「菖蒲」という漢字を見たことがあるか?この漢字は「あやめ」とも「しょうぶ」とも読めるんです。ですが「あやめ」と「しょうぶ」は全く別の植物。どちらも日常生活で目にすることが多いぞ。今回はそんな「あやめ」と「しょうぶ」の違いについて、大学で農学を専攻しているライター2scと一緒にみていきます。

ライター/2sc

大学で生物を極め、農学士を得た理系ライター。フィールドワークで培った動植物の知識に、強い自信を持つ。「生物のおもしろさ」を広めるべく、日々奮闘中。

菖蒲ってどう読むの?

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「菖蒲」には2通りの読み方があります。それは「あやめ」「しょうぶ」。それぞれ訓読みと音読みでの表記ですので、「読み方が違うだけだ」と思われている人が多いはずです。

しかし読み方ひとつで「菖蒲」の指すものが変わります。実は同じ漢字があてられている「あやめ」と「しょうぶ」は全く異なるものなのです!混同を避けるため「あやめ」は、そのままひらがなで表記されたり、「文目」や「綾目」という漢字が当てられることもあります。あやめと菖蒲(しょうぶ)は、いったい何が違うのでしょうか?

あやめと菖蒲の違いは?

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あやめと菖蒲はどちらも植物の名称。図鑑での表記(標準和名)はそれぞれ「アヤメ」「ショウブ」です。植物としての種類分け(分類)が異なります。この記事では現代の標準和名に基づいて、両者を表記。植物としての違いをみていきましょう!

どちらも単子葉類

アヤメとショウブは、どちらも単子葉類に分類される植物です。しかし驚くことに両者の共通点はその一点のみ。アヤメの分類は「キジカクシ目アヤメ科アヤメ属」であるのに対して、ショウブの分類は「ショウブ目ショウブ科ショウブ属」となります。分類が全く違うため、用途や花の違いが明瞭です。以下で説明します。

毒のあやめと薬の菖蒲

あやめが分類される「アヤメ属」の植物は、基本的に毒草です。全草にイリジェニンをはじめとする複数の毒成分が含まれており、植物の汁が手に付くだけで皮膚炎を発症する場合もあります。観賞用に育てられることが多いあやめは、生花など日常的に目にする植物です。植え替え等、あやめに触れるときには手袋をつけましょう。

一方菖蒲は薬草です。おもに根茎が生薬として用いられ、鎮静・健胃に効き目をもつとされます。また端午の節句でおなじみの「菖蒲湯」は、菖蒲の根や葉を入れて沸かした薬用風呂です。この菖蒲湯は、神経痛やリウマチに効き目があり香りも良いため、古くは江戸時代から庶民に愛されてきました。

花と香りで見分けよう

あやめと菖蒲を見分けるうえで、注目すべきは「花の違い」です。あやめの花は紫色で外側に垂れ下がった3枚の花びらが特徴的。その美しさから、観賞用に育てられたり家紋のモチーフになったりと広く愛されています。一方菖蒲(しょうぶ)は黄色い円柱型の地味な花(穂)をつけるため観賞用にはなりません。

違いはほかにもあります。あやめとは違って菖蒲には強い芳香があるため、匂いで判別可能です。またあやめ乾燥した土地を好むのに対して、菖蒲は池や川など湿地帯に多く自生します。

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アイリス・かきつばたとの違いは?

アイリス・かきつばたは、あやめと同じくアヤメ属(iris)の植物です。アイリスはアヤメ属の属名ですが、一般にはヨーロッパ原産のアヤメ属植物を指します。なかでもジャーマンアイリスダッチアイリスが有名でしょう。一方かきつばたは日本原産。「いずれアヤメかカキツバタ」と並んで語られるほどに、あやめに似た花を咲かせます。

このアヤメ属には他に、ハナショウブ(花しょうぶ)という植物も存在。「しょうぶ」とは名ばかりに、こちらもあやめによく似た花を咲かせます。混同しないよう注意が必要ですね。「菖蒲園」ではこれらのアヤメ属植物が栽培されています。次の項目でその見分け方についてみていきましょう。

アヤメ属の見分け方

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あやめとアイリス、かきつばた、花しょうぶはすべてアヤメ属の植物です。どの種も3枚の花びらを外側にもつ、似た形の花を咲かせます。知識なしに判別するのは至難の業ですが、花の色や生息地などを知っていれば容易に判別が可能。以下、その違いと見分け方をお教えします!

その1.花

あやめ・かきつばたは基本的に紫色の花(まれに白い花)を咲かせます。色こそ似ていますが、両者は外側にある3枚の花びらの模様が異なるため容易に判別可能。アヤメの場合、外側の花びらの全体に網目模様が浮き出ており、その付け根には黄色の模様が見られます。一方かきつばたでは網目模様が見られず、付け根には白い模様が存在。あやめよりも、素朴な花が特徴的です。

アイリス花しょうぶは品種改良が進んだアヤメ属植物。どちらも色とりどりの花(紫や青、桃、白、黄色など)が楽しめます。こちらも外側の花びらで判別が可能です。アイリス・花しょうぶはともに、外側の花びらの付け根に黄色の模様を持ちます。ですが花しょうぶの模様のほうが細長く、目立ちません

さらにアイリスは外側の花びらの付け根ひげをもつ「ジャーマンアイリス」もたない「ダッチアイリス」に分けられます。

その2.葉

花しょうぶの葉はあやめ・かきつばたのものとは異なり、中央に通った太い葉脈(主脈)が目立ちます。花を見ずとも判別可能です。

その3.生息地

先述の通り、あやめ乾燥地を好みます。ヨーロッパ原産のアイリスも同様です。一方かきつばた・花しょうぶ湿地を好みます。水が張られた菖蒲園ではあやめではなく、かきつばた・花しょうぶが植えられていると覚えておきましょう。

\次のページで「その4.開花時期」を解説!/

その4.開花時期

日本原産のあやめとかきつばた、花しょうぶの開花時期は以下の通り、連続しています。

1.あやめ|5月上旬〜中旬
2.かきつばた|5月中旬〜下旬
3.はなしょうぶ|6月

一方アイリスの開花時期は4〜5月。日本原産の種類に比べて、早いのが特徴です。

色とりどりの花を楽しもう!

あやめと菖蒲(しょうぶ)は全く異なる植物です。色鮮やかな花が楽しめるのは「あやめ」の仲間で、「菖蒲」は薬用風呂に用いられます。あやめの仲間には、園芸品種として改良された種が多数存在。アヤメ属の園芸品種を多数集めた「菖蒲園」では、色とりどりの花が楽しめます。開花時期や花の特徴を覚えて、より菖蒲園を楽しみましょう!

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雑学

菖蒲はあやめ?アイリス・かきつばたとの違いは?簡単な見分け方も農学専攻ライターがわかりやすく解説

アイリス・かきつばたとの違いは?

アイリス・かきつばたは、あやめと同じくアヤメ属(iris)の植物です。アイリスはアヤメ属の属名ですが、一般にはヨーロッパ原産のアヤメ属植物を指します。なかでもジャーマンアイリスダッチアイリスが有名でしょう。一方かきつばたは日本原産。「いずれアヤメかカキツバタ」と並んで語られるほどに、あやめに似た花を咲かせます。

このアヤメ属には他に、ハナショウブ(花しょうぶ)という植物も存在。「しょうぶ」とは名ばかりに、こちらもあやめによく似た花を咲かせます。混同しないよう注意が必要ですね。「菖蒲園」ではこれらのアヤメ属植物が栽培されています。次の項目でその見分け方についてみていきましょう。

アヤメ属の見分け方

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あやめとアイリス、かきつばた、花しょうぶはすべてアヤメ属の植物です。どの種も3枚の花びらを外側にもつ、似た形の花を咲かせます。知識なしに判別するのは至難の業ですが、花の色や生息地などを知っていれば容易に判別が可能。以下、その違いと見分け方をお教えします!

その1.花

あやめ・かきつばたは基本的に紫色の花(まれに白い花)を咲かせます。色こそ似ていますが、両者は外側にある3枚の花びらの模様が異なるため容易に判別可能。アヤメの場合、外側の花びらの全体に網目模様が浮き出ており、その付け根には黄色の模様が見られます。一方かきつばたでは網目模様が見られず、付け根には白い模様が存在。あやめよりも、素朴な花が特徴的です。

アイリス花しょうぶは品種改良が進んだアヤメ属植物。どちらも色とりどりの花(紫や青、桃、白、黄色など)が楽しめます。こちらも外側の花びらで判別が可能です。アイリス・花しょうぶはともに、外側の花びらの付け根に黄色の模様を持ちます。ですが花しょうぶの模様のほうが細長く、目立ちません

さらにアイリスは外側の花びらの付け根ひげをもつ「ジャーマンアイリス」もたない「ダッチアイリス」に分けられます。

その2.葉

花しょうぶの葉はあやめ・かきつばたのものとは異なり、中央に通った太い葉脈(主脈)が目立ちます。花を見ずとも判別可能です。

その3.生息地

先述の通り、あやめ乾燥地を好みます。ヨーロッパ原産のアイリスも同様です。一方かきつばた・花しょうぶ湿地を好みます。水が張られた菖蒲園ではあやめではなく、かきつばた・花しょうぶが植えられていると覚えておきましょう。

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