よく似た言葉として挙げられる「倫理」と「道徳」。学校教育の教科でも見かける言葉ですが、両者の違いはいったい何なんでしょうな。
今回は学生時代に哲学を専攻していたという雑学好きライターのおおつけと一緒に解説していきます。

ライター/おおつけ

現役システムエンジニア兼ライター。前職は貿易商社の営業マン。知らない言葉は徹底的に調べるクセがあり、独自の単語帳を作っている。日々たくわえた広い知識を、わかりやすく紹介していく。

倫理と道徳の違い

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「倫理」と「道徳」と聞くと、どんなことをイメージするでしょうか。正義、善、あるべき姿、人間にふさわしい行い。漠然とそのようなことを思いつくのではないでしょうか。ここではまず混同されがちな「倫理」と「道徳」の違いについて解説していきます。

倫理:善悪・正邪の普遍的な規準

倫理とは善悪・正邪の判断において普遍的な規準となるものです。具体的な定義があるわけではない非常に抽象的な概念になります。例えば「生命倫理」という言葉は生と死に医療や科学がどう関わるべきかの考え方のことを指しますが、具体的に何が正しいとは決まっていませんよね。

道徳:社会で正しく生きるための規範

道徳とは社会において、個人が正しく生きるための規範のこと。正しく生きるとは、人に迷惑をかけないことや、困っている人を助けるなど、より人間にふさわしい言動をとれることです。

「倫理」は抽象的な概念ですが「道徳」はより具体的なものと言えます。医療現場で例えてみると、医者が患者に挨拶したり親身に対応することは「道徳」的な行為です。しかし延命治療など生と死に関わる治療の判断は「倫理」的な行為と言えます。

学校教育での使い分け

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前節では「倫理」と「道徳」の違いについて解説してきました。ここで思い出してほしいことは、学校教育では課程により科目が「倫理」と「道徳」に分かれていたということ。ここでは学校教育における「倫理」と「道徳」の使い分けについて解説していきます。

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倫理:高等学校の科目

「倫理」は高等学校や同等教育機関の教育課程により科目とされています。その理由は「倫理」が非常に抽象的で難解かつ、個人の価値観に委ねられている点が高いためでしょう。善悪・正邪の規準というのは人によって違い、自分の中の何に従うかも千差万別です。義務教育以上の、自分の行動に自分で責任を取れる年代になってから教育の機会を与えるべきと言えるでしょう。

道徳:小学校・中学校の科目

「道徳」は社会で正しく生きるための規範であるため、義務教育内で履修するのが最適と言えるでしょう。小学校や中学校という小さな社会を体験することで子どもは成長していきますが、そこに一定の社会規範を認識させるのは重要です。「人の嫌がることをしない」や「自分がされて嬉しいことをする」のような単純なところから、自分と社会の関わり方を身につけていきます。

「倫理」と「道徳」の関連用語

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「倫理」や「道徳」を調べているといくつかの関連用語が出てきます。代表的なものは「エシックス」と「モラル」です。ここではこれらの関連用語について解説していきます。

エシックス:英語で倫理のこと

「エシックス(ethics)」とは英語で「倫理」のこと。特にビジネスの場では「企業倫理」のことを「ビジネスエシックス」と表現したりします。横文字が多く使われるビジネス現場らしい使い方ですね。前述の「生命倫理」についても「バイオエシックス」と呼ばれることもあります。

モラル:英語で道徳のこと

「モラル(moral)」とは英語で「道徳」のこと。「モラルある行動」などと言えば、人格者とみなされるような行動をとることを意味しますね。

なお金融業界や保険業界の用語には「モラルハザード」という言葉があります。直訳すれば「道徳の危険」。例えば損害賠償保険に入っているからと安心して自動車の運転が雑になったりすることを指します。つまりは「道徳的な行動が損なわれる危険性」ということですね。

倫理は善悪・正邪の基準、道徳は社会規範

ここまで「倫理」と「道徳」の違い、学校教育でこの2つの言葉がどう使い分けられているか、そして関連用語を解説してきました。今まで一緒くたに考えていたかもしれない「倫理」と「道徳」、それぞれの個性が浮き彫りになったのではないでしょうか。

価値観というものは時代や国や宗教によって変わりますが、それでも人間としてあるべき姿というものは不動であると考える人もいます。グローバル化が進む中で私たちは多様性を受け入れいることと、世界共通の「倫理」を持つことを同時に求められていると言えるでしょう。

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3分で簡単にわかる倫理と道徳の違い!モラルって何?学校教育での使い分けも雑学好きライターがわかりやすく解説

よく似た言葉として挙げられる「倫理」と「道徳」。学校教育の教科でも見かける言葉ですが、両者の違いはいったい何なんでしょうな。
今回は学生時代に哲学を専攻していたという雑学好きライターのおおつけと一緒に解説していきます。

ライター/おおつけ

現役システムエンジニア兼ライター。前職は貿易商社の営業マン。知らない言葉は徹底的に調べるクセがあり、独自の単語帳を作っている。日々たくわえた広い知識を、わかりやすく紹介していく。

倫理と道徳の違い

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「倫理」と「道徳」と聞くと、どんなことをイメージするでしょうか。正義、善、あるべき姿、人間にふさわしい行い。漠然とそのようなことを思いつくのではないでしょうか。ここではまず混同されがちな「倫理」と「道徳」の違いについて解説していきます。

倫理:善悪・正邪の普遍的な規準

倫理とは善悪・正邪の判断において普遍的な規準となるものです。具体的な定義があるわけではない非常に抽象的な概念になります。例えば「生命倫理」という言葉は生と死に医療や科学がどう関わるべきかの考え方のことを指しますが、具体的に何が正しいとは決まっていませんよね。

道徳:社会で正しく生きるための規範

道徳とは社会において、個人が正しく生きるための規範のこと。正しく生きるとは、人に迷惑をかけないことや、困っている人を助けるなど、より人間にふさわしい言動をとれることです。

「倫理」は抽象的な概念ですが「道徳」はより具体的なものと言えます。医療現場で例えてみると、医者が患者に挨拶したり親身に対応することは「道徳」的な行為です。しかし延命治療など生と死に関わる治療の判断は「倫理」的な行為と言えます。

学校教育での使い分け

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前節では「倫理」と「道徳」の違いについて解説してきました。ここで思い出してほしいことは、学校教育では課程により科目が「倫理」と「道徳」に分かれていたということ。ここでは学校教育における「倫理」と「道徳」の使い分けについて解説していきます。

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