この記事では一挙手一投足と一挙一動の違いについてみていきます。この2つの熟語は辞書を見ると類語とされているが、使い分けの仕方がわかりにくいと考える人もいるようです。動作の大きさや語源などについて細かい部分ではありますが、異なる部分があるようです。今回はそのような類語の違いを漢字の意味やもともとの語源を確認しながら、文学部卒のライター海辺のつばくろと一緒にみていきます。

ライター/海辺のつばくろ

重箱の隅をつつくようではあるけれども、細かな言葉の違いが気になる文学部卒ライター。

一挙手一投足と一挙一動は類語

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一挙手一投足、一挙一動は辞書に類語として表記されています。辞書サイトへの掲載は以下の通りです。

・一挙手一投足(読み:いっきょしゅいっとうそく)
1.こまかな一つ一つの動作や行動。
2.ちょっとした努力。僅かな骨折り。
類語:一挙一動など

・一挙一動(よみ:いっきょいちどう)
一つ一つの挙動。ちょっとした振る舞い。一挙手一投足。

出典:コトバンク『デジタル大辞泉』小学館

一挙手一投足の成り立ち:漢詩の一句

一挙手一投足は、唐の時代の文官で作家でもある韓愈(かんゆ)の書物『応科目時与人書』(科目に応じる時、人に与うるの書)の中で使った表現がもとになっています。内容は、困っている韓愈を助けるために、「一挙手一投足(ほんの少しの労力・僅かな骨折り)」を惜しまないでほしいといったもの。

もともとは、わずかな骨折りや労力という意味でしたが、時代が下った現代ではあまりこのような使い方はしません。

現在の意味:1つずつの細かな振る舞いに使うことがほとんど

「一挙手」「一投足」と三字熟語に分けると、それぞれほんの少しだけ手を上げること、足をちょっとだけ動かすことという意味です。労力や骨折りというよりも、それぞれの身体のわずかな動きから、細かな振る舞いの様子について描写するようになったのではないでしょうか。

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「一挙手一投足」の例文

それでは、「一挙手一投足」の使い方を例文で確認しましょう。

1.一つ一つの細かな振る舞い・小さな行動
・彼は技術を身につけたいあまり、師の一挙手一投足に注目している。
・すきを与えないように、一挙手一投足に気を配るようにしている。
・貧乏ゆすりまで気になるなんて、彼の一挙手一投足が目につくんだね。
・ある女性インフルエンサーに憧れて、ファッションのテイストからライフスタイルまで一挙手一投足を真似るようにしている。

2.ほんの少しの労力・ちょっとした努力
・あまりにも忙しいので、一挙手一投足の手助けがほしい。
・無関心のまま、一挙手一投足の労も費やさないなんておかしいよ。
・一挙手一投足の思いやりも見せないのは人情味に欠ける。

一挙一動の成り立ち:挙動に一を付けた

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一挙一動の成り立ちは、挙動という熟語に「一つ一つ」という意味でそれぞれの語の前に「一」を付けて整えた言葉と言われています。挙動は立ち居振る舞いや動作、行動や様子などを表す熟語。確かに手足の細かい動きよりも、もう少し大まかな動作に使うイメージです。

意味:一つ一つのしぐさ・ちょっとした振る舞い

一挙一動は一つ一つのしぐさやちょっとした振る舞いをいう四字熟語。一見すると一挙手一投足とはあまり変わりがないように感じられるでしょう。ただ、一挙手一投足の場合は、手や足が少し動いただけといった、「ほんの少し」を強調しているようにも見えます。一挙手一投足の方が、動きが細かい印象ですね。

「一挙一動」の例文

それでは、「一挙一動」の使い方を例文で確認しましょう。

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「一挙一動」の例文
・彼の一挙一動に不自然な所はないよ。実に立派だ。
・毎日、生徒の一挙一動に注意を払う担任の先生。
・知らないだろうが、あなたの一挙一動は注目の的だよ。
・がさつな性格を直したいので、評判のAさんの一挙一動を手本にしている。

一挙手一投足や一挙一動の類語

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一挙手一投足、一挙一動は類語です。他に類似の意味の語句があるので紹介します。

立ち居振る舞い:日常の動作

「立ち居振る舞い(たちいふるまい)」は日常の動作身のこなしを表す言葉です。「立ち居」とは「立ったり座ったり」という意味。振る舞いは動作のこと。立ち座りの動作を日常的な動作一般にたとえています。「人前で立ち居振る舞いに気をつける」「人の上に立つ人間は立ち居振る舞いが堂々としている」などのように使えますね。

行住坐臥:日常の振る舞い・いつでも

「行住坐臥(ぎょうじゅうざが)」とは、日常の振る舞いのこと。転じて常日頃いつでもといった意味でも使います。もともとは仏教用語で人の動作の根本的なものである、「行く・とどまる・座る・寝る」の4つの行動を指していいました。

現代ではあまり聞き慣れない言葉で、小説やエッセイなどで見かけることがあるかもしれません。いつでもといった意味で使うことがほとんどで「行住坐臥、上司の付き添いで出かけることが多かった」「行住坐臥初心忘れるべからずを肝に銘じている」のように用いられます。

一挙手一投足と一挙一動の違いは動作の細かさや成り立ち

一挙手一投足と一挙一動は、一つずつの振る舞いや動作を表す類語。異なる点は、動作の細かさです。一挙手一投足は細かな手や足の動きまでを描写していますが、一挙一動は大まかな動作や振る舞い方を表す点で違います。言葉の成り立ちも一挙手一投足が中国の詩文から生まれたのに対し、一挙一動は挙動という字を分けて語の頭に一を付けたという点で異なっていますね。

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3分で簡単にわかる!「一挙手一投足」と「一挙一動」の違いとは?例文や類語も文学部卒ライターがわかりやすく解説

この記事では一挙手一投足と一挙一動の違いについてみていきます。この2つの熟語は辞書を見ると類語とされているが、使い分けの仕方がわかりにくいと考える人もいるようです。動作の大きさや語源などについて細かい部分ではありますが、異なる部分があるようです。今回はそのような類語の違いを漢字の意味やもともとの語源を確認しながら、文学部卒のライター海辺のつばくろと一緒にみていきます。

ライター/海辺のつばくろ

重箱の隅をつつくようではあるけれども、細かな言葉の違いが気になる文学部卒ライター。

一挙手一投足と一挙一動は類語

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一挙手一投足、一挙一動は辞書に類語として表記されています。辞書サイトへの掲載は以下の通りです。

・一挙手一投足(読み:いっきょしゅいっとうそく)
1.こまかな一つ一つの動作や行動。
2.ちょっとした努力。僅かな骨折り。
類語:一挙一動など

・一挙一動(よみ:いっきょいちどう)
一つ一つの挙動。ちょっとした振る舞い。一挙手一投足。

出典:コトバンク『デジタル大辞泉』小学館

一挙手一投足の成り立ち:漢詩の一句

一挙手一投足は、唐の時代の文官で作家でもある韓愈(かんゆ)の書物『応科目時与人書』(科目に応じる時、人に与うるの書)の中で使った表現がもとになっています。内容は、困っている韓愈を助けるために、「一挙手一投足(ほんの少しの労力・僅かな骨折り)」を惜しまないでほしいといったもの。

もともとは、わずかな骨折りや労力という意味でしたが、時代が下った現代ではあまりこのような使い方はしません。

現在の意味:1つずつの細かな振る舞いに使うことがほとんど

「一挙手」「一投足」と三字熟語に分けると、それぞれほんの少しだけ手を上げること、足をちょっとだけ動かすことという意味です。労力や骨折りというよりも、それぞれの身体のわずかな動きから、細かな振る舞いの様子について描写するようになったのではないでしょうか。

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