「ローマ教皇」「ローマ法王」「神父」「牧師」どれも聞いたことはあるでしょう。いずれもキリスト教に関する人の呼称です。では、その違いを説明できるでしょうか?今回はこれらの呼称について、教会好きの元添乗員ライター如月(きさらぎ)と解説していきます。

ライター/如月(きさらぎ)

「見たい」「知りたい」「食べたい」の好奇心を胸に世界中を飛び回ってきた元添乗員ライター。経験や学びから得たものをわかりやすく伝える使命感に燃えている。

「教皇」と「法王」のざっくりとした違いとは

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「教皇」とは、キリスト教カソリック教会の最高聖職者、「法王」とは、宗教上の最高指導者などに用いられる呼称です。

「教皇」と「法王」の違いを詳しく解説

では「教皇」と「法王」の違い、キリスト教で2つの呼び名が存在する事について詳しく解説していきます。

1.定義

辞書で調べてみると、「教皇」には「法王」、「法王」には「教皇」との記載があります。どういう事でしょうか? 

「教皇」とは、カソリック教会における最高聖職位の称号。バチカン市国の元首「ローマ法王」のことです。一方、「法王」とは、宗教の最高指導者などに用いられる称号。もともとは仏教系の用語で1.仏法の王 2.天平神護2年(766年)称徳天皇が道鏡に授けた称号。3.教皇の別称。と複数の意味があります。

日本では、世俗の最高位が「天皇」、仏門での最高位が「法王」で、出家した上皇の事も「法皇」と書いて「ほうおう」とよびます。

2.代表的な人物

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「教皇」はカソリック教会の最高聖職者で、初代はイエス=キリストの一番弟子ペトロ(ペテロ。在位期間は30年?~68年?頃。ローマ皇帝ネロの迫害により殉教、墓の上に建てられたのが総本山であるサン・ピエトロ大聖堂)。

上の写真は現在の第266代フランシスコ(2013年~)で、史上初の南米アルゼンチン出身です。記憶に新しいところでは聖人に列せられた(認定された)ポーランド出身の第264代ヨハネパウロ2世(在位1978~2005年)。次に歴史の節目となる有名な教皇を6人ご紹介しましょう。

\次のページで「「ローマ教皇」と「ローマ法王」どちらが正しい?」を解説!/

第157代グレゴリウス7世(在位1073~1085年)…1077年「カノッサの屈辱」神聖ローマ皇帝ハインリヒ7世を破門
第159代ウルバヌス2世(在位1088~1099年)…十字軍の提唱者、クレルモン宗教会議
第176代イノケンティウス3世(在位1198~1216年)…教皇の権力絶頂期、第4回十字軍
第193代ボニファティウス8世(在位1294~1303年)…教皇のバビロン捕囚
第216代ユリウス2世(在位1503~1513年)…ブラマンテにサン・ピエトロ大聖堂の改築、ミケランジェロにシスティーナ礼拝堂の天井画「天地創造」を依頼
第217代レオ10世(在位1513~1521年)…ルターの宗教改革のきっかけとなる贖宥状を発行

全ての教皇が聖人になれるわけではありません。聖人とは、カソリック教会で最高の崇敬。生存中にキリストの規範に忠実に従い,その教えを完全に実行し、2つ以上の奇跡を起こした人物に贈られるもの。

「法王」の代表的な人物は「ローマ法王」以外にも、釈迦(ゴータマ・シッダールタ)、タイ王国(上座部仏教が国教)の大長老会議の議長、聖徳太子、チベット仏教のダライ・ラマなどがいます。

チベット仏教にはいくつかの宗派があり、ダライ・ラマはゲルク派の高僧。全体を束ねる長は存在しないので、本来の意味では違うのですが、全体の指導者的な存在のため日本では法王と呼んでいます。

「ローマ教皇」と「ローマ法王」どちらが正しい?

「ローマ教皇」と「ローマ法王」どちらも間違いではなく、同じ人物の別称。ただし、日本のカトリック中央協議会(カトリック教会の中央団体)では「ローマ教皇」の表記を推奨しています。理由は、世界13億人の信者を束ねる最高の指導者ですので、「教える」のほうが相応しいから。日本政府も2019年に教皇フランシスコ訪日にあわせて「教皇」への名称変更を発表しました。

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2つの呼称が混在している理由は?

日本で「ローマ教皇」と「ローマ法王」と2つの呼称が混在するのは、ローマ教皇庁のあるバチカン市国との関係に由来します

両者が外交関係を樹立した1942年当時「ローマ法王庁」という名称で日本政府に申請。その後「教皇」への変更も検討されましたが、バチカン側からの名称変更の申請はなく、外務省は混乱を避けるためにそのままに。結果的に官報やマスメディアでは「法王」、教会関係では「教皇」を使用することが多くなり、混在するようになったのです。

「ローマ教皇」の正式名称はとても長くて「ローマ司教、イエス=キリストの代理、使徒の頭(ペテロのこと)の後継者、全カトリック教会の首長、西ヨーロッパ総大司教、イタリア首座大司教、ローマ管区大司教かつ首都大司教、ヴァチカン市国主権者」

「神父」と「牧師」の違い

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「神父」と「牧師」、この2つは似ているようで全く違うのもの。一体どんな違いがあるのでしょうか?

「神父」:キリスト教カソリックと正教で使用

「神父」とはキリスト教カソリック、正教(ギリシャ正教、東方正教会)の司祭という役職に対する敬称。聖職者には3つの階級があり、そのうちの序列2番目にあたるもの。聖職者として生涯独身、男性のみです。

カソリックの序列: 司教>司祭>助祭
正教の序列: 主教>司祭>輔祭(ほさい)

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「牧師」:キリスト教プロテスタントで使用

「牧師」とはキリスト教プロテスタント教会の役職名です。信徒の代表として教会を管理、指導する人で、敬称では「先生」。プロテスタントでは信徒に階級はなく、皆が同列。牧師は信徒の代表であり、聖職者ではないため、結婚もできるし、女性もいます。

「教皇」と「法王」はどちらも宗教上の最高指導者に対する呼称

「ローマ教皇」と「ローマ法王」どちらも同じ人物に対するもので、間違いではありませんが今後は「ローマ教皇」で統一していくようです。「神父」と「牧師」は別ですので、使い分けに注意しましょう。

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3分で簡単にわかる「ローマ教皇」と「ローマ法王」の違い!どちらが正しい?「神父」や「牧師」との違いも元添乗員が分かりやすく解説

「ローマ教皇」「ローマ法王」「神父」「牧師」どれも聞いたことはあるでしょう。いずれもキリスト教に関する人の呼称です。では、その違いを説明できるでしょうか?今回はこれらの呼称について、教会好きの元添乗員ライター如月(きさらぎ)と解説していきます。

ライター/如月(きさらぎ)

「見たい」「知りたい」「食べたい」の好奇心を胸に世界中を飛び回ってきた元添乗員ライター。経験や学びから得たものをわかりやすく伝える使命感に燃えている。

「教皇」と「法王」のざっくりとした違いとは

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「教皇」とは、キリスト教カソリック教会の最高聖職者、「法王」とは、宗教上の最高指導者などに用いられる呼称です。

「教皇」と「法王」の違いを詳しく解説

では「教皇」と「法王」の違い、キリスト教で2つの呼び名が存在する事について詳しく解説していきます。

1.定義

辞書で調べてみると、「教皇」には「法王」、「法王」には「教皇」との記載があります。どういう事でしょうか? 

「教皇」とは、カソリック教会における最高聖職位の称号。バチカン市国の元首「ローマ法王」のことです。一方、「法王」とは、宗教の最高指導者などに用いられる称号。もともとは仏教系の用語で1.仏法の王 2.天平神護2年(766年)称徳天皇が道鏡に授けた称号。3.教皇の別称。と複数の意味があります。

日本では、世俗の最高位が「天皇」、仏門での最高位が「法王」で、出家した上皇の事も「法皇」と書いて「ほうおう」とよびます。

2.代表的な人物

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「教皇」はカソリック教会の最高聖職者で、初代はイエス=キリストの一番弟子ペトロ(ペテロ。在位期間は30年?~68年?頃。ローマ皇帝ネロの迫害により殉教、墓の上に建てられたのが総本山であるサン・ピエトロ大聖堂)。

上の写真は現在の第266代フランシスコ(2013年~)で、史上初の南米アルゼンチン出身です。記憶に新しいところでは聖人に列せられた(認定された)ポーランド出身の第264代ヨハネパウロ2世(在位1978~2005年)。次に歴史の節目となる有名な教皇を6人ご紹介しましょう。

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