この記事ではバッテラと鯖寿司の違いについてみていきます。どちらも鯖を使った寿司という点では同じで古くからある定番の寿司なのですが、誕生した場所や作り方が少しばかり違う別の料理のようです。バッテラと鯖寿司の違いについてママライターうめグミと一緒に解説していきます。

ライター/うめグミ

料理は食べるのも作るのも大好きなママライター。京都で20年暮らした経験から関西の食文化に馴染みあり。身近なテーマをわかりやすく解説します。

バッテラと鯖寿司の違いとは?

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バッテラ鯖寿司はどちらも鯖を使った寿司で、関西ではスーパーでも買える身近な寿司のひとつです。材料がほぼ同じであるため見た目は似ていますが、その形、作り方、発祥した場所が異なる別の食べ物なんですよ。バッテラと鯖寿司の違いについて、誕生した背景も含めてわかりやすく解説していきます。

バッテラ:スライスした鯖を使った押し寿司

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バッテラは、酢飯の上に薄くスライスした酢締めの鯖の身と、甘酢で煮た白板(しらいた)昆布を重ねて型抜きした押し寿司です。白板昆布とは、鯖の上に乗っているシート状の昆布のことで、別名バッテラ昆布とも呼ばれています。表面を乾きにくくする上、昆布のうま味で鯖がよりおいしくなる効果も。バッテラは鯖寿司に比べると鯖の身が薄く、型抜きして作るため四角い形をしているのが特徴です。

発祥地:大阪

明治24年創業の大阪南船場にある寿司屋「寿司常」(すしつね)で誕生しました。寿司常はバッテラ発祥の店として、観光客や寿司好きに人気の名店です。

名前の由来と歴史

バッテラに元々使われていたのは鯖ではなく「コノシロ」という魚でした。コノシロは成長段階で呼び方が変わる出世魚のひとつで、成長したコハダのことです。大阪湾で大量に獲れていた安くて美味しいコノシロの寿司として誕生したのがはじまりでした。

ではバッテラという名前はどこからきているのでしょうか。実は、方言でも別の名前を省略したものでもなく、語源はポルトガル語だったのです。

コノシロの寿司は元々ふきんで締めて作られていました。手早く作ることができるようにと舟形の木箱に詰めて作ったところ、その形を見た客がポルトガル語で小舟を意味するbateira(バッテーラ)と呼ぶようになり、このようなユニークな名前となりました。

コノシロの値段が上がったため鯖を使用するようになり、舟形より箱型の方が詰めやすいという理由で現在の四角いバッテラの姿になったそうです。

\次のページで「材料と作り方」を解説!/

材料と作り方

バッテラはしめ鯖があれば家庭でも簡単に作れます。材料はしめ鯖と酢飯と昆布のみ。木箱がなくても、長方形タッパーやパウンドケーキの型でも簡単に作れます。今回は簡単に作れるよう、白板昆布の代わりにとろろ昆布で代用しました。

作り方
1.あたたかいごはん400gにすし酢(砂糖大さじ1、塩小さじ2/3、酢大さじ2)を加え切るように混ぜて酢飯を作る。
2.長方形の容器にラップを敷き、しめ鯖の皮目を下に入れる。その上にとろろ昆布を全体に広げ、すし飯を重ね、ラップで包み形を整え30分ほどおいておく。
3.ラップを外し食べやすい大きさに切る。

包丁でカットする時は、包丁にご飯がくっついてぐちゃぐちゃにならないように、包丁を水で濡らしてから切るといいでしょう。切った後も毎回包丁を濡れふきんなどで拭いてあげると最後まできれいにカットできますよ。

白板昆布(しらいたこんぶ)は昆布の種類ではなく、昆布の表面を薄く削ったあとにできる芯の部分を指します。職人による手作業で昆布を削った後でなければ手にすることができないため、大量生産が難しく高価な食材です。手作業で削ったものがおぼろ昆布、プレスした昆布を削ったものがとろろ昆布になります。

鯖寿司:鯖の半身と酢飯をまきすで巻いた寿司

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鯖寿司は、鯖の半身と酢飯を「まきす」で巻いて作るため、丸みとボリュームのあるフォルムが特徴です。最後に昆布で巻き上げ竹の皮で包んだものが伝統的な鯖寿司で、竹の香りが食欲をそそります。

発祥地:京都

鯖寿司が誕生したのは江戸時代。バッテラより100年ほど早く誕生していました。鯖寿司は祭りなどの「ハレの日」を祝う時に家庭で食べられていた歴史深い京料理のひとつです。それを最初に販売した店が京都祇園の寿司屋「いづう」。こちらの店の創業はなんと天保元年(西暦1781年)で、京都には他にも古くから鯖寿司を提供している寿司屋がいくつも存在します。

\次のページで「誕生の歴史」を解説!/

誕生の歴史

海から遠い京都。福井の若狭湾で大量に獲れた新鮮な魚介は京の都へ運ばれ大変重宝されました。特に鯖は鮮度が落ちやすいため、塩や酢で締めたものが流通していました。交通手段のない頃は行商人によって歩いて運ばれていたため、京都に着くまでに1~2日ほどかかったと言われています。そのため、到着する頃にはちょうどいい塩加減で、身が引き締まった美味しい鯖になったそうです。

この若狭湾から京都までのルートは「鯖街道」と呼ばれ、複数ある鯖街道の道中には今でも宿や寿司屋などが多く残っています。

若狭から京都までのルートで運ばれていたものは鯖だけではありません。鯖以外の魚介や、文化や工芸品の行き来もありました。しかし人々はその道を鯖街道と名付けて呼んだのです。鯖が日本人にとって大切な食べ物だったことがわかります。鯖寿司は冷蔵技術が発達した現在でも同じ手法で作られていることから、塩や酢で締める食べ方がいかに優れているかもわかりますね。

材料と作り方

材料はこちらも鯖と酢飯と昆布のみ。鯖寿司は鯖の半身を使用するため、生の鯖を購入し、さばいて塩と酢でしめて作る必要があり家庭向きではありません。鯖寿司は冷凍されたものを通販で購入することができますので、ぜひ気軽に有名店の味を楽しんでみてください。

鯖寿司を巻く時に使われる昆布は、白板昆布のような薄いものから黒々とした分厚い昆布まで様々です。昆布の目的は「鯖にうま味を移すこと」と「鯖の乾燥を防ぐこと」なので外して食べるのが一般的。しかし明確なルールはありませんのでお好みで。私は昆布が大好きなので取り外した後で昆布のコリコリとした食感を楽しみます。

鯖寿司が有名な都道府県

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大阪や京都以外にも全国には美味しい鯖のお寿司がたくさんありますのでいくつかご紹介します。

1.北海道の松前寿司

松前寿司とは松前昆布を使った鯖寿司のことです。松前は松前漬けで有名な北海道南部の地名で、古くから美味しい魚や昆布などの海産物がたくさん獲れる地域でした。中でも江戸時代に船で全国へ広まった昆布は松前昆布と呼ばれ重宝されました。大阪で鯖寿司を巻くのに使われたことがきっかけで、松前産の昆布を使った鯖寿司のことを松前寿司と呼びます。

2.青森八戸のとろ鯖寿司

鯖の中でも脂質21%以上のものを「とろ鯖」と呼び、ブランド化されています。通常の鯖の脂肪分が12%程度といわれているため、その違いは明らかですね。その鯖を使ったとろ鯖寿司が人気で、特に「日本一脂がのっている鯖」として有名な青森の「八戸沖前さば」を使った鯖寿司は絶品です。

\次のページで「3.福井の焼き鯖寿司」を解説!/

3.福井の焼き鯖寿司

しめ鯖ではなく焼き鯖を使った焼き鯖寿司もあります。鯖街道の始発点であり、古くから日常的に鯖が食べられていた地域のひとつ福井県。越前にある食品会社が福井の名物「浜焼き鯖」を使った名物を作りたいと2000年に誕生した新しい鯖寿しです。鯖の浜焼きとは、鯖に太めの竹串を刺して1本丸ごと豪快に焼く手法で、福井だけでなく滋賀や京都でも食べられています。

4.岡山の鯖姿寿司

岡山の郷土料理である鯖姿寿司は、鯖を丸ごと一匹使った鯖の姿寿司です。開いた鯖の背にたっぷりの酢飯を詰め、鯖の身で酢飯を囲むように巻いて作ります。もち米入りの酢飯を使うため粘り気のある食感が特徴です。切り取った鯖の頭と尾が一緒に盛り付けられているため、迫力ある見た目に驚かされます。

鯖の姿寿司は高知県でも食べられおり、もち米は使わず酢飯に柚子酢、しょうが、ごまなどが使われるようです。

バッテラと鯖寿司はどちらも鯖を使った寿司であるが、誕生した場所が違う

鯖寿司は江戸時代に京都で誕生した「ハレの日」を祝う縁起のいい寿司で、バッテラは明治時代に大阪で生まれた手軽に食べられる庶民的な寿司。誕生した場所や作り方が異なる別の食べ物ですが、どちらも鯖をおいしく食べるためのアイデアと工夫にあふれた日本の伝統料理です。

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3分でわかるバッテラと鯖寿司の違い!実はどちらも関西生まれ?鯖寿司が有名な都道府県も雑学好きのママライターがわかりやすく解説

この記事ではバッテラと鯖寿司の違いについてみていきます。どちらも鯖を使った寿司という点では同じで古くからある定番の寿司なのですが、誕生した場所や作り方が少しばかり違う別の料理のようです。バッテラと鯖寿司の違いについてママライターうめグミと一緒に解説していきます。

ライター/うめグミ

料理は食べるのも作るのも大好きなママライター。京都で20年暮らした経験から関西の食文化に馴染みあり。身近なテーマをわかりやすく解説します。

バッテラと鯖寿司の違いとは?

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バッテラ鯖寿司はどちらも鯖を使った寿司で、関西ではスーパーでも買える身近な寿司のひとつです。材料がほぼ同じであるため見た目は似ていますが、その形、作り方、発祥した場所が異なる別の食べ物なんですよ。バッテラと鯖寿司の違いについて、誕生した背景も含めてわかりやすく解説していきます。

バッテラ:スライスした鯖を使った押し寿司

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バッテラは、酢飯の上に薄くスライスした酢締めの鯖の身と、甘酢で煮た白板(しらいた)昆布を重ねて型抜きした押し寿司です。白板昆布とは、鯖の上に乗っているシート状の昆布のことで、別名バッテラ昆布とも呼ばれています。表面を乾きにくくする上、昆布のうま味で鯖がよりおいしくなる効果も。バッテラは鯖寿司に比べると鯖の身が薄く、型抜きして作るため四角い形をしているのが特徴です。

発祥地:大阪

明治24年創業の大阪南船場にある寿司屋「寿司常」(すしつね)で誕生しました。寿司常はバッテラ発祥の店として、観光客や寿司好きに人気の名店です。

名前の由来と歴史

バッテラに元々使われていたのは鯖ではなく「コノシロ」という魚でした。コノシロは成長段階で呼び方が変わる出世魚のひとつで、成長したコハダのことです。大阪湾で大量に獲れていた安くて美味しいコノシロの寿司として誕生したのがはじまりでした。

ではバッテラという名前はどこからきているのでしょうか。実は、方言でも別の名前を省略したものでもなく、語源はポルトガル語だったのです。

コノシロの寿司は元々ふきんで締めて作られていました。手早く作ることができるようにと舟形の木箱に詰めて作ったところ、その形を見た客がポルトガル語で小舟を意味するbateira(バッテーラ)と呼ぶようになり、このようなユニークな名前となりました。

コノシロの値段が上がったため鯖を使用するようになり、舟形より箱型の方が詰めやすいという理由で現在の四角いバッテラの姿になったそうです。

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