今回はミル貝について学んでいきます。ミル貝はアサリやホタテと同じ二枚貝です。最近は漁獲量が減ったため、希少価値が高い。ミル貝は優れた効能をもつ栄養素が豊富で、ダイエット効果も期待できる。この記事はミル貝の特徴・栄養・効能について、現役料理のテルトラと解説していきます。

ライター/テルトラ

経験15年の現役料理人。和食を中心にさまざまな業態で多くの食材にふれてきた。食品衛生責任者の資格を所有し、貝類の調理も得意。

ミル貝の特徴とは?

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ミル貝はホタテやアサリと同じ二枚貝の一種です。長く伸びた極太の水管が特徴で、あまりに大きいため貝殻の口を閉じられません。主な可食部は水管で、刺身やぽん酢和えなどが一般的です。大型で非常に味がよいため、料亭や高級寿司店などで重宝されています。

どんな貝なの?

「マルスダレガイ目バカガイ科オオトリガイ亜科ミルクイ属」に分類される大型の二枚貝です。水深20mほどの砂地を好み、海底から水管を出し水中のプランクトンを捕食します。生後3年で10cmほどの大きさになり、以後1年に1cmずつ成長するのが特徴です。流通しているミル貝の多くが、体長13cm前後になります。

海水汚染などの影響で漁獲量が激減し、ほとんどが台湾や韓国からの輸入です。現在国産のミル貝は高騰しており、高級店でしか取り扱っていません。回転寿司などで見かけるのは、代用品である白ミル貝(ナミガイ)です。

名前の由来は?

ミル貝とは市場での代表的な呼び名で、正式名称はミルクイ(海松食)といいます。ミル(海松)とは海藻の一種で、外見が松の形に似ていることから名付けられました。ミル貝の名前の由来は、黒い皮に覆われた水管が関係しています。

・黒い水管が海藻(ミル)のように見える
・砂から出た水管にミルが付いていることがある
・水管を引っ込める様子がミルを食べているように見える

実際にはミル(海松)以外の海藻を付けていることが多く、中にはフジツボが付着している個体もあります。

どんな味?

ミル貝は水管部分の味が絶品です。貝柱や貝ヒモも食べられますが、メインは水管で湯通しして刺身で食べます。貝特有の磯の香りと、シコシコとした食感の良さが特徴です。サッと湯通しすることで甘みが増し、噛めば噛むほど口に広がります。

ミル舌と呼ばれる身(足)は、内部の黒い部分を除いて可食部です。肝バター焼きなどの料理が定番で、ほのかな苦味とバターの風味がよく合います。

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ミル貝の栄養と効能は?

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ミル貝には優れた効能をもつ栄養素が、豊富に含まれています。とくに多く含まれるのはビタミンやミネラルで、ダイエットに効果的なタンパク質も豊富です。

1.ビタミンB12
2.タンパク質
3.鉄分
4.マグネシウム
5.カリウム

1.タンパク質の合成を助けるビタミンB12

水に溶けやすい水溶性ビタミンのひとつで、植物性食品にはほとんど含まれていません。主な効能はDNAやタンパク質の合成を助けて、さまざまな代謝をサポートすること。赤血球中のヘモグロビン生成を促し、悪性の貧血を防ぎます。

ミル貝の栄養素の中で、含有率がもっとも高いのがビタミンB12です。ミル貝100gあたりに含まれるビタミンB12の量は9.1μg(マイクログラム)で、1日の推奨量6.7μgを大きく上回ります。

2.三大栄養素のひとつタンパク質

炭水化物(糖質)や脂質と並ぶ、三大栄養素のひとつです。人体を構成する材料となり、ホルモン・酵素・免疫物質としてさまざまな効能を発揮します。

タンパク質はダイエットにも効果的な栄養素です。筋肉量の増加により基礎代謝が向上し「痩せやすく太りにくい体質」になります。高タンパク質なうえに「低脂質・低糖質」なミル貝は、ダイエットや筋トレに適した食材です。

【ミル貝100gあたり】
・エネルギー:82kcal
・タンパク質:18.3g
・脂質:0.4g
・糖質:0.3g

【サラダチキン100gあたり】
・エネルギー:113kcal
・タンパク質:21.48g
・脂質:1.47g
・糖質:2.11g

3.貧血を予防する鉄分

人体に不可欠な必須ミネラルのひとつです。赤血球を構成する栄養素で、主な効能は体中の細胞組織に酸素と栄養を運ぶこと。約70%が赤血球中のヘモグロビンを作る成分となるため、貧血予防に欠かせません。不足すると脳への酸素供給が不十分になり、思考・学習・記憶能力が低下します。逆に十分な摂取量があれば、運動や学習能力の向上に効果的です。

鉄分は1日の食事量が少ないことや、大量の汗をかくことで不足しがちになります。少食な人や激しい運動を習慣的に行う人は、積極的に摂取しましょう。

\次のページで「4.エネルギー生成を助けるマグネシウム」を解説!/

4.エネルギー生成を助けるマグネシウム

ミネラルの一種で、骨の成長や維持に欠かせない栄養素です。50~60%が骨に含まれ、残りはタンパク質と結合して血液や筋肉に存在します。主な効能は三大栄養素の代謝から、エネルギーを作り出すサポートすること。300種類以上の酵素の働きを助け、カルシウムと密接に関係しながらさまざまな効能を発揮します。

・筋肉の収縮を抑制する
・血管を拡張して血圧を下げる
・血小板の凝固を抑えて血栓を防ぐ

5.高血圧を予防するカリウム

人体に必要なミネラルのひとつです。食塩に含まれるナトリウムとともに、細胞の浸透圧を管理・維持しています。主な効能は高血圧の予防。過剰摂取により体内に残ったナトリウムを、汗や尿から排出することで血圧を下げます。塩分の摂り過ぎを防ぐのに、不可欠な栄養素です。正常な神経伝達を助け、心臓や筋肉の機能を調節する効能もあります。

カリウムが不足すると、余分なナトリウムを排出できません。体内の塩分濃度を薄めようと常に水分を蓄えるため、体がむくみます。

ミル貝を食べるときの注意

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二枚貝特有の貝毒や食中毒のリスクを避けるため、ミル貝の非可食部を知っておく必要があります。鮮度はもちろん、貝が持つ自然毒にも注意しなければなりません。

【ミル貝を食べるときの注意点】
・可食部の把握
・生きているか
・貝毒検査をクリア

食べられない部分を知っておこう

内臓(肝)に付着しているビラビラ(エラ)と、内部の黒い部分は食べられません。不純物が蓄積される部位で、貝毒など食中毒の危険が高いからです。クリーム色の部分は生殖器官で、加熱すれば安全に食べられます。ミル貝の貝殻を盛り付けに使用する場合は、必ず煮沸消毒してください。表面の「腸炎ビブリオ」を死滅させるためです。

【可食部と調理法】
・水管‥主に生食
・貝柱‥生食可能
・貝ヒモ‥生食可能
・ミル舌‥加熱調理が好ましい(肝は要加熱)

\次のページで「鮮度に気を付けよう」を解説!/

鮮度に気を付けよう

基本的に生きているミル貝でなければ、生食はできません。死んだ貝は鮮度が落ちやすく、有毒な細菌が繁殖している可能性があります。ヒスタミンなど熱に強い毒素もあるため、食中毒の危険が非常に高いのです。寄生虫アニサキスについては、2つの理由から問題ないといえます。

・ミル貝が食べる植物プランクトンにはアニサキスがいないから
・刺身にする場合でも70℃以上で湯通しするから
(60℃で1分以上か70℃以上で加熱すればアニサキスは死滅する)

二枚貝の貝毒に気を付けよう

貝毒とは二枚貝が有毒なプランクトンを食べることによって、貝に蓄積される自然毒です。貝による食中毒の主な原因であり、2種類に分類されます。

・下痢性貝毒‥下痢・嘔吐・吐き気・腹痛など消化器系の症状
・麻痺性貝毒‥唇・舌・顔面のしびれ、両手両足の麻痺

いずれも食後30分から数時間で症状が出ます。貝毒が蓄積されるのは、内臓(肝)内部にある黒色の部分です。市販の二枚貝は漁協の厳しい検査をクリアしていますが、個人的に手に入れたミル貝の肝は安全とはいえません。

ミル貝の豊富な栄養と優れた効能を摂取しよう

ミル貝の特徴・栄養・効能がわかりましたね。大型の二枚貝ですが、メインの可食部が水管という珍しい貝です。長く手太い水管を湯通しして、刺身などで食べます。水管の味が絶品なために、ミル貝には高値が付くのです。

栄養素的にはビタミンやミネラルが豊富で、代謝のサポートや貧血予防などの効能があります。高タンパク質・低脂質・低糖質なので、ダイエットにも効果的です。あなたも栄養豊富なミル貝を食べて、毎日を快適に過ごしましょう。

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家庭科

簡単でわかりやすい!ミル貝の特徴とは?豊富な栄養と優れた効能も現役料理人が詳しく解説

今回はミル貝について学んでいきます。ミル貝はアサリやホタテと同じ二枚貝です。最近は漁獲量が減ったため、希少価値が高い。ミル貝は優れた効能をもつ栄養素が豊富で、ダイエット効果も期待できる。この記事はミル貝の特徴・栄養・効能について、現役料理のテルトラと解説していきます。

ライター/テルトラ

経験15年の現役料理人。和食を中心にさまざまな業態で多くの食材にふれてきた。食品衛生責任者の資格を所有し、貝類の調理も得意。

ミル貝の特徴とは?

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ミル貝はホタテやアサリと同じ二枚貝の一種です。長く伸びた極太の水管が特徴で、あまりに大きいため貝殻の口を閉じられません。主な可食部は水管で、刺身やぽん酢和えなどが一般的です。大型で非常に味がよいため、料亭や高級寿司店などで重宝されています。

どんな貝なの?

「マルスダレガイ目バカガイ科オオトリガイ亜科ミルクイ属」に分類される大型の二枚貝です。水深20mほどの砂地を好み、海底から水管を出し水中のプランクトンを捕食します。生後3年で10cmほどの大きさになり、以後1年に1cmずつ成長するのが特徴です。流通しているミル貝の多くが、体長13cm前後になります。

海水汚染などの影響で漁獲量が激減し、ほとんどが台湾や韓国からの輸入です。現在国産のミル貝は高騰しており、高級店でしか取り扱っていません。回転寿司などで見かけるのは、代用品である白ミル貝(ナミガイ)です。

名前の由来は?

ミル貝とは市場での代表的な呼び名で、正式名称はミルクイ(海松食)といいます。ミル(海松)とは海藻の一種で、外見が松の形に似ていることから名付けられました。ミル貝の名前の由来は、黒い皮に覆われた水管が関係しています。

・黒い水管が海藻(ミル)のように見える
・砂から出た水管にミルが付いていることがある
・水管を引っ込める様子がミルを食べているように見える

実際にはミル(海松)以外の海藻を付けていることが多く、中にはフジツボが付着している個体もあります。

どんな味?

ミル貝は水管部分の味が絶品です。貝柱や貝ヒモも食べられますが、メインは水管で湯通しして刺身で食べます。貝特有の磯の香りと、シコシコとした食感の良さが特徴です。サッと湯通しすることで甘みが増し、噛めば噛むほど口に広がります。

ミル舌と呼ばれる身(足)は、内部の黒い部分を除いて可食部です。肝バター焼きなどの料理が定番で、ほのかな苦味とバターの風味がよく合います。

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