この記事では白川郷と五箇山(ごかやま)の違いについてみていきます。岐阜県の白川郷、富山県の五箇山は「白川郷と五箇山合掌造り集落」として世界文化遺産に登録されている。今回は同じ世界遺産として登録された白川郷と五箇山の歴史や規模の違いから合掌造りについてまで、国内旅行好きライターyukoと一緒に解説していきます。

ライター/yuko

国内旅行が好きな現役OLライター。3か月に1度のペースで国内旅行をするのが趣味。旅行以上に旅行に行くまでの下調べを楽しんでいる。幼少期から家族旅行で全国さまざまな土地を観光してきた。

白川郷と五箇山の違いとは?

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岐阜県の白川郷と富山県の五箇山は1995年に「白川郷と五箇山の合掌造り集落」として世界文化遺産に登録されました。両方とも同じ世界遺産ですが違いを簡単に説明すると、白川郷は規模の大きい観光地五箇山はこじんまりした隠れた名所といえるでしょう。ここでは両者の違いについて詳しくご紹介していきます。

白川郷:規模が大きい観光地

白川郷は岐阜県大野郡白川村荻町の大小100棟ほどの合掌づくりの集落のこと。世界遺産に登録されてもなお、そこで生活をしている人がいます。人々の相互扶助の精神や営みも含めて世界遺産登録の理由になったといわれているんだそう。

白川村は豪雪地であることでも知られ、雪国だからこそみられる荘厳な積雪と合掌造りとのコラボレーションは圧巻。1年をとおして萩町城跡展望台や城山天守閣展望台は白川郷を一望できるスポットとして人気が高いですが、特に冬のライトアップイベントでは駐車場を予約制にしたり、宿泊や展望台利用を抽選制にするなど入場制限がされているほどです。

五箇山(ごかやま):こじんまりした隠れた名所

五箇山は富山県の南西端に位置しています。飛騨高地から日本海へ続く庄川(しょうがわ)沿いの谷間に40ほどの集落があり、そのうちの相倉(あいのくら)合掌造り集落と、菅沼(すがぬま)合掌造り集落が白川郷とともに世界遺産に登録されているのです。

相倉合掌造り集落は家屋20棟を主体とした集落で、菅沼合掌造り集落は9棟を主体とした集落。白川郷と比べると相倉合掌造り集落は中規模集落、菅沼合掌造り集落は小規模集落といえるでしょう。

世界遺産「白川郷と五箇山の合掌造り集落」とは?

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1995年にユネスコ世界文化遺産に登録された「白川郷・五箇山合掌造り集落」は、岐阜県白川村荻町、富山県五箇山相倉、菅沼の3集落をさします。日本の世界遺産としては6件目、世界文化遺産としては4件目の登録。

日本ユネスコ協会連盟によると世界遺産登録には6つの価値基準があるとされ、以下の2項目に「白川郷・五箇山合掌造り集落」は、当てはまるため世界文化遺産に登録されたといわれています。

・歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。
・あるひとつの文化(または複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態若しくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本である。又は、人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である。(特に不可逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの)

(出典:公益社団法人日本ユネスコ協会連盟)

\次のページで「合掌造りってなんだろう?」を解説!/

合掌造りってなんだろう?

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合掌造りとは日本の建築様式の1つで又首(さす)構造切妻屋根が特徴。また合掌造りの象徴のでもある茅葺(かやぶき)屋根は、通気性がよく吸音性や保湿性、断熱性にも優れているため、夏に涼しく冬は温かく過ごすことができ、四季のある日本に適した屋根構造といえるでしょう。養蚕(ようさん)にも適しているとか。

茅葺屋根はメンテナンスのために20~30年に1度葺き替え工事が必要。白川郷では、共同労働で集落の住民で助け合う「結(ゆい)」という制度があり、住民同士で協力し合いながら屋根の葺き替え作業をすることもあります。結は広い意味では労働交換のこと。田植えや養蚕、材木の伐採なども支え合いながら行ってきたんだそう。

【用語解説】
又首構造:2本の材木を合掌形にし棟の上で交差され梁の両端に差し込んだ構造
切妻屋根
:2方向に勾配をつけ三角形をかたどった屋根の構造

同じ世界遺産だけど、ここまで違う!白川郷と五箇山

白川郷と五箇山は一緒に世界文化遺産に登録されましたが、集落として比較すると様々な違いがみえてきます。ここでは、歴史的背景集落の規模にも触れてみましょう。さらに、合掌造りとひとくくりでみても地域性や文化面から各々の生活に合わせた建築様式で建てられているので、その違いや特徴についても詳しく解説していきますね。

違いその1.歴史的背景

白川郷は、高山藩領の天領(てんりょう)で、浄土真宗照蓮寺領でもありました。天領とは江戸幕府の直轄地のこと。江戸時代中頃から現金収入のために蚕(かいこ)を飼ってその繭から生糸を作る養蚕業が盛んに行われるようになり、養蚕スペースを確保するために家屋が大型化し合掌造り民家が誕生したそうです。天領となる前から高山藩では軍事機密として焔硝(えんしょう)を作っていたという記録も。

五箇山は加賀藩領で、火薬の原料である塩硝(えんしょう)生産が保護されていました。加賀藩では焔硝や煙硝ではなく塩硝と表記し徳川幕府との関係で秘密裏に生産されていたんだそう。当時の五箇山は豪雪地で閉ざされた土地、塩硝生産に適していました。塩硝は家の床下に穴を掘り、土や草、蚕糞などを入れて作られていたんだとか。養蚕、製紙などと併せて家内工業として発展していきます。また土地の特徴から加賀藩の流刑地にもなっていたそうです。

\次のページで「違いその2.集落の規模」を解説!/

違いその2.集落の規模

バスツアーなども組まれる白川郷。観光地としての人気が高く外国人観光客も多く訪れているそう。前述したとおり大小100余りの棟の集落で、和田家・神田家・長瀬家と入場料はかかるものの、実際に合掌造り住宅のなかを見学できるスポットもあります。萩町集落では「売らない、貸さない、壊さない」の三原則を掲げ、3000万円はかかる葺き替え工事に対して助成金を出したりと集落維持のために努めてきたそう。国道156号線の改良も重なり観光村へとなっていきました。

対して五箇山の相倉集落・菅沼集落は各々家屋20棟の中型集落、家屋9棟の小型集落。2つの集落間は1.1kmほど。地元のガイドさんによるツアーも開催されていますが、白川郷ほど観光地化はされてなく素朴な雰囲気の残る集落です。五箇山ではのんびり時間をかけて、当時の生活に触れたり自然に囲まれてリフレッシュするのがいいでしょう。

違いその3.合掌造り

合掌造りにも気候や地域性に合わせた違いがあります。1番大きな違いは入口の場所。基本的に妻切屋根の斜面側に入口があるのが白川郷合掌した形を正面に入口があるのが五箇山。また屋根の角度も異なり、白川郷に比べると五箇山の方が勾配が急だとか。同じ豪雪地でも五箇山の方が湿気が多く重たい雪が降るといわれ、雪を落ちやすくするために勾配をつけているんだそうです。

どちらも一度は訪れたい!世界遺産「白川郷と五箇山の合掌造り集落」

まるでひと昔前の世界にタイムスリップしてしまったような日本の原風景が残る白川郷と五箇山の合掌造り集落。今でも集落の中には実生活を営む人々がの暮らしがあります。「結」に見る相互扶助の考え方や集落の絆のような独特な習慣も含めて世界文化遺産となっているのでしょう。合掌造りは火災に弱いという弱点があるため乾燥する冬を前に毎年一斉放水の大規模な訓練が行われたり、茅葺屋根の葺き替え工事など伝統的に受け継がれてきた技術や風習を見学できるのも大きな魅力で特徴ですね。

主要都市からのアクセスは、バスや電車などの公共交通機関を利用して金沢から1時間半、名古屋であれば3時間ほど。東京からだと5時間弱かかりますが、それでも充分行く価値ありです!ぜひ1度、世界遺産「白川郷と五箇山の合掌造り集落」へ訪れてみてください。

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文化・歴史雑学

簡単でわかりやすい!白川郷と五箇山の違いとは?世界遺産「白川郷と五箇山の合掌造り集落」の特徴を国内旅行好きライターが詳しく解説

この記事では白川郷と五箇山(ごかやま)の違いについてみていきます。岐阜県の白川郷、富山県の五箇山は「白川郷と五箇山合掌造り集落」として世界文化遺産に登録されている。今回は同じ世界遺産として登録された白川郷と五箇山の歴史や規模の違いから合掌造りについてまで、国内旅行好きライターyukoと一緒に解説していきます。

ライター/yuko

国内旅行が好きな現役OLライター。3か月に1度のペースで国内旅行をするのが趣味。旅行以上に旅行に行くまでの下調べを楽しんでいる。幼少期から家族旅行で全国さまざまな土地を観光してきた。

白川郷と五箇山の違いとは?

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岐阜県の白川郷と富山県の五箇山は1995年に「白川郷と五箇山の合掌造り集落」として世界文化遺産に登録されました。両方とも同じ世界遺産ですが違いを簡単に説明すると、白川郷は規模の大きい観光地五箇山はこじんまりした隠れた名所といえるでしょう。ここでは両者の違いについて詳しくご紹介していきます。

白川郷:規模が大きい観光地

白川郷は岐阜県大野郡白川村荻町の大小100棟ほどの合掌づくりの集落のこと。世界遺産に登録されてもなお、そこで生活をしている人がいます。人々の相互扶助の精神や営みも含めて世界遺産登録の理由になったといわれているんだそう。

白川村は豪雪地であることでも知られ、雪国だからこそみられる荘厳な積雪と合掌造りとのコラボレーションは圧巻。1年をとおして萩町城跡展望台や城山天守閣展望台は白川郷を一望できるスポットとして人気が高いですが、特に冬のライトアップイベントでは駐車場を予約制にしたり、宿泊や展望台利用を抽選制にするなど入場制限がされているほどです。

五箇山(ごかやま):こじんまりした隠れた名所

五箇山は富山県の南西端に位置しています。飛騨高地から日本海へ続く庄川(しょうがわ)沿いの谷間に40ほどの集落があり、そのうちの相倉(あいのくら)合掌造り集落と、菅沼(すがぬま)合掌造り集落が白川郷とともに世界遺産に登録されているのです。

相倉合掌造り集落は家屋20棟を主体とした集落で、菅沼合掌造り集落は9棟を主体とした集落。白川郷と比べると相倉合掌造り集落は中規模集落、菅沼合掌造り集落は小規模集落といえるでしょう。

世界遺産「白川郷と五箇山の合掌造り集落」とは?

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1995年にユネスコ世界文化遺産に登録された「白川郷・五箇山合掌造り集落」は、岐阜県白川村荻町、富山県五箇山相倉、菅沼の3集落をさします。日本の世界遺産としては6件目、世界文化遺産としては4件目の登録。

日本ユネスコ協会連盟によると世界遺産登録には6つの価値基準があるとされ、以下の2項目に「白川郷・五箇山合掌造り集落」は、当てはまるため世界文化遺産に登録されたといわれています。

・歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。
・あるひとつの文化(または複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態若しくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本である。又は、人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である。(特に不可逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの)

(出典:公益社団法人日本ユネスコ協会連盟)

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