この記事では満月と新月の違いについてみていきます。満月といえば明るくてまん丸な形の月ですが、新月とは一体どのような見え方のことをいうのでしょうか。ポイントはずばり月・地球・太陽の位置関係のようですが、どのような条件下で満月や新月が見えるのでしょうか。今回は身近な天体である月の見え方について、潮の満ち引きとも関連付けつつ理系大学院出身のライターyuukiと学んでいきます。

ライター/yuuki

理系大学院出身の雑学ライター。専攻は農学だが、普段から自然科学系のトピックに幅広く関心を持ち、今も気になることはとことん勉強している。

満月と新月の違いは地球と太陽との位置関係

image by iStockphoto

満月新月。同じ月でありながら異なる呼び方をされるのは、見え方が全く違うからです。そして地球から見た月の姿が様々に変わる理由は、月・地球・太陽の位置関係にあります。

満月と新月の見え方

満月は明るくてまん丸な月。逆に新月は肉眼ではほぼ観察できない状態の月。一体なぜこのような見え方の違いが生じるのでしょうか。天体の位置関係から具体的に見ていきましょう。

月・地球・太陽の位置関係

まず地球は太陽系の惑星のひとつであり、太陽を中心として宇宙空間を回転しています。これを公転といいますね。また、地球は自身の地軸を中心とした回転もしており、これを自転といいます。ちなみに普段は全く感じることがありませんが、自転のスピードは時速約1,700kmと凄まじい速さなんですよ。一方は地球の衛星であり、常に地球の周りを公転しています。

地球の自転周期は約24時間、公転周期は約365日であり、月の公転周期は約29.5日です。これらの要素が合わさって、月の満ち欠けや昼と夜、潮の満ち引きなどが生じています。

月そのものは光を発しない

ここで確認しておきたいのは、月そのものは光を発していないということ。私たちが日々眺めている月の光は、太陽の光が月にあたって反射したものなのです。ちなみに星も同じ。だから、月・地球・太陽の位置関係により月の見え方が変わるのです。

\次のページで「満月の時」を解説!/

満月の時

満月が見られるのは、太陽-地球-月の順に並んだ時です。この時、月の公転軌道と地球の公転軌道は約5度の違いがあるため、普段月が地球の影に入ることはなく、満遍なく太陽の光が当たって反射し満月に見えます。

もっとかみ砕いて言えば、ある角度から見るとすべての天体が一直線上にあるが、少し角度を変えて見てみるとズレがあるという感じですね。これは次に説明する新月の場合も同様です。

新月の時

新月となるのは、太陽-月-地球の順に並んだ時です。地球から見えるのは、月の表面のうち太陽光が当たっていない影の部分だけ。このとき月は太陽と共にお昼の空に昇っているものの、地球からは見えません。また夜は月の光がない真っ暗闇になります。

ちなみに筆者が最近観た某人気アニメの中で、新月の夜のみ活動する悪者の集団の描写がありました。人目につかずに悪事を働くのに、真っ暗な新月の夜はうってつけというわけですね。

月食や日食の時

image by iStockphoto

月食とは、月が地球の影に入る現象のこと。影に隠れるのが月の一部分なのか全体なのかで、部分月食と皆既月食に分かれます。天体の位置関係は、太陽-地球-月の順番。つまり満月のときと同じ並びです。

日食とは、太陽が月に隠される現象のこと。こちらも、月によって隠れるのが太陽の一部分か全体かどうかで部分日食と皆既日食に分かれます。天体の位置関係は、太陽-月-地球の順番。これは新月のときと同じ並びですね。

これについては、満月の説明で出てきた公転軌道がポイントになります。月の公転軌道地球の公転軌道には約5度のズレがありますが、時おり地球の公転軌道に月が限りなく近付き、ズレがほぼ無くなるタイミングが生じるのです。これはつまり、どの角度から見ても3つの天体が限りなく一直線上に近い位置に並ぶことを意味します。

このタイミングで、太陽-地球-月(満月の位置関係)の順に並んでいれば月が地球の影に隠れる月食となり、太陽-月-地球(新月の位置関係)の順に並んでいれば太陽の光が月に隠される日食となるわけです。

満月・新月と潮の満ち引き

image by iStockphoto

満月と新月の見え方の違いやそのメカニズムが分かりましたね。せっかくの機会ですから、もう少し踏み込んだ内容も一緒に学んでいきましょう!

実は、ここまでで学んだ月の見え方の変化、すなわち月・地球・太陽という3つの天体の位置関係の変化は、潮の満ち引きにも大きく関係しています。ここでキーワードとなるのが、月の引力と地球の慣性力を合わせた潮汐力という力。それぞれの力の要素ついて順番に見ていきましょう。

月の引力

引力は、正しくは万有引力と呼ばれ、質量を持ったすべての物体が引きあう力のことです。質量が大きいほど、そして物体同士の距離が近いほど引力は大きくなります。

月の直径は、地球の直径の約4分の1もあります。惑星の大きさに対してこれほど大きな衛星は、太陽系で他にありません。それだけ、地球に及ぼす影響も大きくなるのです。

出典:イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める!宇宙の仕組み(西東社)

地球にはたらく月の引力は、月側の地表で最も大きくなり、地球の中心部で中程度、月と反対側の地表で最も弱くなります。これにより何が起こるかというと、月側の地表では引力が強いために流体である海水が引っ張られて水の層が厚くなり、潮位が上昇するのです。

慣性力とは

地球にはたらく大きな力が月からの引力だけだとしたら、潮位の分布は月側を頂点としたしずく形になってしまいそうですよね。しかし実際はラグビーボールのような、両側に引き伸ばされた形をしています。

その理由は、地球上ではたらく慣性力という別の力が存在するから。慣性力については理系の大学生でも完全に理解するのが難しいと言われていますので詳細な説明は省きますが、かなりざっくりといえば「地球上のすべての点で、月の引力とは反対方向にはたらく力」のことです。

ここで重要なのが、月からの引力月からの距離に応じて変化するのに対して、地球上での慣性力どの地点でも等しいということ。この2つの力の合力がどうなるかというと、月に近い地表では引力>慣性力、月と反対側の地表では引力<慣性力となります。だから、地球全体を見たときに海水面が両方向に引っ張られてラグビーボールのような形になるのです。

潮汐力=月の引力+慣性力として考えることができ、この潮汐力によって海水の分布に偏りが生じるのですね。

満潮と干潮のサイクル

image by iStockphoto

潮位は毎日ゆっくりと変化しており、一日のうち最も潮位が高い時を満潮、低い時を干潮といいます。満潮と干潮のタイミングは1日に2回ずつ訪れますが、その理由は潮汐力による海水分布の偏りにあるのです。

先ほど、潮汐力により海水面が引っ張られてラグビーボールのような形になっていることをお話ししました。そしてこの状態で地球は自転しているわけです。ちょっと想像してみてほしいのですが、地球が24時間かけて1周自転する間に、潮位が最も高い部分と低い部分を2回ずつ通ることになりますよね。つまり、それぞれのタイミングが満潮・干潮となるのです。

\次のページで「大潮・小潮を引き起こす月と太陽の引力」を解説!/

大潮・小潮を引き起こす月と太陽の引力

潮汐力により潮位に偏りができるために潮の満ち引きが生じることが分かりました。実は1日の満潮時と干潮時の潮位差は常に一定なわけではなく、干満の差が非常に大きい大潮、差が小さい小潮と呼ばれる時期があり、約1か月周期でそれぞれ2回ずつ訪れます。それではなぜ大潮・小潮という現象が生じるのでしょうか。これには月の潮汐力に加え、太陽の潮汐力の影響も考える必要があります。

image by iStockphoto

月は約29.5日周期で地球の周りを公転しており、その中で月・地球・太陽が一直線に並ぶタイミングと地球と太陽の中心を通る直線に対して垂直な位置に月が来るタイミングが2回ずつ訪れます。そして太陽はとてつもなく巨大な天体ですから、地球からかなり離れた位置にありながらもその潮汐力は常にはたらいているのです。

3つの天体が一直線に並ぶ場合というのは、つまり新月または満月の時。この時は太陽と月の潮汐力が助け合うように地球に対して作用するため、海水面が引っ張られる度合いが強くなり、満潮時と干潮時で潮位差が非常に大きい大潮となるわけです。逆に地球と太陽の中心を通る直線に対して垂直な位置に月がある場合というのは、半月が見られる時。この時、太陽と月の潮汐力が打ち消しあうように作用するので、海水面が正円に近づくような力がはたらき、1日の潮位差が小さくなって小潮となります。

ちなみに、大潮時の潮位差が大きいところとしては九州の有明海が有名で、なんと最大6メートルに達するところもあるのだとか!自然の力の大きさを実感しますね。

普段から月の見え方を意識してみよう

今回は満月と新月の違いについて、潮の満ち引きとの関係も交えながら解説しました。日頃何気なく見ている月ですが、その見え方は天体の位置関係が変化することで日々変化しているのですね。また天体どうしは様々な力を及ぼしあっており、太陽と月の存在により潮汐力が生まれることで地球上での潮の満ち引きを引き起こしていることも分かりました。あなたが普段感じている身近な疑問も、ぐっと掘り下げてみると地球レベルや宇宙レベルのメカニズムに行き着いて、思いもよらなかった面白い発見があるかもしれませんよ。

" /> 簡単でわかりやすい!満月と新月の違いとは?地球・太陽との位置関係や潮の満ち引きも理系大学院出身のライターが詳しく解説 – Study-Z
雑学

簡単でわかりやすい!満月と新月の違いとは?地球・太陽との位置関係や潮の満ち引きも理系大学院出身のライターが詳しく解説

この記事では満月と新月の違いについてみていきます。満月といえば明るくてまん丸な形の月ですが、新月とは一体どのような見え方のことをいうのでしょうか。ポイントはずばり月・地球・太陽の位置関係のようですが、どのような条件下で満月や新月が見えるのでしょうか。今回は身近な天体である月の見え方について、潮の満ち引きとも関連付けつつ理系大学院出身のライターyuukiと学んでいきます。

ライター/yuuki

理系大学院出身の雑学ライター。専攻は農学だが、普段から自然科学系のトピックに幅広く関心を持ち、今も気になることはとことん勉強している。

満月と新月の違いは地球と太陽との位置関係

image by iStockphoto

満月新月。同じ月でありながら異なる呼び方をされるのは、見え方が全く違うからです。そして地球から見た月の姿が様々に変わる理由は、月・地球・太陽の位置関係にあります。

満月と新月の見え方

満月は明るくてまん丸な月。逆に新月は肉眼ではほぼ観察できない状態の月。一体なぜこのような見え方の違いが生じるのでしょうか。天体の位置関係から具体的に見ていきましょう。

月・地球・太陽の位置関係

まず地球は太陽系の惑星のひとつであり、太陽を中心として宇宙空間を回転しています。これを公転といいますね。また、地球は自身の地軸を中心とした回転もしており、これを自転といいます。ちなみに普段は全く感じることがありませんが、自転のスピードは時速約1,700kmと凄まじい速さなんですよ。一方は地球の衛星であり、常に地球の周りを公転しています。

地球の自転周期は約24時間、公転周期は約365日であり、月の公転周期は約29.5日です。これらの要素が合わさって、月の満ち欠けや昼と夜、潮の満ち引きなどが生じています。

月そのものは光を発しない

ここで確認しておきたいのは、月そのものは光を発していないということ。私たちが日々眺めている月の光は、太陽の光が月にあたって反射したものなのです。ちなみに星も同じ。だから、月・地球・太陽の位置関係により月の見え方が変わるのです。

\次のページで「満月の時」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: