かた)」の演武を行い、審判が作法や技の正確性を判定する形式です。

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