ミル貝には本ミル貝と白ミル貝の2種類がある。実は回転寿司でよく見かけるのは、ほとんどが代用品の白ミル貝です。希少価値が高い本ミル貝は、高級店でしか取り扱われない。貝の旬は春ですが、ミル貝は生息地によって異なるようです。この記事ではミル貝の種類や旬、選び方のコツを現役料理人のテルトラと解説していく。

ライター/テルトラ

調理経験15年の現役料理人。寿司店や外食チェーンなどで多くの食材にふれてきた。得意分野は魚貝料理でさまざまなレシピを知っている。食品衛生責任者の資格をもつ。

ミル貝は2種類

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ミル貝は「本ミル貝(ミルクイ)」と「白ミル貝(ナミガイ)」の2種類です。どちらも大きく発達した水管が特徴で、あまりに大きいため完全に殻を閉じられません。刺身や寿司ネタとして使われることが多く、大型で味がよいため重宝されます。

1.本ミル貝(ミルクイ)

代用品の白ミル貝と区別するために、本ミル貝や黒ミル貝とも呼ばれます。分類はバカガイ科で正式名称はミルクイ。横に長い楕円形で、最大15cmを超えるものもあります。貝殻の表面が、黒と白のまだら模様になっているのが特徴です。殻を閉じた状態でも水管が潰れないよう、黒くて硬い皮に覆われています。先端部分に付着しているのは、名前の由来となったミル(海松)という海藻です。

乱獲により漁獲量が激減したため、常に高値が付きます。現在国産の本ミル貝が獲れるのはごく一部で、ほとんど韓国や台湾からの輸入物です。アメリカやカナダから、近縁種も入りだしています。

2.白ミル貝(ナミガイ)

貝殻と水管が白いため、白ミル貝と呼ばれます。分類はキヌマトイガイ科で正式名称はナミガイ。貝殻の長さは10cmを超え、丸みを帯びた長方形の外見が特徴です。大きめの殻は割れやすく、筋肉質な水管はしっかりとした皮に包まれています。貝ヒモが殻と一体化することで異物侵入を防ぎますが、代わりに口を開くことができません。

もともとは本ミル貝の代用品でしたが、最近はミル貝といえば白ミル貝をさすほど広く認知されています。

それぞれの市場価値

本ミル貝は滅多に手に入らないため希少価値が高く、二枚貝の中でもトップクラスの高値が付きます。味も食感も絶品で、市場価値は白ミル貝の倍以上です。高級食材のアワビよりも利用できる部分が少ないため、より重宝されます。

白ミル貝は本ミル貝の代用品で、流通量も少なくありません。本ミル貝より安価で利用できる部分も多いですが、味や食感は劣ります。どちらも大型で味が良いため、一般的な二枚貝より高価です。

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ミル貝の旬はいつ?

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ミル貝の旬は、種類や生息地によって異なります。産卵期にバラつきがあるため、旬の時期を特定するのが難しいのです。共通して夏場は産卵後で栄養を使い果たしているため、味が落ちます。

種類ごとに異なる旬の時期

生息海域や個体によって産卵期が異なるため、旬の時期にもズレが生じます。本ミル貝の産卵期は春と秋で、旬は冬から春先にかけてです。2度の最盛期があるといわれ、水温が下がる寒い時期は水管の甘みが増します。反対に夏場は漁獲量が減り、ほとんど水揚げされません。

白ミル貝の旬は春先から初夏で、こちらも海域によって違います。本ミル貝と白ミル貝の旬が重なる春(とくに3月)は、ミル貝の最盛期です。

・本ミル貝の旬:ピークは1~3月で10~4月まで獲れる
・白ミル貝の旬:3~5月

主な産地

ミル貝はオホーツク海から九州にかけての沿岸部と、朝鮮半島沿岸に広く分布します。産地として有名なのは、愛知県の三河湾周辺です。そのほか瀬戸内海周辺・東京湾・千葉県・大分県・三重県などで漁獲されます。最近では韓国からの輸入が増え、入荷が少ない国産ミル貝の希少価値は高まるばかりです。

ミル貝は水深20〜30mの砂地に深く潜って生息しているため、「特殊潜水漁」で海底まで潜って捕獲します。小型のミル貝であれば、浅瀬で簡単に獲ることも可能です。

相場の値段

希少価値が高い本ミル貝は、販売店への卸値で1㎏あたり3.000円を超えるのが通常です。東京都中央卸売市場における平均卸値は3.000~4.400円で変動しますが、毎年高値を更新しています。白ミル貝はもっと安価で、1㎏あたり2.500円から購入可能です。

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【本ミル貝】
・通販:1㎏あたり8.000円ほど
・1個(300~500g):約2.400~4.000円

【白ミル貝】
・通販:1㎏あたり5.000円ほど
・1個(300~500g):約1.500~2.500円

新鮮なミル貝の選び方

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本ミル貝も白ミル貝も選び方は同じで、重要なのは生きているものを選ぶこと。死んだ貝は腐敗しやすく、すぐに生臭くなるからです。ミル貝は刺身で食べるのが醍醐味なので、必ず生きているものを選びましょう。

【選び方のポイント】
・活きがいいもの
・大きく重いもの

とくにメインの可食部となる水管の大きさを重視します。

#1 活きのよさで選ぼう

水管に触れたとき、即座に反応するくらい活きがいいミル貝を選びましょう。敏感なほど鮮度がよく、反応が鈍いほど鮮度が落ちている証拠です。新鮮なミル貝の水管には張りがありますが、弱ってくるとだらしなく伸びてきます。

通販で選ぶ場合は、仕入れから販売まで一括している業者から選ぶのがコツです。品質管理が徹底しやすく、常にいい状態で出荷できます。下処理済みのむき身や干物など、加工品の種類も豊富です。

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#2 大きく重いものを選ぼう

ミル貝は大きいほど肉厚で味もよく、とくに主食となる水管が太くて大きければ可食部も多くなります。殻が大きく、上下に厚みがあるものがおすすめです。ただし、水管が長くても貝自体が大きいとは限りません。短く見えても縮こまっているだけなので、伸ばせば長くなります。水管を見るときは、長さよりも太さで選ぶのがコツです。

手に持ってみて、ずっしりと重いものを選びましょう。重みがあるほど身が詰まっている証拠です。

#3 選ぶときの注意点

重要なのは水分量を抜いた重さで、値段を決めてもらうこと。ミル貝は大量の海水を含んでいるため、水分が抜けると一気に軽くなるからです。ほとんどの販売店がキロ単位で仕入れ、重さ(目方)によって値段を決めています。海水の重さを差し引いた金額で購入しないと、水分量のぶんだけ損です。

自分で選べる場合は軽く水管をつまみ、海水を抜いてから計量してもらいます。店員さんに注文して購入する店舗では、直接お願いしましょう。

新鮮な旬のミル貝を選ぼう

ミル貝の種類や旬、選び方がわかりましたね。ミル貝は本ミル貝と白ミル貝の2種類で、どちらも旬のピークは春です。漁獲量の少ない本ミル貝の代用品として、白ミル貝が多く出回っています。ミル貝の選び方で重要なのは、生きている貝を選ぶこと。死んだ貝は腐敗しやすく強烈な臭いを発します。旬の時期の新鮮なミル貝は、味も香りも絶品です。

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家庭科

ミル貝に種類ってあるの?旬の時期や簡単な選び方を現役料理人がわかりやすく解説

ミル貝には本ミル貝と白ミル貝の2種類がある。実は回転寿司でよく見かけるのは、ほとんどが代用品の白ミル貝です。希少価値が高い本ミル貝は、高級店でしか取り扱われない。貝の旬は春ですが、ミル貝は生息地によって異なるようです。この記事ではミル貝の種類や旬、選び方のコツを現役料理人のテルトラと解説していく。

ライター/テルトラ

調理経験15年の現役料理人。寿司店や外食チェーンなどで多くの食材にふれてきた。得意分野は魚貝料理でさまざまなレシピを知っている。食品衛生責任者の資格をもつ。

ミル貝は2種類

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ミル貝は「本ミル貝(ミルクイ)」と「白ミル貝(ナミガイ)」の2種類です。どちらも大きく発達した水管が特徴で、あまりに大きいため完全に殻を閉じられません。刺身や寿司ネタとして使われることが多く、大型で味がよいため重宝されます。

1.本ミル貝(ミルクイ)

代用品の白ミル貝と区別するために、本ミル貝や黒ミル貝とも呼ばれます。分類はバカガイ科で正式名称はミルクイ。横に長い楕円形で、最大15cmを超えるものもあります。貝殻の表面が、黒と白のまだら模様になっているのが特徴です。殻を閉じた状態でも水管が潰れないよう、黒くて硬い皮に覆われています。先端部分に付着しているのは、名前の由来となったミル(海松)という海藻です。

乱獲により漁獲量が激減したため、常に高値が付きます。現在国産の本ミル貝が獲れるのはごく一部で、ほとんど韓国や台湾からの輸入物です。アメリカやカナダから、近縁種も入りだしています。

2.白ミル貝(ナミガイ)

貝殻と水管が白いため、白ミル貝と呼ばれます。分類はキヌマトイガイ科で正式名称はナミガイ。貝殻の長さは10cmを超え、丸みを帯びた長方形の外見が特徴です。大きめの殻は割れやすく、筋肉質な水管はしっかりとした皮に包まれています。貝ヒモが殻と一体化することで異物侵入を防ぎますが、代わりに口を開くことができません。

もともとは本ミル貝の代用品でしたが、最近はミル貝といえば白ミル貝をさすほど広く認知されています。

それぞれの市場価値

本ミル貝は滅多に手に入らないため希少価値が高く、二枚貝の中でもトップクラスの高値が付きます。味も食感も絶品で、市場価値は白ミル貝の倍以上です。高級食材のアワビよりも利用できる部分が少ないため、より重宝されます。

白ミル貝は本ミル貝の代用品で、流通量も少なくありません。本ミル貝より安価で利用できる部分も多いですが、味や食感は劣ります。どちらも大型で味が良いため、一般的な二枚貝より高価です。

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