この記事では登校拒否と不登校の違いについてみていきます。どちらも学校関連でよく耳にする言葉で、学校に行けない人のことを指しているイメージがあるよな。このふたつは、ズバリ「登校はできるが登校しない子ども」か「登校したいのに登校できない子ども」かで使い分けられているようなんです。今回はそんな学校にまつわるふたつの言葉の違いを、定義や原因も探りながら元教員ライターのことはと解説していきます。

ライター/ことは

元教員ライター。小・中・高の国語科教員免許をもつ。今回は教員免許取得の際に学んだことと、実際に中学校の先生として働いていた経験を活かし、学校にまつわるふたつの言葉の違いについて解説していく。

登校拒否と不登校の違いとは?

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登校拒否と不登校は、どちらも学校にまつわる言葉であり、学生やその保護者であればよく耳にする言葉ですよね。どちらも学校に行けないことを指しているイメージがありますが、このふたつの言葉の違いを明確に答えられる人は意外と少ないのではないでしょうか。

ふたつの違いを端的に言うと、「登校できるが登校しない」のか、「登校したいけど登校できない」のかの違いです。それでは、登校拒否と不登校の違いについて詳しくみていきましょう。

登校拒否と不登校の意味の違いとは?

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登校拒否と不登校は同じような意味で使われることが多いですが、詳しく定義を見ていくと少しずつ違います。ここでは登校拒否と不登校の定義の違いを詳しくみていきましょう。

登校拒否とは

登校拒否とは、一般的に「登校できるのに登校しない」ことを指します。つまり、身体的には健康で登校できる状態ではあるのに、行きたくないという理由で登校しないことを意味しているのです。また最近ではあまり言わなくなりましたが、非行やサボりで登校しないことを登校拒否という定義も一般的でした。

不登校とは

不登校とは、一般的に「登校したいのに登校できない」ことを指しています。さらに詳しく言うと、学校に行くという意思はあるのに、何らかの原因があって学校に行くことができず、年間30日以上欠席になってしまったことを意味しているのです。ここで、文部科学省が定めている不登校の定義を見ておきましょう。

「不登校児童生徒」とは「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義しています。

出典:文部科学省 不登校の現状に関する認識

このように、不登校は年間30日以上の欠席という明確な定義があり、この欠席の理由として体調不良や経済的な理由は含まれません。

\次のページで「現在では不登校の方が一般的?」を解説!/

現在では不登校の方が一般的?

ここまで、言葉の定義として登校拒否と不登校の違いを見てきましたが、実は文部科学省はこのふたつの言葉を同義語として使っています。

1988年にそれまで使用していた登校拒否という用語を不登校と読み替えることになり、それ以降は「不登校」が正式な行政用語として使われているのです。このため、現在では登校拒否よりも不登校という言葉を使う方が一般的になっています。

不登校の原因は?

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不登校になる原因は、当たり前ですが人それぞれ様々です。ここではその原因を「人間関係に関するもの」「学校生活に関するもの」「自分の問題に関するもの」「家庭環境に関するもの」の大きく4つに分けてみていきましょう。

原因1:人間関係に関するもの

不登校の原因として一番に思い浮かぶのが人間関係ではないでしょうか。一言で人間関係といってもさまざまですが、いくつか例を挙げてみましょう。

・友達との関係
・先輩、後輩との関係
・先生との関係
・SNSに関するトラブル

学校は狭い世界なので、人間関係にトラブルが起きてしまうと学校への行きづらさに直結します。また、最近では表面的にはうまくいっているように見えても、SNSでトラブルを抱えている場合も多いです。

学校に行けないことについて周りの人が口うるさくなってしまったり怒ったりしてしまうと、ますます他人への不信感を持ってしまうことにつながります。まずは、本人が話しやすいようにあたたかく見守ることが大切です。

原因2:学校生活に関するもの

学校生活に関するものが原因やきっかけとなり、不登校になる可能性もあります。ここでは、学校生活に関する原因の例をいくつかみていきましょう。

・いじめ
・苦手な人がクラスにいる
・授業についていけない
・学校行事に苦手意識がある

\次のページで「原因3:自分の問題に関するもの」を解説!/

学校ならではの問題がここに分類されています。いじめに関しては、加害者側が気付いていない場合も多いので、親や教師など大人を交えた話し合いが必要になることもあるでしょう。

また、授業についていけなかったり学校行事の雰囲気にどうしてもなじめなかったりすることも学校への行きづらさに繋がります。この場合は、学習面でのサポートや行事で負担にならない程度の小さな役割を与えることが効果的です。

原因3:自分の問題に関するもの

自分自身の問題が不登校の原因になることもあります。自分自身の問題とは、例えば以下のようなものが挙げられるでしょう。

・学校に行く意味を見出せない
・学校に対して不安感がある
・長く休んでしまって行きにくい
・何に対してもやる気がでない、無気力
・非行や遊びに重きを置いている
・自分らしい生き方を選んでいる

学校にきちんと通うことだけが正解ではありません。本人がどう考えているのか、きちんと話し合って様々な選択肢から自分で選ぶことが重要です。親を中心にしっかりと話し合い、本人が自分の考えと向き合う時間を大切にしてください。

原因4:家庭環境に関するもの

家庭環境も、不登校に大きく関わっている場合が多いです。家庭環境に関する原因の例をみていきましょう。

・親子関係の悪化、家庭内不和
・親が学校に行かせない
・家族の面倒を見なければいけない

親子間の関係がよくない場合や、家庭のなかで大きな問題を抱えている場合には、学業どころではなくなってしまい、学校に行けなくなってしまうケースがあります。かなりデリケートな問題でもあるため、身内や知人だけではなく、児童相談所などの公的な第三者を交えて問題解決にむけて動くことがおすすめです。

\次のページで「不登校になった時の対応は?」を解説!/

不登校になった時の対応は?

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ここからは、不登校になった場合、学業面では実際にどのような対応がされるのかみていきましょう。まず、小・中学校は、義務教育期間です。そのため、不登校になった場合でも要件を満たせば出席扱いになったり、学習支援が受けられたりして、義務教育を卒業できないことはありません。中学校卒業程度認定試験を受ければ高校受験も可能です。

一方で、高等学校は義務教育ではありません。そのため、高校で不登校になり欠席が続いてしまうと、進級や卒業ができない可能性があります。しかし、現在では通信制の高校など登校できなくても学習を進めることは可能です。義務教育ではない分より自由な形の高校があるので、自分にあったスタイルを選択することができます。

ひきこもりとの違いは?

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不登校や登校拒否と似ている言葉で、「ひきこもり」があります。ここでは、不登校・登校拒否とひきこもりの違いについてみていきましょう。ひきこもりの定義は、厚生労働省が以下のように定めています。

さまざまな要因の結果として社会的参加(就学、就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6カ月以上にわたって、おおむね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念(他者と交わらない形での外出をしていても良い)

出典:ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン

登校拒否・不登校があくまでも「学校」に関わる言葉である一方、ひきこもりは学校に在籍していない人、つまり大人も含まれるのが一番大きな違いです。ひきこもりと判断される期間も、不登校が30日以上であるのに比べて、ひきこもりは6か月以上という違いもあります。

またひきこもりは、「おおむね家庭に留まり続けている」という定義があるように、一切の社会的なつながりを拒絶しているという点も特徴です。不登校の場合は学校に行けていないだけで、他の活動などで社会に参加している場合も少なくありません。

登校拒否と不登校の違いを理解して使い分けよう!

この記事では登校拒否と不登校の違いについてみてきました。ふたつの違いをまとめると、登校拒否は「登校できる状態ではあるが登校しないこと」、不登校は「登校する意思はあるが登校できないこと」でした。しかし文部科学省ではこのふたつの言葉は同義語として扱われています。それまで一般的に使われていた登校拒否という言葉を、1988年以降「不登校」に読み替えることになったのです。どちらも学校に関する場面ではよく聞く言葉ですが、微妙なニュアンスの違いを理解して、使い分けてみて下さい!

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簡単で分かりやすい!登校拒否と不登校の違いとは?原因やひきこもりとの違いも元教員ライターが詳しく解説!

この記事では登校拒否と不登校の違いについてみていきます。どちらも学校関連でよく耳にする言葉で、学校に行けない人のことを指しているイメージがあるよな。このふたつは、ズバリ「登校はできるが登校しない子ども」か「登校したいのに登校できない子ども」かで使い分けられているようなんです。今回はそんな学校にまつわるふたつの言葉の違いを、定義や原因も探りながら元教員ライターのことはと解説していきます。

ライター/ことは

元教員ライター。小・中・高の国語科教員免許をもつ。今回は教員免許取得の際に学んだことと、実際に中学校の先生として働いていた経験を活かし、学校にまつわるふたつの言葉の違いについて解説していく。

登校拒否と不登校の違いとは?

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登校拒否と不登校は、どちらも学校にまつわる言葉であり、学生やその保護者であればよく耳にする言葉ですよね。どちらも学校に行けないことを指しているイメージがありますが、このふたつの言葉の違いを明確に答えられる人は意外と少ないのではないでしょうか。

ふたつの違いを端的に言うと、「登校できるが登校しない」のか、「登校したいけど登校できない」のかの違いです。それでは、登校拒否と不登校の違いについて詳しくみていきましょう。

登校拒否と不登校の意味の違いとは?

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登校拒否と不登校は同じような意味で使われることが多いですが、詳しく定義を見ていくと少しずつ違います。ここでは登校拒否と不登校の定義の違いを詳しくみていきましょう。

登校拒否とは

登校拒否とは、一般的に「登校できるのに登校しない」ことを指します。つまり、身体的には健康で登校できる状態ではあるのに、行きたくないという理由で登校しないことを意味しているのです。また最近ではあまり言わなくなりましたが、非行やサボりで登校しないことを登校拒否という定義も一般的でした。

不登校とは

不登校とは、一般的に「登校したいのに登校できない」ことを指しています。さらに詳しく言うと、学校に行くという意思はあるのに、何らかの原因があって学校に行くことができず、年間30日以上欠席になってしまったことを意味しているのです。ここで、文部科学省が定めている不登校の定義を見ておきましょう。

「不登校児童生徒」とは「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義しています。

出典:文部科学省 不登校の現状に関する認識

このように、不登校は年間30日以上の欠席という明確な定義があり、この欠席の理由として体調不良や経済的な理由は含まれません。

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