この記事では「水晶」と「ガラス」の違いについてつまびらかにしていきます。どちらも二酸化ケイ素が主成分の無色透明の素材で、一見見分けがつかないが、各々の構造や特性を比べてみると、まるで違うことが分かる。今回はそんな似て非なる2つについて、学生時代、固体物理学を学んでいたライターthrough-timeと一緒に解説していきます。

ライター/through-time

工学修士で、言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。一時期アメシストを集めるのにはまっていました。

水晶とは

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まずは水晶について解説しましょう。二酸化ケイ素の結晶である石英quartz)が六角柱状に大きく成長したもののうち、特に透明度の高いもの水晶といいます。英語ではrock crystalまたは単にcrystalです。石英自体はごくありふれた鉱物で、地球上の多くの岩石を構成する造岩鉱物でもあり、砂場などを探すとキラキラ輝く無色透明ないし白い粒を見つけることができます。

水晶は世界各国に産出されており、日本ではかつて山梨県が一大産地でした。現在では商業的な採掘はしていませんが、水晶研磨技術から発展した宝石加工産業が現在でも盛んで、宝飾品の加工や流通に携わる企業が数多くあります。

二酸化ケイ素SiO2)はケイ素Siの酸化物で、シリカ無水ケイ酸とも呼ばれます。自然界では石英として存在していることが一般的です。二酸化ケイ素はさまざまな用途があり、乾燥剤のシリカゲルのほか、化粧品や薬、食品添加物などに使われています。

結晶について

結晶原子や分子、イオンなどの粒子が三次元的に規則正しく配列している固体のことです。身近なところでは、塩の結晶や雪の結晶などがあります。鉱物も、一部例外(水銀や琥珀、オパールなど)を除いてほとんどが結晶です。

結晶は立方体や直方体、六角柱など、基本的な形で周期的に並んでいますが、その形はわずか7つ(もしくは6つ)しかありません基本的な形によって分類されるグループ晶系といい、結晶が成長する形電気的・光学的性質などに大きく影響します。水晶石英)は三方晶系という、六角柱に近い形の晶系に属するため、六角柱状に成長するのです。

水晶の種類

水晶ほかの物質と混ざらない特性があるため、ほとんどが無色透明か白色です。しかし、水晶が成長する過程で不純物が混入したり、天然の放射線の影響を受けたりすることで、色がつくことがあります。代表的なものをいくつか紹介しましょう。

\次のページで「水晶の用途」を解説!/

紫水晶アメシスト):微量の鉄が放射線の影響で特殊なイオンの状態になり、紫色を呈したもの。これに熱が加わると黄~オレンジ色の黄水晶シトリン)になります。
紅水晶・紅石英ローズクオーツ):淡紅色の水晶(石英)。微量のチタン、アルミニウム、リンもしくはチタン、マンガン、鉄が色の由来とされています。また、これらの不純物が六角柱に成長するのを妨げるため、紅水晶になるのは非常にまれで、市場に出回るローズクオーツのほとんどが紅石英です。
煙水晶スモーキークオーツ):煙がかったような茶色や、黒ずんだ色の水晶。発色原因ははっきりしていませんが、微量のアルミニウムが放射線を受けたことによると考えられています。

そのほか、水晶が成長する過程で金紅石(ルチル)の針状結晶が包有された針入り水晶ルチルクオーツ)、角閃石や電気石など微細な鉱物が入り込んで草状の模様を作り出す草入り水晶などがあります。

水晶の用途

水晶は宝飾品やスピリチュアル的な用途があるほか、彫刻や印鑑などの素材に用いられます。多くの結晶にはへき開特定の面に沿って割れやすい性質)がありますが、水晶にはへき開がなく、さらに硬度もあるために精密な加工がしやすいのです。

また、水晶は天然に産出される二酸化ケイ素の鉱石でもあり、ガラスなど工業製品の原材料となります。

水晶は人工的に作ることができ、光学用品や電子部品に人工水晶を用いたものが水晶デバイスです。代表的なのが、水晶振動子quartz crystal unit)と呼ばれる水晶片に交流電圧をかけて精度の高い周波数を発振させるもので、クオーツ時計は水晶振動子が組み込まれていることがその名の由来となっています。

ガラスとは

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ガラスは二酸化ケイ素を主成分とするアモルファス非晶質固体です。さまざまな種類があり、それぞれ組成や製造法が異なります。使用済みのガラス製品を砕いたもの(カレット)を原料にすることもあり、リサイクル率の高い素材です。

\次のページで「アモルファスについて」を解説!/

ソーダ石灰ガラス:コップや瓶、窓ガラスなどに幅広く利用されています。二酸化ケイ素、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化カルシウム(CaO)が主成分です。
ホウケイ酸ガラス:ソーダ石灰ガラスにホウ酸(B2O3)を添加して作られます。耐熱性・耐薬品性に優れることから、ビーカーやフラスコなどの理化学器具や台所用品などに使われ、パイレックスもこのガラスの一種です。
鉛ガラス:酸化鉛(PbO)を多く含みます。反射率や屈折率、透明度が高く、クリスタルガラスはこのガラスの一種です。鉛含有度を高くしたものは放射線遮蔽用に使われます。
石英ガラス:二酸化ケイ素の純度が高く、溶融石英シリカガラスとも。耐食性・耐熱性・透明度に優れ、光学機器や半導体製造関連の部品に用いられます。

アモルファスについて

原子や分子などの粒子が規則的に配列する結晶と違い、アモルファス非晶質)は粒子が自由に動き回る液体の状態をそのまま固めたような、不規則な状態を指します。ガラスは原料を高温で溶かしたのち急激に冷やすため、アモルファスになるのです。

代表的なアモルファス固体として、ガラスのほかにゴムやお菓子のあめなどが挙げられます。ちなみに氷砂糖は結晶です。

天然ガラスについて

ガラスは人工的に作られるものですが、自然に生じたガラスも存在します。いくつか紹介しましょう。

黒曜石オブシディアン):噴出されたマグマが急激に冷えたもので、火山ガラスとも呼ばれます。先史時代よりナイフや槍の先端などに使われていました。
閃電岩または雷管石フルグライト):雷が石英分の多い砂地に落ちた際にできます。別名「雷の化石」。
テクタイト:隕石の衝撃によって溶けた石が上空に飛散した際に急冷されたものです。有名なものにモルダバイトがあります。

水晶とガラスの見分け方

これまで述べた通り、水晶は結晶、ガラスはアモルファスという全く異なる構造を持っています。そのため、形や大きさが同じでも容易に見分けることができるのです。

1. 硬さの違いを利用する

19世紀、モースは硬さの異なる10種類の鉱物を選び出し、柔らかい順に番号を振りました。これが鉱物の硬さの尺度となるモース硬度で、1滑石10ダイヤモンドです。なお、モース硬度は「ひっかいたときの傷のつきにくさ」を相対的に示すもので、衝撃に強いなどの頑丈さを表したものではありません。

水晶)のモース硬度7ガラス5なので、互いをこすり合わせて傷がついた方がガラスとなります。また、より精度を高めるために10段階から15段階に修正した修正モース硬度においても、水晶)が8石英ガラス7です。

傷がつく判定法なので、購入前の商品などで試してはいけません。

\次のページで「2. 見え方の違いを利用する」を解説!/

2. 見え方の違いを利用する

結晶を通して向こう側を見ると、像が2重に見える現象複屈折といいます。複屈折は結晶の方向によって光の屈折率が異なるために起こるものです。顕著なのは方解石ですが、水晶にも複屈折の特性があり、たとえばボールペンで書いた1本の線を水晶越しに見てみると、複屈折のために2本に見えます。一方、ガラスは屈折率がどの方向でも同じなので、1本です。偏光板2枚を使って見分ける方法もあります。

また、気泡の有無でも見分けることができ、ガラスは気泡が入っていることがありますが、水晶はありません

3. そのほかの違いを利用する

水晶とガラスは重さが違います水晶比重2.7に対し、ガラスソーダ石灰ガラス)は約2.5で、同じ大きさの場合水晶の方が重いです。また熱伝導率も大きく異なり、それぞれ触ってみると熱伝導率の高い水晶は冷たくガラスは温かく感じられます。氷を触れさせるとより確実に分かり、早く氷が溶けるのは水晶の方です

水晶は結晶、ガラスはアモルファス

水晶ガラスは根本的な構造に大きな違いがあり、それぞれ結晶アモルファスであることを解説しました。

違いを探し見分けることはもちろん大事ですが、水晶には水晶の、ガラスにはガラスの良いところがあります。たとえばアクセサリーやインテリアを買うときも、それぞれの特徴を踏まえて予算や状況に応じたものを検討すれば、選択肢はぐっと広がるでしょう。

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雑学

簡単にわかる水晶とガラスの違い!成分や特性、見分け方を工学系院卒ライターがわかりやすく解説!


この記事では「水晶」と「ガラス」の違いについてつまびらかにしていきます。どちらも二酸化ケイ素が主成分の無色透明の素材で、一見見分けがつかないが、各々の構造や特性を比べてみると、まるで違うことが分かる。今回はそんな似て非なる2つについて、学生時代、固体物理学を学んでいたライターthrough-timeと一緒に解説していきます。

ライター/through-time

工学修士で、言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。一時期アメシストを集めるのにはまっていました。

水晶とは

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まずは水晶について解説しましょう。二酸化ケイ素の結晶である石英quartz)が六角柱状に大きく成長したもののうち、特に透明度の高いもの水晶といいます。英語ではrock crystalまたは単にcrystalです。石英自体はごくありふれた鉱物で、地球上の多くの岩石を構成する造岩鉱物でもあり、砂場などを探すとキラキラ輝く無色透明ないし白い粒を見つけることができます。

水晶は世界各国に産出されており、日本ではかつて山梨県が一大産地でした。現在では商業的な採掘はしていませんが、水晶研磨技術から発展した宝石加工産業が現在でも盛んで、宝飾品の加工や流通に携わる企業が数多くあります。

二酸化ケイ素SiO2)はケイ素Siの酸化物で、シリカ無水ケイ酸とも呼ばれます。自然界では石英として存在していることが一般的です。二酸化ケイ素はさまざまな用途があり、乾燥剤のシリカゲルのほか、化粧品や薬、食品添加物などに使われています。

結晶について

結晶原子や分子、イオンなどの粒子が三次元的に規則正しく配列している固体のことです。身近なところでは、塩の結晶や雪の結晶などがあります。鉱物も、一部例外(水銀や琥珀、オパールなど)を除いてほとんどが結晶です。

結晶は立方体や直方体、六角柱など、基本的な形で周期的に並んでいますが、その形はわずか7つ(もしくは6つ)しかありません基本的な形によって分類されるグループ晶系といい、結晶が成長する形電気的・光学的性質などに大きく影響します。水晶石英)は三方晶系という、六角柱に近い形の晶系に属するため、六角柱状に成長するのです。

水晶の種類

水晶ほかの物質と混ざらない特性があるため、ほとんどが無色透明か白色です。しかし、水晶が成長する過程で不純物が混入したり、天然の放射線の影響を受けたりすることで、色がつくことがあります。代表的なものをいくつか紹介しましょう。

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