この記事ではトナカイと鹿の違いについて紹介します。トナカイと鹿はどちらも、「角をもつ四足歩行の動物」としてイラストに描かれることが多いな。挿絵をもとに、トナカイ・鹿はなんとなく「似たような動物」だと思ってないか?今回はそんな彼らの見分け方について、大学院で生物学を学んだライター2scと一緒にみていきます。

ライター/2sc

生物学をこよなく愛するライター。大学の研究室で「生態学」を学び、卒論を制作した。「生物の華麗なる生き様」をお届けすることがモットー。

トナカイと鹿の違いとは?

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トナカイと鹿はどちらも「角をもつ四足歩行の動物」として知られている哺乳類トナカイはサンタクロースのソリを引いている挿絵が有名ですよね。一方鹿は日本でよく見られる哺乳類で、「鹿」と漢字で表記する場合はニホンジカを指します。日本人は「奈良の鹿」等、古くから鹿を愛してきました。

トナカイ・鹿はともにイラストの題材にされることが多い動物です。両者のシルエットは非常に似ているため、デフォルメされた挿絵では見分けがつきません。ですがトナカイと鹿は、生物学上分類が異なります。そして両者には、大きな違い3点存在。違いは以下の通りです。

1.の違い
2.生息地の違い
3.の違い

本項では上記の3つの違いについて解説する前に、トナカイと鹿の分類上の違いについて触れます。

分類上は同じ「シカ科」

トナカイ・鹿の見た目が似ている理由は、分類上かなり近縁な生き物だから。両者ともに「クジラ偶蹄目シカ科」に分類されます。一般に用いられる「シカ」、「Deer」という言葉は、このシカ科動物の総称なのです。この「シカ」は角をもつ四足動物として認知されています。加えて草食で反芻を行い、その角が毎年生え変わるというのも「シカ」の特徴です。

鹿はシカの中のシカ!

「シカ」ことシカ科動物はさらに、「シカ亜科」「オジロジカ亜科」に分岐。トナカイオジロジカ亜科に分類されるのに対し、鹿(ニホンジカ)シカ亜科に分類されます。我々が奈良公園で目にする鹿は、いわば「シカの中のシカ」と言えるでしょう!

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違いその1.角

シカ科動物の角は枝角(アントラー)と呼ばれ、枝分かれした複雑な形状をもちます。シカ科動物で角をもつのはある一種を除き、オスのみです。この角はさしずめ「オスの武器」。繁殖期になると、メスをめぐるオス同士の戦いに用いられます。さらにメスは、オスの強さだけでなく角の見た目も重視。「草食動物」ですが、恋愛ではアグレッシブですね。

トナカイ:オス・メスともに角をもつ

トナカイはシカ科動物のなかでも異質。トナカイは「シカ」の仲間で唯一、オスのみならず、メスも角をもつ動物です。角の生え変わりの時期は雌雄で異なり、オスは秋〜冬、メスは春〜夏に角を落とします。

鹿:オスだけが角をもつ

鹿は先述の通り、「シカの中のシカ」。をもつのはオスだけです。角が生え変わるのは春先。秋〜冬の繁殖期に向けて角が成長していきます。鹿で有名な奈良公園では人の負傷を防ぐため、繁殖期のオスの角を切断「鹿の角きり」という行事として、秋の奈良を代表する名物となっています。

違いその2.生息地

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トナカイ・鹿の生息地は大きく異なります。先ほど鹿は、日本を代表する動物であると紹介しました。一方トナカイサンタクロースとセットで描かれることが多い動物。とても寒い土地に生息しているというのは想像に難くないでしょう。以下、詳細な生息地を示します。

トナカイ:北極圏

トナカイユーラシア大陸北部とアメリカ大陸北部に生息します。これらの地域は、年中気温が低いことで有名。とくに北の果ては北極圏と呼ばれ、一般的な「シカ」が好む樹木すら生き残れない厳しい冬が特徴的です。トナカイが住む地域は永久凍土。彼らは苔を主食にして冬を乗り切るのです。

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鹿:日本列島

鹿(ニホンジカ)日本列島に広く分布。北は北海道、南は四国・九州まで日本中で見かける動物です。また対馬や屋久島など離島にも鹿が生息。彼らは地域・季節に応じて、草木の葉や皮、硬い木の実などさまざまな植物を食べます。食べられる植物が豊かな森林が鹿の主な生活拠点です。

違いその3.体

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先述の通り、トナカイと鹿とでは住む環境が大きく異なります。極寒の北極圏に生息するトナカイは温暖な日本に生息する鹿に比べ、過酷な環境下で生活しているのです。ゆえにトナカイはタフな動物。以下そのイメージと共に、体の特徴を見ていきましょう。

トナカイ:大柄・毛深い

トナカイはシカ科動物のなかでも、とりわけ大きな体を持ちます。その体重は最大300kg。そして寒さに適応した厚い体毛が特徴的です。とくに繁殖期のオスは、のどに長い体毛をたくえています。加えて蹄も特殊。雪に沈み込まないよう、広い接地面をもつ大きな蹄が目立ちます。

鹿:細身・夏毛は白いまだら模様

鹿はトナカイに比べると細身です。亜種の中で最も大柄なエゾシカでも、体重は最大200kgにとどまります。鹿をもっとも強く特徴づけるのは、夏毛の模様「鹿の子模様」と呼ばれる、白い斑点が目立ちます。

トナカイと鹿の違いをシカと見極めよ!

トナカイと鹿の違いは、イラストだけでは見分けづらいですよね。どちらも同じ「シカ」なので、見た目が似ているのは当然のこと。ですがトナカイと鹿の生態は大きく異なります。両者の生態の違いを意識すれば、トナカイ・鹿の判別は容易です。挿絵を見たり描いたりするときには、この記事を思い出してください!

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簡単でわかりやすい!トナカイと鹿3つの違いとは?生息地や見た目・分類を生物学専攻の現役大学院生がわかりやすく解説

この記事ではトナカイと鹿の違いについて紹介します。トナカイと鹿はどちらも、「角をもつ四足歩行の動物」としてイラストに描かれることが多いな。挿絵をもとに、トナカイ・鹿はなんとなく「似たような動物」だと思ってないか?今回はそんな彼らの見分け方について、大学院で生物学を学んだライター2scと一緒にみていきます。

ライター/2sc

生物学をこよなく愛するライター。大学の研究室で「生態学」を学び、卒論を制作した。「生物の華麗なる生き様」をお届けすることがモットー。

トナカイと鹿の違いとは?

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トナカイと鹿はどちらも「角をもつ四足歩行の動物」として知られている哺乳類トナカイはサンタクロースのソリを引いている挿絵が有名ですよね。一方鹿は日本でよく見られる哺乳類で、「鹿」と漢字で表記する場合はニホンジカを指します。日本人は「奈良の鹿」等、古くから鹿を愛してきました。

トナカイ・鹿はともにイラストの題材にされることが多い動物です。両者のシルエットは非常に似ているため、デフォルメされた挿絵では見分けがつきません。ですがトナカイと鹿は、生物学上分類が異なります。そして両者には、大きな違い3点存在。違いは以下の通りです。

1.の違い
2.生息地の違い
3.の違い

本項では上記の3つの違いについて解説する前に、トナカイと鹿の分類上の違いについて触れます。

分類上は同じ「シカ科」

トナカイ・鹿の見た目が似ている理由は、分類上かなり近縁な生き物だから。両者ともに「クジラ偶蹄目シカ科」に分類されます。一般に用いられる「シカ」、「Deer」という言葉は、このシカ科動物の総称なのです。この「シカ」は角をもつ四足動物として認知されています。加えて草食で反芻を行い、その角が毎年生え変わるというのも「シカ」の特徴です。

鹿はシカの中のシカ!

「シカ」ことシカ科動物はさらに、「シカ亜科」「オジロジカ亜科」に分岐。トナカイオジロジカ亜科に分類されるのに対し、鹿(ニホンジカ)シカ亜科に分類されます。我々が奈良公園で目にする鹿は、いわば「シカの中のシカ」と言えるでしょう!

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