今回はカリウム(K)について解説します。

元素といえば原子番号20番くらいまでがよく登場する。原子番号19番のカリウムは覚えてはいるけどあまりよく知らない、ちょっとマイナーな元素でしょう。しかし、カリウムは生物に欠かせない必須元素のひとつなのです。

そこで今回、カリウムの性質を紹介する。担当は元素大好き化学系科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

元素や原子、化学という言葉が好きな科学館職員。幼稚園児から小中学生、保護者と幅広い世代に科学を楽しんでほしいと実験の本を読み漁っている。元素は32番くらいまでは順番に覚えている。

元素から見るカリウム

image by PIXTA / 1830880

カリウムは「名前は知っているけどよくわからない」という人も多いでしょう。そんなカリウムがどんな元素か見てみましょう。

カリウム(K)
原子番号:19
原子量:39.1
融点:63.38℃
密度:0.89g/cm3(室温程度)
発見:1807年(イギリス、デービー)
常温での見た目:銀白色の固体
主な用途:肥料・食品添加物

カリウムはアルカリ金属(周期表の1族に属する元素のうち水素を除いた元素の総称)、典型元素(周期表の1・2族と12族~18族の元素)の一種で、水と激しく反応し1価の陽イオンとなりやすいのが特徴です。このアルカリ金属としての特徴は、また後で解説しますね。カリウムは酸化しやすい為単体で自然界には存在できず、塩化カリウムとして採取されています。

image by Study-Z編集部

体内に存在する元素の質量のおよそ0.2%がカリウムです。ちなみに最も多いのは酸素。体内存在量は65%です。一方、地球の地殻中には2.4%ほど存在し、主に鉱石に含まれています。

カリウムこぼれ

Davy Humphry desk color Howard.jpg
Henry Howard (died 1847) - one or more third parties have made copyright claims against Wikimedia Commons in relation to the work from which this is sourced or a purely mechanical reproduction thereof. This may be due to recognition of the "sweat of the brow" doctrine, allowing works to be eligible for protection through skill and labour, and not purely by originality as is the case in the United States (where this website is hosted). These claims may or may not be valid in all jurisdictions. As such, use of this image in the jurisdiction of the claimant or other countries may be regarded as copyright infringement. Please see Commons:When to use the PD-Art tag for more information., パブリック・ドメイン, リンクによる

カリウムは英語で potassium、ポタシウムといいます。この由来はpot、鍋 とash、灰が由来となっているのです。

もともとカリウム塩は、木や葉を燃やした灰を鍋に入れて水と共に加熱し、その水を蒸発させることで得ていました。そしてイギリスのハンフリー・デービー(1778~1829)が電気分解によってカリウム元素を単離に成功してpotassiumと名付けたのです。ちなみにこのデービーは、ナトリウムや塩素も発見しています。

カリウムの性質

image by PIXTA / 80729913

それではカリムの性質について詳しく確認していきましょう。

人体に欠かせない必須元素

image by PIXTA / 60782975

生命維持に欠かせない、食事などによって摂取しなければならない元素を必須元素といいます。体に欠かせない元素、とは何でしょうか。この必須元素として水素(H)、炭素(C)、窒素(N)、ナトリウム(Na)があげられます。

必須、というだけあってこれらの元素が欠乏すると欠乏症になる恐れがあるのです。その一方で過剰に摂取すれば過剰症中毒症状を起こす危険性も。カリウムを過剰摂取又はの症状として、以下のものがあげられます。

過剰摂取
高カリウム血症による不整脈

欠乏症
低カリウム血症による筋力の低下、腸閉塞など

カリウムの効能とカリウムを含む食材

image by PIXTA / 67014423

カリウムを摂取することは、むくみの解消につながります。カリウムには体内の余分な塩分を排出してくれる効果があるからです。そのため、高血圧の予防にもつながります。また足がつってしまうのも、カリウム不足が原因なのです。

適量取るのは大変そうな気もしますが、自然由来のものを普通に食べていれば適正な量を摂取できるとされています。カリウムを含む食材といえば以下のものが有名です。

果物  バナナ、キウイ
野菜  ジャガイモ、アボカド、パプリカ、切り干し大根
海藻類 昆布、わかめ、ひじき
その他 コーヒー、抹茶、納豆

アルカリ金属としての性質~水に注意

image by PIXTA / 75187565

単体の金属カリウムは、消防法の第三類自然発火性物質及び禁水性物質に分類されている危険物です。ここでいう危険物とは取り扱いを間違えると火事につながる危険性を持つ物質のこと。第三類の危険物は燃えやすいもの(可燃性物質)や燃やしやすいもの(酸化物)に分類でき、カリウムの他にナトリウムや黄りんなども第三類に分類されています。

なぜカリウムは危険物なのでしょうか。カリウムはアルカリ金属の一種です。アルカリ金属は水素を除く第1族の元素で、以下の元素が分類されています。

リチウム   Li
ナトリウム  Na
カリウム   K
ルビジウム  Rb
セシウム   Cs
フランシウム Fr 

アルカリ金属は、銀白色の固体で融点が低く柔らかいことが特徴です。1族ということは価電子(最外殻の電子)は1つ。つまり1価の陽イオンになりやすいのがアルカリ金属の特徴なのです。

アルカリ金属は酸化されやすく、天然では化合物の状態で存在しています。酸化しやすいアルカリ金属は還元性が高く、水と簡単に反応して水素を発生するのです。するとこの水素に反応熱によって火がついてしまうので、アルカリ金属に水をかけると燃えてしまいます。この反応性は、原子番号が大きくなるとより強くなっていくのです。

カリウムの酸化
 4K + O2 → 2K2O
カリウムと水の反応
 2K + 2H2O → 2KOH + H2

\次のページで「アルカリ金属の炎症反応」を解説!/

アルカリ金属の炎症反応

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上の式にあるように空気中の酸素や水と反応しやすい為、カリウムを含めたアルカリ金属は灯油の中で保存します。また、炎色反応が起こることも、アルカリ金属の特徴です。

炎色反応とは簡単に言うと花火の色のこと。花火ではいろいろな色が見られますね。あれは花火に含まれるアルカリ金属によって色が決まっているのです。炎色反応はアルカリ金属と、次のもの覚えておくといいですよ。

リチウム  赤
ナトリウム 黄
カリウム  紫
カルシウム 橙
ストロンチウム 紅
バリウム  黄緑
銅     緑

カリウムの危険性 必須なのに危険?

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また、カリウムは劇物にも指定されています。劇物とは大人の致死量が2~20g程度のもので、アンモニアや過酸化水素なども劇物に指定されているのです。劇物は毒物及び劇物取締法第二条と毒物及び劇物指定令によって定義されています。

カリウムの用途

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カリウムは人体だけでなく、植物にも欠かせません。そのためかカリウムの用途の9割近くが、肥料なのです。肥料に含まれるのは、以下の化合物の形になります。

塩化カリウム(KCl)
硫酸カリウム(K2SO4
硝酸カリウム(KNO3

その他、カリウムは工業で使われています。例えば水酸化カリウムは強塩基の物質として、中和や加水分解反応などにも用いられているのです。また、食卓に並ぶ調味料にも、塩化カリウムは含まれています。高血圧改善のため塩化カリウムと塩化ナトリウム(塩)と混ぜた食用塩が販売されているのです。

カリウムの活用はこれだけではありません。塩化カリウムが死刑に使われている国があります。血中のカリウム濃度を高めることで、心不全が起こるからです。そのため、塩化カリウムは安楽死に使われることもあります。その一方、心臓手術の時の心臓保護液としても使われているのだから面白いですね。

カリウムは人に欠かせない元素だった

ちょっとマイナーな元素、カリウム。しかし必須元素のひとつであり、欠かすことができません。ジャガイモやバナナなど身近な食材で摂取することができるので、しっかり摂取したいですね。その一方、カリウムは劇物・危険物に指定されているので取り扱いには注意が必要です。

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化学理科

簡単でわかりやすい!カリウムとはどんな元素?性質や用途・危険性も化学系科学館職員が詳しく解説

今回はカリウム(K)について解説します。

元素といえば原子番号20番くらいまでがよく登場する。原子番号19番のカリウムは覚えてはいるけどあまりよく知らない、ちょっとマイナーな元素でしょう。しかし、カリウムは生物に欠かせない必須元素のひとつなのです。

そこで今回、カリウムの性質を紹介する。担当は元素大好き化学系科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

元素や原子、化学という言葉が好きな科学館職員。幼稚園児から小中学生、保護者と幅広い世代に科学を楽しんでほしいと実験の本を読み漁っている。元素は32番くらいまでは順番に覚えている。

元素から見るカリウム

image by PIXTA / 1830880

カリウムは「名前は知っているけどよくわからない」という人も多いでしょう。そんなカリウムがどんな元素か見てみましょう。

カリウム(K)
原子番号:19
原子量:39.1
融点:63.38℃
密度:0.89g/cm3(室温程度)
発見:1807年(イギリス、デービー)
常温での見た目:銀白色の固体
主な用途:肥料・食品添加物

カリウムはアルカリ金属(周期表の1族に属する元素のうち水素を除いた元素の総称)、典型元素(周期表の1・2族と12族~18族の元素)の一種で、水と激しく反応し1価の陽イオンとなりやすいのが特徴です。このアルカリ金属としての特徴は、また後で解説しますね。カリウムは酸化しやすい為単体で自然界には存在できず、塩化カリウムとして採取されています。

image by Study-Z編集部

体内に存在する元素の質量のおよそ0.2%がカリウムです。ちなみに最も多いのは酸素。体内存在量は65%です。一方、地球の地殻中には2.4%ほど存在し、主に鉱石に含まれています。

カリウムこぼれ

Davy Humphry desk color Howard.jpg
Henry Howard (died 1847) – one or more third parties have made copyright claims against Wikimedia Commons in relation to the work from which this is sourced or a purely mechanical reproduction thereof. This may be due to recognition of the “sweat of the brow” doctrine, allowing works to be eligible for protection through skill and labour, and not purely by originality as is the case in the United States (where this website is hosted). These claims may or may not be valid in all jurisdictions. As such, use of this image in the jurisdiction of the claimant or other countries may be regarded as copyright infringement. Please see Commons:When to use the PD-Art tag for more information., パブリック・ドメイン, リンクによる

カリウムは英語で potassium、ポタシウムといいます。この由来はpot、鍋 とash、灰が由来となっているのです。

もともとカリウム塩は、木や葉を燃やした灰を鍋に入れて水と共に加熱し、その水を蒸発させることで得ていました。そしてイギリスのハンフリー・デービー(1778~1829)が電気分解によってカリウム元素を単離に成功してpotassiumと名付けたのです。ちなみにこのデービーは、ナトリウムや塩素も発見しています。

カリウムの性質

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それではカリムの性質について詳しく確認していきましょう。

人体に欠かせない必須元素

image by PIXTA / 60782975

生命維持に欠かせない、食事などによって摂取しなければならない元素を必須元素といいます。体に欠かせない元素、とは何でしょうか。この必須元素として水素(H)、炭素(C)、窒素(N)、ナトリウム(Na)があげられます。

必須、というだけあってこれらの元素が欠乏すると欠乏症になる恐れがあるのです。その一方で過剰に摂取すれば過剰症中毒症状を起こす危険性も。カリウムを過剰摂取又はの症状として、以下のものがあげられます。

過剰摂取
高カリウム血症による不整脈

欠乏症
低カリウム血症による筋力の低下、腸閉塞など

カリウムの効能とカリウムを含む食材

image by PIXTA / 67014423

カリウムを摂取することは、むくみの解消につながります。カリウムには体内の余分な塩分を排出してくれる効果があるからです。そのため、高血圧の予防にもつながります。また足がつってしまうのも、カリウム不足が原因なのです。

適量取るのは大変そうな気もしますが、自然由来のものを普通に食べていれば適正な量を摂取できるとされています。カリウムを含む食材といえば以下のものが有名です。

果物  バナナ、キウイ
野菜  ジャガイモ、アボカド、パプリカ、切り干し大根
海藻類 昆布、わかめ、ひじき
その他 コーヒー、抹茶、納豆

アルカリ金属としての性質~水に注意

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単体の金属カリウムは、消防法の第三類自然発火性物質及び禁水性物質に分類されている危険物です。ここでいう危険物とは取り扱いを間違えると火事につながる危険性を持つ物質のこと。第三類の危険物は燃えやすいもの(可燃性物質)や燃やしやすいもの(酸化物)に分類でき、カリウムの他にナトリウムや黄りんなども第三類に分類されています。

なぜカリウムは危険物なのでしょうか。カリウムはアルカリ金属の一種です。アルカリ金属は水素を除く第1族の元素で、以下の元素が分類されています。

リチウム   Li
ナトリウム  Na
カリウム   K
ルビジウム  Rb
セシウム   Cs
フランシウム Fr 

アルカリ金属は、銀白色の固体で融点が低く柔らかいことが特徴です。1族ということは価電子(最外殻の電子)は1つ。つまり1価の陽イオンになりやすいのがアルカリ金属の特徴なのです。

アルカリ金属は酸化されやすく、天然では化合物の状態で存在しています。酸化しやすいアルカリ金属は還元性が高く、水と簡単に反応して水素を発生するのです。するとこの水素に反応熱によって火がついてしまうので、アルカリ金属に水をかけると燃えてしまいます。この反応性は、原子番号が大きくなるとより強くなっていくのです。

カリウムの酸化
 4K + O2 → 2K2O
カリウムと水の反応
 2K + 2H2O → 2KOH + H2

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