ブリ御三家という言葉を知っているか?いなだの成魚であるブリ、カンパチ、ヒラマサの3種類をまとめた呼び名です。見た目も味もよく似ているが、別の魚で違いもある。この記事はいなだの種類や旬の時期について、現役料理人のテルトラと解説していきます。新鮮ないなだの選び方も紹介しているので、ぜひ参考にしてくれ。

ライター/テルトラ

経験15年の現役料理人。和食を中心にさまざまな業態で多くの食材にふれてきた。いなだの仕入れや食べ方にも精通している。

いなだと同じ種類の魚たち「ブリ御三家」

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いなだとブリは同じ魚で、ともに分類学上はスズキ目アジ科ブリ属です。同じ種類の魚にカンパチとヒラマサがあり、3種類を総じて「ブリ御三家」と呼びます。

【ブリ御三家】
・ブリ
・カンパチ
・ヒラマサ

流通量が少ない順に、ブリ<カンパチ<ヒラマサと市場価値が高くなります。冬が旬のブリと夏が旬のヒラマサの間に、カンパチが旬を迎えるといった流れです。

1.冬の風物詩ブリ

いなだの成魚で、関東でも関西でも呼び方はブリです。ブリ御三家の中でもっとも丸みがあり、頭を落とした切り口は楕円形になります。ブリは漢字で「鰤」と書き、師走の時期にあたる真冬が旬です。回遊魚のため生息地は広範囲で、北海道南部から九州全域まで。春から秋にかけて餌を求め北海道北部やカムチャッカ半島まで北上し、水温が下がると産卵期に備え南下します。

12~2月に獲れるブリは「寒ブリ」と呼ばれ、冬の風物詩として人気です。主に日本海側で多く漁獲され、太平洋側では2~3ヶ月ほど漁期がずれます。旬の寒ブリは、脂がたっぷり乗って濃厚な味わいです。

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2.通年楽しめるカンパチ

アジ科の中で最大級の大きさを誇り、主に西日本に生息しています。全体に黄色味があり、目から尾びれまで茶色に近い黄色です。口から背ビレにかけて、黒い線が左右に通っています。
正面から見たときに、眉間のあたりが漢数字の「八」に見えることから「間八」と名付けられました。

幼魚や若魚の呼び名は「シオ・シオッコ・ショッコ」。名前に魚偏が付かないため、出世魚にするかどうかは意見がわかれます。旬は6~10月ですが、養殖も盛んです。身に弾力があり、とくに腹の身は繊維質でプリッとした歯ごたえがあります。修行時代は刺身にする際、薄めに切るようにと教わりました。

3.夏の高級魚ヒラマサ

いなだやブリと比べ魚体が平たく、頭が短く丸みを帯びています。旬は6~8月の初夏から夏にかけて。一方で産卵前の冬のほうが、脂が乗っているという意見もあります。

東北より南の広い地域で漁獲され、主な産地は九州や高知県です。ブリやカンパチよりも漁獲量が少ないため、市場価値は高め。知名度こそ低いですが、料亭や寿司店では高級魚として扱われます。ブリ御三家の中ではもっとも脂が少なく、あっさりした味わいです。

いなだの旬はいつ?

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いなだは漢字で「鰍」と書くように、秋が旬の魚です。ワカシ→いなだ→ワラサ→ブリと成長していく過程で、いなだと呼べるサイズは秋に漁獲量のピークを迎えます。いなだより大きいサイズになると、養殖も盛んです。60cm以上の大きさで、養殖ハマチや養殖ブリとして通年流通します。

旬と出まわる時期

出世魚のブリに商品として値段が付くのは、いなだの大きさからです。旬は秋ですが、7~11月の間は出まわります。いなだと呼べるサイズ(40cm以上・重さ1〜3㎏)で、もっとも多く水揚げされるのが秋なのです。夏は1㎏未満のワカシのサイズで、寒くなると3~7㎏ほどのワラサのサイズに近づきます。

いなだ(ブリ)は養殖も盛んです。昔の養殖物は40cm程度の大きさでしたが、今は60cmを超えないと出荷されません。養殖ハマチとして、通年出まわります。

いなだの主な産地

いなだは北海道沿岸から九州南海岸まで、日本列島周辺の広い海域に生息します。全国的に漁獲されますが、とくに漁獲量が多いのは千葉県や宮城県の太平洋側です。いなだの成魚であるブリは春に産卵期を迎え、房総半島や能登半島よりも南で産卵します。黒潮に乗って回遊しながら大きくなり、秋口に太平洋側で多く獲れるというわけです。

養殖は南の温暖な地域が盛んで、四国や九州地方が主な産地になります。

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【主な産地】
・天然物‥北海道・青森・新潟・富山・和歌山・長崎など
・養殖物‥鹿児島・愛媛・大分など

相場の価格

東京都中央卸売市場の統計によると、豊洲市場におけるいなだの平均卸価格は1㎏あたり339円です。月ごとに変動するものの、全体的に上昇傾向にあります。卸売価格とは、卸売業者が仲卸業者(仲買人)に売るときの価格です。

日本海側より太平洋側で漁獲されたいなだのほうが、値段が下がります。スーパーなど小売店での価格は下記を参照してください。

・1kgあたり‥500~800円
・いなだ刺身用‥580~680円
・いなだ1尾(1~3kg)‥500~2400円

新鮮ないなだの選び方

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いなだは血合いが多いため、鮮度が落ちやすい魚です。空気に触れるとすぐに劣化し、1日ほどで変色し生臭くなります。いなだを選ぶときは、鮮度が何よりも重要です。新鮮で脂が乗ったいなだの選び方を、料理人の視点から解説します。

#1 丸ごと1尾の選び方

丸ごと1尾の場合は、目・腹・エラの3箇所を見て選びます。

目が透き通り黒目がくっきりしているもの、透明な部分がレンズ状になっているものが新鮮です。鮮度が落ちたいなだは、眼球が沈んでいます。腹部を見て、肛門から濁った汁が出ていないこと。触れる場合は指で押してみて、お腹に張りがあるか確かめてください。腹がやわらかいものは、内臓が傷んで溶けている証拠です。エラが鮮やかな紅色であること。時間の経過とともに、赤黒く変色してきます。

活け締めであるかも鮮度を見分ける要素。活け締めとは、魚を即死させ血を抜くことで鮮度を保つ方法です。活け締めであれば、エラや尾ビレの付け根に切り込みが残ります。

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#2 切り身の選び方

加熱用の切り身も刺身用のサクも、選び方は同じです。ドリップの有無、血合い、切り口の3箇所を見て選びます。ドリップの有無は、真っ先に確認しましょう。ドリップには水分と栄養素が含まれており、細菌が繁殖するには絶好の環境です。

魚の血合いは傷みやすく、とくにブリ系は色変わりが早く短時間で血なまぐさくなります。新鮮ないなだの血合いは、キレイなピンク色です。半日~1日ほどで鮮度が落ち黒ずんできます。切り口の角がたっているものは、切って間もない証拠です。時間がたつと、切り口の端がダラっとしてきます。

#3 鮮度以外の選び方

鮮度以外で見るべきポイントは、脂の乗り具合です。丸ごと1尾の場合は、全体的に丸いものを選びましょう。お腹だけでなく、背中までしっかり膨らんでいることが重要です。

切り身の場合は、背と腹のどちらを選ぶかで脂の量や身質が変わります。背側は脂分が少なく歯ごたえがあり、腹側は脂の乗りが抜群です。天然と養殖でも身質や脂の乗りが異なります。天然物のほうが、いなだ特有の酸味と鉄分の味が強いのが特徴です。

・皮が青や黒銀色‥背側
・皮が白や白銀色‥腹側
・天然‥脂控えめで身に弾力がある
・養殖‥全体に脂がまわり身がやわらかい

旬のいなだは鮮度が命

いなだの種類や旬の時期がわかりましたね。いなだはブリの子供ですから、ブリと同じスズキ目アジ科ブリ属です。同類魚にはカンパチとヒラマサがあり「ブリ御三家」と呼ばれています。いなだは7~11月ごろまで流通しますが、もっとも水揚げ量が多いのは秋です。

新鮮ないなだは目や血合いを見ればすぐにわかります。直接触れるなら、腹の弾力とエラの色も確認しましょう。丸ごと1尾の場合は、活け締めであるかも重要です。

ブリに成長するまでほぼ通年出まわりますが、いなだの時期にしか味わえない味があります。期間限定の味わいを楽しんでみてください。

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家庭科

いなだと同じ種類の魚は?旬の時期や選び方も現役料理人が詳しくわかりやすく解説

ブリ御三家という言葉を知っているか?いなだの成魚であるブリ、カンパチ、ヒラマサの3種類をまとめた呼び名です。見た目も味もよく似ているが、別の魚で違いもある。この記事はいなだの種類や旬の時期について、現役料理人のテルトラと解説していきます。新鮮ないなだの選び方も紹介しているので、ぜひ参考にしてくれ。

ライター/テルトラ

経験15年の現役料理人。和食を中心にさまざまな業態で多くの食材にふれてきた。いなだの仕入れや食べ方にも精通している。

いなだと同じ種類の魚たち「ブリ御三家」

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いなだとブリは同じ魚で、ともに分類学上はスズキ目アジ科ブリ属です。同じ種類の魚にカンパチとヒラマサがあり、3種類を総じて「ブリ御三家」と呼びます。

【ブリ御三家】
・ブリ
・カンパチ
・ヒラマサ

流通量が少ない順に、ブリ<カンパチ<ヒラマサと市場価値が高くなります。冬が旬のブリと夏が旬のヒラマサの間に、カンパチが旬を迎えるといった流れです。

1.冬の風物詩ブリ

いなだの成魚で、関東でも関西でも呼び方はブリです。ブリ御三家の中でもっとも丸みがあり、頭を落とした切り口は楕円形になります。ブリは漢字で「鰤」と書き、師走の時期にあたる真冬が旬です。回遊魚のため生息地は広範囲で、北海道南部から九州全域まで。春から秋にかけて餌を求め北海道北部やカムチャッカ半島まで北上し、水温が下がると産卵期に備え南下します。

12~2月に獲れるブリは「寒ブリ」と呼ばれ、冬の風物詩として人気です。主に日本海側で多く漁獲され、太平洋側では2~3ヶ月ほど漁期がずれます。旬の寒ブリは、脂がたっぷり乗って濃厚な味わいです。

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