今回の記事では独壇場と独擅場の違いについてみていきます。2つともよく似た字が使われているが、両方とも正しく読めるでしょうか。独壇場のほうはともかく、独擅場は読めないし意味もわからないという人も多いかもしれませんね。もともとは人の振る舞いについて表した言葉ですが、時代が下るにつれて変化してきたようです。今回はこんな2つの熟語について文学部卒のライター海辺のつばくろと一緒に解説していきます。

ライター/海辺のつばくろ

何となくよく似た熟語のちょっとした違いについて気になって調べてみた文学部卒ライター。

独壇場と独擅場の読み方は?

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独壇場の読みは「どくだんじょう」、一方で独擅場は「どくせんじょう」です。「壇」と「擅」は漢字の部首が「土」(つちへん)か「扌」(てへん)という違いがあり、よく似た字ですね。独壇場のほうが見かける機会が多いのではないでしょうか。

独壇場の意味

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独壇場の意味はひとり舞台ということ。自分が思うままに振る舞うことといった意味合いですね。しかし、気になるのは、「擅」を「壇」と間違えたところからできた言葉だというところです。つまり、本来は「独擅場」と表記されているのが、のちに「独壇場」に変化して現在に至っているということになりますね。

・独壇場「どくだんじょう」
名詞。「独擅場」(どくせんじょう)の「擅」を「壇」に誤ったところから、「ひとり舞台」の意味にひかれてできた語。=独擅場(どくせんじょう)

出典:コトバンク 『精選版 日本国語大辞典』「独壇場」の解説

・「擅」を「壇」と書き誤って生じた語 「独擅場」に同じ

出典:コトバンク 『小学館 デジタル大辞泉』

「壇」の字義

「壇」は祭壇や仏壇のように、神仏を奉るように盛り上げて作った場所、花壇やひな壇のように、他よりも高く作った場所などを指します。そのようなところから、舞台と関連する言葉を連想させたのかもしれません。

\次のページで「独擅場の意味」を解説!/

独擅場の意味

「独擅場」の意味は、ある人だけが思うままに振る舞い、他の人が真似できない場所や場面ひとり舞台ということです。わがままに振る舞うことに加えてその道の達人であること、その人のみが素晴らしい出来で他の人が追いかけられないくらいであることをいうイメージですね。

「独擅場」(どくせんじょう)
その人だけが思いのままにふるまうことができ、他人の追随を許さない場所・場面。ひとり舞台。
※ 補注 「擅」を「壇」に誤り、「ひとり舞台」の意味にひかれて「どくだんじょう(独壇場)」という語が生じた。

出典:コトバンク 『精選版 日本国語大辞典』「独擅場」の解説

「擅」の字義

「擅」の意味は、ほしいままにすること。独り占めにしたり、自分で勝手に気ままに振る舞うようなことを表しています。

現代は独壇場が一般的

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現代では正解ではないほうの「独壇場」(どくだんじょう)という表現と読み方が広がり、公の場でも使用を認められています。辞書などでは「独擅場」(どくせんじょう)を正しい表記や読みとして認めながらも、「独壇場」を使うのが一般的とされていますね。なぜ、言葉が変化したのでしょうか。

1.いつから独壇場に変化したか

明治時代に販売された国語辞典には「独擅場」しか見当たらないということ。しかし、昭和10年代初めに発行された『大辞典』(平凡社)には、独擅場の項目に「独壇場はこの誤り」と記載がありました。昭和10年代の後半にもなると、「独壇場」の見出しが作られ、「独擅場の訛った語」として表記される例が目立つように。昭和10年代の間に独壇場が急速に全国的に定着してきたと考えられます。

今日では、誤記や誤読であっても全国の人に定着している「独壇場」の方を使うようになりました。

\次のページで「2.誤読や誤記が広まった理由」を解説!/

2.誤読や誤記が広まった理由

誤読や誤記が広まった理由は、部首の違いによるだけで漢字のつくりが似ていたところや、辞書にあるように「ひとり舞台」というところから「壇」という字を連想させたという説明が当てはまるようです。

また、「壇」は常用漢字で学校などで覚える機会のある漢字ですね。しかし、「擅」は漢字の種別として分類されず、漢字検定でも1級で出題されるマニアックな漢字。一般的に見られるものではありません。そのため、「独壇場」のほうに取って代わられることになったと考えられます。

今日の辞書では「独壇場」(どくだんじょう)の見出しが出ているものが多いです。マスコミなどの用語の手引書にも「独擅場」は「ひとり舞台」「独壇場」に書き換えるように指示されていることも。必ずしも「独擅場」は間違いではないけれども、現代では「独壇場」を使うほうをおすすめされます。

3.独壇場の使い方

独壇場の使い方の例をあげます。

・ファッションに関する記事なら、彼女の独壇場だよ。自分にまかせてほしいというだけあるね。
・結婚式は花嫁の独壇場だよ。女性に花を持たせよう。
・イベントの進行はAさんの独壇場ですね。仕事の段取りがうまい。

本来は「独擅場」だが、誤読や誤記により「独壇場」の使用が一般化

本来は「独擅場」。しかし、「擅」の字はあまり使われません。意味の「ひとり舞台」から連想されるのは、字が似ている「壇」で常用漢字にも含まれます。そのため、徐々に「独壇場」に読み方や記載が変化していきました。決して「独擅場」は間違いではないのですが、現代では広く認められている「独壇場」を使うほうが望ましいです。

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3分で分かる独壇場と独擅場の違い!誤読や誤記が広まった時期や理由も文学部卒のライターがわかりやすく解説

今回の記事では独壇場と独擅場の違いについてみていきます。2つともよく似た字が使われているが、両方とも正しく読めるでしょうか。独壇場のほうはともかく、独擅場は読めないし意味もわからないという人も多いかもしれませんね。もともとは人の振る舞いについて表した言葉ですが、時代が下るにつれて変化してきたようです。今回はこんな2つの熟語について文学部卒のライター海辺のつばくろと一緒に解説していきます。

ライター/海辺のつばくろ

何となくよく似た熟語のちょっとした違いについて気になって調べてみた文学部卒ライター。

独壇場と独擅場の読み方は?

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独壇場の読みは「どくだんじょう」、一方で独擅場は「どくせんじょう」です。「壇」と「擅」は漢字の部首が「土」(つちへん)か「扌」(てへん)という違いがあり、よく似た字ですね。独壇場のほうが見かける機会が多いのではないでしょうか。

独壇場の意味

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独壇場の意味はひとり舞台ということ。自分が思うままに振る舞うことといった意味合いですね。しかし、気になるのは、「擅」を「壇」と間違えたところからできた言葉だというところです。つまり、本来は「独擅場」と表記されているのが、のちに「独壇場」に変化して現在に至っているということになりますね。

・独壇場「どくだんじょう」
名詞。「独擅場」(どくせんじょう)の「擅」を「壇」に誤ったところから、「ひとり舞台」の意味にひかれてできた語。=独擅場(どくせんじょう)

出典:コトバンク 『精選版 日本国語大辞典』「独壇場」の解説

・「擅」を「壇」と書き誤って生じた語 「独擅場」に同じ

出典:コトバンク 『小学館 デジタル大辞泉』

「壇」の字義

「壇」は祭壇や仏壇のように、神仏を奉るように盛り上げて作った場所、花壇やひな壇のように、他よりも高く作った場所などを指します。そのようなところから、舞台と関連する言葉を連想させたのかもしれません。

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