今回は長巻と薙刀の違いについて学んでいこう。銃刀法では区別されてないこの2つは全く異なる武器らしいのです。そこで長巻と薙刀の特徴や区別の仕方を、元なぎなた選手である城崎に解説してもらうぞ。

ライター/城崎ミト

高校でなぎなた部に所属。インターハイや選抜大会に出場し、3年目でなぎなた2段を取得。得意な打突部位はスネ。剣道との異種試合では必ず初手でスネを狙っていた。

長巻と薙刀の違いとは?

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長巻(ながまき)と薙刀(なぎなた)はどちらも長い武器です。構え方も似ているようで、初見では違いがわからないと思う人もいますよね。まずはこの2つの武器の違いからご紹介します。

違いその1.形

1つ目の違いは刃の形状にあります。長巻は切先が緩やかに反っていますが、薙刀は長巻きより反り具合が強いです。これを「先反り」と呼び、先反りの形を見ることで長巻か薙刀か見分けることができます。また長巻は持ち手の柄(つか)に麻紐や革を巻くことがありますが、薙刀は柄に装飾はほとんど施しません。他にも以下の違いが挙げられます。

1.長巻は薙刀より持ち手が短い
2.長巻は薙刀より刃が長い
3.長巻は刃の側面に横手と呼ばれる境界線が入っている。薙刀にはない
4.薙刀には刃の形が3種類あるが、長巻の形は1種類とされている

似ていると言われる長巻と薙刀ですが、比べると意外に違いがあることがわかります。

違いその2.扱い方

薙刀の強さは振り回すことによる攻撃範囲の広さにあります。名称の通り人馬を「薙ぎ払う」ため、安易に近づくことができません。源義経に仕えた弁慶や愛妾の静御前が使用していたというエピソードは有名です。

長巻は柄と刃の長さが同じものが多かったため、薙刀ほど振り回すことは難しかったとされます。しかし斬る威力は高く、薙刀より小回りがきくという意見も。そのため合戦が隊列を組む集団戦へ移り変わると、長巻が重宝されるようになったと言われています。

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長巻と薙刀は明確に区分されていない?

長巻と薙刀は形や扱い方に違いはあるものの、明確に区分されていません。研究家によっては同じ武器とみなす人も。諸説ありますが、理由の1つに「長巻直し」と呼ばれる刀にあるとされています。

江戸時代になると長い武器を所有することを禁止されるように。長巻もその対象でした。そのため長巻の刀身を使って刀に作り直す「長巻直し」が流行るようになります。長巻直しが増えるだけ本来の姿をした長巻が激減し、現存する長巻はほとんどない状態に。結果的に他の日本刀のような正確な研究ができず、分類もはっきりさせることが困難になりました。

現在も銃刀法に長巻の区分はなく、薙刀と同一に扱われています。

長巻と薙刀はどんな武器?

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次は長巻と薙刀がどんな武器か深掘りしていきましょう。似ている2つの武器ですが、長巻は「刀剣」、薙刀は槍と同じ「長柄武器」とされています。

長巻は「腕力を持つ者だけ」が扱える太刀を改良したもの

長巻は刀の一種です。そのルーツは前身となった大太刀にあります。大太刀は刃の長さが約90㎝以上と長く、強い腕力と持久力を持つ者だけが扱うことができたそうです。刀身を大きくしたのは良いものの、当然重くて扱い辛いのが難点。大太刀を使いやすくするために、刀身の根元部分にヒモを巻いて、持ち手の幅を増やして扱うようになります。これが長巻の由来です。

そして刀身と同じ程度の長さの柄がついた太刀が作られるようになり、それが長巻となりました。長巻は大太刀より使いやすくなりますが、刀身は長いままのため重量は薙刀より重いと言われています。

薙刀は「女性も扱える」とされた長柄武器

薙刀は槍と同じ長柄武器です。戦国時代に集団戦が重視されるようになると、攻撃範囲が広すぎる薙刀は少しずつ衰退していきます一方で薙刀は刀より間合いが長いため、僧侶や女性が防衛する目的のために使われるように。女性の使い手としては巴御前が有名です。そして明治以降は女性の武道として発展していきます。

女性の武器として選ばれた理由は、一説によると強い腕力を必要としないからです。柄が長く体の軸を中心に振るうため腕力が弱くても扱いやすく、さらに薙ぎ払う力で高い威力を発揮できます。

一時期は武家に嫁ぐ女性は薙刀が扱えることが前提とされていました。そして薙刀は女性が使う武器というイメージが定着するようになります。

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長巻と薙刀の現在の移り変わり

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当時使用されていた長巻や薙刀は展示されたり保存されたりしていますが、一般の人にとって身近なものではなくなりました。しかし武術の1つとして今もその存在を残しています。

現代にも引き継がれる長巻術!

現存する長巻はほとんどないとされていますが、長巻術は現在も居合道として引き継がれています。流派によっては槍術や薙刀術と同じものとして扱われていますが、イベントや大会で長巻を使用した演舞を披露する様子も。練習生を募集している道場もあるそうです。

現在はスポーツ化?全国に存在するなぎなた部!

薙刀は現在「なぎなた」として剣道と同じように武道として競技化されています。競技人口の割合はほとんどが女性。男性選手もいますがとても珍しく少数です。当時高校生だった筆者が同世代の男性選手と出会ったのは片手で数えられる程度でした。

剣道ほどの知名度や規模はありませんが、インターハイや選抜大会、国体など全国で大会が行われています。もちろん居合道としての薙刀も残っているようです。

長巻と薙刀は似ているけれどそれぞれ異なる道をたどっている

長巻は現存するものが少なく正確な研究ができなかったため明確に区別されなかったと考えられます。一方薙刀は戦場では衰退したものの女性の武器として使われるようになり、現在ではなぎなたとして競技化しました。

似ているとされる長巻と薙刀ですが、そのルーツや現在への移り変わり方に大きな違いがあると考えられます。そしてそれぞれ今も武術や武道として人々の間で伝承されているのです。

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雑学

簡単でわかりやすい!長巻と薙刀の違いとは?特徴や現代への移り変わりも元なぎなた選手が詳しく解説

今回は長巻と薙刀の違いについて学んでいこう。銃刀法では区別されてないこの2つは全く異なる武器らしいのです。そこで長巻と薙刀の特徴や区別の仕方を、元なぎなた選手である城崎に解説してもらうぞ。

ライター/城崎ミト

高校でなぎなた部に所属。インターハイや選抜大会に出場し、3年目でなぎなた2段を取得。得意な打突部位はスネ。剣道との異種試合では必ず初手でスネを狙っていた。

長巻と薙刀の違いとは?

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長巻(ながまき)と薙刀(なぎなた)はどちらも長い武器です。構え方も似ているようで、初見では違いがわからないと思う人もいますよね。まずはこの2つの武器の違いからご紹介します。

違いその1.形

1つ目の違いは刃の形状にあります。長巻は切先が緩やかに反っていますが、薙刀は長巻きより反り具合が強いです。これを「先反り」と呼び、先反りの形を見ることで長巻か薙刀か見分けることができます。また長巻は持ち手の柄(つか)に麻紐や革を巻くことがありますが、薙刀は柄に装飾はほとんど施しません。他にも以下の違いが挙げられます。

1.長巻は薙刀より持ち手が短い
2.長巻は薙刀より刃が長い
3.長巻は刃の側面に横手と呼ばれる境界線が入っている。薙刀にはない
4.薙刀には刃の形が3種類あるが、長巻の形は1種類とされている

似ていると言われる長巻と薙刀ですが、比べると意外に違いがあることがわかります。

違いその2.扱い方

薙刀の強さは振り回すことによる攻撃範囲の広さにあります。名称の通り人馬を「薙ぎ払う」ため、安易に近づくことができません。源義経に仕えた弁慶や愛妾の静御前が使用していたというエピソードは有名です。

長巻は柄と刃の長さが同じものが多かったため、薙刀ほど振り回すことは難しかったとされます。しかし斬る威力は高く、薙刀より小回りがきくという意見も。そのため合戦が隊列を組む集団戦へ移り変わると、長巻が重宝されるようになったと言われています。

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