この記事ではイナゴとバッタの違いについてみていきます。両者は似た見た目の昆虫で、ともに田んぼで見かけることが多いよな。特にイナゴは「食べられる虫」として有名です。どうして呼び分けられているのか気にならないか?今回はそんなイナゴ・バッタの違いについて、大学で昆虫学を学んだ2scと一緒にみていきます。

ライター/2sc

生物学をこよなく愛するライター。京都の大学で、養蚕技術・昆虫の生態について学んでいた。生き物の分類から、見分け方まで「濃い」知識をわかりやすく解説していく。

イナゴとバッタはほぼ同じ!?

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イナゴ・バッタはともに、大きく発達した後脚をもつ昆虫。どちらも見た目に違わず高い脚力を誇り、ジャンプを得意としています。外観上、両者の間に大きな違いは存在しません。加えてライフスタイルも共通。イナゴとバッタはともに、草むらや水田に生息しています。見た目・生態ともにそっくりなイナゴとバッタは、どのようにして区別されるのでしょうか。

イナゴはバッタの仲間

「バッタ」とは、バッタ目・バッタ亜目に分類される昆虫を指す総称。「バッタ」とは生物学上、大きなグループなのです。一方「イナゴ」バッタ目・バッタ亜目のうちバッタ科に分類される一部の昆虫の総称。すなわち、まごうことなきバッタの仲間です。

イナゴとは

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先述の通り、イナゴはバッタの仲間です。ではなぜ、イナゴだけ特別視されるのでしょうか?以下イナゴの定義について解説していきます。

イナゴは「通り名」

狭義の「イナゴ」とは、バッタ科のイナゴ亜科・イナゴ属に分類されるバッタの総称です。ですがヒナバッタ亜科の「ナキイナゴ」のように、この定義に当てはまらないイナゴも多数存在します。「イナゴ」とはアカデミックな分類ではないのです。

実は日本の稲作文化が「イナゴ」という分類を生み出しました。「イナゴ」とはもともと、稲を食べるバッタの仲間を指す俗称。イナゴは害虫として区別され、積極的に駆除されてきました。

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イナゴは漢字で書ける?

イナゴは「蝗」または「稲子」と、漢字で表記することもあります。ですが「蝗」という漢字はバッタ(飛蝗)を指す場合もあるため、注意が必要です。

聖書にイナゴが出てくる?

バッタの仲間は世界的にも、害虫として扱われてきました。たとえばキリスト教の聖書の邦訳には、「いなご」という言葉がしばしば登場します。これは先述のイナゴではなく、あるバッタの仲間を指す訳語です。以下世界でのバッタの扱いについてみていきましょう。

海外ではときおり、バッタが引き起こす「蝗害」が問題視されます。蝗害とは「ワタリバッタ」と総称される、特定のバッタの大量発生によって生じる災害のこと。空を埋め尽くすほどに大量発生したワタリバッタは、周囲の農作物や雑草、紙や綿などあらゆる植物を食べ尽くします。その食欲たるや植物だけでは飽き足らず、共食いを行うこともあるのです。

蝗害は古くから飢饉の原因として恐れられていたため、聖書にも多く登場します。聖書に出てくる「いなご」は、蝗害を引き起こすワタリバッタの訳語なのです。

バッタとの違いは?

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生物学上イナゴは、バッタの仲間の1グループです。「イナゴ」とは本来学術的な分類ではないのですが、1つだけイナゴとバッタを見分ける特徴が存在します。イナゴ・バッタの違いについて、以下みていきましょう。

分類上のイナゴ

バッタ目・バッタ亜目に分類される「バッタ」は共通して発達した後脚をもちます。頭部の形状は種類によって大きく異なり、生態も種によってまちまちです。そのため、バッタ科やオンブバッタ科、ヒシバッタ科など、さらに細かい分類がなされます。

そして「イナゴ」は、バッタ目・バッタ亜目のうち、バッタ科の昆虫の一派です。そのバッタ科のうちイナゴ亜科やツチイナゴ亜科、ヒナバッタ亜科など複数のグループがイナゴとして扱われます。

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呼び名が違う

バッタの仲間の多くは、「トノサマバッタ」や「ショウリョウバッタ」など和名でもバッタとして表記されます。しかしイナゴの仲間は特別。「コバネイナゴ」や「ツチイナゴ」のように分類に関係なく、イナゴと呼ばれるのです。

イナゴには「のどぼとけ」がある

バッタの仲間は昆虫なので3対、計6本の脚をもちます。そのうち1対の前脚の付け根に着目すると、イナゴだけ特殊なのです。ほかのバッタとは異なり、一部のイナゴの「のど」(実際には胸の腹側、前脚の間)には「のどぼとけ」のような突起が存在します。例外はありますが、覚えておくと便利ですね。

コオロギとの違いは?

コオロギもバッタ同様、発達した後脚をもつ昆虫です。分類上もバッタに近く、バッタ目・キリギリス亜目に分類されます。ですがバッタ亜目ではないため、「バッタ」とは呼びません。よく観察すると、見た目が異なります。バッタとくらべてコオロギは、長い触角や尾毛、産卵管など突起物が目立つ体つきが特徴的です。

人類の天敵、イナゴ

バッタとイナゴは、農業を営む人類に立ちはだかる天敵です。「たかが虫」とあなどるなかれ。かれらバッタの仲間は、古くから世界中で「災い」として恐れられてきました。現在も人類対バッタの闘いは続いています。豊かな食生活は、先人たちの努力の上に成り立っているのです!

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雑学

イナゴってどんな虫?バッタとの違いは?わかりやすい定義の違いから簡単な見分け方まで昆虫ラボ所属のライターが詳しく解説

この記事ではイナゴとバッタの違いについてみていきます。両者は似た見た目の昆虫で、ともに田んぼで見かけることが多いよな。特にイナゴは「食べられる虫」として有名です。どうして呼び分けられているのか気にならないか?今回はそんなイナゴ・バッタの違いについて、大学で昆虫学を学んだ2scと一緒にみていきます。

ライター/2sc

生物学をこよなく愛するライター。京都の大学で、養蚕技術・昆虫の生態について学んでいた。生き物の分類から、見分け方まで「濃い」知識をわかりやすく解説していく。

イナゴとバッタはほぼ同じ!?

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イナゴ・バッタはともに、大きく発達した後脚をもつ昆虫。どちらも見た目に違わず高い脚力を誇り、ジャンプを得意としています。外観上、両者の間に大きな違いは存在しません。加えてライフスタイルも共通。イナゴとバッタはともに、草むらや水田に生息しています。見た目・生態ともにそっくりなイナゴとバッタは、どのようにして区別されるのでしょうか。

イナゴはバッタの仲間

「バッタ」とは、バッタ目・バッタ亜目に分類される昆虫を指す総称。「バッタ」とは生物学上、大きなグループなのです。一方「イナゴ」バッタ目・バッタ亜目のうちバッタ科に分類される一部の昆虫の総称。すなわち、まごうことなきバッタの仲間です。

イナゴとは

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先述の通り、イナゴはバッタの仲間です。ではなぜ、イナゴだけ特別視されるのでしょうか?以下イナゴの定義について解説していきます。

イナゴは「通り名」

狭義の「イナゴ」とは、バッタ科のイナゴ亜科・イナゴ属に分類されるバッタの総称です。ですがヒナバッタ亜科の「ナキイナゴ」のように、この定義に当てはまらないイナゴも多数存在します。「イナゴ」とはアカデミックな分類ではないのです。

実は日本の稲作文化が「イナゴ」という分類を生み出しました。「イナゴ」とはもともと、稲を食べるバッタの仲間を指す俗称。イナゴは害虫として区別され、積極的に駆除されてきました。

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