今回は塩サバについて学んでいく。文字通り生のサバをさばいて、塩漬けにしたものです。干したものを塩サバと呼ぶこともある。適度に脱水され、旨みや栄養が詰まっているのが特徴です。この記事では塩サバの栄養と効能を中心に、特徴や食べ方の注意点などを現役料理人のテルトラと解説していく。

ライター/テルトラ

経験15年の現役料理人。和食を中心にさまざまな業態で多くの食材にふれてきた。塩さばを使った料理も得意で、さまざまなアレンジを試してきた。

塩サバの特徴とは?

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塩サバとは魚の名前や料理名ではなく、加工方法を表した商品名です。生サバをさばいて塩や塩水に漬けたもので、塩漬け後に干す場合もあります。水分が抜けたぶん、旨みと栄養が凝縮しているのが特徴です。主にノルウェーから輸入される冷凍品が、安価で流通しています。

塩サバとはどんなもの?

塩サバにする目的は余分な水分を抜くことで、2つのメリットがあります。

・旨みと栄養が濃縮して増加する
・傷みやすいサバでも保存が効く

魚のタンパク質が分解され、旨味成分イノシン酸が作られることで旨みが増加します。水分と共に不純物が抜けるため、長期保存が可能です。ご家庭でも簡単に作れる塩サバは、クックパッドや動画サイトで多くのレシピが紹介されています。

焼いて食べるのが一般的で、フライパンやホイル焼きでも調理可能です。塩サバに使われるのはマサバやゴマサバで、多くが半身や切り身の状態で売られています。

塩サバと生サバの違いは?

塩サバと生サバでは、身質が少し違います。旨味成分や栄養素以外の特徴は下記のとおりです。

【塩サバの特徴】
・値段が安い
・身が締まっている
・煮物には向かない
・塩締めなどの下処理が不要

【生サバの特徴】
・身がやわらかい
・煮物に向いている
・塩締めによる脱水処理が必要

保存が効くため海外から安価で輸入され、臭みを抜くための脱水処理が必要ありません。そのまま焼くだけで、塩焼きやマリネが簡単に作れます。塩分による下味が付いているため、醤油や生姜で煮込む料理には不向きです。

\次のページで「塩サバのカロリーと糖質量」を解説!/

塩サバのカロリーと糖質量

サバ自体の脂質が多いため、塩サバにしてもカロリーは高めです。強めの塩加減で白いごはんが進み、カロリーや糖質の過剰摂取につながる恐れがあります。

【塩サバ100gあたり】
・エネルギー:291kcal
・タンパク質:26.2g
・脂質:19.1g
・糖質:0.1g

【ごはん100gあたり】
・エネルギー:168kcal
・タンパク質:2.5g
・脂質:0.3g
・糖質:36.8g

【サラダチキン100gあたり】
・エネルギー:113kcal
・タンパク質:21.48g
・脂質:1.47g
・糖質:2.11g

【消費するのに必要な運動】
・ウォーキング約110分
・ジョギング約70分
・ストレッチ約130分
・水泳41分
(ごはん分は別)

塩サバの主な栄養と効能

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脱水により不純物が抜けた塩サバは、栄養素が凝縮されています。例外は水に溶けやすい水溶性のビタミンB群です。塩漬けの過程で水分と一緒に抜けるため、生サバより含有量は少なくなります。

1.生活習慣病を予防するDHA・EPA

青魚に多く含まれる栄養素で、体内では作り出せない不飽和脂肪酸です。脂肪燃焼を促しコレステロール値を下げる効能があり、生活習慣病の予防に役立ちます。血液をサラサラにして、動脈硬化や高血圧の予防に効果的です。

塩サバに含まれるDHAとEPAの量は、生サバの2倍近くにあたります。不飽和脂肪酸は水に溶けないため、脱水により濃縮されるからです。100gあたりの含有量は2.4gで、1日の摂取量目安(男性2g・女性1.6g)を大きく上回ります。

2.骨を強くするビタミンD

主な効能は、小腸にてカルシウムの吸収を助け骨を丈夫にすること。ビタミンDが不足していると、カルシウムを摂取しても体内にきちんと吸収されません。放っておくとホルモンが働いて骨のカルシウムを溶かし、血液中のカルシウム濃度を調節しようとします。

成長期の子供や、妊娠・授乳中の母体には欠かせない栄養素です。塩サバと生サバで含有量に差はなく、1日に摂取したい量をゆうにこえます。

3.エネルギー代謝を円滑にするビタミンB群

ビタミンB群とは8種類から成る水溶性の栄養素で、塩サバには全て含まれています。多く含まれるのは、ビタミンB2・B6・B12・ナイアシンです。三大栄養素の代謝を促し、エネルギーへの変換をスムーズにする効能があります。健康な肌や髪を作る、血液の生成、皮膚や粘膜の健康維持に不可欠です。

ビタミンB群の含有量は、塩サバより生サバのほうが多くなります。ビタミンB群は水溶性のため、水分が抜ける過程で一緒に流れ出てしまうからです。

4.体を作るのに欠かせないタンパク質

脂質・糖質と並ぶ三大栄養素で、筋肉や臓器など体を作るために必要な栄養素です。疲労回復や成長促進、組織の修復や神経の働きを助ける効能があります。筋肉の材料はタンパク質しかないため、ダイエットや筋トレに欠かせません。不足すると体力や筋量が減って代謝が低下し「太りやすく瘦せにくい体質」になります。

1日に必要なタンパク質の摂取量は「体重1kgにつき約1g」で、育ち盛りの年代や筋トレ中の人はより多く必要です。塩サバに含まれるタンパク質の量は、生サバより5.5gほど多く含まれます。

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5.体中に酸素を運ぶ鉄分

体内に約3gはあるといわれ、血液中のヘモグロビンを構成する成分となります。主な効能は全身に酸素を運搬することです。不足すると貧血を起こすだけでなく、酸素不足により思考力や記憶力が低下します。

塩サバに含まれる鉄分はタンパク質と結合しているため、十二指腸にて吸収されやすい状態です。レモンなどビタミンCとの組み合わせで、さらに吸収率がアップします。

塩サバを食事に取り入れるときの注意点

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値段が安く栄養価が高い塩サバですが、調理法や食べ方には注意が必要です。とくに塩分量は、重大な健康被害を引き起こす可能性があります。

・塩サバの塩分
・サバの食中毒
・栄養の摂取方法

塩サバの塩分に気を付けよう

塩サバはサバ加工品の中で、もっとも多くの塩分を含んでいます。高濃度の塩水や大量の塩に漬け込んでいるからです。

【100gあたりの食塩相当量】
・塩サバ:1.8g(ナトリウム:720mg)
・生サバ:0.4g(ナトリウム:140mg)

慢性的なナトリウムの過剰摂取は、高血圧や動脈硬化などのリスクを高めます。醬油などの調味料はかけずに、大根おろしで塩加減を抑えるとよいでしょう。お酒とみりんを2:1で合わせ、2~3時間ほど浸けると塩が抜けます。

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塩サバの食中毒に気を付けよう

塩漬けにするとはいえ、サバにはヒスタミンやアニサキスによる食中毒のリスクがあります。ヒスタミンは一度生成されると加熱しても分解できないため、発生させないことが重要です。購入してから口に入るまで、徹底した低温保存を心がけましょう。

寄生虫アニサキスは魚の内臓に寄生し、魚が絶命すると身の内部へと移動します。有効な対策は70℃以上で加熱するか、-20℃で24時間以上冷凍すること。ただし、家庭用の冷凍庫は-18℃程度で頻繫に開け閉めがあるため、48時間冷凍をおすすめします。

栄養の摂り方を工夫しよう

調理法や副菜を工夫すると、効率よく塩サバの栄養を摂取できます。

・油で調理する
・皮ごと食べる
・緑黄色野菜をそえる

ビタミンD・Eは油脂に溶けやすい栄養素で、油と一緒に摂取すると吸収率がよくなります。塩サバの皮にはビタミンBが多く含まれ、脂質の代謝に効果的です。

とはいえ「毎回油を使うと摂取カロリーが増える」「魚の皮が苦手」という意見もあるでしょう。その場合は、緑黄色野菜と一緒に食べるのがおすすめです。抗酸化作用をもつ緑黄色野菜を組み合わせることで、酸化しやすいDHAとEPAを保護できます。無理をせずできる範囲で構わないので、続けることが大切です。

塩分に気を付け栄養豊富な塩サバを取り入れよう

塩サバの特徴や生サバとの違いがわかりましたね。塩漬けにして乾燥させただけですが、適度に水分が抜け旨みや栄養が凝縮されています。保存が効くため安価で手に入り、下処理の必要がない点がメリットです。デメリットは生サバと比べ、調理法が少ないこと。

青魚特有の不飽和脂肪酸が多く、タンパク質や鉄分も豊富です。水溶性ビタミンが脱水により失われるのが難点ですが、栄養価が高く優れた効能があります。塩分が多いため、食べ方には注意が必要です。塩サバの豊富な栄養を効率よく摂取し、健康的な食生活をおくりましょう。

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家庭科

塩サバの栄養と効能とは?特徴や生サバとの違いも現役料理人が簡単にわかりやすく解説

今回は塩サバについて学んでいく。文字通り生のサバをさばいて、塩漬けにしたものです。干したものを塩サバと呼ぶこともある。適度に脱水され、旨みや栄養が詰まっているのが特徴です。この記事では塩サバの栄養と効能を中心に、特徴や食べ方の注意点などを現役料理人のテルトラと解説していく。

ライター/テルトラ

経験15年の現役料理人。和食を中心にさまざまな業態で多くの食材にふれてきた。塩さばを使った料理も得意で、さまざまなアレンジを試してきた。

塩サバの特徴とは?

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塩サバとは魚の名前や料理名ではなく、加工方法を表した商品名です。生サバをさばいて塩や塩水に漬けたもので、塩漬け後に干す場合もあります。水分が抜けたぶん、旨みと栄養が凝縮しているのが特徴です。主にノルウェーから輸入される冷凍品が、安価で流通しています。

塩サバとはどんなもの?

塩サバにする目的は余分な水分を抜くことで、2つのメリットがあります。

・旨みと栄養が濃縮して増加する
・傷みやすいサバでも保存が効く

魚のタンパク質が分解され、旨味成分イノシン酸が作られることで旨みが増加します。水分と共に不純物が抜けるため、長期保存が可能です。ご家庭でも簡単に作れる塩サバは、クックパッドや動画サイトで多くのレシピが紹介されています。

焼いて食べるのが一般的で、フライパンやホイル焼きでも調理可能です。塩サバに使われるのはマサバやゴマサバで、多くが半身や切り身の状態で売られています。

塩サバと生サバの違いは?

塩サバと生サバでは、身質が少し違います。旨味成分や栄養素以外の特徴は下記のとおりです。

【塩サバの特徴】
・値段が安い
・身が締まっている
・煮物には向かない
・塩締めなどの下処理が不要

【生サバの特徴】
・身がやわらかい
・煮物に向いている
・塩締めによる脱水処理が必要

保存が効くため海外から安価で輸入され、臭みを抜くための脱水処理が必要ありません。そのまま焼くだけで、塩焼きやマリネが簡単に作れます。塩分による下味が付いているため、醤油や生姜で煮込む料理には不向きです。

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