この記事ではウラシマソウとマムシグサの違いについてみていきます。ウラシマソウ・マムシグサはどちらも、初夏の野山で派手な花をつける山野草です。両者ともに実は毒草ですが、食用とされていたこともある。今回はそんなウラシマソウ・マムシグサの見分け方や毒性、毒抜きの知識について、大学で農学を専攻していたライター2scと一緒にみていきます。

ライター/2sc

大学で生物を極め、農学士を得た理系ライター。フィールドワークで培った動植物の知識に、強い自信を持つ。「生物のおもしろさ」を広めるべく、日々奮闘中。

ウラシマソウとマムシグサの違いは?

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ウラシマソウマムシグサはどちらも、野山を代表する植物。ともに栽培・観賞用として取引される希少な山野草です。ウラシマソウ・マムシグサはどちらも派手な花と果実をつけ、ハイキングや登山の道中で一際われわれの目を引きます。その違いを知っていると山歩きをより楽しめますよ。以下、両者の大まかな違いをみていきましょう!

どちらもサトイモ科の毒草

ウラシマソウ・マムシグサはともにサトイモ科テンナンショウ属の多年草。同じサトイモ科園芸植物であるアンスリウムやカラー、ミズバショウ同様、仏炎苞をもつ花を咲かせます。両種が属するテンナンショウ属は、有毒植物のグループ。ウラシマソウとマムシグサもその例に漏れず毒草です。どちらの種も雑木林を好み、鬱蒼とした木陰で毒々しい花を咲かせます。

見た目が違う

ウラシマソウとマムシグサはテンナンショウの仲間として、混同されることが多い植物です。ですが外観上いくつかの違いが存在。両種ともに個性あるフォルムをもち、それが種名の由来になっています。ウラシマソウ・マムシグサを見分けるためのポイントは大きく分けて3つ。次の項目で解説していきます!

ウラシマソウとマムシグサの見た目の違いを詳しく解説!

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ウラシマソウとマムシグサは、外観上の3つの違いを押さえておけば容易に判別可能です。その違いとは、両者の花・茎・葉の形状・模様にあります。ウラシマソウ・マムシグサともに、冬以外は地上に植物体を伸ばしているため一目で見分けがつくでしょう。以下、その見分け方をお伝えします。

\次のページで「1.花」を解説!/

1.花

ウラシマソウ・マムシグサの花は、一般的なサトイモ科植物に見られる構造をもちます。同サトイモ科のミズバショウのように、1枚の花びら(仏炎苞|特殊な葉)とその付け根から生えた棒状の穂(肉穂花序|小さな花の集合体)をもつ花が特徴的です。

ウラシマソウとマムシグサの仏炎苞の色はどちらも、濃い紫から緑までバラエティ豊か。形・色ともに個性的な花を咲かせるため、野山でも一際目を惹きます。

まずウラシマソウ・マムシグサには花のつき方に違いが存在。ウラシマソウが地表近くで花を咲かせるのに対し、マムシグサは直立して長く伸びた茎の先に花をつけます。加えてウラシマソウの花は、肉穂花序の先端が大きく発達。60cmほどの長い糸が仏炎苞の中から伸びています。一説には、この長い糸を浦島太郎の釣竿に見立て「ウラシマソウ」という名称が定着したといわれているのです。

2.茎

ウラシマソウ・マムシグサの開花時期はどちらも初夏に限られています。ですが開花時期以外でも、茎の模様を見れば違いは一目瞭然です。マムシグサの茎にのみ、まだら模様が存在。この模様を毒蛇のマムシに見立てて、マムシグサと呼ばれるようになったのです。

3.葉

ウラシマソウ・マムシグサはともに、鳥足状の1〜2枚の葉を展開。葉はそれぞれ複数の小さな葉に枝分かれしているため、一見多くの葉を持っているように見えます。両者の葉の形状に大きな違いは存在しません。ウラシマソウとマムシグサの葉を見分ける上で重要なのは分岐の位置ウラシマソウでは仏炎苞と葉の分岐部が地中に存在し、花と葉が別々に地面から伸びています。

毒草だけど食べられるの?

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先述の通りウラシマソウ・マムシグサは、どちらも毒草です。ですが飢饉の時には、一手間かけて食用とされていました。両種ともにサトイモの仲間というだけあって、でんぷんを多く蓄えた地下茎をもちます。その毒性や利用方法について、以下みていきましょう!

含まれる毒は?

ウラシマソウ・マムシグサに含まれる有毒成分は共通です。おもな成分はシュウ酸カルシウム。加えてサポニン・コニインを含みます。シュウ酸カルシウムは少量口に含むだけでも、粘膜が腫れる劇物です。強い毒性を示す地下茎を誤食した場合は、激しい口内・消化管の腫れが半日続き、量によっては窒息や消化器障害を起こすほど。加えてサポニンによるじんましんや、コニインによる麻痺も加わり、死亡例も存在する猛毒植物です。

とくに子供による誤食には気をつけたいところ。秋に熟した赤い果実は、一見美味しそうですが有毒ですのでご注意ください。またシュウ酸カルシウムは皮膚に付着するだけで痛みが生じます。全草に毒をもつため、触れる時にも注意が必要です。

どちらも救荒植物

苛烈な毒をもった植物ですが、かつては毒抜きを行ったうえで食用としていました。ウラシマソウとマムシグサは、サトイモ科テンナンショウ属の植物。テンナンショウ属の植物は、でんぷんを多く含んだ地下茎(芋)をもつため、不作・飢饉の際に重宝されたのです。このように食糧難を解決する植物を総称して救荒植物といいます。昔の人の「生きる知恵」ですね。

\次のページで「入念な毒抜きが必要!」を解説!/

入念な毒抜きが必要!

毒抜きといって、煮こぼし・水さらしを行うと有毒成分が失われます。また灰の中で焼くことで、毒の無害化が可能です。しかしながら、どちらの方法でも毒を完全に取り除くことは不可能。毒に当たると半日苦しむことになりますので、食べるのはおすすめしません。

生きるために、毒草を知ろう!

飽食の現在において救荒植物を食べる機会はありません。ですが山菜採りなど、野山の植物を食べる文化は残っています。山菜採りの際に、毒草を誤食してしまうというケースも多数存在。加えて我々の生活圏にも毒草が存在し、子供が誤食することもあるのです。生きていくために、毒草の知識は必須ですね。

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雑学

簡単でわかりやすい!ウラシマソウとマムシグサの違いとは?どちらも毒草?簡単な見分け方も農学専攻ライターが詳しく解説

この記事ではウラシマソウとマムシグサの違いについてみていきます。ウラシマソウ・マムシグサはどちらも、初夏の野山で派手な花をつける山野草です。両者ともに実は毒草ですが、食用とされていたこともある。今回はそんなウラシマソウ・マムシグサの見分け方や毒性、毒抜きの知識について、大学で農学を専攻していたライター2scと一緒にみていきます。

ライター/2sc

大学で生物を極め、農学士を得た理系ライター。フィールドワークで培った動植物の知識に、強い自信を持つ。「生物のおもしろさ」を広めるべく、日々奮闘中。

ウラシマソウとマムシグサの違いは?

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ウラシマソウマムシグサはどちらも、野山を代表する植物。ともに栽培・観賞用として取引される希少な山野草です。ウラシマソウ・マムシグサはどちらも派手な花と果実をつけ、ハイキングや登山の道中で一際われわれの目を引きます。その違いを知っていると山歩きをより楽しめますよ。以下、両者の大まかな違いをみていきましょう!

どちらもサトイモ科の毒草

ウラシマソウ・マムシグサはともにサトイモ科テンナンショウ属の多年草。同じサトイモ科園芸植物であるアンスリウムやカラー、ミズバショウ同様、仏炎苞をもつ花を咲かせます。両種が属するテンナンショウ属は、有毒植物のグループ。ウラシマソウとマムシグサもその例に漏れず毒草です。どちらの種も雑木林を好み、鬱蒼とした木陰で毒々しい花を咲かせます。

見た目が違う

ウラシマソウとマムシグサはテンナンショウの仲間として、混同されることが多い植物です。ですが外観上いくつかの違いが存在。両種ともに個性あるフォルムをもち、それが種名の由来になっています。ウラシマソウ・マムシグサを見分けるためのポイントは大きく分けて3つ。次の項目で解説していきます!

ウラシマソウとマムシグサの見た目の違いを詳しく解説!

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ウラシマソウとマムシグサは、外観上の3つの違いを押さえておけば容易に判別可能です。その違いとは、両者の花・茎・葉の形状・模様にあります。ウラシマソウ・マムシグサともに、冬以外は地上に植物体を伸ばしているため一目で見分けがつくでしょう。以下、その見分け方をお伝えします。

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