ロブスターって海老なの?伊勢海老との違いや簡単な見分け方を生物学専攻の現役大学院生がわかりやすく解説
ライター/2sc
生物学をこよなく愛するライター。大学では節足動物である、昆虫の生態について研究していた。生き物の分類から、見分け方まで「濃い」知識をわかりやすく解説していく。
伊勢海老とロブスターの違いは?
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伊勢海老とロブスターはともに、「メインディッシュを飾る大きな海老」として混同されます。ですが両者は分類上、全く別の生き物。そのため伊勢海老・ロブスターの間には、2つの決定的な違いが存在します。両者が具体的にどのような生き物か、みていきましょう!
違いその1.生物学上の分類
伊勢海老・ロブスターはともに、エビ目・エビ亜目に分類される海老の仲間です。ちなみに海老フライや天ぷらに用いられる、クルマエビの仲間はエビ目・根鰓亜目といって別グループ。意外なことに、われわれが普段食べている海老よりも、伊勢海老とロブスターのほうが「正統派の海老」なのです!
ですが伊勢海老とロブスターは以下の分類が異なります。伊勢海老は名前通り、イセエビ下目の「イセエビ」という甲殻類。一方ロブスターはなんと、ザリガニ下目に分類される「ザリガニの仲間」なのです!
違いその2.産地
伊勢海老・ロブスターは用いられる料理の違いからもわかるように、産地が大きく異なります。伊勢海老はおもに、日本列島の西太平洋沿岸部に生息。名前の由来には諸説ありますが、伊勢(現在の三重県)でよく採れる海老だったことから「イセエビ」と呼ばれるようになったといわれています。
一方ロブスターはフランス料理の高級食材。ロブスターの一種、ヨーロピアン・ロブスターの産地はノルウェーの大西洋岸から地中海近辺に分布しています。加えて別種のアメリカン・ロブスターが北米カナダからカリブ海までの大西洋岸に分布。ロブスターは伊勢海老よりも、広い地域で漁獲・水揚げされているのです。
違いその3.調理法
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産地の違いは料理の方法にも影響します。海老などの甲殻類では死後、「自己消化」という現象が発生。生のまま放置すると、すぐさま身がドロドロに溶けてしまいます。流通に気をつかうため、活きた甲殻類は価格が高いのです。
日本に輸入されたロブスターは、茹でた後冷凍したボイルドロブスターが主流。調理法も直火焼きやビスク(スープ)など加熱調理が一般的です。一方伊勢海老は活き造りなど生食にも根強い人気があります。
ロブスターとザリガニの違いは?
ロブスターは先述のとおり、ザリガニの仲間です。そのためロブスターも見た目はザリガニに似ています。
われわれがよく知るザリガニはアメリカザリガニ。地域によっては「エビガニ」とも呼ばれる、大きなハサミと長い腹部を備えた見た目が特徴的です。ロブスターもアメリカザリガニ同様「海老と蟹の中間」のフォルムをもち、さしずめ「高級ザリガニ」といった印象を与えます。
ですがロブスターは高級食材。彼らは汚れた淡水を好むアメリカザリガニとは異なり、海に生息しているのです。生物学的にも別グループで、アメリカザリガニがザリガニ下目・ザリガニ上科に分類されるのに対し、ロブスターはザリガニ下目・アカザエビ上科に分類されます。
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