この記事では「形容詞」と「形容動詞」の違いについてみていきます。名前が似ていることから、うっかり間違えてしまいがちなこの二つの言葉。その違いと見分け方について、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

形容詞と形容動詞はどちらも物事の性質や状態を表す言葉

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形容詞と形容動詞は中学受験でも出題されることのあるくらい基礎的な用語ですが、その違いについて迷う方も少なくないでしょう。そこでまずは両者の名前に共通する「形容」という言葉の意味をはっきりさせてから、ざっくりした違いについて見ていきましょう。

形容詞と形容動詞、その両方の名前に含まれている「形容」という言葉は、「物の形や性質、様子などを言い表したり、他のものに例えて表現する」という意味を持っています。そのため、形容詞形容動詞どちらも物事の性質や状態を表す言葉です。

形容詞と形容動詞のざっくりした違いは?

どちらも同じように物事の性質や状態を表す言葉である形容詞と形容動詞。その大きな違いは何なのかというと、まず言い切る形にしたときの語尾が異なります。

形容詞は言い切るときの語尾が「~い」で終わる

形容詞の代表的なものとして「美しい」などがあげられます。語尾に着目してみると、確かに「い」で終わっていますね。このように物事の性質や状態を表す言葉の中で、言い切るときに「い」で終わるものを形容詞と言います。

形容動詞は言い切るときの語尾が「~だ」で終わる

形容動詞の代表的なものでは「きれいだ」などが挙げられます。語尾に着目してみると、やはり「だ」で終わっていますね。物事の性質や状態を表す言葉の中で、言い切るときに「だ」で終わるものを形容動詞と言います。

丁寧な形容動詞の注意点

例えば、「きれいです」という表現ならば、ひと昔前までの文法では「きれいだ」という形容動詞に丁寧な表現を加える「~です」をくっつけたものと考えられていました。

しかし、近年では「きれいです」を丁寧な言い方をした一語の形容動詞とする考えが支持され、このような、物事の性質や状態を表す言葉語尾が「~です」で終わるものは丁寧な言い方をしている一語の形容動詞と教えられるようになりました。そのため古本として手に入れたり、人から譲り受けた古い文法の参考書を使っている人は注意が必要です。

英語文法に形容詞と形容動詞の区別はない?

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意外と混乱する人の多いのが、英語に形容動詞があるかどうか。ですが、形容動詞はあくまで国語文法を学ぶ上での用語の一つなので、英語を学ぶ上では形容動詞は出てきません。国語や古典、英語とさまざまな文法を学ぶ機会がふえ、ついつい混ぜこぜにしてしまいがちですが、しっかり区別できるようにしておきましょう。

形容詞と形容動詞は活用が違う

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形容詞と形容動詞では言い切るときの語尾に違いがあることはすでに説明しましたが、実はそもそも活用が違うのです。活用という言葉自体よくわからない方もいると思うので、そこから説明していきましょう。

\次のページで「活用とは何か」を解説!/

活用とは何か

例えばあなたが作文を書いているとして、形容詞である「美しい」の後に「花」という名詞を続けたいとします。その場合、そのまま「美しい花」と書いて問題ないでしょう。

これが形容動詞「きれいだ」の後に「花」という言葉を続けたい場合ではどうでしょうか。そのまま「きれいだ花」と書いては日本語として不自然に感じますよね。そういう時は「きれいだ」の語尾である「だ」「な」に変えて「きれいな花」と書けば日本語として自然になるでしょう。

このように、後に続く言葉に応じて単語の語尾が変化すること活用といい、形容詞と形容動詞ではその変化の仕方に違いがあります。

これからは意味の似ている形容詞「美しい」と形容動詞「きれいだ」を比較しながら見ていきましょう。

1.未然形

何か物事を予想する文における「う」という文末の単語に続くときなどに、形容詞形容動詞未然形という形になります。

あの花は美しかろう。 〈形容詞の未然形+う〉
あの花はきれいだろう。 〈形容動詞の未然形+う〉

例文で形容詞「美しい」が「美しかろ」となっているとおり、形容詞は語尾が「~かろ」という形になり、形容動詞「きれいだ」が「きれいだろ」と変化しているように形容動詞「~だろ」という形になるのが未然形です。

2.連用形

昔を思い出す文で使う「た」や後ろに動詞や形容詞が続くとき、否定の文で使う「ない」といった言葉が続くとき、形容詞形容動詞連用形になります。ケース別に見ていきましょう。

あの花は美しかった。 〈形容詞の連用形+た〉
あの花はきれいだった。 〈形容動詞の連用形+た〉

このような昔を思い出す文で使う「た」という文末の単語に続くとき形容詞「~かっ」形容動詞「~だっ」となり、

あの花は美し咲く。 〈形容詞の連用形+動詞〉
あの花はきれい咲く。 〈形容動詞の連用形+動詞〉

\次のページで「3.終止形」を解説!/

のように後ろに動詞が続くときや、形容詞などが続くとき形容詞「~く」形容動詞「~に」と変化し

あの花は美しない。 〈形容詞の連用形+ない〉
あの花はきれいない。 〈形容動詞の連用形+ない〉

のような、否定の文で使う「ない」に続くときは、形容詞「~く」形容動詞「~で」となっていますね。これらの形を連用形といいます。

形容詞・形容動詞の連用形についてはそれぞれ複数あり、形容詞「~かっ」「~く」形容動詞「~だっ」「~で」「~に」などと変化します。

3.終止形

終止形とはこれまでも出てきた言い切る形のことです。

あの花は美し。 〈形容詞の終止形
あの花はきれい。 〈形容動詞の終止形

といった文ですので、当然形容詞「~い」形容動詞「~だ」ですね。

4.連体形

後ろに名詞が続くときにとるのが連体形という形です。

美し花が咲いている。〈形容詞の連体形+名詞〉
きれい花が咲いている。〈形容動詞の連体形+名詞〉

\次のページで「5.仮定形」を解説!/

形容詞は終止形と同じように「~い」になっていますが、形容動詞「~な」という形をとります。

5.仮定形

何かを仮定したり、条件を提示するような文で使う「ば」に続く形仮定形と呼びます。

あの花が美しければ観光客も増えただろう。 〈形容詞の仮定形+ば〉
あの花がきれいならば観光客も増えただろう。 〈形容動詞の仮定形+ば〉

形容詞「~けれ」で、形容動詞「~なら」に変化していますね。

形容詞・形容動詞に命令形はない

形容詞形容動詞の活用には、動詞にあるような命令形はありません

形容詞と形容動詞の活用まとめ

ここで形容詞と形容動詞の活用の仕方についてまとめましょう。

形容詞・形容動詞は左から 未然形 / 連用形 / 終止形 / 連体形 / 仮定形 / 命令形 の順に
形容詞  かろ / かっ /  /  / けれ / (なし)
形容動詞  だろ / だっ /  /  / なら / (なし)
と活用します。

形容詞と形容動詞の違いは語尾や活用が大きなポイント

形容詞・形容動詞の違いは言葉の語尾や活用に大きなポイントがあることを理解していただけたと思います。文中のそれぞれの単語がどんな語尾で終わり、どんな言葉に続いていくかというのは、形容詞・形容動詞に限らず国語文法を学ぶ上では非常に重要です。

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雑学

3分で簡単にわかる!形容詞と形容動詞の違いとは?活用や見分け方も現役塾講師がわかりやすく解説

この記事では「形容詞」と「形容動詞」の違いについてみていきます。名前が似ていることから、うっかり間違えてしまいがちなこの二つの言葉。その違いと見分け方について、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

形容詞と形容動詞はどちらも物事の性質や状態を表す言葉

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形容詞と形容動詞は中学受験でも出題されることのあるくらい基礎的な用語ですが、その違いについて迷う方も少なくないでしょう。そこでまずは両者の名前に共通する「形容」という言葉の意味をはっきりさせてから、ざっくりした違いについて見ていきましょう。

形容詞と形容動詞、その両方の名前に含まれている「形容」という言葉は、「物の形や性質、様子などを言い表したり、他のものに例えて表現する」という意味を持っています。そのため、形容詞形容動詞どちらも物事の性質や状態を表す言葉です。

形容詞と形容動詞のざっくりした違いは?

どちらも同じように物事の性質や状態を表す言葉である形容詞と形容動詞。その大きな違いは何なのかというと、まず言い切る形にしたときの語尾が異なります。

形容詞は言い切るときの語尾が「~い」で終わる

形容詞の代表的なものとして「美しい」などがあげられます。語尾に着目してみると、確かに「い」で終わっていますね。このように物事の性質や状態を表す言葉の中で、言い切るときに「い」で終わるものを形容詞と言います。

形容動詞は言い切るときの語尾が「~だ」で終わる

形容動詞の代表的なものでは「きれいだ」などが挙げられます。語尾に着目してみると、やはり「だ」で終わっていますね。物事の性質や状態を表す言葉の中で、言い切るときに「だ」で終わるものを形容動詞と言います。

丁寧な形容動詞の注意点

例えば、「きれいです」という表現ならば、ひと昔前までの文法では「きれいだ」という形容動詞に丁寧な表現を加える「~です」をくっつけたものと考えられていました。

しかし、近年では「きれいです」を丁寧な言い方をした一語の形容動詞とする考えが支持され、このような、物事の性質や状態を表す言葉語尾が「~です」で終わるものは丁寧な言い方をしている一語の形容動詞と教えられるようになりました。そのため古本として手に入れたり、人から譲り受けた古い文法の参考書を使っている人は注意が必要です。

英語文法に形容詞と形容動詞の区別はない?

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意外と混乱する人の多いのが、英語に形容動詞があるかどうか。ですが、形容動詞はあくまで国語文法を学ぶ上での用語の一つなので、英語を学ぶ上では形容動詞は出てきません。国語や古典、英語とさまざまな文法を学ぶ機会がふえ、ついつい混ぜこぜにしてしまいがちですが、しっかり区別できるようにしておきましょう。

形容詞と形容動詞は活用が違う

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形容詞と形容動詞では言い切るときの語尾に違いがあることはすでに説明しましたが、実はそもそも活用が違うのです。活用という言葉自体よくわからない方もいると思うので、そこから説明していきましょう。

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