この記事ではトランジスタとFETの違いについてみていきます。トランジスタやFETは信号の制御を行う半導体素子として、スマートフォンなどあらゆる電子機器に用いられている。今回はそんなIT化の主役ともいえる、2つの半導体部品の特性の違いについてラジオ作りが趣味の理系ライター2scと一緒に解説していきます。

ライター/2sc

理系の大学院に通うかたわら、ライターとして活動している。自動車など技術系の記事執筆を得意とする、生粋の科学青年。電子工作に欠かせない、「トランジスタ」についてわかりやすく解説していく。

トランジスタとFETの違いとは?

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トランジスタはその仕組みから、バイポーラトランジスタ電界効果トランジスタ(FET)の2種類に大別できます。一般に「トランジスタ」と呼ばれるのはバイポーラトランジスタ。電子工作にもよく用いられる部品です。一方でFETという部品は聞き慣れませんよね。以下、両者の特性を大まかに説明します。

どちらも信号を増幅するはたらきをもつ

どちらの部品も電力を加えることで、入力された信号を増幅するはたらきを持ちます。そのためオーディオアンプやラジオなどの自作で目にする機会も多いです。また加える電力を調節することで、増幅の効き目を弱めることも可能。増幅の効力がなくなると信号は遮断されます。この動作をスイッチングといい、信号の有無で0と1を表現するコンピュータには欠かせません。

特性が変わると、強みも変わる

トランジスタ電流を加えることで入力信号の増幅を制御します。微弱な信号まで拾い上げて、大幅に増幅することが得意な部品です。一方FET電圧を加えることで増幅の制御を行います。大きな信号以外拾わず増幅能力も弱いという点では、一般的なトランジスタのイメージとはほど遠い部品です。FETが得意とするのはスイッチング。デジタル回路で真価を発揮します。

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違い1:電極の名称

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トランジスタとFETはともに、3つの電極・端子をもつ「3本足」の部品です。電極を構成するのは半導体で、P型N型の2種類の半導体の組み合わせからなります。P型半導体正の電荷を持つ電気(正孔)を伝導し、N型半導体負の電荷を持つ電子を伝導するのが特徴。2つの異なる半導体を組み合わせることで、増幅を生じさせるのです。

トランジスタ:ベース、コレクタ、エミッタ

トランジスタの電極はベース(B)、コレクタ(C)、エミッタ(E)と呼ばれます。ベースは入力部コレクタは出力部です。エミッタは接地します。コレクタとエミッタは同種の半導体からなり、異なる半導体をもつベースを挟み込む「サンドイッチ型」の模式図で説明可能です。その半導体の構成からNPN型PNP型に分類されます。

FET:ゲート、ドレイン、ソース

一方FETの電極の名称はゲート(G)、ドレイン(D)、ソース(S)。こちらは入力のゲート出力のドレイン接地部分のソースからなります。出力と接地部分は同種の半導体で構成され、入力の半導体のみ種類が異なるという点ではトランジスタと同様です。こちらはドレインに用いる半導体の種類で分類され、N型チャネルP型チャネルに大別できます。

違い2:増幅のしくみ

異なる半導体をもつ入力部に電力を加えると、出力部での電流の量が変化します。一般に増幅とは、出力電流の増加のみを指す用語。電力の加え方によっては、出力を0にすることも可能です。こちらはスイッチングと呼ばれ、区別されます。電力は電流と電圧からなり、そのどちらを制御に用いるかでトランジスタ・FETの違いが決まるのです。以下、制御のしくみについて解説します。

トランジスタ:ベースに電流を通す

通常エミッタ・コレクタ間の電流はベースの半導体によって妨げられています。ベース・エミッタ間電流を加えると、エミッタ・コレクタ間の電流は増加。ベースに加える電流量によっては、出力の増大が可能です。この現象は増幅といい、トランジスタでより強くみられます。

FET:ゲートに電圧を加える

FETではドレイン・ソース間の「電流の通り道」ともいえる領域をチャネルと呼びます。異なる半導体でできたゲートに電圧を加えると、チャネルを通過する電流量が変化。トランジスタに劣るものの、増幅が生じます。FETはこの変化をすばやく制御して回路のON/OFFを切り替える、スイッチングの機能に特化した部品です。

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違い3:用途

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トランジスタとFETはどちらも、電流量を制御する部品であるともいえますね。一方で制御の仕組みは異なるため、使用目的も異なります。

トランジスタ:増幅や発振、スイッチングに

オーディオアンプやラジオなど、信号を増幅するアナログ回路に用いると良いでしょう。増幅した信号を再度取り込み、増幅するという工程を繰り返すことで発振を生じさせることもできます。また低速度のスイッチングにも用いられ、LEDをゆっくり点滅させる回路(電子ホタル)の作成には不可欠です。

FET:大きな信号のみを拾う装置に

FETはその構造によって、さまざまな種類に分けられます。なかでも代表的なものは、接合型FETMOSFETでしょう。接合型FETは入力インピーダンス(抵抗)が高く、微弱な信号を遮断するはたらきを持ちます。一方で強い信号は増幅されるため、目当ての信号のみを分離することが可能です。心電図や脳波系など、計器の入力段に用いられます。

MOSFETはゲートの半導体を金属酸化物の膜で隔てることで、より高い入力インピーダンスを実現。ゲートへの電流の流出・損失が少ないのが特徴です。そのため大きな電力を用いる回路に欠かせません。またスイッチング速度が速く、モーターの駆動を制御する回路にも適しています。

それぞれの強みを知り、使い分けよう!

トランジスタとFETは信号を制御する半導体素子です。はたらきは同じですが、制御の方向性が異なります。増幅やスイッチングなど、部品一つ一つのはたらきは単純。そのような個々のはたらきを持つ部品をいくつも組み合わせることで、あらゆる電子機器が成り立つのです。スマートフォンに用いられる半導体は、この記事で解説したトランジスタやFETよりもコンパクト。半導体は日夜、改良を受けています。ふだん何気なく使っているスマートフォンにも、人類の創意工夫がふんだんに注がれているのですね。

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雑学

3分で簡単にわかる!トランジスタとFETの違いとは?特性や用途も元ラジオ少年がわかりやすく解説

違い3:用途

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トランジスタとFETはどちらも、電流量を制御する部品であるともいえますね。一方で制御の仕組みは異なるため、使用目的も異なります。

トランジスタ:増幅や発振、スイッチングに

オーディオアンプやラジオなど、信号を増幅するアナログ回路に用いると良いでしょう。増幅した信号を再度取り込み、増幅するという工程を繰り返すことで発振を生じさせることもできます。また低速度のスイッチングにも用いられ、LEDをゆっくり点滅させる回路(電子ホタル)の作成には不可欠です。

FET:大きな信号のみを拾う装置に

FETはその構造によって、さまざまな種類に分けられます。なかでも代表的なものは、接合型FETMOSFETでしょう。接合型FETは入力インピーダンス(抵抗)が高く、微弱な信号を遮断するはたらきを持ちます。一方で強い信号は増幅されるため、目当ての信号のみを分離することが可能です。心電図や脳波系など、計器の入力段に用いられます。

MOSFETはゲートの半導体を金属酸化物の膜で隔てることで、より高い入力インピーダンスを実現。ゲートへの電流の流出・損失が少ないのが特徴です。そのため大きな電力を用いる回路に欠かせません。またスイッチング速度が速く、モーターの駆動を制御する回路にも適しています。

それぞれの強みを知り、使い分けよう!

トランジスタとFETは信号を制御する半導体素子です。はたらきは同じですが、制御の方向性が異なります。増幅やスイッチングなど、部品一つ一つのはたらきは単純。そのような個々のはたらきを持つ部品をいくつも組み合わせることで、あらゆる電子機器が成り立つのです。スマートフォンに用いられる半導体は、この記事で解説したトランジスタやFETよりもコンパクト。半導体は日夜、改良を受けています。ふだん何気なく使っているスマートフォンにも、人類の創意工夫がふんだんに注がれているのですね。

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