今回のテーマは"movie"と"video"の違いについてです。
ソーシャルメディアの発達で海外のヤツとも気軽にやり取りできるようになって久しいが、繋がりを生み出すメディアとして動画の存在は大きい。
この動画を表現する英単語として、"movie"や"video"を思い浮かべるヤツは少なくないはず。ですが、いざどちらが正しいのかと聞かれるといまいちわかりにくいこともあるでしょう。

今回はそんな悩みを解決すべく、言語オタクを自称するアオイと一緒に解説していきます。

ライター/Aoi93

言語オタクを自称する駆け出しライター。言語の中でも好きなのは発音で、辞書や文法書を発音記号目当てに購入することも。家には積読の洋書や文法書がいくつかあるが、最近お気に入りの発音はフランス語の鼻母音。

"movie"と"video"の語源を徹底解剖!

image by iStockphoto

日本語でも英語でも、「何となく意味は知っているけど、実際使い分けようと思うと疑問符がつく」という言葉はあるはずです。今回題材としている"movie"と"video"も、なんとなく「動画」「映画」「ビデオ」といった訳は思いつくものの、意味を正確に答えるのが難しい言葉として数えられるものだと思います。

本項では、意味を正確に捉える第一歩としてこの2つの言葉の語源に迫っていきましょう!そもそも、"movie"と"video"はどこから来ている言葉なのでしょうか。早速、我が家で眠っている辞書や文法書を引っ張ってきてチェックしてみました。

"movie"の語源は「動く絵」

"movie"を手元の辞書で引いてみると、次のような記述があります。

movie
語源は「動く絵(moving picture)」

出典:『ウィズダム英和辞典 第3版(2014、井上・赤野編)』三省堂

"movie"の語源は意外にもわかりやすく、イメージがクリアになるような印象さえあります。また、「動く絵」という語源からは「動画」を思い浮かべやすいですが、主にアメリカでは「映画」をあらわす言葉として定着しているようです。

語源となっている言葉のうち"picture"は絵のほかに写真とも翻訳ができるので、まさに「動く絵」「動く写真」である映画を示すことが多いのも納得できます。

"video"の語源は「見る」

一方の"video"の語源は一体どういう言葉なのでしょうか。こちらは辞書のほかに、とある言語の文法書も調べてみました。

\次のページで「"film"や"cinema"との違いは?」を解説!/

video
ラテン;(私が)見る(vidi)

出典:有田『初級ラテン語入門(1964)』白水社、『ウィズダム英和辞典 第3版(2014、井上・赤野編)』三省堂

"video"の語源はなんとラテン語。こちらは"movie"と比較した時少しわかりづらく感じますが、綴りを見ると語源であることに納得はいきます。"video"は「動画」として使われることもありますが、「記録媒体」という訳もあることは意外に思われるのではないでしょうか。

語源の"vidi"がどのような使われ方をしていたのか正確な部分は不明ですが、少なくとも「後から見る」ということになると何かしらの「記録」が必要になるのは間違いありません。「見る」が転じて「記録」、記録としての「動画」という言語の意味の変遷が感じられますね。

"film"や"cinema"との違いは?

"movie"が映画を示す言葉として定着しているのは既に説明しましたが、似たような意味を持つ単語である"film"や"cinema"も合わせてチェックしましょう。

"film"も"cinema"も主にイギリスで使われる単語で、筆者の経験上では第二言語として英語を修得した人がよく使う印象を持っています(あくまで印象論ではありますが)。"film"はイギリスでは映画を指すほか、アメリカでは報道などがメインの娯楽性の低い映画を言い表すときにこちらが使われるんだとか。

また、可算名詞(複数形にできる名詞)としての"film"は「映画」ですが、不可算名詞(複数形にできない名詞)として使う場合は「記録映画(映像)」として翻訳されるという違いもあるようです。"cinema"を辞書で引いた際は、「映画館」という訳が一番上に来ています。よりポピュラーな意味としては映画館が強いのかもしれませんね。

"movie"と"video"の用例を辞書でチェック!

ここまで、"movie"と"video"の語源や類語をもとに2つの単語の違いを確認しました。では、実際にどう使われているのか、辞書で示される用例をチェックしていきましょう。

\次のページで「「映画」と「記録」という2つのキーワード」を解説!/

「映画」と「記録」という2つのキーワード

"movie"と"video"は語源と現在の意味から、読み解く上で重要なキーワードがあったかと思います。それは、「映画」と「記録」です。この2つのキーワードに着目し、用例を見ていきましょう。

手の届く範囲の広い"movie"

"movie"は主にアメリカで、映画全般を指す言葉として広く使われています。"the movies"と表記するだけで、芸術・産業としての「映画界」という意味にもなるほか、「映画の/映画界の」と形容詞的に使われることもしばしばあるようです。

イギリスでは"film"や"cinema"も使われていますが、アメリカでは"movie"単体で広範囲をカバーできるのでかなり便利な言葉といえるでしょう。

the movies →映画界
movie rating→観客指定(年齢制限のこと)
movie goer→よく映画に行く人(米)

She found the jobs in the movies.
―彼女は映画界で仕事を見つけたそうだよ。

出典:『ウィズダム英和辞典 第3版(2014、井上・赤野編)』三省堂

辞書からわかる"video"の意外な一面

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ビデオデッキを、テープが擦り切れるまで見たという人もいることと思います。DVDやBlu-rayに取って代わられた現代日本で「ビデオ」は死語のような扱いを受けたりもしますが、英語における"video"も同じなのでしょうか。

"video"を読むうえで重要なキーワードは「記録」ですが、記録できるものや語源の「見る」に値する、つまりは視覚情報に訴えてくる媒体の多くに"video"がつきます。日本で言う「テレビゲーム」は英訳すると"video game"で、英語でゲームのことを話すと必ずと言っていいほど使われる表現です。

おうち時間を楽しむのに欠かせない"VOD(動画配信サービス)"も、正式名称は"video on demand"というので、英語における"video"はまだまだ現役だといえますね。

video game→テレビゲーム
video arcade→ゲームセンター
a video drama→テレビドラマ

出典:『ウィズダム英和辞典 第3版(2014、井上・赤野編)』三省堂

\次のページで「「動画」を表現するにはどちらが正解?」を解説!/

「動画」を表現するにはどちらが正解?

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英語で「動画」を表現する際、"movie"と"video"のどちらが適切なのか迷う方はいるでしょう。

大きな括りでは「どちらも正解」ともいえますが、チョイスの優先度として上位にくるのは"video"かと思います。ここまでの説明から、多くの人が想像する「動画」の要素をより多く含んでいるのは"video"のほうだといえるでしょう。

しかし、言葉の使い方は時代と共に移り変わるのもまた事実ですので、あくまで優先度として上に来るというだけで、状況によっては"movie"で伝わることもあるという認識がベターです。日本語にもあるように、英語でも「あえてその言葉をチョイスする」という瞬間がありますので、ぜひ色々な文献に触れてみて気になる語句を辞書で調べてみてくださいね。

"movie"と"video"を使い分けて楽しく表現しよう

今回は、比較的目にすることの多い"movie"と"video"の違いに着目してみました。同じ言葉や似たような意味を持つ言葉でも、語源などを深掘りしていくことでそれぞれが担ってきた役割の違いがわかり、これからの言葉選びに役に立つことと思います。

また、実際に耳で聴いたり、発音してみることで言葉を感じることも違いを知る上で重要です。皆さんも、気になった言葉はぜひ辞書で調べて、目で見て、発音を耳で聴いてたっぷり味わってみてくださいね。

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言葉の意味雑学

3分でわかる”movie”と”video”の違い!”film”や”cinema”との違い・語源・用例も言語オタクがわかりやすく解説



今回のテーマは”movie”と”video”の違いについてです。
ソーシャルメディアの発達で海外のヤツとも気軽にやり取りできるようになって久しいが、繋がりを生み出すメディアとして動画の存在は大きい。
この動画を表現する英単語として、”movie”や”video”を思い浮かべるヤツは少なくないはず。ですが、いざどちらが正しいのかと聞かれるといまいちわかりにくいこともあるでしょう。

今回はそんな悩みを解決すべく、言語オタクを自称するアオイと一緒に解説していきます。

ライター/Aoi93

言語オタクを自称する駆け出しライター。言語の中でも好きなのは発音で、辞書や文法書を発音記号目当てに購入することも。家には積読の洋書や文法書がいくつかあるが、最近お気に入りの発音はフランス語の鼻母音。

“movie”と”video”の語源を徹底解剖!

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日本語でも英語でも、「何となく意味は知っているけど、実際使い分けようと思うと疑問符がつく」という言葉はあるはずです。今回題材としている”movie”と”video”も、なんとなく「動画」「映画」「ビデオ」といった訳は思いつくものの、意味を正確に答えるのが難しい言葉として数えられるものだと思います。

本項では、意味を正確に捉える第一歩としてこの2つの言葉の語源に迫っていきましょう!そもそも、”movie”と”video”はどこから来ている言葉なのでしょうか。早速、我が家で眠っている辞書や文法書を引っ張ってきてチェックしてみました。

“movie”の語源は「動く絵」

“movie”を手元の辞書で引いてみると、次のような記述があります。

movie
語源は「動く絵(moving picture)」

出典:『ウィズダム英和辞典 第3版(2014、井上・赤野編)』三省堂

“movie”の語源は意外にもわかりやすく、イメージがクリアになるような印象さえあります。また、「動く絵」という語源からは「動画」を思い浮かべやすいですが、主にアメリカでは「映画」をあらわす言葉として定着しているようです。

語源となっている言葉のうち”picture”は絵のほかに写真とも翻訳ができるので、まさに「動く絵」「動く写真」である映画を示すことが多いのも納得できます。

“video”の語源は「見る」

一方の”video”の語源は一体どういう言葉なのでしょうか。こちらは辞書のほかに、とある言語の文法書も調べてみました。

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