今回は「弾性エネルギー」について解説していきます。

弾性エネルギーとは、ばねやゴムなどの弾性をもつ物体に蓄積されるエネルギーのことです。この概念には、力学を学ぶと必ず出会うでしょう。弾性エネルギーという言葉は中学校や高校の理科の授業でも登場する有名なものだから、知っておいて損をすることはないはずです。ぜひこの機会に弾性エネルギーについて学んでみてくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

まずは弾性力について理解を深めよう!

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今回の記事では、弾性エネルギーについて詳しく説明していきます。ですが、弾性エネルギーについて理解を深めるためには、そのエネルギーの源になっている弾性力について知識が不可欠になるのです。

そこで、記事の前半部分では弾性力について述べることにしました。中学校で学習するような基本的な内容から解説をはじめるので、力学が苦手な方もぜひ記事を読んでみてくださいね。それでは早速、解説をはじめていきます。

弾性力とは?

弾性力を一言で表すと、「変形させると元の形に戻ろうとする力」と言えます。例えば、ばねを変形させたときに作用する力は弾性力です。

ばねを指で押し縮めると、それに反発するように押し返す力が作用します。この押し返す力が弾性力です。また、ばねを左右に指で引っ張ると、内側に向けて縮もうとする力が作用します。この力も弾性力ですよ。

では、弾性力に該当しない力にはどのようなものがあるでしょうか。重力は弾性力に含まれません。重力は物体の変形度合いにかかわらず、常に同じ大きさで作用するからです。また、粘土のように一度変形させたら、もとの形にひとりでに戻らないような物体においても弾性力は作用しません。以上のような判断基準によって、弾性力と他の力を区別することができます。

弾性力の式

弾性力の規則性は「フックの法則」で表現されます。弾性力の式と聞けば、フックの法則を連想できるようにしておきましょう。弾性力をFばね係数をkばねの伸びをxとすると、フックの法則はF=kxで表されますよ。

この式から、ばねを伸ばせば伸ばすほど、弾性力が大きくなることがわかります。また、ばね係数が大きいほど、弾性力が大きくなることもわかりますよね。このことは、ばね係数がばねの強さを表す指標になることを意味しますよ。

また、ばねを押し縮める場合にはxは負の値になり、そのときFも負の値になるのです。このことから、ばねを押し縮めたときと引っ張ったときで弾性力の作用する方向が逆になることが読み取れます。

\次のページで「弾性力は身近な現象?」を解説!/

弾性力は身近な現象?

ここまで、弾性力の例としてばねに作用する力を挙げてきましたが、ばね以外にも弾性力が作用する身近なものは多く存在しますよ。例えば、ゴムには弾性力があります。輪ゴムを引っ張ると縮もうとする現象、ゴム製のスーパーボールがよく跳ねる現象、ゴム手袋に穴が開きにくいことなどはいずれも弾性力によって説明がつくのです。

また、ギターや琴の弦が振動して、音を出している現象も弾性力と深く関係があります。弦の振動が弾性力によって説明がつくだけでなく、空気中で音が伝わる現象も弾性力によって説明がつくのです。以上のようなことを知ると、弾性力がいかに身近な現象であるかが理解できますよね。

弾性エネルギーについて学ぼう!

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記事の前半で弾性力についての理解を深めたところで、ここからは本題である「弾性エネルギー」についてに深堀りしていきます。

本チャプターでは、弾性エネルギーとは一体何なのかという説明からはじめて、弾性エネルギーの式それの導出方法についても述べますね。また、弾性エネルギーと力学的エネルギーの関係性についても述べます。

弾性エネルギーを理解する上で重要なことは、弾性力の理論からどのようにして弾性エネルギーの概念が導かれるかを理解することです。公式の丸暗記で済ませてしまう方も少なくはないかもしれませんが、今回はぜひ弾性エネルギーのメカニズムについても勉強してみてくださいね

弾性エネルギーとは?

弾性エネルギーとは?

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ばねを指で引っ張るとき、指はばねに対して仕事をしますよ。この仕事によるエネルギーはばねに蓄積されていきます。このエネルギーがまさに弾性エネルギーなのです。つまり、弾性エネルギーの大きさは、ばねに対する累積仕事量に等しくなります

また、弾性エネルギーが蓄積されるのは、ばねに限られません。弾性エネルギーを一般化すると、「弾性体の変形に伴うエネルギー」であると言えます。

\次のページで「弾性エネルギーの式」を解説!/

弾性エネルギーの式

弾性エネルギーの式

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次に弾性エネルギーの大きさを定式化する方法について考えましょう。弾性体が自然長のときの弾性エネルギーを0とすると、伸びxにおける弾性エネルギーUの大きさは、U=(1/2)kx2で求められます。ここで、kはバネ定数です。

この式から、弾性エネルギーの大きさは、伸びの2乗に比例することがわかりますね。また、弾性エネルギーの大きさは縮む場合と伸びる場合で同じ大きさになることも読み取れますよ。

弾性エネルギーの導出

弾性エネルギーの導出

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先ほど説明したように、弾性エネルギーの大きさは弾性体を伸ばすときの仕事量に等しいことを述べました。仕事量は、力の大きさと変位量が同じ向きであるとき、両者の積で表されます。弾性体を伸ばす場面では、この条件が当てはまりますよ。

弾性体を伸ばすとき、変位量xに対して力の大きさFはF=kxで与えられます。このとき、仕事量は上に示した図における緑部分の面積に等しくなるのです。ゆえに、弾性エネルギーの大きさUは、U=(1/2)kx2となります。

弾性エネルギーと力学的エネルギーの関係性

最後に、弾性エネルギーと力学的エネルギーの関係性について述べます。弾性エネルギーは、位置エネルギーなどと同じようにポテンシャルエネルギーに分類されますよ。このことは、弾性エネルギーも力学的エネルギーに分類され、力学的エネルギー保存の法則が適応可能なことを表すのです

したがって、ばねに接続された物体の速度などを知りたい場合に、力学的エネルギー保存の法則を用いて計算することでその値を簡単に知ることができます。この点は、弾性エネルギーについて学ぶ際に盲点になりやすいので、注意が必要です

\次のページで「弾性エネルギーについて学ぶ意義」を解説!/

弾性エネルギーについて学ぶ意義

この記事では、弾性エネルギーが生じるメカニズムを基礎から丁寧に説明しました。テスト勉強などでは、弾性エネルギーの公式を丸暗記することで乗り切っている方も多いかもしれませんが、一度この記事を読んで理屈を説明できるようになってみてください。

物理学という学問はメカニズムを理解すると点と点がつながるようになります。このような状況が頭の中に出来上がれば、一度覚えたことを忘れることはありません。ぜひ、この機会に弾性エネルギーの本質的な部分を学んでみてくださいね。

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古典力学物理物理学・力学理科

ばねに蓄えられる弾性エネルギーとは?弾性力との関係がある?現役理系学生ライターが5分で徹底わかりやすく解説!

弾性力は身近な現象?

ここまで、弾性力の例としてばねに作用する力を挙げてきましたが、ばね以外にも弾性力が作用する身近なものは多く存在しますよ。例えば、ゴムには弾性力があります。輪ゴムを引っ張ると縮もうとする現象、ゴム製のスーパーボールがよく跳ねる現象、ゴム手袋に穴が開きにくいことなどはいずれも弾性力によって説明がつくのです。

また、ギターや琴の弦が振動して、音を出している現象も弾性力と深く関係があります。弦の振動が弾性力によって説明がつくだけでなく、空気中で音が伝わる現象も弾性力によって説明がつくのです。以上のようなことを知ると、弾性力がいかに身近な現象であるかが理解できますよね。

弾性エネルギーについて学ぼう!

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記事の前半で弾性力についての理解を深めたところで、ここからは本題である「弾性エネルギー」についてに深堀りしていきます。

本チャプターでは、弾性エネルギーとは一体何なのかという説明からはじめて、弾性エネルギーの式それの導出方法についても述べますね。また、弾性エネルギーと力学的エネルギーの関係性についても述べます。

弾性エネルギーを理解する上で重要なことは、弾性力の理論からどのようにして弾性エネルギーの概念が導かれるかを理解することです。公式の丸暗記で済ませてしまう方も少なくはないかもしれませんが、今回はぜひ弾性エネルギーのメカニズムについても勉強してみてくださいね

弾性エネルギーとは?

弾性エネルギーとは?

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ばねを指で引っ張るとき、指はばねに対して仕事をしますよ。この仕事によるエネルギーはばねに蓄積されていきます。このエネルギーがまさに弾性エネルギーなのです。つまり、弾性エネルギーの大きさは、ばねに対する累積仕事量に等しくなります

また、弾性エネルギーが蓄積されるのは、ばねに限られません。弾性エネルギーを一般化すると、「弾性体の変形に伴うエネルギー」であると言えます。

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