今回は「電解精錬」について解説していきます。

電解精錬とは、電気分解の力を利用して金属から不純物を取り除く方法のことです。古代から様々な精錬方法が存在したが、電解精錬は最も新しい手法で不純物除去の精度が非常に高くなっているぞ。現在は、金・銀・銅・アルミニウムといった金属は、この方法を用いて製造されている。ぜひこの記事を読んで、電解精錬についての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

電解精錬について詳しく学ぼう!

皆さんは「電解精錬」という言葉をご存知でしょうか?電解精錬は金属材料を製造する上で不可欠な技術です。金属材料は至る所で使用されているので、電解精錬は私たちの豊かな生活を支える重要な技術と言うこともできますよね。

今回の記事では、電解精錬がどのような技術であるのかを深堀りしていきます。他の精錬技術との違いや化学反応の仕組みなどに注目しながら記事を読み進めてみてくださいね。それでは早速解説をはじめていきます。

精錬技術とは一体何なのか?

電解精錬について学ぶ前に、そもそも精錬がどのような技術であるのかを知っておく必要があります。精錬とは、不純物が多く含まれる金属から不純物を除去し、純度の高い金属を取り出す技術のことを指しますよ。

精錬技術には様々な種類があり、電解精錬以外にも、乾式精錬湿式精錬などが存在しています。取り出したい金属のイオン化傾向やコスト面などを考慮して、精錬技術の使い分けがなされていますよ。

電解精錬とは?

電解精錬とは?

image by Study-Z編集部

電解精錬は、電気分解のメカニズムを利用した金属精錬法のことを指します。陽極板に不純物を多く含む金属を用いることで、陰極側に純度の高い金属を析出させることができるのです。また、電解液には取り出したい金属のイオン化物を含めることが多くなっていますよ。

電解精錬技術はイオン化傾向が比較的小さい金属に有効な精錬手法です。イオン化傾向が大きすぎる金属は、一度電解液に溶出すると再び析出できなくなるからですよ。以上が電解精錬技術についての説明になります。

電解精錬のメリットとデメリット

続いて、電解精錬のメリットとデメリットについて考えてみましょう。電解精錬の最大のメリットはイオン化傾向が小さく安定している金属の純度を高められることにあります。電解精錬以外の技術では、金・銀・銅などの金属を精錬することは困難です。

一方で、電解精錬にはデメリットがあります。それは電解精錬に用いる電力が非常に多いことです。このことは電解精錬のために大量のエネルギーを消費することを意味しますよ。省エネの重要性が高まっている現代では、電解精錬の肩身は狭くなっています。

様々な電解精錬の技術を知ろう!

記事の前半では、電解精錬の概要について述べました。しかしながら、抽象的な説明が多かったので、イメージがわきにくい方もおられるかもしれません。そこで、以下のチャプターでは金・銀・銅・アルミニウムの電解精錬技術について解説することにしました

このような具体例を知ることで、電解精錬の理解がをさらに深めることができますよ。特に、それぞれの金属で反応に違いがあるのかという点に注目してみましょう。ぜひ最後まで記事を読んでみてくださいね。

1.金の電解精錬

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金の電解精錬技術は、純度99.999%を超える最高純度金の製造に用いられています。この手法はウォールウィル法と呼ばれるもので、1863年にチャールズ・ワットという人物が発見しました。金の電解精錬では、陽極に純度95%以上の金インゴット、陰極に最高純度の金またはステンレスを用います。また、電解液には塩化金酸水溶液を用いていますよ。

最高純度金は、主に資産保有を目的とした製品に加工されて出荷されているのです。また、工業的な分野では、金メッキを行うためにウォールウィル法が利用されえています。金メッキには電気接点を劣化から守る作用があることが知られていますよ。

\次のページで「2.銀の電解精錬」を解説!/

2.銀の電解精錬

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銀の電解精錬技術は1884年にメービアスによって発見されました。この技術のことをメービアス式銀電解法と呼びますよ。銀の電解精錬では、陽極に純度の低い銀、陰極に高純度の銀を用います。そして、電解液には硝酸銀などが使用されるのです。

19世紀後半には、メービアス式銀電解法が世界的に広がり、それがきっかけに銀の価値が急激に下がりました。これにより、貨幣の価値を銀で担保する銀本位制の維持ができなくなり、世界的に大不況に繋がったと考えられているのです。

3.銅の電解精錬

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銅の電解精錬技術は、1847年にジョージ・リチャーズ・エルキントンが確立させた技術です。金属の電解精錬の中で、銅の電解精錬が最も古いものになっていますよ。銅の電解精錬では、陽極に純度の低い粗銅を用い、陰極に高純度の銅を生成させます。

銅を電解精錬することで、純度99.99%以上の銅を作ることができるのです。純度の高い銅は貨幣や電線に用いられており、需要がなくなることはありません。このことから、銅の電解精錬精錬がいかに重要な技術であるかがわかりますよね。

4.アルミニウムの電解精錬

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アルミニウムの製造は、ホール・エルー法という融解塩電解によって行われています。融解塩電解は広義に解釈すると電解精錬の一種です。以下では、ホール・エルー法について詳しく述べます。

ホール・エルー法では、電解液に高温で融解させた氷晶石とアルミナの混合物、陽極と陰極に炭素製電極を使用しますよ。アルミナは酸化アルミニウムのことであり、電気分解によって還元反応が生じて、単体のアルミニウムが得られるという仕組みです。

\次のページで「電解精錬について学ぶ意義」を解説!/

電解精錬について学ぶ意義

私たちの生活に欠かせない存在になっている金属ですが、それらの多くは精錬というプロセスを経て製造されています。中でも電解精錬の技術は、金・銀・銅・アルミニウムといった安定度の高い金属を製造する上で必ず必要になってきますよね。

身近な金属材料がどのように作られているのかを意識することは普段ではほとんどないでしょう。ですから、ぜひこの機会に金属製造法の1つである電解精錬はについて学んでみてくださいね。

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化学原子・元素無機物質物質の状態・構成・変化理科生活と物質

3分で簡単にわかる電解精錬!他の精錬法との違いは?理系学生ライターがわかりやすく解説!

今回は「電解精錬」について解説していきます。

電解精錬とは、電気分解の力を利用して金属から不純物を取り除く方法のことです。古代から様々な精錬方法が存在したが、電解精錬は最も新しい手法で不純物除去の精度が非常に高くなっているぞ。現在は、金・銀・銅・アルミニウムといった金属は、この方法を用いて製造されている。ぜひこの記事を読んで、電解精錬についての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

電解精錬について詳しく学ぼう!

皆さんは「電解精錬」という言葉をご存知でしょうか?電解精錬は金属材料を製造する上で不可欠な技術です。金属材料は至る所で使用されているので、電解精錬は私たちの豊かな生活を支える重要な技術と言うこともできますよね。

今回の記事では、電解精錬がどのような技術であるのかを深堀りしていきます。他の精錬技術との違いや化学反応の仕組みなどに注目しながら記事を読み進めてみてくださいね。それでは早速解説をはじめていきます。

精錬技術とは一体何なのか?

電解精錬について学ぶ前に、そもそも精錬がどのような技術であるのかを知っておく必要があります。精錬とは、不純物が多く含まれる金属から不純物を除去し、純度の高い金属を取り出す技術のことを指しますよ。

精錬技術には様々な種類があり、電解精錬以外にも、乾式精錬湿式精錬などが存在しています。取り出したい金属のイオン化傾向やコスト面などを考慮して、精錬技術の使い分けがなされていますよ。

電解精錬とは?

電解精錬とは?

image by Study-Z編集部

電解精錬は、電気分解のメカニズムを利用した金属精錬法のことを指します。陽極板に不純物を多く含む金属を用いることで、陰極側に純度の高い金属を析出させることができるのです。また、電解液には取り出したい金属のイオン化物を含めることが多くなっていますよ。

電解精錬技術はイオン化傾向が比較的小さい金属に有効な精錬手法です。イオン化傾向が大きすぎる金属は、一度電解液に溶出すると再び析出できなくなるからですよ。以上が電解精錬技術についての説明になります。

電解精錬のメリットとデメリット

続いて、電解精錬のメリットとデメリットについて考えてみましょう。電解精錬の最大のメリットはイオン化傾向が小さく安定している金属の純度を高められることにあります。電解精錬以外の技術では、金・銀・銅などの金属を精錬することは困難です。

一方で、電解精錬にはデメリットがあります。それは電解精錬に用いる電力が非常に多いことです。このことは電解精錬のために大量のエネルギーを消費することを意味しますよ。省エネの重要性が高まっている現代では、電解精錬の肩身は狭くなっています。

様々な電解精錬の技術を知ろう!

記事の前半では、電解精錬の概要について述べました。しかしながら、抽象的な説明が多かったので、イメージがわきにくい方もおられるかもしれません。そこで、以下のチャプターでは金・銀・銅・アルミニウムの電解精錬技術について解説することにしました

このような具体例を知ることで、電解精錬の理解がをさらに深めることができますよ。特に、それぞれの金属で反応に違いがあるのかという点に注目してみましょう。ぜひ最後まで記事を読んでみてくださいね。

1.金の電解精錬

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金の電解精錬技術は、純度99.999%を超える最高純度金の製造に用いられています。この手法はウォールウィル法と呼ばれるもので、1863年にチャールズ・ワットという人物が発見しました。金の電解精錬では、陽極に純度95%以上の金インゴット、陰極に最高純度の金またはステンレスを用います。また、電解液には塩化金酸水溶液を用いていますよ。

最高純度金は、主に資産保有を目的とした製品に加工されて出荷されているのです。また、工業的な分野では、金メッキを行うためにウォールウィル法が利用されえています。金メッキには電気接点を劣化から守る作用があることが知られていますよ。

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