この記事では「博士前期課程」「修士課程」の違いについてつまびらかにしていきます。どちらも大学院の教育課程であり、期間は一般的に2年間ですが、大学院によって違いがあるようです。専門性の高い知識やスキルを養うことができるこの2つの教育課程について、20数年前に博士前期課程を修了したライターthrough-timeと一緒に解説していきます。

ライター/through-time

言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。はるか昔に某大学院の工学研究科博士前期課程を修了しました。

大学院とは

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博士前期課程修士課程の違いについて解説する前に、まずは大学院がどういうものなのかを説明しましょう。「大学院」を辞書で引くと、下のように書いてあります。

大学の学部の上または独立に設置される機関。学術の理論および応用を教授・研究し、その深奥を究めて文化の進展に寄与することを目的とする。修士課程と博士課程とがある。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「大学院」

大学院の種類

国内には、上記の意味を持つ一般的な大学院のほかに、専門職大学院があります。前者は英語でgraduate school研究者や専門家の育成を目的とした機関です。後者はprofessional school社会的・国際的に活躍できる高度専門職業人の養成に特化した大学院で、法科大学院教職大学院などがあります。

一般、専門職どちらの大学院も、入学するには後述する入学資格を満たす必要があり、また大学同様に入学試験(院試)に合格しなくてはなりません。学部より大学院に重きを置いている大学院重点化の大学や、学部を持たない大学院だけの大学院大学もあります。

大学院の入学資格

文部科学省が規定する修士課程・博士前期課程の入学資格、すなわち大学院の入学資格は10項目ありいずれか1つに該当していれば認められます。10項目のうち、多くの人が当てはまるのが「大学を卒業した者」です。

一方、「大学院において個別の入学資格審査により認めた22歳以上の者」という項目もあり、大卒でなくても大卒相当の学力があれば大学院に入学できることになっています。

\次のページで「社会人大学院について」を解説!/

社会人大学院について

大学院に進学するのは学部を卒業したばかりの学生がほとんどですが、学生の絶対数が少なくなっている今、社会人を広く受け入れる大学院も少なくありません。社会人が学びやすいようシステムを整えた大学院を社会人大学院といい、夜間大学院通信制大学院など、学び直しやキャリアアップを目指す社会人に門戸を開いています。

院試に関しても、働きながら受験できるよう学生より受験科目数を減らし、その分学びたい意欲や目的を重視する社会人入試という制度が設けられていますが、大学院によっては「実務経験3年以上」「25歳以上」などの条件があるので注意が必要です。入試は書類審査や面接、小論文が一般的で、志望動機や人間性、キャリアなどが評価されます。

大学院の教育課程

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大学院の教育課程は、修士課程博士課程、専門職大学院の課程である専門職学位課程の3種類です。それぞれについて解説します。

修士課程について

修士課程は以下のことを目的とする、標準修業年限教育課程を卒業・修了するのに必要とされる標準的な期間が2年の課程です。

修士課程は、広い視野に立つて精深な学識を授け、専攻分野における研究能力又はこれに加えて高度の専門性が求められる職業を担うための卓越した能力を培うことを目的とする。

出典:大学院設置基準 第3条第1項

専門分野について規定の単位を取得し、かつ研究指導を受けた上で研究論文(修士論文)を提出して審査に合格すると、修士master)の学位が授与されます。なお、医学・歯学・薬学・獣医学の6年制課程の場合、学制上その上に修士課程はありません。授与される学位も学士ですが、個別の資格審査により修士相当と認められます。

\次のページで「博士課程について」を解説!/

ちなみに学部を卒業して授与される学位は学士、英語ではbatchelor(バチェラー)といいます。独身男性を表すbachelorと同じです。

博士課程について

博士課程は以下のことを目的とする、標準修業年限が5年の課程です。

博士課程は、専攻分野について、研究者として自立して研究活動を行い、又はその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うことを目的とする。

出典:大学院設置基準 第4条第1項

大学院によって運用が異なり、5年を前期2年と後期3年に分けて前期を修士課程、後期を博士課程とみなす、分けないで5年一貫制の一貫制博士課程をとる、後期3年のみの後期3年博士課程とするなどあります。

こちらも修士課程同様に規定の単位を取得し、研究指導を受けることが必要です。研究論文(博士論文)の審査に合格すると、博士Doctor of PhilosophyPh.D.)の学位が授与されます。

前述の6年制課程に接続するのは、標準修業年限4年の4年制博士課程です。前後期に分かれない一貫性博士課程で、入学できるのは6年制課程を修了した者、修士および後述の専門職学位取得者などに限られます。

専門職学位課程について

専門職学位課程は、修了すると専門職学位が授与される課程です。標準修業年限は2年で、修了後は修士(専門職)を授与されます。なお、修士論文の審査は必須ではありません。

教職大学院も標準修業年限は2年で、修了後は教職修士専門職)が授与されますが、一般の大学院で授与される修士(教育学)とは異なります。法科大学院は標準修業年限3年で、修了後は司法試験の受験資格が与えられると同時に、法務博士(専門職)が授与されますが、前述の博士とは異なり修士相当です。

博士前期課程と修士課程の違いは

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博士課程が設置されている大学院では、前述のように前期2年と後期3年に分け、博士前期課程を修士課程とみなします。一方、博士課程が設置されていない大学院においては修士課程が設置されますが、博士前期課程・修士課程とも、取得すべき単位の数や修士論文審査など、修了するための条件は全く同じです

\次のページで「博士前期課程と修士課程の違いは、大学院に博士課程があるかないか」を解説!/

博士前期課程と修士課程の違いは、大学院に博士課程があるかないか

博士前期課程と修士課程と違いは、大学院に博士課程が設置されているか否かの違いで、実質は全く同じであることを説明しました。

昨今、大学院は研究者や専門家の育成はもちろんのこと、多様化する現代社会において幅広く活躍できる人材養成に力を入れています。学生も社会人も大学院で学ぶことで、高度な知識のほかに広い視野や新しい価値観を得ることができるでしょう。

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雑学

3分で簡単にわかる「博士前期課程」と「修士課程」の違い!修了までの期間や博士後期課程との違いも院卒ライターがわかりやすく解説


この記事では「博士前期課程」「修士課程」の違いについてつまびらかにしていきます。どちらも大学院の教育課程であり、期間は一般的に2年間ですが、大学院によって違いがあるようです。専門性の高い知識やスキルを養うことができるこの2つの教育課程について、20数年前に博士前期課程を修了したライターthrough-timeと一緒に解説していきます。

ライター/through-time

言葉や文学も大好きな雑食系雑学好きWebライター。はるか昔に某大学院の工学研究科博士前期課程を修了しました。

大学院とは

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博士前期課程修士課程の違いについて解説する前に、まずは大学院がどういうものなのかを説明しましょう。「大学院」を辞書で引くと、下のように書いてあります。

大学の学部の上または独立に設置される機関。学術の理論および応用を教授・研究し、その深奥を究めて文化の進展に寄与することを目的とする。修士課程と博士課程とがある。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「大学院」

大学院の種類

国内には、上記の意味を持つ一般的な大学院のほかに、専門職大学院があります。前者は英語でgraduate school研究者や専門家の育成を目的とした機関です。後者はprofessional school社会的・国際的に活躍できる高度専門職業人の養成に特化した大学院で、法科大学院教職大学院などがあります。

一般、専門職どちらの大学院も、入学するには後述する入学資格を満たす必要があり、また大学同様に入学試験(院試)に合格しなくてはなりません。学部より大学院に重きを置いている大学院重点化の大学や、学部を持たない大学院だけの大学院大学もあります。

大学院の入学資格

文部科学省が規定する修士課程・博士前期課程の入学資格、すなわち大学院の入学資格は10項目ありいずれか1つに該当していれば認められます。10項目のうち、多くの人が当てはまるのが「大学を卒業した者」です。

一方、「大学院において個別の入学資格審査により認めた22歳以上の者」という項目もあり、大卒でなくても大卒相当の学力があれば大学院に入学できることになっています。

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