今回は料理酒について学んでいきます。料理をする人間にとってはお馴染みの調味料ですが、原料や栄養素のことまでは知らないでしょう。日本酒なんだから米と麹だけでできているかといえば、そうでもない。ものによっては塩分や糖類などの添加物が加えられている。この記事は料理酒の特徴と、栄養や効能を現役料理人のテルトラと解説していく。

ライター/テルトラ

調理経験15年の現役料理人。和食を中心にさまざまな業態で多くの食材にふれてきた。もちろん料理酒は毎日使っている。

料理酒の特徴

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料理酒はアルコールを含む調味料で、料理の味を向上させるために用いられます。料理用に添加物を加えているため、通常の日本酒よりも酸味や雑味が多いのが特徴です。成分によっては酒類に該当せず、安価で手に入ります。

料理酒とは?

一般的には日本酒に塩分や酸味を加えて、飲用できないよう処理したものを指します。飲用できないため酒類に分類されず、酒税がかからないため安価で販売可能です。

アルコールに糖類やうま味成分を加えたものや、清酒を料理用に改良したものがあります。飲用可能な料理酒には酒税がかかるため、酒類販売業の免許が必要です。添加物を含まない料理酒のほうが、素材の味が引き立ちます。

料理酒の役割

料理酒の主な役割は5つです。

・素材の臭みを抑える
・素材を柔らかくする
・味が染みやすくなる
・旨みとコクが加わる
・煮崩れを防ぐ

アルコールの効果で肉や魚の臭みが蒸発し、調味料が素早く浸透します。糖分と合わせて使うことで素材の細胞壁が強化されるため、煮崩れしません。料理酒に含まれる「アミノ酸・有機酸・糖分」が料理にコクと旨みをプラスします。有機酸には素材の保水力を高める効果もあり、肉や魚をやわらかくするのに最適です。

みりんとの違い

みりんとの大きな違いは次のとおりです。

\次のページで「料理酒の栄養と効能」を解説!/

・料理酒は塩味
・みりんは甘み
・料理酒は肉や魚をやわらかくする
・みりんはタンパク質を固める性質をもつ

料理に照りやツヤを加えるのは、みりん特有の効果です。基本的な原料は米と米麹で、アルコール・糖類・酸味料などの添加物によって3種類にわけられます。

【本みりん】
アルコールを添加
アルコールを14%前後含む

【みりん風調味料】
水飴(糖類)や酸味料などを添加
アルコール分は1%未満

【みりんタイプ調味料】
アルコールや水飴(糖類)や食塩を添加
アルコールを10%前後含む

米・米麴・アルコールのみで作られた本みりんだけが、酒類に該当します。

料理酒の栄養と効能

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料理酒の主な栄養素は3つです。

・炭水化物
・ナトリウム
・カリウム

料理酒の主原料は米や米麴であるため、糖質を含む炭水化物が豊富です。塩分が入っているものには、ナトリウムやカリウムなどのミネラルも含まれます。

1.三大栄養素のひとつ・炭水化物

タンパク質や脂質と並ぶ三大栄養素のひとつで、脳や体を動かすエネルギー源として必要な栄養素です。体内で消化できる糖質と、消化できない食物繊維にわかれます。消化された糖質は腸から吸収され、筋肉や肝臓でグリコーゲンとなり運動を行う際に使われる仕組みです。

脳や神経系は炭水化物に含まれる糖質が唯一のエネルギー源のため、摂取量が少ないと集中力が保てなくなります。十分に摂取していれば、同じ行動やトレーニングでもより高い効果が期待できるでしょう。

2.人体に必要なミネラル・ナトリウム

人体に必要なミネラルの一種で、食塩(塩化ナトリウム)の状態で摂取されます。主な効能は細胞外液の浸透圧を調整して、液量を一定に保つこと。水分をキープしながら細胞外液や血液の循環量を維持し、血圧を調節しています。筋肉の収縮や神経伝達、栄養素の吸収と運搬にも関わる大切な栄養素です。

不足すると浸透圧が保てなくなり、脱水症状や極度の疲労など悪影響を及ぼします。逆に摂りすぎるとむくみの原因となるほか、高血圧・胃がん・食道がんになる可能性が高まり危険です。

3.血圧を下げる効果・カリウム

ナトリウムとともに、細胞の浸透圧を維持しています。主な効能は心臓や筋肉の機能と、細胞内の酵素反応を調節すること。腎臓でナトリウムが再吸収されるのを抑え、尿への排泄を促すため血圧を下げる効果があります。

カリウムは通常の食生活であれば、不足することはほぼありません。不足すると脱力感や食欲不振、精神障害などの症状が出る恐れがあります。とくに次のような場合は、カリウムが失われやすい状態です。

・下痢や嘔吐
・大量に汗をかいている
・利尿剤を使用している

料理酒を使うときの注意点

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料理酒は料理に欠かせない調味料ですが、使用に関していくつか注意点があります。加熱せずに使用するレシピも多く存在するため、使い方を覚えておくとよいでしょう。

\次のページで「料理酒に含まれる塩分」を解説!/

・塩分などの添加物
・未成年者への使い方
・清酒との使い分け方

料理酒に含まれる塩分

料理酒に含まれる塩分や、甘味料・酸味料に注意しましょう。とくに塩分は飲用防止のため、2~3%と非常に高い塩分濃度です。3%といえば海水とほぼ同じ塩辛さで、料理の味付けにも影響します。

普段使いするなら、全体的に味付けを薄めにするのがコツです。水飴などの甘味料や酢などの酸味料も、製品によって含有量が異なります。添加物は製品ラベルに表示されているので、購入前にチェックしましょう。

妊娠中や子供の料理への使い方

妊娠中に料理酒を使うこと自体は問題ありませんが、できれば塩分が入っていないタイプが好ましいです。一般的な料理酒だと、塩分や糖分の過剰摂取につながる恐れがあります。飲用可能な清酒タイプの中でも、米・米麴・水だけで作られたものがおすすめ。

子供や未成年者に向けて作る場合は、料理酒のアルコールをしっかり飛ばすことが重要です。漬けダレやかけダレに使うときは、十分に加熱して煮切っておきましょう。

清酒との使い分け方

料理酒には塩分や糖類が添加されているものと、されていないものがあります。得られる調理効果が異なるため、それぞれの特徴を知っておくことが重要です。一般的な料理酒(塩分入り)の場合は、水飴などの甘味成分やコハク酸などのうま味成分が含まれています。料理酒自体に旨みがあるため、味付けしやすいのがメリットです。

塩分が含まれていない清酒タイプは、香りがよいので臭み消しや風味付けに向いています。米や米麹の醸造成分は、コクや旨みをプラスするのに効果的です。レシピに「酒」とだけ表記されている場合は、塩分を含まない清酒タイプと考えてよいでしょう。

料理酒を正しく使って料理を美味しくしよう

料理酒の特徴や、栄養と効能がわかりましたね。原料の米類に含まれる炭水化物が、料理酒の主な栄養素です。三大栄養素のひとつで、人体が活動するのに必要なエネルギー源となります。料理酒は大きくわけて2つ。塩分や糖類などが添加されているものと、されていないものです。用途に応じて使い分けるとよいでしょう。

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家庭科

料理酒の栄養と効能は?特徴やみりんとの違いを現役料理人が詳しく解説

今回は料理酒について学んでいきます。料理をする人間にとってはお馴染みの調味料ですが、原料や栄養素のことまでは知らないでしょう。日本酒なんだから米と麹だけでできているかといえば、そうでもない。ものによっては塩分や糖類などの添加物が加えられている。この記事は料理酒の特徴と、栄養や効能を現役料理人のテルトラと解説していく。

ライター/テルトラ

調理経験15年の現役料理人。和食を中心にさまざまな業態で多くの食材にふれてきた。もちろん料理酒は毎日使っている。

料理酒の特徴

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料理酒はアルコールを含む調味料で、料理の味を向上させるために用いられます。料理用に添加物を加えているため、通常の日本酒よりも酸味や雑味が多いのが特徴です。成分によっては酒類に該当せず、安価で手に入ります。

料理酒とは?

一般的には日本酒に塩分や酸味を加えて、飲用できないよう処理したものを指します。飲用できないため酒類に分類されず、酒税がかからないため安価で販売可能です。

アルコールに糖類やうま味成分を加えたものや、清酒を料理用に改良したものがあります。飲用可能な料理酒には酒税がかかるため、酒類販売業の免許が必要です。添加物を含まない料理酒のほうが、素材の味が引き立ちます。

料理酒の役割

料理酒の主な役割は5つです。

・素材の臭みを抑える
・素材を柔らかくする
・味が染みやすくなる
・旨みとコクが加わる
・煮崩れを防ぐ

アルコールの効果で肉や魚の臭みが蒸発し、調味料が素早く浸透します。糖分と合わせて使うことで素材の細胞壁が強化されるため、煮崩れしません。料理酒に含まれる「アミノ酸・有機酸・糖分」が料理にコクと旨みをプラスします。有機酸には素材の保水力を高める効果もあり、肉や魚をやわらかくするのに最適です。

みりんとの違い

みりんとの大きな違いは次のとおりです。

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